蒼井翔太と笹本玲奈の美声に心震える
『ウエスト・サイド・ストーリー』
日本キャスト版 Season1 観劇レポー
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実は先日上演された海外招聘版を観た後で、今回この日本キャスト版を観たが、何と言っても“日本語で”台詞や歌を届けてくれる事が非常に嬉しい限りだ。北欧系移民のジェット団とプエルトリコ系移民のシャーク団が何故お互い反目し合っているか、どうして相容れないのか、自然と頭に入ってくる。もちろん映画版も拝見しているのでストーリーはすべて頭の中に入っているが、そうであってもダイレクトに喜怒哀楽を伝えてくれる“母国語”上演に改めて拍手を送りたい。
改めて本作の見どころ、そしてキャストについて語ろう。360°回転するステージ上には、細部にまでこだわり抜いて作られた様々な場面のセットにまずは注目いただきたい。例えば2階にあるマリアの部屋は建物の正面玄関から階段で上がって入る構造となっているが、単なる舞台セットとしての階段ではなく、しっかりとした踊り場もあり、階段を挟んで部屋と反対側にはシャワールームも存在。いつでもここに住む事が出来そうな設えとなっている。それはトニーが務めるドクの店にもいえる事。手に取れる場所に置いてある酒瓶の数々や仲間たちが飲みながらワイワイ語るソファも適度に使用感を感じさせるヨゴシが施され、生活感満載。一方、体育館でのダンスパーティーの場面や2幕に入ってからの「Somewhere」ではセットを最小限、もしくは全く置かずに群舞の力だけで『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界を作り上げている。ダウンタウンの人も物も密集した世界から、一気に視界が広がる様は格別この上なし。
蒼井翔太 (c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
対して笹本は、これまで多くの作品に出演し、その美声を披露してきただけあって、安定の歌声。笹本が歌い上げるナンバーはどれも聴きごたえ抜群。笹本の張りのある強い声を蒼井の柔らかな声が包み込むという、耳福なデュエット。何度も拍手を送らざるを得なかった。
(c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会 撮影:田中亜紀
そしてもう一人、アニータ役の三森の存在が非常に際立っていた。彼女は声優として名を上げた存在ではあるが元々は舞台、それもミュージカル畑の出身。マリアの兄・ベルナルドの恋人として、シャーク団の女性たちを引っ張る姉貴キャラとして、またマリアにとっては本当の姉のように心配し、力になる頼もしい存在を全身で演じていた。アニータが歌う「America」そしてマリアと二人で歌い上げる「A Boy Like That/I Have Love」は心に残る力強さを感じさせられた。
オープニングからフィナーレまですべてが心震わせる名曲の数々。そこで生きる若者たちの行き場のない葛藤を描いた世界。一度体験してみてはいかがだろう。
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