THE ORAL CIGARETTES・山中拓也イン
タビュー 新曲「Shine Holder」へと
至る2019年下半期を総括

昨年にリリースしたアルバム『Kisses and Kills』のツアー中に2019年を迎え、アジアツアー、初の野外主催イベント、錚々たる先輩アーティストたちを迎えての対バンツアーを開催――と今年も走り続けたTHE ORAL CIGARETTES。本テキストはそんな2019年の終わり、12月18日に彼らが放つシングル「Shine Holder」のことを中心に、1年の振り返りも交えながら、第2章と謳った現在の活動について、フロントマン・山中拓也に訊いたインタビューだ。ここ最近のオーラルがステージで語ったり、口にせずとも姿勢で伝えたりしてきたことの総まとめとも呼べるような濃密な内容から見えてくる、彼らが今思うこと、感じること、成そうとしていることとは。
――先日の対バンツアーの東京公演を観まして。これまでのインタビューでは、バンドとしての動きや思考を含めた“オーラルが表現するアートフォーム”みたいな、仕掛けの部分にフォーカスして話すことが多かったんですけど、もっと根本の、ステージに立って演奏して歌って動いてっていう部分でのレベルがものすごく上がったなと実感しました。
嬉しい~。ありがとうございます。そもそも対バン相手が大先輩だったので、中途半端な気持ちでやるわけにはいかない責任感があったし、あとはライブのやり方を変えていく上で、『PARASITE DEJAVU』(今年9月に泉大津フェニックスでオーラルが主催した野外イベント)でやったことが正解だったと確認していく作業を、来年までにやっていかないといけない中での対バンツアーだったので、今までみたいにガムシャラにというよりは、より精密に、やらなきゃいけないところ、キメなきゃいけないところを考えてやっていました。
――『PARASITE DEJAVU』より以前と、意図的に変えようとしていた部分は、具体的に挙げるとすればどんなことでしたか。
大きくシーンやフェスを観たときとかに、今すごく感じる部分として、ライブの最後にボルテージを持っていく、その感情の種類が変わったという感じです。たとえば2年前、3年前だったらフェスの中でメインステージに上がるために頑張ってやらなきゃいけないとか、どれだけ他のバンドよりお客さんを盛り上げられるかという部分で、最後にめちゃめちゃ盛り上がる曲で畳み掛けて、終わったときにみんなが枯れ果てるぐらいまで煽り倒して、終わったら「疲れた、でもめっちゃ楽しかった」みたいな。そういう感情を優先して進んできたんです。お客さんの疲労感が、ライブの良さを全て物語ってるんじゃないか、とか。
でも、モッシュとかダイブとかが起きてたら「めっちゃ盛り上がってたね」「超良いライブだったじゃん」って言われることには、すごく違和感を感じていて。それが“良いライブだった”の物差しになっているんだとしたら、それは違うぜと。
――うんうん。
俺らが伝えたいことがちゃんと伝わっているのが“良いライブ”なんじゃない?とか、そういうことをすごく考えることが、去年くらいはすごく多くて。「めっちゃ盛り上がって疲れて最高」みたいなライブって、まわりをみたらすごく多いし、ロックシーンにありがちで、この感情を全バンドがやっていたらあんまり面白くない。あと、他の感情が見えないなとか、「ロックスターって何だ?」「ロックスターがいるバンドって何?」とか考えたときに、自分の答えとしては“生き様が見えるバンド”なんじゃないかなと。
それを意識し始めたときに、いろんな感情――自分が一つのライブの中で見せたい感情を、全部きれいに見せていくやり方をしなきゃ意味がないんじゃないかって。一つの感情だけで終わらせずに、「この人はこんな気持ちで歌ってたんだ」「こんな気持ちで毎日生きているんだ」とか、「私も頑張って生きなきゃ」とかっていうお客さんの気持ちに結びつけるライブをできないと、ステージの上で喋ったり音を発信したりする価値が無いなって思ってきていて。
――はい。
そのためにも、盛り上げることを最後に持ってくるんじゃなくて、しっかり自分の生き様が詰まっている歌だとか、苦しい思いをしたときに死に物狂いで書いた曲だとか、最近のライブでは基本的にそういう曲を最後や後半に打ち込んでいったりしています。そのやり方が、俺は『PARASITE DEJAVU』で大成功したと思っていて。メンバーも「もしかしたらそのやり方が合ってるかもね」みたいに言ってくれて、それを11月の対バンツアーでも少しずつやってました。
――『PARASITE DEJAVU』を終えて以降の第2章って、楽曲のテイスト等だけではなくて、そういう姿勢の変化も大きいかもしれないですね。
