ザ・コインロッカーズ現体制ラストラ
イブ。38人の集大成をZepp Tokyoに込
めて

秋元康プロデュースのガールズバンド、ザ・コインロッカーズがZepp Tokyoにて1周年記念のワンマンライブを行った。同会場は結成お披露目ライヴとして、昨年同日に行われた無観客ライヴから始動した想い出の地。同時に、その日に公約した1年後での同地でのワンマンを完売させるべく邁進してきた約束の地でもあった。そして、その結果や成果がこの日はさまざまな形で現れ、観衆とともに美しい名場面の数々が育まれていった。

Text_池田スカオ
Edit_mine.k

Zepp Tokyoから始まった38人の1年間

正直、当初はもっとセンチメンタルで哀しい雰囲気や「今までありがとう!」といった空気感や光景を予想し、この日に臨んだ。結果、やはり一抹の寂しさは残ったものの、想像以上に残った者の今後や、次の新しいステージへと向かう者に対して、「あらためてこれからもよろしく!」との心のエールを全員が贈っている光景や雰囲気も印象深い一夜であった。

とは言え、この日は現メンバー体制での最後の舞台。事前の公言通りこの日以降、彼女たちは13人体制へと向かう。そしてこの日は、新体制メンバーたちには、そこに向けての新たな決意と覚悟が、去るメンバーたちからは、「この1年の活動をいい想い出だけに終わらせない」誓いと約束が交わされたのが垣間見えた。

ここで、ザ・コインロッカーズのこれまでを軽く振り返ろう。彼女たちは各々楽器やバンド経験の有無、国籍を問わず集った、総勢38名のガールズバンド。ライヴでは楽曲とカラー毎にそのメンバー編成を変えていくスタイル。そのバンド編成も、ツインボーカルやツインベース、ツインキーボードなど、既成にとらわれないフレキシブルさを持つ。すでに150カ所にも及ぶ武者修行的な全国ツアー、各種イベントやフェスにも出演し、ライヴ経験も豊富な彼女たち。対してリリース作品は、これまでにSG「憂鬱な空が好きなんだ」1枚のみ。同じ曲ながら、異なるメンバーや編成で伝え分けているユニークさとバリエーションも魅力だ。そしてこの日のZepp Tokyoでは、まさにそれらの集約が終始広がっていた。

まず入場して驚いた。「チケット購買は半分ほど」との事前情報に反して、場内は満場。その光景から、この編成での彼女たちの最後の雄姿を眼に焼きつけようと駆けつけたファンの意気が伺えた。

この日は彼女たちにとっても、単独では最大規模の会場。普段のライヴハウスの10倍近くになり、ステージも巨大。それを活用するように、真ん中を境に左右後方に設置された山台には、それぞれドラムとキーボードがシンメトリーにセットされている。

ラストを感じさせない、スピード感溢れ
るライブがスタート

場内にカヨンが制作したデパーチャーSEが響き渡り、戸谷奈桜実がスタイリングした衣装をまとった憂鬱チームの面々が。「Zeppついに来ました~!」と松本璃奈がシャウト。会場を引き連れんとばかりに、同チームの真骨頂、「憂鬱な空が好きなんだ」がライヴを走り出させていく。青空なんて好きじゃないと歌いながらも、場内いっぱいに爽快感や開放感を広げていった彼女たち。HANNAもステップ上でギターソロを披露。有働優菜と田村愛美鈴のツインキーボードも健在だ。続いて季節は夏の終わりへ。緑チームによる「最後の蝉」が会場に切なさを広がらせていく。ステップ上での𠮷田桃・絹本夏海によるツインギターによるリードも同曲では印象深い。

「遂に来ました!今夜はみなさんと伝説の夜にしていきましょう!」と松本。季節は春へ。蝉チームによる「桜なんか嫌いだ」からは髙橋菜月のアコギも映えはじめる。竹内月音もタンバリンを刻みながら歌唱。同曲が描く別れの場面とこの日が、どこかオーバーラップしキュンとした気持ちになる。続けて蝉チームによるコール&レスポンスを交えたメンバー紹介を経た、面目躍如な「最後の蝉」ではこのグループ特有の竹内月音・菅野伊吹のツインボーカル、寺田もも・山岸詩によるツインベース、染谷悠美・立花明音のツインドラムなスタイルが炸裂。リプレイも交え、オリジナリティを楽しませてもらった。
「まだまだいけるよ~!」と竹内。宇都宮未来と立花明音によるトランペットも交えられた赤チームによる「憂鬱な空が好きなんだ~トランペットver.~」、流麗な鍵盤インストを挟み、白い衣装を基調とした桜チームが。後藤理花のピアノ弾き語りからはじめるも、日本語パンク的へと急変させた「歌いたくて歌いたくて」では、メンバーの一丸性溢れるユニゾンが疾走感のあるサウンドとともに会場を引き連れて走り出し、福田瑠佳、髙橋美紗稀がヴォーカルを繋いでいく。続く桜チームの「桜なんか嫌いだ」では、泉真凜によるオルガンの音色もノスタルジックに響き、ドラムレスながら全く寂しくさせない。対して青チームによる「憂鬱な空が好きなんだ」はアコースティックタッチからはじまるも、ワンコーラス後はバンドサウンドに豹変。この形態ではやはりYURI・寺田もものツインベースが光った。

