TRI4TH インストバンドが“みんなで
歌おうぜ”と掲げたツアーに見た、新
しきジャズの光と道

SING ALONG TOUR

2019.11.27 マイナビBLITZ赤坂
インストバンドが“みんなで歌おうぜツアー”だなんて、いかしてるじゃないか。踊れるジャズバンド、TRI4THのツアータイトルは『SING ALONG TOUR』。そこにたとえ歌詞がなくとも、熱くほとばしる思いを唇に乗せればそれは全て歌だ。ニューアルバム『jack-in-the-box』で切り開いた新境地をステージで再現する、今日はツアーファイナルの地、東京・マイナビBLITZ赤坂。バンド史上最大キャパの会場で、最高のチャレンジが今始まる。
ステージ前に下ろされた斜幕に、ツアーのドキュメンタリーが映ってる。旅するバンドの生きざまを刻む、かっこいいロードムービー。「最高のショーを見せますよ」と、伊藤隆郎(Dr)が力強いセリフを放つと、爆音一閃、メンバーのシルエットが浮かび上がり、斜幕が切って落とされる。1曲目はアップテンポのエイトビートチューン「ぶちかませ!」だ。ドラムをど真ん中に据えた横一線のフォーメーションは、つまり全員がフロントマン。メンバー紹介とソロ回しで一気に盛り上がり、さらにテンポを上げてパンクな「Shot the Ghost」、ご機嫌ロカビリースタイルの「Go Your Way」へ。歌詞と呼べるのは“Let’ s Go!”と“Go Way!”の二言だけだが、何度も叫ぶうちに高揚感がぐんぐん高まる。「Sand Castle」では、藤田淳之介(Sax)と織田祐亮(Tp)がモンキーダンスでフロアを煽る。わずか4曲でトップスピード、とんでもない加速度だ。
TRI4TH
「帰って来たぜトーキョー! 最後まで一緒に踊ろうぜ!」
伊藤の景気のいいMCに続く「Freeway」では、竹内大輔(Pf)が右手の超高速トリルで度肝を抜き、「Stinger」では藤田がものすごいサックスソロを決める。全くスピードを緩めずに「MONSTER ROCK」へ、フロアからは「Oi! Oi!」の大合唱だ。初めて観る人は間違いなくぶっ飛ぶだろう、これがロックスピリットみなぎるTRI4THのライブだ。
「こんなクソでかい会場でワンマンするなんて、13年前は思いもしませんでした。本当にありがとう」
結成当時と今とを比較する、伊藤の言葉が興奮では弾んでいる。頭に必ず「トーキョーNo.1」がつく、恒例のメンバー紹介に続き、アルバム『jack-in-the-box』の中でも特にぶち切れた超高速ラグタイムチューン「Hasty Rag」は、「トーキョーNo.1速弾きクレイジー・ピアニスト」竹内の独壇場。ピアノって打楽器だったんだ。ライブではお馴染み、ザ・ポーグス(The Pogues)のカバー「Fiesta」では藤田がくるくる回り、関谷友貴(B)もウッドベースをくるくる回す。直線コースを思い切りぶっ飛ばす序盤から、徐々に起伏やカーブの多い展開へ、ライブは中盤へと進んでゆく。
気持ちいいスカビートの「Sunny Side」のあと、竹内が魅せてくれた。冷たく青いスポットライトの下、ピアノソロをしっとり聴かせ、哀愁を帯びたラテン風味の「Night Dream」へと繋ぐ展開は、ロマンチックの一言に尽きる。「Land Scape」は関谷のベースがリードする、ゆったりとした三拍子のミドルバラード。ほの暗い照明に照らされて、アダルトでお洒落に、ゆったりじっくり楽しむTRI4THもいい感じだ。
ここで、ツアー中盤の札幌から始まったという初挑戦のお楽しみトライ。オーディエンスから三つの言葉をもらって組み合わせ、そのイメージを曲にするという即興セッションのコーナーだ。「みんなが思い描くTRI4THってどんな感じ?」というお題を投げ、伊藤が名指した一人目は「鮮やか」、二人目は「鮫」、三人目は「浴衣」、三つ繋げて「鮮やかな鮫の浴衣」。そんな曲できるのか? ご心配なく、どことなく「ジョーズのテーマ」を思わせるフレーズからスタートした即興は、サックスとトランペットの見事な掛け合いを交えた、ファンキーなダンスチューンへと無事着地。「ジャズバンドの本質、即興を俺たちは忘れてねーよ!」と叫ぶ伊藤。続いては、100曲以上あるレパートリーの中から、本日の日替わりメニューとして選ばれた「Dance`em All」で一気にスパーク。予測不能、これだからTRI4THのライブは楽しい。いいもの見せてもらった。