すごく大きいと思います。
――対バンツアーに関してもうひとつ聞くと、大先輩の胸を借りた経験からはどんなものを得たと思いますか。
とりあえず、めっちゃ疲れました(笑)。……でも、KICK THE CAN CREWを例に挙げると、あの状況把握であるとか場の空気を瞬時に掴む力って、人間力がないと無理だなって。あの人たち、あれをやれるのがステージだけじゃないんですよね。それは経験と場数から来るもので、きっとプライベートでも自然にやれている。だからライブでもいやらしくない。
――たしかに。
いやらしくなく持っていく、自分たちの味方にする力を兼ね備えているな、だからここまで登っているんだ、っていうリスペクトをすごく感じたし、あとはなんというか、インテリジェンスの部分と心の広さ、キャパの広さがないと、これより上には行けないなって。グループやバンドとしてじゃなく、いち人間として話したときにも、対後輩だからといって偉そうな感じじゃなくて、この人たちはこうやって一人一人にちゃんと向き合ってやってきたから、今もこういう風に活動してレジェンドになっているんだなって、人間の生き様みたいな部分で感心することが楽屋でも打ち上げでもあったりだとか。
――そういうのが見たくてツアーをやった、というのもありました?
ですね。もう、それしかないかも(笑)。3年前にやった『唇ツーマン TOUR 2016 ~復活・激突・BKW!!の巻~』が、あのときの俺らにとって本当に成長に繋がったんですよ。対バン相手に全負けしたけど、でも自分たちがここまでやってこれたのは、あのツアーがあったからだなってすごく思っているし、挑戦したい相手にビビらず挑戦していくことによって、絶対に何か得られるものがあると思って、そういう刺激が今欲しくてやったというのがデカいです。
THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓
――それでは新曲「Shine Holder」について聞かせてください。まず、第2章開幕以降の2作目となりますが、いま描いている道筋の中でどんな意図を持って世に出す曲なんでしょうか。
MVで表現している映像の内容だとか、ジャケットのアートワーク部分でも、(過去曲と)「あれ、これ共通してんじゃない?」みたいな箇所が、第一段階としてあると思うんですよ。そういう部分から、「これは何を言っているんだろう」って歌詞を読んでもらったりとか、少しディグる作業をみんなにしてほしくて。俺らがインタビューとかMCとかで発言している内容も全部込み込みで聞いてくれてる人たちには、気づきがすごくある楽曲になっているから、そこをみんながどれくらい理解してくれてるのかを、自分が見たいシングルでもあるし、あとはプラスアルファで、今リアルタイムで思っている現状に対しての苛立ち……それは自分たちに対する苛立ちじゃなくて。
――はい。
自分たちに対する苛立ちを曲にすることは多かったんですけど、今回はすごく久々に、周りに対しての苛立ちに牙を剥いて曲を書いたんですよ。「俺らは変えていくよ」っていう決意表明を「Don’ t you think」のあとにすることが、自分の中では大事だったので、それがこの曲であってほしいとはすごく思ってました。
――「Don’ t you think」が「変わっていくんだな」っていうことをわかりやすく伝えるための曲でもある、というのは前回話してくれましたけど、そこでいうとこの曲は。
「曲にも連鎖してきてるな」っていう。MCで伝えてきたこと、ジャケットで伝えてきたこと……全部がだんだん連鎖し始めてきたタイミングだと思っているので、「Don’ t you think」で「変わっていくんだな」って提示したあとに自分らが提示しなきゃいけないこととして、自分たちが夢のように語っていることが「夢じゃなくて本気で狙っていってるからね」っていうことを、今回の楽曲を通してさらに伝えて駄目押ししたっていう感じです。
――歌っている内容はかなりパンチが効いています。“人”や、“人と人”の間に生じた小さな“社会”に対するメッセージは、これまでも結構曲にしてきたと思うんですけど。
そうですね。
――今回はもっと視野が大きいし、そこに対して否定的な立場が明示されている。それはあえてしてこなかったことなのか、そういうことを表現したくなる何かがあったのか。
楽曲を出すそのときそのときの、リアルに思っていることを毎回出してはいるので、意図的に出さなかったというよりは、今ちょうどそういうことを考えてるタイミングに差し掛かってきたということなのかな、と。そもそも第1章と第2章とで、感情を向けている場所が違うというか、見なきゃいけない部分とか伝えていかないといけない部分がすごく大きくなったときに、今の現状に対して「あれ、これおかしくない?」「気持ち悪いな」みたいなことが見えてきたから、それをそのまま楽曲に起こして、「俺たちはそうじゃないように進んでいくからね」っていう決意表明にしようと思った感じです。