次の紫チームによるしっとりとしたオリジナルソングメドレーは、「私たちはこれからもそれぞれの道を歩んでいく」、という風にも響いた。

バリエーション様々なパフォーマンスで
場内を一気に盛り上げる

この日は間間にMCの他、繋ぎとしてインスト曲やダンス、日本舞踊も披露された。黒い衣装を基調にした月チームによる「桜なんか嫌いだ」では船井美玖と中村雪音のツインボーカルと山本愛華によるタイトなドラムも光り、フロア頭上に巨大なミラーボールという月を出現させ、幻想的な中歌われた「月はどこに行った?」が場内を魅了していく。対して、AKB48の「ヘビーローテション」をマッシュアップさせた、黄チームによる「歌いたくて歌いたくて~ヘビロテver.~」、各人がステージ狭しとアクティブにムーブしながらプレイされたオレンジチームの「最後の蝉~ロックMUSH UP ver.~」も場内をグイグイと惹き込んでいった。

「歌歌チームで最後のステージに立った時に『またゼップに帰ってきますから!』と約束したけど、今日それがようやく実現できた」と、同曲を終えたЯuu。「フレンズ」(レベッカ)「ルージュの伝言」(荒井由実)、「はじめてのチュウ」のハイスタバージョンなどのカバー曲がメドレーで現れ、その後のメンバー紹介の際には「Walk This Way」の有名リフやЯuuによる超絶スラップと成澤愛実によるドラムの掛け合いも飛び出し場内の熱狂度もますます上がっていく。そして駆け抜けていくかのように響いた歌歌チームによる「歌いたくて歌いたくて」では会場の呼応とレスポンスの大合唱のなか、♪歌いたくて、歌いたくて♪のフレーズもこの日はことのほか信憑性を持って響いた。
新曲披露の際には、以前ファン投票で選ばれたメンバーが呼び込まれる。投票で選ばれたチームAによる、ツッコミ気味の8ビートでポップパンク調の「コインロッカーの中身」では、会場にいる全員がステージに向けコブシを挙げた。また、ツインキーボードも特徴的な投票チームBによるもうひとつの新曲「僕はしあわせなのか?」では、切なさとそれを振り払うように現れる転調にもグッときた。
そして本編最後は、憂鬱チ―ムによる「月」~「歌歌」〜「蝉」〜「憂鬱」の強力メドレーが。Emilyがイタリア語で歌い出し、そこに力強いバンドサウンドが合わさっていく。この曲では特にバンドのユニゾンが力強かった。最後はタオル大旋回の光景へと導き、一旦彼女たちはステージを降りた。

38人によるザ・コインロッカーズ

アンコールでは、恒例のシャッフル企画が。この日選ばれた楽曲は「最後の蝉」。それをキーボード×2、ドラム×2、アコギ×2、ベース×2、ギター×3、ヴォーカル×2の大編成にて贈られた。「5曲と新曲2曲でここまで出来るとは思ってなかった。むちゃくちゃ悔しいけど今に負けないようにみんなそれぞれの道を進んでいきます。寂しいけど前を向いていかないと。最後はこの38人の姿を目に焼きつけて帰って下さい」(松本)と、最後は総勢37名(本日は1名欠場)のザ・コインロッカーズによって「憂鬱な空が好きなんだ~Zepp SP ver.~」が贈られた。同曲では、ステージはもとより会場全員で呼応。冒頭時とまた違い、どこか清々しく感じた。と同時に、そこにはどこか、<今は眩しすぎて直視できない青空や太陽でも、いつかはそれをキチンと受け入れ、好きになれるように頑張っていこう!>というメッセージをも擁しているように響いた。その場面は力強く美しく尊く、最後は会場全員から発せられた力強く送り出すような歌声とともに、同曲とこの「38人によるザ・コインロッカーズ」の完成を見た。
残る者、去る者……終演を境に彼女たちは別々の道へと向かう。もしかしたらその先に、再び彼女たちが交わる時があるのではないだろうか。それを楽しみに、そして信じ、私はこの日の会場を後にした。

