三山ひろし×立川志の春対談「チーム
プレイが楽しみ!」『三山ひろし特別
公演』

2020年1月7日(火)から東京・明治座にて『三山ひろし特別公演』が上演される。その名のとおり、演歌歌手の三山ひろしが座長を務め、2020年の幕開けを芝居と歌で祝うという特別ステージだ。第1部では明治から昭和にかけて生き抜いた将棋名人の生き様を描いた「阪田三吉物語」を、そして第2部では三山ひろしの美しい歌声をたっぷりと堪能できるスペシャルコンサートという構成となっている。

「阪田三吉物語」は立川志の春が作ったオリジナル落語を原案に舞台化したもの。その内容も含めて、三山と志の春に話を訊いてみた。
ーーこの公演は2020年最初の公演であり、三山さんにとっては初の明治座座長公演となりますが、今のお気持ちや意気込みをそれぞれお聞かせください。
三山:明治座さんからも「一年を占う公演となるので是非ともよろしくお願いします」と伺っていますので、並々ならぬ責任とプレッシャー、緊張感を持って年始を迎えるんだな、と感じています(笑)。
今回「阪田三吉物語」を志の春さんの落語をベースにして上演することになりました。志の春さんが落語をやっているお姿を拝見したのですが、おこがましい話ですが、僕が歌い手になる事を目指して東京に出てきた時の姿と三吉の姿がなんとなく重なるなぁと思ったんです。落語に描かれている人情味や、男同士のライバル心や友情の姿に僕自身すごく感動して、「これが舞台になるのか」と思うと、きっと舞台をご覧になる方には、好きな道を突き詰めて歩いていく三吉の姿や彼を支えている多くの方の心がきっと伝わるんじゃないかなって思います。僕は歌い手人生がまだ11年と短いですが、三吉さんが名人となられて、亡くなった後も多くの方に影響を与え続けている、そんな男に僕もなりたいと思いました。
三山ひろし
志の春:私自身、自分の演目が舞台化されたことがないので、初めての経験となります。一番楽しみなのは、作り上げていく上での「チームプレイ」ですね。いつも一人で落語をやっていますから。私も三山さんがプロの歌手を志して上京された修行時代の話を伺ったとき、やはり三吉役にぴったりな方だな、と思いました。三山さんの歌の世界も、どこか三吉の生きた人情溢れる昭和の時代と似ているところがあると感じましたし。人と人との関係性が薄れてきている現代の中で、失われつつあるものがこの物語には詰まっています。描かれているライバル関係や師弟関係というのは普遍的なものだと思うので、色々な方に共感していただけると思いますし、この物語を通して三山さんと繋がれる事を嬉しく思っています。
三山:こちらこそよろしくお願いいたします!
ーー稽古はこれからですが、今楽しみにしている事はありますか? 落語の稽古ともまた違うものとなるかと思うんですが。
志の春:そうですねえ。落語の稽古は「独り言」を延々言っているようなものですから(笑)。
三山:(笑)。
志の春:三山さんはほぼ全シーンステージ上にいらっしゃるんですよね?
三山:はい。先ほど志の春さんがおっしゃっていましたが、僕も一人で舞台に立って歌っている生業故に、「チームプレイ」で物を作っていく事が楽しみなんです。芝居は生ものですから、演じ方一つでどんどん変わっていく者だと思いますので、共演者の方々を日々すり合わせていき、よりいい物を作っていきたいです。
僕は今回初座長ですが、経験が薄く、一方で共演者は皆さんベテランの方ばかり。どの方に対しても勉強させていただくことが多いと思います。中でも同郷出身の間寛平さんとは以前にも何度か同じ現場になった事はありますが、こうして一つの作品の中でご一緒するのは初めての事なので嬉しいです。
志の春:私は三山さん以外全員と初対面です。間寛平さんやほんこんさんは大阪の笑いの世界で生きてこられた大先輩ですので、笑いについて教えていただきたいなと思っています。
今回私は「語り」という立場で参加しますが、舞台に出演する事は初めて。他の皆さんが演じるシーンをいい感じで繋いでいけるような「語り」をしていきたいですね。バレーボールで例えるならば、いいトスを上げられるような関係を稽古の時から作っていきたいですね。
(左から)三山ひろし、立川志の春
ーー三山さんは演歌の道ではベテランですが、役者業はほぼ初だと思います。あえて今、芝居をやろう、と思った理由はありますか?