――音楽を作る上だけじゃなく、普通に生きていく中で感じたものですか。
基本的に俺らの楽曲ってそうかもしれないです。こういうサウンドだからこういう歌詞なんですよね、じゃなくて、リアルに生きている中で今思っていることを楽曲にするっていう。
――強いメッセージがありつつも、曲調としてはすごくダークなわけでも激しくもなくて。まあ、ここ最近の中では一番ロックバンド的なフォーマットにはなっていますけど、かといって過去の作風に回帰したとか、「シンプルなことがやりたい」というテンションでこうなったわけでもなさそうというか。
うんうん。伝えたいことの視野が広がったのと一緒で、サウンド自体も視野が広がった感覚ですね。今までの楽曲の作り方って、日本のロックバンドの、日本で表現するための楽曲というところが意識的にすごく多かったから、サビはちゃんとドカンと、とか、日本の音楽シーンにちゃんと届くような曲の作り方をしてたんです。それに俺の声ってリズミカルなサウンドに乗ったときに、少しノペッとさせちゃう声質で、歯切れが悪くなっちゃう部分があって、でもそれが日本の歌謡曲っぽくて良いよねっていうのを、俺らは今まで売りにしてたんです。そこを日本よりもう少し広い視野で考えたときに「より届くように」ということを考えながらサウンドを作っていったんですよ。
だからメロディも歯切れよく、サウンドが鳴っていない状態でアカペラで歌っていても、ちゃんと後ろからリズムが聞こえてくるようなメロディにしようと意識したり、そもそもサビの後ろで(ギターが)ずっとバッキングしてる必要ある?とか。サビでドカンというのを意識しすぎてたゆえに、ずっとそれをやっちゃってたけど、もう少しリズム感で疾走するようなサウンドにしたほうがいいんじゃない?とか。
――それって大変じゃないですか。ボーカルで言ったら、持っている特性をストロングポイントにする術を、せっかく見つけ出していたのに、そこを違うやり方に変えたわけで。
そうですね。ここからまた挑戦だなと思っているし、今回は第一段階でしかないと思っていて。俺は、「ReI」のときもそうですけど、作っている途中の曲とかを見せるのが全然大丈夫な人だったりするんですよ。完成品だけを見せたい人じゃないから、俺らが最終的に目指すものへの過程で、シングルごとでもサウンド面がどんどん成長していってたりする、それも一つの生き様として見れると思うので。だから、全部正直にやろうぜっていう。たとえ今回の選択で振り切ったことをやって、前までのストロングポイントが無くなったね、となったとしても、「いやいや、ちょっと待って。1年後わかるから!」っていう。
THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓
――なるほど。これまでも今日も話に出てくる“ロックスター”って、手が届かなくて孤高の、出来上がって極まりまくったもので圧倒する存在を思い浮かべるケースもあると思うんです。でも、そうではないロックスター像を、オーラルは志しているということですよね。
ああ……この話めっちゃ難しいんですけど、例えば俺があるバンドのことを小学校、中学校のときにめっちゃ好きでした。そのときは提示されるものの大概に対して「うわ、すげえ!」だったんですよ。今、その当時のその人たちの年に自分がなったときには、自分も経験を積んできているから、ただ「すげえ!」っていう反応だけにはならないですよね。でも、シド・ヴィシャスがベースをバーンって鳴らして「これが音楽なんだよ」って言えちゃうあの感じとかって、完成されたものがカッコいいわけじゃなくて「こいつカッコいい」なんじゃない?って思うから。
――存在そのものにやられちゃうという。
そうです。だから、音楽よりその人の思考回路の方が大事なんですよね、僕は。だから、自分の思うロックスターはそういう人間だし、バンドに惹かれて人間を知るよりも、人間に惹かれてバンドを聴く方が僕は多かったから、そういうところも込みで全部共有すること、リアルに発信し続けていくことが、自分たちのファンにとっての希望になるし、「この人の生き様はすごいな」という風になっていけばいいなって。ロックスターの概念って人それぞれだとは思うんですけど、自分が思ってるロックスターの概念は昔からずっと変わっていないですね。
――だからこそ、自分がその立場を目指すにあたっては、未完成な部分を晒すことになんら違和感がないと。
