寺岡呼人

寺岡呼人

【寺岡呼人 インタビュー】
“NO GUARD”な寺岡呼人の今

鈴木 茂(元はっぴいえんど、元キャラメル・ママ)がギターで参加した「飛行機雲」をはじめ、11編の人生模様を詰め込んだカラフルな一枚となっている14枚目のソロアルバム『NO GUARD』。ソロデビューから25年を超え、50代に入った寺岡呼人の今のモードとは?

自分自身が納得できて
後悔しないものを作り続けたい

ジャケットデザインはもちろんのこと、1曲目の表題曲「NO GUARD」からギターリフも歌詞の言葉も、すごく力強さを感じるアルバムですね。

まず基本的にコンセプトなしで曲を作り始めてまして…どこに行くか分からないライヴ感みたいなのがあるんです。なので、最初からあまりテーマは決めない。決めちゃうとそこに縛られちゃうから、動き出した時のまま身を任せるんです。結果的にこういうアルバムになったんですけど、コンセプトを決めないことも、ある意味“ノーガード”ですよね。アルバムタイトルを決めるタイミングでパッと“ノーガード”って言葉が出てきたから、“じゃあ、その曲も作るか”ということで、最後にできたのが1曲目の「NO GUARD」なんです。今の寺岡呼人を一番言い表わせたワードだと思います。

去年のソロデビュー25周年やJUN SKY WALKER(S)のデビュー30周年が影響してる部分はありますか?

直接的にはないかな。去年はジュンスカの30周年に集中したくて、曲作りはそんなにしてなかったんです。ただ、ツアーを回ったり、カーリングシトーンズの活動やプロデュースものをやったりする中、日々オンとオフがあるとすれば、オンの時に意外といろんなアイデアが降ってきて。それを一応まとめておくことはしてましたね。僕は詞先で曲を作るので、“こういう曲を書きたいな”みたいなのがふんわりある状態からアルバム作りを始めました。

詞先で曲作りをされるのは、もう長いですよね。

ここ15年くらいはずっとそうですね。そっちのほうがいいと気付いたんです。詞先は健康に良い(笑)。曲だけが先にできて歌詞が仕上がらない状態って、ものすごく身体に悪いから。歌入れの日の朝まで徹夜して書いて歌うみたいなのは本末転倒じゃないですか。歌いたいことがあってミュージシャンをやってるはずなのに、それが歌入れまで出てこないっておかしい。メロディーに縛られるよりは、歌いたいことを先に考えてメロディーを付けるほうがいいし、レコーディングが…いわゆるリズム録りとかが始まった時に歌詞が全部出来上がってるのってとても気持ちが良いんですよ。プロデュースするアーティストにも基本的にはお勧めしてます。

アニバーサリーなどいろんな活動があった中、1年半振りのアルバムというのは短いスパンなのかなとも感じました。

4年に1枚ペースの時期もありましたしね。どういうかたちであれ、出し続けたい、生み続けたい気持ちは自分の中にあるんですけど、サボり出すと人間いくらでもサボっちゃいますから(笑)。でも、生むことによって次のアイデアが浮かぶし、ステップアップするための足腰は強くなりますね。

「NO GUARD」では《残りの人生駆け引きなしさ》と歌ってますけど、ミュージシャン同士で残りの人生をどう生きたいとか話したりもしますか?

いや、まったく話さないですよ(笑)。でも、50歳を超えてくると、みんなそういうことは考え出すんじゃないかと思います。やっぱり後悔しない音楽人生を送りたい。結局、棺に入れる作品を作れるのは自分しかいないんで、自分自身が納得できて後悔しないものを作り続けるのは大前提。で、ただ自己満足で作るのではなく、どこかで世間、もしくは同世代との接点を持ちつつ、今までの自分にはない新しいメソッドと言える挑戦は常にやり続けたいんですよね。

今作で新しいと感じられる部分は?

例えば、アイリッシュっぽい「歓びのうた」。前からこういう曲を作ってみたかったんですけど、やれないまま時間が過ぎちゃってたので、“よし! 今回はちゃんと作ってみよう”と。アコーディオンやバンジョーを入れたりして、自分なりにアイリッシュ感を含んだサウンドができたのは新しいと思いますね。最近は自分の感覚がより研ぎ澄まされてるというか、自然にいろいろなものが入ってくるんです。街を歩いてても、テレビを観てても。そんな中で“これだな、俺が今足りないこと、やりたいことは”みたいなことが見付かる。取り入れようとして上手くいかないこともありますが、出来上がった時はすごく嬉しいですね。

ふとしたことがきっかけで曲ができるというか。

今回の曲もほとんどそうですよ。ある時、カラオケで誰かがAKB48の「365日の紙飛行機」を歌ってて、僕はその曲を知らなかったんですけど、“国民の歌だな”という印象を受けて感動しちゃって。“50代の男が歌う「365日の紙飛行機」って何だろう”と思ったんです。そうやって置き換えるのが好きで、アンサーソングのような考え方で作ったのが「飛行機雲」なんですね。“どこでも無邪気に飛んで行け!”って年代ではもうないので、自分なりに解釈を変えつつ、青い中をずっと真っ直ぐ生きてきたことを歌いました。ある意味、それって孤独だったと思うんですよ。結婚しようが子供がいようが、どこか拭えない孤独感があったりして。でも、これからも情熱を持って続けていきたい自分がいる。そんな曲ですね。

「飛行機雲」に鈴木 茂さんがギターで参加されてるってことは、松任谷由実(荒井由実)さんの「ひこうき雲」が頭にあったりしましたか?

そうですね。このタイトルを付ける以上、みんなの頭に浮かぶのはユーミンさんの曲ですから。だったらサウンドもオマージュしようとか、茂さんをお呼びしたいとかはありました。歌ってる内容は違いますけどね。「ひこうき雲」が10代の少女の歌だとすれば、「飛行機雲」は50代の男の歌。ただ、どこか共通するところがある感じにもなったかもしれません。あと、「飛行機雲」はキャラメル・ママのオマージュでもあるので、僕の中の鈴木茂サウンドであのスライドギターを弾いてもらいました。
寺岡呼人
アルバム『NO GUARD』

OKMusic編集部

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