ラストツアーに臨む中島みゆきから笑われながらも闘う人へ「ファイト!」

ラストツアーに臨む中島みゆきから笑われながらも闘う人へ「ファイト!」

ラストツアーに臨む中島みゆきから笑
われながらも闘う人へ「ファイト!」

復興を願って歌われた「ファイト!」
中島みゆきが1979年に初めて全国ツアーを行ってから41年となる2020年。最後の全国ツアー「中島みゆき2020ラストツアー”結果オーライ”」が開催されます。
数多くある中島みゆきの名曲の中で、”ラストツアーに『ファイト!』を聴きたい”と望んでいるファンは多くいるのではないでしょうか。
『ファイト!』は1983年リリースのアルバム「予感」に収録された楽曲です。1994年には住友生命のCMのイメージソングに選ばれ、シングルCDとしても発売されました。
東日本大震災後の全国ツアー「LOVE OR NOTHING」では「復興を祈ります」という言葉の後に、ピアノの弾き語りでの『ファイト!』を披露。
会場でこの全国ツアーで『ファイト!』を聴いたファンは、ますますこの楽曲が好きになったのではないでしょうか。
『ファイト!』の歌詞には「川をのぼっていく魚」のたくましく美しい姿が表現されており、困難に立ち向かう「闘う人」を連想させます。
「ファイト!」と優しく歌いかけるのに、何故か力強い励ましを感じる。そんな魅力あふれる『ファイト!』を紹介します。
「闘う人」に向けられている視線
ファイト! 歌詞 「中島みゆき」
https://utaten.com/lyric/ja00003890
『ファイト!』では、歌詞の冒頭から他者を攻撃する悲しくて醜いエピソードが描かれています。
「学歴だけで差別して、仕事を頑張ろうとしている人に仕事を与えない」という内容のエピソード、「年少者だというだけで、相手に敬意を払わない」エピソード。
そして3つ目に描かれた、この「駅の階段から子供を突き飛ばして、うす笑いを浮かべる女」のエピソードはあまりにも衝撃的です。
この歌詞のエピソードが、実話なのか例え話なのかは分りません。
しかし、この「うす笑いを浮かべる女」のように、私たちの生活の中には自分より明らかに弱い人に対して、背後から急に攻撃してくるような人は確かに存在します。

弱い人には何の責任もありません。この歌詞の中でも「子供」という「弱い人」だから突き飛ばされてしまっただけなのです。
もし、相手が大人であれば突き飛ばされることはなかったかもしれません。
この状況に出会った人は、普通であれば「つきとばした女」に対して敵意を向けるでしょう。しかし、中島みゆきは「私の敵は私です」と言い切っています。中島みゆきの視線は「闘う人」に向いているのです。
川をのぼってゆく魚の峻烈な印象
ファイト! 歌詞 「中島みゆき」
https://utaten.com/lyric/ja00003890
この歌詞では「闘う人」の美しさ「川をのぼってゆく魚たち」に例え描かれています。
「川をのぼってゆく魚たち」というのは、産卵のために海から川へ入り、産卵に適した川の上流を目指し、流れに逆らい登っていく鮭のことを歌ったのでしょう。

川の流れに逆らい、傷だらけになりながらも懸命に泳いでいく鮭を「闘う人」を例えることができますよね。
傷だらけになってしまったけど、その傷によって光ることができ、その傷こそがあなたを輝かせているのです。
そんな風に傷ついたことをその人の勲章として表現し、闘っている人たちを肯定して、励ましているのでしょう。
笑われながらも闘う人の美しさ
ファイト! 歌詞 「中島みゆき」
https://utaten.com/lyric/ja00003890
「闘わない奴等」は私たちの周りにもいるのではないでしょうか。
闘わないからこそ、その大変さが分からない。だから、闘うことを簡単なことのように感じて、「闘う人」を笑うのかもしれません。

歌詞に登場する他者を攻撃する人たちは、闘わずして優越感だけを味わおうとしているのか、闘わない弱さから目を背けるために、他者を攻撃してしまっているのではないでしょうか。
他者を攻撃する人のエピソードと対比することでより一層「闘う人」が美しく感じられますよね。
”例え失敗しても、頑張ろう”という気持ちになれる楽曲です。
純文学のおもむきを持つ歌詞
中島みゆきの歌詞は、芸術性が高いため純文学と言われています。
芸術性が高い歌詞だからこそ、聴く人によって様々な解釈ができ、自分の人生に照らし合わせた各々の解釈を楽しむことができるのでしょう。
そして、人生経験を重ねることによって、聴く人の歌詞の解釈に深みが出てくるのも魅力的です。
次回が中島みゆきのラストツアーになりますが、全国ツアーがなくなっても、また新しい何を生み出してくれることを期待しています。
TEXT 三田綾子

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