ないですね。むしろ未完成な部分を見せていった方がいいんじゃないかって思う瞬間もあるぐらいだし。完成されたものだけを提示されてても面白くないんですよね、「うわ、すげえ」の連続は。かけ離れすぎちゃうと、共感できなくなってきちゃう気がしていて。……日本でも、全部が計算され尽くした曲を出してるバンドってたくさんいて、「才能の塊やな」「どういう思考回路してんねやろ」とは思うけど、別に好きにはならないとか。
――ああー、わかります。
自分はそれをキッズの頃に体験してる。だからそれよりも、その人が歌うことが大事で、鳴らすことが大事で。シドがベースを一発鳴らしただけで「うわ、かっけえ」っていう感じを大切にしていきたいなって。
――よくわかりました。で、曲の話に戻るんですけど、今作はサウンド面がすごくタイトで、音が棲み分けされてすごくクリアに聴こえるんですよ。各楽器のアプローチとかはどんな風だったんだろう?と。
そもそも、デモの段階ではもっとタイトだったんですよ。ミニマルなものにしたくてそういう感じのデモを(メンバーに)送っていたから、タイトさは抜群に伝わっていたと思うんですね。でも、作っている自分が抜けていたり見えてなかったりする部分をちゃんと補ってくれることが、メンバーと一緒にやる意味やし、バンドでやっていて面白いな、すごいなって思う部分で。このデモを送った後に全員とアレンジしたときにも、「これから先、アリーナとかドーム目指すってなったときに言ってた空気感は入れないで良いの?」とか「これで大きいところで演るの、見える?」とか、曲作りのときにあんまり考えられてなかったところに気づかせてもらえて。タイトさは残しながら、より華やかに曲を彩ってくれたから、それぞれの楽器の役割は、この楽曲に華を持たせることだったんだなと思います。
――もっと骨格だけの状態だったと。あとから肉付けされた部分でいうと、例えば。
ベースラインがやっぱり、かなり華やかにしてくれた感覚はありますね。あとはそれに気づけたことによって、華やかさの種類みたいなものを――今まで僕らはレコーディングしたあとのミックスとマスタリングを海外の方に頼んでたんですよ。今回は日本の方にやってもらって、「よりタイトに」っていう部分は残しつつ、より他の音像がクリアに聴こえるように、大きいところでやっているのも想像できる感じで音を作ってほしいんです、っていうことも伝えました。今回のクリア感とか棲み分け感って、俺は日本のエンジニアじゃないとできなかったと思っていて。あれが海外になると、一つの集合としてのバコーンとした華やかさになっちゃうんですよね。メンバーが言ってくれたことがあったから、日本のエンジニアの方でやってみようかっていうアイディアも生まれました。
――仕上がってみて、やっぱり今までとは違うなっていう感覚はありましたか。
ありました。やっぱり日本人ってこういうところ凄いんだなっていうことを改めて感じたし。
――むしろ海外の方が質感のデッドなもの、音数が少ないものが流行っている印象がありましたけど。
クラブミュージックとか、HIP-HOPのトラックの作り方とかはすごくうまいんですけど、今回はそういう要素をより出したいんじゃなくて、もう少しロックバンドよりにしたくて。俺はあんまり海外のバンドでそういう音の作り方をしている人を見ていなくて、ミニマムでめっちゃカッコいいのは大概ソロ・アーティストとかラッパーか、ビートミュージックみたいなものだから、俺が今回求めていた音作りをロックでしているバンドって想像できなかったんですよね。それは外タレをディスってるんじゃなくて、むしろ憧れていたから今まで海外の方に頼んでいたんですけど、今回に関しては日本人の方が精密に組み立てていけるんだろうなと。
――ロックバンドの曲として存在する、実際にギターとベースとドラムが鳴っているものを向こうで仕上げると、言ってしまえばもっと“バンドっぽく”なっちゃうというか。
そうですね。もう、めっちゃ“バンド”になるんです。で、音的にもグシャッとなっちゃう。それが音圧としては効果を発揮しているんですけど、今回は一つの塊としてバコーンというよりは、棲み分けのできた音圧がほしくて。
――ということは、めちゃめちゃ成功してますね。
だから、最初にそこを言ってもらったのがすごく嬉しかったんですよ(笑)。
THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓
――そしてこの曲、リリース形態は配信です。ここ2作連続でCDではなくDLとサブスクでのリリースなのは、考え方の変化もありますか。