この1年で得たこと学んだこと知ったことは、38人各位の強い心の糧になったことだろう。またいつか一緒のステージに立ったり、違ったバンドで一緒になったり、このメンバー同士が一緒に何かを生み育む時がくるかもしれない。そう、ザ・コインロッカーズはもともとフレキシブルで柔軟で、なんでもありなバンドなのだから。ほら、振り返ると今までだってそうだった。また、いつかどこかのクロスロードで会おう!
<セットリスト>
01.憂鬱な空が好きなんだ(憂鬱チーム)
02.最後の蝉(緑チーム)
03.桜なんか嫌いだ~メンバー紹介ver.~(蝉チーム)
04.最後の蝉(蝉チーム)
05.憂鬱な空が好きなんだ~トランペットver.~(赤チーム)
06.歌いたくて歌いたくて(桜チーム)
07.桜なんか嫌いだ(桜チーム)
08.憂鬱な空が好きなんだ(青チーム)
09.オリジナルソングメドレー(紫チーム)
10.桜なんか嫌いだ(月チーム)
11.月はどこに行った?(月チーム)
12.歌いたくて歌いたくて~ヘビロテver.~(黄チーム)
13.最後の蝉~ロックMUSH UP ver.~(オレンジチーム)
14.カバーメドレー(歌歌チーム)
15.歌いたくて歌いたくて(歌歌チーム)
16.コインロッカーの中身(投票チームA)
17.僕はしあわせなのか?(投票チームB)
18.憂鬱チームメドレー(憂鬱チ―ム)
-アンコール-
01.最後の蝉(シャッフルバンド)
02.憂鬱な空が好きなんだ~Zepp SP ver.~(ザ・コインロッカーズ)

<チーム>
憂鬱な空が好きなんだ
松本璃奈(Vo)、森ふた葉(Dr)、鏡味のぞみ(Ba)、手塚愛乃(Eg,Cho)、HANNA(Eg)絹本夏海(Eg,Cho)、Emily(Ag,Cho)、有働優菜・田村愛美鈴(Key)
歌いたくて歌いたくて
宇都宮未来・山本朱莉(Vo)、野原衣純・下島輝星(Eg)、橋本朋夏(Ag)、Яuu(Ba)、成澤愛実(Dr)
月はどこに行った?
船井美玖・中村雪音(Vo)、𠮷𠮷田桃(Eg)、戸谷奈桜実(Ag,Cho)、YURI・中島すみれ(Ba)、山本愛華(Dr)、ゴリヤノバ・ズラータ(Key)
桜なんか嫌いだ
福田瑠佳・カヨン(Eg,Vo)、髙橋美紗稀(Ag,Vo)、早坂つむぎ(Ba,Vo)、後藤理花・泉真凜(Key,Vo)
最後の蝉
竹内月音・菅野伊吹(Vo)、長妻美玖(Eg)、髙橋菜月(Ag,Cho)、寺田もも・山岸詩(Ba)、染谷悠美・立花明音(Dr)

<赤チーム>
宇都宮未来(Vo,Tp)、HANNA(Eg)、髙橋美紗稀(Ag,Cho)、鏡味のぞみ(Ba)、立花明音(Dr,Cho,Tp)、後藤理花(Key)

<青チーム>
竹内月音(Vo)、長妻美玖(Eg)、橋本朋夏(Ag)、YURI・寺田もも(Ba)、染谷悠美(Dr)、泉真凜(Key,Cho)

<黄チーム>
山本朱莉(Vo)、カヨン・野原衣純(Eg)、戸谷奈桜実(Ag,Cho)、早坂つむぎ(Ba)、山本愛華(Dr)、田村愛美鈴(Key)

<緑チーム>
船井美玖(Vo)、𠮷𠮷田桃・絹本夏海(Eg)、Emily(Ag,Cho)、山岸詩(Ba)、松本璃奈(Dr,Cho)

<紫チーム>
菅野伊吹(Vo,Ag)、手塚愛乃(Vo,Eg)髙橋菜月(Eg)、中島すみれ(Ba)、森ふた葉(Vo,Dr)、ゴリヤノバ・ズラータ(Key)

<オレンジチーム>
中村雪音(Vo)、下島輝星(Eg)、福田瑠佳(Eg,Cho)、Яuu(Ba,Cho)、成澤愛実(Dr)、有働優菜(Key)

ザ・コインロッカーズ現体制ラストライブ。38人の集大成をZepp Tokyoに込めてはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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