「去年のメジャーデビューの時から、マイナビBLITZ赤坂でやろうと決めて目指して来ました。思い描いたようにはなかなか行かなくて、不安だったけど、こんなにたくさん来てくれて本当に嬉しい。ありがとう」
来年春にはアメリカ、テキサスで行われる音楽の祭典『SXSW 2020』へ参戦。そして2月には名古屋と東京のブルーノートでワンマンライブが決定。伊藤の誇らしげなアナウンスに客席がどっと沸いた。「新曲用意してきました!」という言葉にもっと沸いた。名前のない新曲は英語詞のボーカルを乗せたオールディーズタイプのロックンロールで、聴いたそばからすぐ乗れるパワフルな1曲。リリースが楽しみだ。
TRI4TH
ライブは後半、ここから再び強烈な加速が始まる。いつでもどこでも必ず盛り上がるキラーチューン「Stompin’ Boogie」に続き、高速ロカビリー調の「Guns of Saxophone」へ。藤田がお立ち台の上でえびぞりポーズを決め、関谷がウッドベースを軽々とかつぎあげて大喝采を浴びてる。こうなったらもうやめられない止まらない、伊藤のドラムソロを皮切りに、関谷、竹内、藤田、織田が順番にスポットを浴びながら強烈なソロを決めた。いずれ劣らぬテクニシャン、そしてパフォーマー、なおかつエンタテイナー。一瞬もステージから目と耳を離せない。
さあ、あとはゴールを目指して駆け抜けるのみ。猛烈に速い4ビートの「DIRTY BULLET」から、伊藤が愛してやまないランシド(RANCID)のカバー「Time Bomb」へ。ジャズの皮をかぶったオオカミが本性を現した、パンクス魂炸裂のハイテンションプレイと、肝の据わった力強いボーカル。「FULL DRIVE」は、文字通りのフルドライブで猪突猛進。そして本編ラストを締めくくるのはやはりこの曲、アルバムのラストを飾ったボーカルチューン「Sing Along Tonight」だ。陽気なアップテンポ、理屈抜きのパーティーチューン、ホンキートンクなピアノ、煽り立てるホーンズ、そしてフロアの大合唱。ドラムのキックに合わせて♪ラララ~と歌い続ける、笑顔のオーディエンスを見ているステージ上にも笑顔があふれる。これぞシングアロング、踊れるジャズバンドが一つの壁をぶち破った記念すべき瞬間。
「俺たちの旅は終わりません。まだまだ旅を続けます」
アンコール。伊藤はスタッフ一人一人の名をあげてその貢献をねぎらった。5人で変わらずにいるために、変わり続けますと力強く語った。歌があろうとなかろうと、音楽だろ?と叫んだ。「俺たちは新しいことに挑戦し続けます」――。TRI4THは男気あふれる熱いバンドだ。約束したことは絶対に裏切らない。
「これからも俺たちのバンドワゴンに着いてきてくれますか?」と、伊藤のMCからイキのいいロックンロール「BANDWAGON」、そして永遠に終わらないパーティーに捧げる「Maximum Shout」。全ての灯りがともされ、誰もが“♪ハイ・ホー・レッツゴー!”と叫んでる。幸せな気持ちに満たされるエンドロール。「トーキョー、愛してるぜ!」と伊藤が叫ぶ。インストバンドが“みんなで歌おうぜ”=『SING ALONG TOUR』というタイトルを掲げた意味が、フロアを見るとよくわかる。「また来年も一緒に踊ろうぜ!」――新しきジャズの光と道を、TRI4THは信念を持って走り続ける。
取材・文=宮本英夫 撮影=堂園博之
TRI4TH

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