そうですね。この曲でも歌っていることなんですけど、あまり過去にしがみつきたくないというのが自分たちの中にあって。大切にしなきゃいけないことを大切にするのは必要だけど、大切にしすぎるあまり過去にずっとしがみつくのは、あんまりよくないなって思っているので、ちゃんと未来を見ながら自分たちの目標を見据えた上で、今やるべき行動を選んでいく。っていう中で、デジタルリリースの形を採っていってるんです。物として欲しい人もいるけど、その需要を満たすために俺らも考えているから、今は我慢してもらえると嬉しいです。
――それゆえか、デジタルリリースとは思えないほどアートワークにもこだわりを感じます。
絶対に手を抜きたくないっていう。あと、『Kisses and Kills Tour』が終わってから出してるシングルの中に、仕掛けみたいな物を毎回入れ込んでて、そこでも伏線を張っていたりもするので、その回収を楽しみにしていてほしい気持ちもあります。
――フィジカルのリリースと配信でのリリースの違いとして、実際にどんなことを感じますか。
例えば、誰かに「めっちゃかっこいいんだよね」って言われたアーティストを、昔だったらCDを貸してもらったけど、今はみんなCDプレイヤーを持っていないから、サブスクにあったらやっぱり早い。すぐにたどり着けるし、そのあとにYouTubeで映像を観ようとか、どんどん連鎖してそのアーティストのことを知ることができる。やっぱりそこの強さはすごくあるなと思っていて。
――そうですね。
何かの曲がめちゃめちゃヒットしたアーティストはそれをやらなくても世間がみんな認知しているから、「シングルを出しました」っていうニュースだけで調べてもらえるんですけど、俺らみたいにずっと一歩一歩やって、別に一回もバズってないバンドに関しては、そういう誰かが勧めてくれることとか、その一歩がすごく大事だったりするので。あとは単純にサブスクをやっておくことで海外に伝わりやすくなる。海外の人って俺らのCDを買えなかったりするから、ちゃんとその人にもすぐに届くように。視野を広げたときに、絶対にその方が有利だなって。
――「Shine Holder」のリリースが12月18日ということで、この記事が出て少しすれば、濃密な1年が終わります。ツアー中に2019年を迎え、アジアツアーあり、初の野外主催イベントあり、対バンツアーありという。
動きましたね……めっちゃ動いてましたよね(笑)。去年から周っていたアリーナツアーがすごく「もっと前に行かないと」っていう気持ちにさせてくれたので、どんどん思ったことや考えた面白いことを行動に移していこう、っていう気持ちがあって。サブスクもその一個の行動だし、今までとやり方を変えたことは、今年が一番多かったんじゃないかという気がしますね。
――それは「ハードルを課す」みたいなニュアンスよりも、「面白そうだから」的な?
ああー、そうですね。そんな気がする。ハードルと言えばハードルなんですけど、「やりたい」っていう気持ちの方が強かったです。“飛びたいハードル”を選んで置いていったら、「意外と高かった、このハードル」みたいなのはありましたけど(笑)、ずっとワクワクするハードルを選んで新しいことをやれていたので、そこに対してのワクワクで終わった気がします。なんか、メジャーデビューしたての頃の感覚に近いです。あのときってもうワクワクしかなかったので。「よっしゃ、メジャーデビューしてみんなの元に曲を届けられる」「売れるかな?」みたいな。でも、そこからいろいろな事実を受け入れなくちゃいけなくて、その事実に苦しむこともあった5年間が、第1章として自分らの中で一旦終わって、第2章の始まりは、なんかこうデビューしたときの、次にやりたいことが溢れているワクワクでしかない感覚とすごく似てます。でもそのときと圧倒的に違うのは、これから先に自分らがワクワクする方に行動していって、それがアカンかったとしても、「いや、これからや」って言える強さがあのときよりあるかも。
――そんな良い状態の中で、来年は結成10周年です。
そうですね、知らん間に10年経ってしまった感覚ですけど(笑)。ここから先はずっと挑戦挑戦なんだろうなとは思ってます。新しい、今までやってこなかったことにどんどん挑戦していく年になると思うし……この間のインタビューでも話しましたけど、“当たり前”とか“常識”になっていることを壊していく、みんなにとって刺激的な存在にちゃんとなっていきたいなって思います。ファンだけじゃなくてバンド仲間もそうだし、他のクリエイターやアーティストにも、「オーラルが近くにいてすごく刺激的だ」って言ってもらえるような動き方をしていきたいです。

取材・文=風間大洋 撮影=高田梓
THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓

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