写真:2018年12月18日・第43回報知映画賞の表彰式

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第148回 「匂わせ」とはなにか 嵐の二宮和也さんの結婚相手である元フリーアナウンサーの女性が所属していた事務所が管理する有料blogが数々の「匂わせ」をしていたということが話題になっています。アイドルに興味がない人は知らないかもしれませんが、アイドル界隈では「匂わせ」という言葉は、アイドルとの(あるいはアイドル自身が)交際の事実(交際の様子)をblogやSNSで遠回しに匂わすことを指しています。アイドルという仕事(異性に人気のある著名人全般に見られる傾向かもしれません)はファンの疑似恋愛感情に支えられている部分もありますから、特に恋愛禁止などという決めごとがなかったとしても、恋愛関係をオープンにすることによって人気が下がることを事務所サイドが恐れるために、それを公にすることはなかなか許されません。そのため、アイドルと付き合っている人はそのことを基本的に秘密にしているわけですが、それでも世間にこっそりアピールしたい時に「匂わせ」という行為を行うのです。
 ネットや他のメディアで公開されたアイドルの自宅の家具と同じ家具が写りこんでいる写真をあげる。アイドルがどこかに遊びに行ったのを報告すると、その人も同じ日に同じ場所に行ったことを匂わす写真や文章をあげる。いちいち、そのアイドルのグッズが写りこんでいる。アイドルと同じ服を着ている画像をあげる。そのアイドルを思わすような文言を文章に折り込む。アイドルの特定しにくいような体の一部分が写りこんでいる自撮りをあげる。同じ家具の写りこみはアイドルの自宅に遊びに行ってる(あるいは銅製している)ことを、同じ服を着ている写真はペアルックや服を共有していることをアピールしているという風に解釈されるのです。
 とはいえ、それが本当に「匂わせ」という行為を本人が意図的に行っているかどうかは、他者にはわかりません。偶然写りこんだと言われてしまえばそれまでですし、文言にしても、そういう風に解釈もできるというだけで、そういう意図はないと言われたらそれまでです。本人からの自己申告がない限り、あくまで可能性があるとしか言えません。
 女性地下アイドルとヲタクが付き合いだし、男の方が「匂わせ」をやっている例もよくあります。こういう例だと、男の方が人に自慢したくて仕方がなかったり、繋がれない他のオタクを下に見ていることが多く、露骨にバレそうなレベルでやったり、そういう発言をリアルでしまくってたりするので、あれは本当に「匂わせ」なんだなというのがわかるわけですが、そうでない限り断言はできないわけです。
 そういうものですから、ファン側が疑心暗鬼になって暴走し、勘違いで関係ない人をネット上で攻撃してしまうこともあります。たまたま仕事上で接点があり、趣味的にも近い人だったために同じものを持っていたために、そのものの画像をあげたことが「匂わせ」と思い込まれて、関係ないのに攻撃されるような例です。
 逆に「匂わせ」のパターンを利用して、アイドルと自分が付き合っているように見せかけようとする人までいます。わざわざ、アイドルと同じものを買って画像をあげたり、アイドルの住居付近の画像をあげたり、思わせぶりなことを書いたりすることで、他人にアイドルと付き合っているように思わせようとする人がいるんですよ。他の人に対して優越感にひたるためにやっているんだと思いますが、凄く病んでる感じがします。
 そもそも、「匂わせ」の何が悪いのかという人もいるでしょうし、「付き合ってるんだから普通だろ」と思う人もいるでしょう。「匂わせ」がなぜ嫌われるのか? そこに他人に対するマウンティングのようなものを感じてしまうからなのだと思います。その人を手に入れたことを自慢したり、手に入れられなかった人を見下して煽っているように感じてしまう人がいるということなのでしょう。実際、そういう意図で「匂わせ」をやっている人間もいるわけですしね。
 しかし、みんながみんなそうなのでしょうか? 付き合っているのに誰にも言えない、人前で二人で堂々と歩けない苦しみが変な風に発露している場合もあるでしょうし、がさつで写りこんでいるものを全く気にしてないだけの人もいるかもしれません。「匂わせ」と見なされたものの全てが、実際に悪意ある「匂わせ」なのかどうかというと、それは違うような気もします。
 悪意ある「匂わせ」をやるような人は、自分の付き合っている人をトロフィーとかメダルのように思っているような気がします。別にその人が好きなら、本人に会ってる時にいちゃいちゃしたり、信頼できる人の前で二人の話をすればいいので、ネットでわざわざ発信するのも変な話だと思うのです。これは別にこっそり付き合わなければならない場合だけでなくて、おおっぴらに付き合っている人たちにも言えることかもしれません。日常の様子を普通にネットにあげていると、その人の恋愛の様子が自然とうかがえる場合があるわけで、そういうのは別に何とも思わなかったり、かえって微笑ましかったりするわけですが、極端にアピールされると疑問に思ってしまいますよね。
 二宮さんの配偶者の方の「匂わせ」とされる例を見てみても「これはそうかも……」と思わせるものもあれば、「さすがにこれは単なる思い込みでは……」と思わせるものもあります。結局、はっきりしたことはわからないのですが、何となく思うことはあります。この人は二宮さんのファンの存在について全然考えてなかったのではないか、ということです。
 彼女のblogは有料制で、基本的に彼女のファンしか見ないのが前提のクローズドっぽい場所だという認識だったのだと思うのですよ。だから、二宮さんのファンが見に来ることなんて想定してなかったと思います。だから、それを見た二宮さんのファンがどう感じるかとか考えたこともなかった。それぐらい存在自体が頭になかった。彼女にしてみれば、二宮さんと付き合ってるわけで、ファンと付き合ってるわけじゃないから、その気持ちまでいちいち配慮したりはできないということだろうし、まあ、それは普通のことなのです。だから、別に彼女が悪いかと言えば、そうとは言えない。ファンがおかしいかと言えば、二宮さんが好きなんだから、ああいうのを見て傷ついたり、不快に感じるのも、普通のことなのです。ただ、ネットで彼女を執拗に叩いたり、あることないことで誹謗中傷するような行為をする人がいるとするなら、許されないのは当たり前ですよね。付き合ったからってネットでアピールしなくてもいいのと同じで、傷付いたからといってネットで相手を不当に攻撃しなくてもいいというか、してはいけないわけで。それはともかく、アイドル相手にそんな風になってとか、ジャニオタ(女ヲタ)キモいという理由で必要以上にファンをバカにする人もいますが、好きなんだから傷付くのは普通だし、仕方がないと思うのです。誰かのファンに一度もなったことがないような人以外は大なり小なり、そういう感情を経験すると思うんですがね。攻撃するのは許されないけど、傷付くぐらいは許されてもいいと思うのです。
(隔週金曜連載)
写真:2018年12月18日・第43回報知映画賞の表彰式 
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