三山:歌を歌う時もある意味「歌に描かれている人を演じている」のだと思うんです。だから今回明治座で行う芝居経験が歌の世界に活かしていけたら、と思っています。芝居の経験を積む事は、より歌の表現力にも活かしていけるのではないか、また三山ひろし、そして(本名の)恒石正彰としての生き方にとってもプラスになるのでは、と考えています。田舎から出てきた時からずっと思っていますが、僕自身いつもスポンジのように吸収したい、と考えています。田舎を捨てて都会に出てきた当時、ゼロ発進で失うものはない、すべて足すだけや! と思っていました。その想いは今回初座長を務める時も同じだと思っています。いろいろな人の一挙手一投足すべてを理解していく事は歌っていく時にも必ず実になると思うので、貪欲に吸収していきたいですね。
ーー志の春さんは、落語に出てくる様々な人物をこれまでは一人で演じてこられました。それが他の人たちが演じる事で、自身の落語にどんな影響をもたらすと思っていらっしゃいますか?
志の春:普段落語をやるとき、いろいろな人物をどう演じればお客さんの頭の中にその人物が絵として浮かび上がるか、を考えながらやっています。舞台の場合はそれが実際の生きた人物として形になっている。お客さんはその生きた人物たちを見ながら、より一層物語に入りこんでくださるでしょうし、私自身も人物が動く様子を観て、新たに落語版での人物描写のヒントになることと思います。
立川志の春
三山:落語の世界は、本当に一人で全部の登場人物を演じ分けないとならない。すべての役柄を把握しているって本当にすごい事だと思いますね。三吉さんが関根名人にこう話すと名人がどう思って次の台詞を言うのか、その後話がどう進むのか……そんな事をすべて理解して演じ切るって半端なことではないと思います。自分の言い方一つで次に登場する人の様子も変わってしまいますから。落語家さんって本当にすごい仕事!
志の春:我々落語家は一つの役を演じている時、次の役を半分くらい意識しながらやっているんです。だから舞台の役者さんのように「完全にその人物になりきる」事はできないんです。なりきり過ぎるとその役を引きずってしまうから。冷めた部分を半分くらい持ちつつ演じているので、逆に完全になりきる役者さんはすごいと思いますよ。
ーーところで、志の春さんから観た「歌手」三山ひろしの魅力は?
志の春:お声がすーっと心に入ってきます。まさにビタミンボイスですね!
三山:キャッチフレーズを使っていただきありがとうございます(笑)。
志の春:このキャッチフレーズはデビュー当時からですよね?
三山:はい、「心に響く温もりの声、ビタミンボイス」ですから(笑)。当時のディレクターさんが付けてくださったんです。最初は正直恥ずかしかったんですが、今となっては自分から名乗りますね(笑)。でもこれ、ちゃんと理由があるんです。
(左から)立川志の春、三山ひろし 
志の春:え? どんな!?
三山:僕の声紋を犯罪心理学などを研究している先生に調べていただいたところ、「高音から低音まで幅広い音域がありますね。さらに高音のさらに上、音としては出ていませんが、心に響く周波数みたいなものがあって、癒しの効果があります。低音の安心感と共に人に活力を与える声の持ち主ですね」と言われまして。そこから「活力といえばビタミンボイス!」という言葉が生まれたんです。
志の春:学術的な裏付けがあったんですね!
ーー伺っていてこちらも驚きです! そんなビタミンボイスが披露される第2部のコンサートはどのような内容となりそうですか?
三山:「ファーストドリーム2020」として文字通り初夢を観ているようなコンサートを披露したいと思います。これまでの演歌のコンサートでは観た事がない演出・構成で繰り広げられます。玉野和紀さんが担当されるので、ミュージカルっぽい演出になりそうです。
ーーあの玉野さんが手掛けるという事は……三山さんも歌って踊っちゃうかも!?
三山:可能性はあります(笑)! あの三山ひろしがこんなことをしちゃう! という初夢のような、お年玉の様なステージにご期待いただければ何よりです。玉野さんご自身も出てくるかもしれませんね!
(左から)三山ひろし、立川志の春
取材・文=こむらさき 撮影=山本れお

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