Eve、超満員の渋谷WWWXで届けられた
「レーゾンデートル」リリース記念無
料招待ライブ『CANDY』をレポート

レーゾンデートル記念無料招待ライブ『CANDY』

2019.10.30 渋谷WWWX
渋谷WWWXは超満員だった。Eveが新曲「レーゾンデートル」を配信リリースしたことを記念して行なわれた無料招待ライブ『CANDY』だ。Eveがステージに立つのは、今年3~4月に開催された春の東名阪ツアー以来、約半年ぶり。久々のステージであり、500人規模の小さなライブハウスでEveを見られる機会は滅多にないとあって、開演前からフロアは尋常ではない期待感に包まれていた。
Eve
いきなり1曲目に新曲「レーゾンデートル」が披露された。ドラム、ギター、ベースで構成されたサポートメンバーが繰り出すキレのあるバンドサウンドにのせて、Eveは大きな身振りを交えながら、真骨頂ともいえる言葉数の多いメロディを歯切れよく紡いでゆく。専門学校HALとのタイアップで、Eveが初めてCMソングのために書き下ろしたこの楽曲には、<終わらない夢を>というフレーズが象徴するように、何かをはじめようとする人の衝動や熱量、あるいは焦燥感のようなものを感じるナンバーだ。続けて、「渋谷いけるかー!?」というEveの気合いのこもった声を合図に、「ナンセンス文学」や「アウトサイダー」というダンサブルなアップナンバーを間髪入れずに畳みかけると、会場からはイントロが始まるごとに割れんばかりの歓声が沸き上がる。とにかくフロアの熱気がすごい。
Eve
3曲を終えたところでステージが暗転すると、お客さんから「Eveくん愛してるよ!」という声が飛んだ。それに、「ふっ……」と、照れ臭そうに笑うEve。「今日はあっと言う間なので、最後まで盛り上がって帰ってください」と手短かに伝えると、カラフルな照明がステージを照らすなか、エレキギターをかき鳴らしながら「sister」を届けた。そこから、暗くディープなサウンドアプローチによって、狂騒的なライブの空気をガラリと変えたのは「闇夜」だった。Eve自身が敬愛する手塚治虫・原作テレビアニメ『どろろ』のエンディングテーマに書き下ろされたこの楽曲は、ネットカルチャーが生んだEveという稀代のクリエイターに、まだまだ底知れない引き出しがあることを感じさせるナンバーだ。
Eve
大きな会場では、スクリーン映像を駆使し、作り込んだ演出でライブを展開するEveだが、この日は一切スクリーンを使わないシンプルなライブだったことが、とても新鮮だった。その良さが際立ったのが、ステージを温かなオレンジの光で包み、アコースティックな響きのなかで届けたミディアムテンポ「君に世界」だったと思う。<君の世界に色はあったかい>と問いかけるように紡がれてゆくフレーズ。それは、お客さんとの距離が近い小さなハコだからこそダイレクトに訴えるものがあった。
Eve
「まだまだいけますか!? 渋谷!」。クライマックスに向けて、再びハンドマイクでアグレッシヴなパフォーマンスを展開した「トーキョーゲットー」のあと、勢いを加速させてなだれ込んだ「ドラマツルギー」では、少しでもお客さんの熱量を近くで感じるように、Eveはステージの際まで歩み出た。さらに、めまぐるしく表情を変える曲調のなかで、ロックボーカリスト然とした色気も滲ませた「ラストダンス」のあと、「今日はみんなと一緒に楽しい時間を作れている気がします」と、60分弱という短いライブでも、たしかに感じることのできた手応えを嬉しそうに伝えたEve。最後に演奏したのは、ライブ初披露となった「バウムクーヘンエンド」だ。軽やかなバンドサウンドとは裏腹に、どこまでも切ない男心を綴った楽曲で巻き起こる大きなシンガロングとともに、本編は幕を閉じた。
Eve
盛大なアンコールに応えて、 「まだ元気があり余ってるな(笑)」と、ライブが始まった瞬間から、まったく衰えないフロアの熱気を感じつつ、「(久々のライブということで)今日は変な緊張をしてたけど、楽しかったです」と晴れやかな表情を見せたEve。「もう1曲だけやっていいですか?」と問いかけてから届けたラストナンバーは、この日、何度も訪れた絶頂の瞬間をさらに更新する「お気に召すまま」だった。揺れるフロア。息の合ったハンドクラップ。まだ終わってほしくないと、そんな寂しさを滲ませた最後の狂騒は、いまリスナーがEveに寄せる熱狂の度合いを色濃く物語っていた。
Eve
なお、この日、Eveは2020年2月12日にニューアルバム『Smile』をリリースすることを発表した。この日のライブで披露された「レーゾンデートル」をはじめ、「闇夜」や「バウムクーヘンエンド」といった新境地となる楽曲も収録される次のアルバムは、また新たなEveの一面に触れる作品になりそうな気がする。すでに公開されているジャケット写真では、“スマイル”というタイトルとは対照的に、涙を流す横顔が描かれ、様々な想像を掻き立てられる。さあ、次のEveを迎え撃つカウントダウンは始まった。

文=秦理絵 撮影=ヤオタケシ

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