BUMP OF CHICKEN『aurora ark』ツア
ーは彼らに何をもたらしたのか 東京
ファイナルを振り返る

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark 2019.11.4 東京ドーム
アンコールで「バイバイサンキュー」と「ガラスのブルース」を演奏し終わったあと、メンバーが去り、藤原基央(Vo/Gt)ひとりが残る。そして、「なんか魔法みたいな夜だった。おまえ、今日いっぱい歌ったじゃん。ちゃんと聴こえたよ。うれしかった」と話し始める。
その“おまえ”の歌声は、ステージに立っている4人に向けてのためのものじゃなくて、時間と距離を超えて未来のおまえ自身に向かっていくんだと思うよ、そういうもんだと思うよ──というようなことを、しばし言葉にしたあと、「……なんだろね。こんなにしゃべってんならさ、もう1曲ぐらい歌えばいいよな」と、またギターを持つ 。
愛用のレスポール・ジュニアを手にしながら「どうしよ、何歌おう……」とつぶやいた藤原、顔を上げて「バンドのかっこいいとこ、見せてやろうか」と言ってから、ギターを弾きながら「スノースマイル」を歌い始める。すると、増川弘明(Gt)、升秀夫(Dr)、直井由文(Ba)が出て来て、ツーコーラス目から演奏に加わったのだ。歌と歌の合間の短いインターバルで、藤原、「俺のバンド、かっこいいだろ?」という言葉を、サッと差し込んだ。オーディエンス、ドッと湧く。
BUMP OF CHICKEN 撮影=太田好治 (14日公演)
曲が終わり、ドームを埋め尽くした数万人が感動の余韻に浸っていると、藤原、「もう一曲ぐらいやろうか」。前の曲のアウトロ部分、また藤原の歌とギターだけになった時点でベースを下ろして、藤原を指揮するようなアクションをしていたチャマ(直井)、その言葉に反応し、もう一度持ち直す。
そして藤原、ギターを弾きながら「♪簡単なことなのにどうして言えないんだろう」と「花の名」を歌い始める。ツーコーラス目で増川のギターが入ってきて、バンド3人の音が揃ってからは、藤原、ギター・プレイをやめ、ハンドマイクで歌に専念した。
というアンコールの最後のシーンが、あまりにも印象的だったもので、そこから書き始めてしまった。アンコールが終わっても藤原ひとりだけ残って、弾き語りで歌ってから帰る、というのは、BUMP OF CHICKENのワンマンにおいては時々見受けられる光景だが、バンド全員で予定外の曲を2曲やった、というのは、バンプの歴史において珍しいことだったのではないか。って、20年以上にわたるバンプのライブ活動を、細部に至るまで把握しているわけではないのだが、少なくとも僕は初めて観た。
BUMP OF CHICKEN 撮影=太田好治 (14日公演)
「用意していなかった曲を突然演奏する」ということは、バンプに限らず、ドーム規模でワンマンを行っているようなバンドは、普通やらない。その曲用の照明とか演出映像とかPAの調整などの用意をしていないからスタッフが困るし、もっと言うとメンバーのプレイもそうだ。自分たちの曲なんだからパッと演奏できるでしょ、と思っている人が多いが、バンドの演奏というのはそんな簡単なもんではない。アンコールにどの曲をやるか未定でステージに上がる、という場合でも、アンコール候補の曲は前もって決めてあって、それらはみっちり練習しておく、というのがあたりまえだ、どのバンドでも。
藤原以外の3人が顔を見合わせながら慎重にプレイした「スノースマイル」と「花の名」、2曲とも照明は白一色で点きっぱなし、演出映像もなしで画面は4人を映しているだけ、という状態だった。
BUMP OF CHICKEN 撮影=太田好治 (14日公演)
もうあちこちで報じられているとおり、おそらくバンプ史上で最もスケールがでかくて、最も華やかで、もっとも精密で手数の多い演出を導入したツアーが、この『aurora ark』だ。僕もツアー初日のレポで報じました。こちらです。
4人の後ろの超巨大な壁が全部可動式のLEDになっているステージセット。曲ごとにそこに映し出される効果映像の数々。銀テープや炎や爆発などの特効(「シリウス」では1曲の中で2回特効が爆発)。ステージ中央から長く伸びた花道。本編中盤の2曲で使われるアリーナ後方のサブステージと、そこまでの移動は4人がアリーナを歩く──。というすべてが、大きなキャパの会場でワンマンをやるようになって以降のバンプの到達点と言える、すさまじいスケール感だった。
