令和最初の『新春浅草歌舞伎』開幕、
尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助らが
今年も鏡開き

次世代を担う若手の登竜門として知られる、令和最初の『新春浅草歌舞伎』が2020年1月2日(木)浅草公会堂で開幕した。正月興行初日の朝、出演者の尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、そして坂東新悟、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、さらに中村錦之助らが劇場前で毎年恒例の鏡開きを行なった。
笑顔を見せる、中村歌昇、尾上松也、坂東巳之助、中村米吉、中村橋之助、松竹の安孫子正副社長(左から)
公演の第1部(午前11時開演)では、お年玉〈年始ご挨拶〉から始まって、『花の蘭平(はなのらんぺい)』、『菅原伝授手習鑑 寺子屋(すがわらでんじゅならいかがみ てらこや)』、『茶壺(ちゃつぼ)』が上演される。
第2部(午後3時開演)では、こちらもお年玉〈年始ご挨拶〉から始まり、『絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場(えほんたいこうき あまがさきかんきょのば)』、『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場(かなでほんちゅうしんぐら ぎおんいちりきぢゃやのば)』が上演される。
尾上松也
尾上松也は「みなさん新年明けましておめでとうございます。今日は朝も早く、こんなお寒い中をこんなにたくさんの方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます」と見物客を労いつつ、「令和最初の浅草歌舞伎が始まったということで、これからまた改めて初心に戻り、新しい浅草歌舞伎がスタートするような気持ちで取り組んでいきたいと思っております」と意気込みを語った。
今回、松也は第1部の『菅原伝授手習鑑 寺子屋』で松王丸、第2部の『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』で大星由良之助を演じる。
「例年通り、1月はいろんなところで歌舞伎公演が行われております。歌舞伎公演が一番多い月かもしれません。私どもはまだまだ未熟ではございますけれども、どこの劇場よりも強く、熱い気持ちを持って、千秋楽までみなさんに楽しんでいただけるように勤める所存でございます。みなさまお誘い合わせの上、劇場にいらして声援を送っていただきたく思いますので、どうぞよろしくお願いします」と話した。
中村歌昇(左)
中村歌昇は「みなさん、こんな寒い中、朝早くに、お集まりいただきまして、ありがとうございます! 私は今回第2部の『絵本太功記』で、光秀をやらせていただきます。今年は大河ドラマ(NHK『麒麟がくる』)も光秀ということで、光秀イヤーです。今話題の大河ドラマですから、それに便乗して私も光秀を勤めさせていただけたらなと思います。どうぞみなさま、応援よろしくお願いします」と挨拶した。
坂東巳之助(中央)
続いて、坂東巳之助は「明けましておめでとうございます。本当にお寒い中、新年早々お集まりいただきまして、ありがとうございます。私は第1部にて『茶壺』(熊鷹太郎役)、第2部にて『仮名手本忠臣蔵』で寺岡平右衛門を勤めさせていただきます」と自己紹介。
そして、壁に掲げてある絵看板の方を指差し、「こちらの看板の方をご覧ください。他の演目と比べると、書き方が違うので分かりづらいと思います。『茶壺』でございます。決して、『茶(ちゃつぼ)壺』(ちゃちゃつぼつぼ)ではございません。『茶壺』という演目でございます。何卒みなさん楽しんでおご覧いただけたらと思います。よろしくお願いいたします」と、巳之助らしくひと笑いを誘った。
坂東新悟
坂東新悟は「みなさま明けましておめでとうございます。お寒い中、本日はありがとうございます。今年もこうして浅草歌舞伎に出演させていただくことができまして、本当に大変ありがたく思っております」と切り出し、「私事ではございますが、本年が私20代最後の年でございます。先輩方がいる前でこんなことを言うのもアレですが、いつまでも若手とはいっていられなくなってまいりますので、1日1日を悔いのないように少しでもいい舞台にしていけるように日々成長していければと思います」と気を引き締める。
