月刊「根本宗子」の代表作『今、出来
る、精一杯。』が、清 竜人の楽曲を
得て音楽劇に 10周年の集大成に相応
しい名作へ

2019年12月13日(金)、新国立劇場 中劇場にて開幕した、月刊「根本宗子」第17号『今、出来る、精一杯。』。劇団旗揚げ10周年となる2019年の締めくくりとして、2013年、2015年と劇団の節目に上演されてきた代表作が、音楽劇として新しい息吹を吹き込まれた。
主演である清 竜人は今回が俳優初挑戦であるのに加え、作中の音楽も担当している。これまで一夫多妻制アイドル『清 竜人 25』のプロデューサー兼メンバーとしても活躍し、ユニークで個性的な活動と魅力的な音楽でファンを増やしてきた清の新しい挑戦も見どころのひとつだ。
また、ヒロイン・はなを演じる坂井真紀をはじめ、元・乃木坂46の伊藤万理華、春名風花、水橋研二、池津祥子など、多才な顔ぶれが揃い、ここでしか見られない座組みを作り上げている。
初日を迎えるにあたり、根本をはじめとするキャスト・制作陣よりコメントが届いた。
作・演出・長谷川未来 役/根本宗子
10周年の集大成が完成したように思います。自分自身、演劇に向き合うことの本質は10年間ほぼ変わっていません。時に夢を見て、時に絶望して、一作品ずつ着々と自分と演劇と向き合ってきました。小さな劇場から始まり、気が付いたら新国立劇場にいました。
なんだか少し不思議な気持ちです。
清 竜人さんの音楽が私の10年を包み込んで、今日へと連れてきてくれました。新たな俳優陣が全ての役に新しい命を吹き込んでくれました。自分が想像しているよりずっとたくさんの方の心に残る作品になればいいなと思っています。
精一杯、努めます。
音楽・安藤雅彦 役/清 竜人
私の2019年の集大成です。自分以外の作品にここまで精一杯尽くしたのは初めてかもしれません。新国立劇場 中劇場にて響く声や音が、一人でも多くの人の心に残るよう、毎公演、真摯に向き合いたいと存じます。
神谷はな 役/坂井真紀
根本さんは今30歳。根本さんを見ていると自分が30歳だった時を思い出さずにはいられません。なんて自分はヘナチョコだったんだろうって。根本さんはいつでも礼儀正しく真っ直ぐ進みます。だから心から応援したくなる人です。この力強い戯曲を23歳の時に書いたと聞き感動し、稽古を重ねるうちにこの戯曲を今、新国立劇場でやりたかった意味が少しずつわかってきました。それに相応しい、清さんはじめ役者さんたちが奇跡のように集まって(私も頑張らなきゃ)、こりゃ、すごいことになったと。この根本宗子さんを見逃して欲しくないです。
篠崎ななみ 役/伊藤万理華
月間「根本宗子」10周年おめでとうございます!大事な節目の公演に出演できて、光栄に思います。根本さんの演出、竜人さんのつくる音楽、そして尊敬するキャストの皆さん、スタッフの皆さんと、この上なく贅沢な稽古期間を過ごしました。
根本さんが23歳の時に書いた大切な作品。初めて戯曲を読んだ時、心のウジウジした部分が吹き飛ばされた気がして、何故だか号泣してしまいました。この戯曲の持つ鮮烈さを皆さんに届けたい。
23歳の私だからこそ伝えられることを、一公演一公演噛み締めながら、精一杯伝えたいです。
利根川早紀 役/池津祥子
根本さん演出のもと、「信じる力」と「覚悟」について思いを巡らせる稽古場でした。根本さん23歳の時の情熱が込められた台本、そして新たに竜人さんの素敵な楽曲も加わり、新しく音楽劇へと生まれ変わった2019年版『今、出来る、精一杯。』。登場人物それぞれの“精一杯”を皆様に楽しんでいただけるよう、劇場でお待ちしております!
<あらすじ>
舞台はスーパー「ママズキッチン」のバックヤード。
そこでは頼りない店長、お局の店員、八方美人なバイトリーダー、正義感の強い若者、どもりで暗い男性店員などが、なんとかお互いに折り合いをつけながら働いていた。
もう一つの舞台、安藤雅彦の自宅。仕事の続かない男・安藤は、神谷はなと同棲している。バイトが全く続かず、ほぼヒモ状態の安藤を優しくサポートし続けるはな。求人誌をめくる安藤は、募集を見つけて「ママズキッチン」の面接を受け、無事採用されるが、早々に面倒くさい人間関係を目の当たりにし、再び引きこもってしまう。
それぞれが自分の正しさのために、例えそれが賛同されないことでも、自分のやり方で生きている。混沌とした中でも生きていく、精一杯の群像劇。
登場人物たちは、それぞれが自分なりの正義や思いを持っている。
共感できる部分と理解し難い部分が全員にあり、だからこそ作中で放たれる台詞が観ている側の心にずっしりとのしかかってくる。
そして、ここぞと言うシーンで挿入される楽曲は、物語に花を添えるとともに世界をより広げ、深みを持たせる重要な役割を担っている。冒頭の安藤(清 竜人)と長谷川(根本宗子)による曲、一幕のラストで安藤が歌う曲では、澄み切ったメロディにのせて切ない気持ちがしっとりと歌いあげられ、それぞれの孤独や心情がひしひしと伝わってくる。

一方、ななみ(伊藤万理華)の登場時に歌われる曲や、矢神(今井隆文)が披露する陽奈(川面千晶)へのラブソングはミュージカルナンバーのようなポップさがあって楽しい。
楽曲が加わることで、コミカルなシーンや、一人ひとりの心に焦点を当てたシーンがより際立ち、登場人物たちの個性や魅力が伝わりやすくなっていると感じた。
また、大好きな恋人の欠点に目が行くようになってしまう様子や、頼れる友達を疎ましく思う瞬間、好きであっても面倒くさいと思ってしまう気持ちなど、人の心が変化する様子やエゴが丁寧且つ繊細に描かれている。思い当たる節があり、苦い記憶を呼び起こされる方も多いはず。しかし、心を抉るような展開と突き放すような台詞たちが、なぜかあたたかく胸に染み込んでくるから不思議だ。
そして、「私の思い。」を演じるriko、天野真希、田口紗亜美らが体を使って各々の感情を見事に表現。登場人物たちがじっと佇んでいるシーンなどでも、「私」に突き放すような視線を送り、励まし、慰め、揺れ動く心を繊細に鮮やかに見せている。
それぞれが抱える問題も辛さも気持ちも、どれ一つ他人には正確に伝わらない。近くにいても分からないことがある。正しいことが受け入れてもらえない場面もある。けれど、それでも自分なりに精一杯生きていきたいと思う彼ら・彼女らを心から愛おしく感じた。
本作は12月13日(金)より19日(木)まで、新国立劇場 中劇場にて上演される。

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