BUMP OF CHICKEN 撮影=太田好治 (14日公演)
オープニングのオーロラ等の映像の途中で、バックステージのメンバーの姿を生中継するのは7月13日のメットライフドーム2日目からだし、8曲目の「記念撮影」のときの映像で、日清カップヌードルCMシリーズとのコラボMV(『ONE PIECE』の麦わらの一味がもし高校生だったら、という内容)を使ったのは、この東京ドーム2デイズだけだった。
というふうに、ツアーの途中で演出が変わっていったりしたことも含めて、BUMP OF CHICKENによる巨大エンタテインメント・ショウとして、最も大掛かりで、最も完成度が高かったツアーだと言っていい。
BUMP OF CHICKEN 撮影=富永よしえ (13日公演)
バンプの4人もそのことを楽しんでいた。「花道、これの一個前のツアーから始めた。花道ってどうなの? と思ったけど、やってみたら、全然やぶさかじゃないのよ。きみらの近くに行きたいから」と藤原は言っていたし。そんなように、スタッフもメンバーも総力を出し切って作り上げた超巨大ロック・ショウを完璧にやり終えたと思ったら、その最後の最後に、まったく予定にない、なんの演出も用意されていないし、メンバーも練習していない曲を、突然2曲やってしまう。
そのオチの付け方に、何か、「ああ、藤原だなあ」「ああ、バンプだなあ」と、何かとてもうれしくなったのだった。
では、なぜ藤原はそうしたのか。単に、終わりたくなかったからだ。このライブを。というか、このツアーを。
中盤、「記念撮影」が終わったところで藤原は「あっという間に終わっちまうよ。だって半分終わっちまったもん」と言った。サブステージに移ったときは「ツアー終わっちゃうよ、さみしいぜ」。本編ラストの「流れ星の正体」を歌う前には「最後の曲になっちまった、さみしいよ」。アンコールの2曲目、「ガラスのブルース」を始めようとして「……イントロを始めたら、終わってしまう」。
今日のライブが終わることを、ツアーが終わることを、そんなにさみしがる人だったかどうかというと、以前からさみしがる人ではあったとは思う。が、ここまでか? ここまでそうか、今回は? と、正直、思った。
そういえば、増川も、「ガラスのブルース」を終えて去るときに「みんなありがとう。最高でしたね。さびしい」と言って、Tシャツを脱いで客席に放った。チャマがやるのはわかるが、増川がそういうことをしたのも、めずらしいのではないかと思う。
BUMP OF CHICKEN 撮影=太田好治 (14日公演)
要は、バンプの四人にとって、ツアーというもの、ライブというものの大事さ、かけがえのなさが、これまでにないほど大きくなったツアー、それが『aurora ark』だった、ということなのだと思う。
もちろん以前からツアーは大事だったが、それは喜びであると同時に、試練であり、挑戦であり、修行のようなものでもあった。その「試練」「挑戦」「修行」成分に「喜び」が圧勝したツアーだったのではないか、という言い方もできる。
あともうひとつ。「花の名」のところでも書いたが、あんなふうに藤原が、ギターを弾くのを放棄して、ギターはただ提げた状態で、マイクをひっつかんだりして歌う瞬間が、これまでになく増えたツアーだった。
同期(=バック・トラック)を使う曲が増えたので、その分ギターの演奏から解放された、というのもあるだろうが、バンドにまかせて自分は歌に専念していればいいや、と思える瞬間が増えた、ということもあるのではないか。
BUMP OF CHICKEN 撮影=立脇卓 (13日公演)
一回一回のツアー、一本一本のライブ、それらすべてが二度とない、本当に大事なものなんだ、一本一本が奇跡なんだ、ということを、時には言葉にしたり、時には言葉にせず態度で伝えたりしながら、BUMP OF CHICKENというバンドは歩んできた。そういう意味でもある種の到達点のようなツアーが、この『aurora ark』だったのだと思う。
バンプのツアー、そこそこ観慣れているつもりだったが、この最終日が終わったときに抱いた感慨に関しては、「こういう気持ちになったの、初めてだなあ」と、改めて思った。

取材・文=兵庫慎司 撮影=各写真のクレジット参照
BUMP OF CHICKEN 撮影=古溪一道 (13日公演)

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