21世紀のジャムバンドシーンを
予言したジョン・スコフィールドの
『ア・ゴー・ゴー』
ジョンスコのファンクフィーリング
90年にはブルーノートと契約、基本に立ち返ったような模範的ジャズアルバムを数枚リリースした後、94年の『ハンドジャイブ』でオルガン入りのジャズファンク作品をリリースする。これで火が付いたのか、続く『グルーブ・イレイション』('95)もソウルジャズのテイストが感じられる作品となった。
本作『ア・ゴー・ゴー』について
本作『ア・ゴー・ゴー』は98年にリリースされた。これ以降、ジョンスコとMM&Wのコラボレーションは何度も行なわれるが、本作がその第一弾となる(のちにメデスキ・スコフィールド・マーティン・アンド・ウッド(MSM&W)となる)。ジャズ、ジャズファンク、ソウルジャズ、ヒップホップなどの要素を持ったそのサウンドはジャムバンド界のマイルストーンとなり、多くのジャムバンドグループに影響を与えた。本作の名義はジョン・スコフィールドとなっているものの、実際はグループとして考えるべきである。
収録曲は10曲、当然だが全てインストで何度も再演される名曲が詰まっている。タイトルトラックの「ア・ゴー・ゴー」は、このアルバムの特徴が表現された自己紹介的な意味を持つナンバーで、ライヴでは延々と演奏されることも少なくない。「チャンク」「グリーン・ティー」「ホッテントット」「デッジー」も未だにライヴで演奏される名曲群だ。
アルバム全編を通してジョンスコのギターはシンプルで、メデスキのキーボードとのアンサンブルを重視している。これまでの粘液質でのたうち回るようなプレイは弾いているものの、簡潔にフレーズをまとめブルージーな演奏でメリハリを効かせている。マーティンとウッドのリズムセクションは、ある時はかつてのソウルジャズグループのようでもあるし、またある時はヒップホップの打ち込みのようなサウンドのようでもある。基本的にはジャムバンドの特徴であるグルーブ感にあふれたリズムで、聴いている者をナチュラルハイ状態にさせる。中でも「ホッテントット」は名演だ。たった4人だけの演奏なのに、ヒップホップとタワー・オブ・パワーとグラント・グリーンが合体したような印象すら受ける。
本作の後、MSM&W名義で2006年に『アウトラウダー』、2011年にライヴ盤『Live:In Case the World Changes Its Mind』、2014年に『ジュース』がリリースされている。なお『ジュース』には、ドアーズの「ハートに火をつけて」、クリーム「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」、ボブ・ディラン「時代は変わる」のカバーも収められている。
TEXT:河崎直人