そして「この浅草歌舞伎の特徴として、我々役者たちの成長が見られるということもありますので、それを確認していただくために、お客様にも一度だけでなく二度三度とたくさん来ていただく必要がございます。ですから、ぜひ(何度も)劇場に足をお運びいただければ幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします」と挨拶をした。
中村米吉(中央) 
中村米吉は「今日はお寒い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。今年は子年でございまして、私もこの浅草歌舞伎で3つの大きなお役を勤めさせていただきます。皆様にチュー目(注目)していただけるよう勤めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」と、子年に因んだギャグを挟んだ。
中村隼人
次に、中村隼人は「皆様新年明けましておめでとうございます。本日はお寒い中、ありがとうございます。今年は第1部では『寺子屋』の武部源蔵、そして第2部では『太功記』の武智十次郎という役を演じさせていただきます」と述べてから、「第1部の『寺子屋』に関しましては、私が初舞台の演目でございまして、その時は小太郎というお役で8歳で初舞台を踏みまして、それで18年ぶりにこの演目にまた出させていただきます」と話した。
「初舞台の時は首を斬られる役だったんですけど、今回、首を斬る役にまわりまして(笑)、しっかりと先輩に教えていただきながら、歌舞伎の三大名作の一つでもあるこの『菅原伝授手習鑑』の『寺子屋』をきっちり勤めたいと思いますので、ぜひぜひ劇場にいらしていただいて、応援していただきたいと思います。よろしくお願いいたします」と決意を語った。
中村橋之助
中村橋之助は「明けましておめでとうございます。僕は第1部では、うちの成駒屋で大切な『花の蘭平』を勤めさせていただきます。こちらは本当にお正月の序幕らしい華やかな演目となっておりますので、気持ちよく見ていただけたらと思います。そして第2部では『太功記』の佐藤正清、そして『仮名手本忠臣蔵』の大星力弥を勤めさせていただきます。一ヶ月間、一所懸命に勤めたいと思いますのでよろしくお願いします」と話していた。
なお、橋之助は一般女性との交際報道があり、他の出演者らからも「おめでとう!」などと終始イジられていた。
中村錦之助
中村錦之助は「皆様、明けましておめでとうございます。1年経つのがすごく早いですね。このあいだ、ここで挨拶したかと思うと、もう1年たってしまいました。私は60代初の浅草歌舞伎です。若手に負けずに、頑張りたいと思います」と語る。
「それと(長男の)隼人と一緒になるのは去年の浅草以来ですので、他の人とはしょっちゅう一緒になっているんですけれども(笑)、隼人とは本当に一年ぶりなのでね、親として楽しみなところもあるし、まだまだ息子には負けていられない、若手には負けていられないという気持ちで頑張りたいと思います。ぜひどうぞ皆様、26日まで頑張ってやっておりますので、1回でも多くご観劇のほど、またお友達ご親戚、ツイッターなどなどで拡散して、少しでも浅草歌舞伎が大入りになるよう、どうぞよろしくお願いいたします」と、久しぶりの親子共演を喜んでいた。
中村錦之助(左)と中村隼人
松竹の安孫子正・副社長
服部征夫・台東区長
そのほか、松竹の安孫子正・副社長、服部征夫・台東区長も挨拶をした。そして、新潟県佐渡市の北雪酒造の酒樽を「1、2、3、ヨイショ」の掛け声で割った。出演者らは時間の許す限り、観覧客に酒を振る舞っていた。
振る舞い酒をする中村錦之助、中村隼人、坂東新悟、中村歌昇(左から)
振る舞い酒をする中村錦之助、中村隼人、坂東新悟、中村歌昇、尾上松也、坂東巳之助、中村米吉(左から)
【関連イベント】
◇毎年恒例!「お年玉〈年始ご挨拶〉」
第1部、第2部ともに、開幕に先立ち、出演俳優がご来場のお客様に向け年始の挨拶をします。挨拶する俳優は交代制。ご贔屓にしている俳優の公演回に観劇するのも楽しみの一つです。演目の解説や歌舞伎の見方、ユーモアあふれる挨拶や『新春浅草歌舞伎』の思い出話など、俳優ごとにトークの内容は様々で、普段は見ることのできない姿を見られるチャンス。舞台と客席の距離をぐっと縮める毎年恒例の大人気企画です。
 
◇今年も開催「着物で歌舞伎」の日=1月19日(日)第2部
観客が着物着用で観劇する日です。劇場スタッフも着物姿でお出迎え。正月らしい華やかさを味わうことができます。今年は1月20日第2部に開催します。「着物で歌舞伎」の日に来場したお客様には記念品の進呈も。『新春浅草歌舞伎』公演ならではのイベントです。
振る舞い酒をする尾上松也(中央)ら
取材・文・撮影:五月女菜穂

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