【seven oops インタビュー】
聴いてくれた人の日常に
寄り添える曲がたくさんある
勇気を出して何かから卒業することで
気持ちが前向きになる
NANAEさんは「さらば」と「ささくれ」を作詞作曲されていますが。
NANAE
私はアップテンポをあまり作ったことがなくて、「さらば」は自分に挑戦する気持ちで作りました。メロディーも大変だったんですけど、それよりも歌詞がすごく大変でしたね。自分の中でパンチの効いたテーマは何かないかと考えて、処女を卒業する女の子をテーマに書いたんです。だから、《君の中へ》という歌詞はそういう意味も含んでいます。
確かにパンチが効いていますね。
NANAE
それについて歌った曲が世の中にないと思ったから、私がそういう曲を作って、みんなの背中を押してあげられたらと。でも、それはあくまでも私の中でテーマにしたことなので、聴いてくれた方は“勇気を出して何かから卒業することで気持ちが前向きになる”というとらえ方をしてもらえれば嬉しいです。
「ささくれ」は心の痛みを絶妙に比喩していて。
NANAE
1〜2年前に手荒れが酷い時があって、ささくれがたくさんできて痛かったんです。その経験から“ささくれ”という曲を書きたいとずっと思っていて。私が曲を書く時は自分が辛かったり苦しかったりした経験を歌詞のテーマにすることが多いので、自分のそういう経験と重ねて書きました。ささくれの痛さと、自分を悲劇のヒロインだと思い込んでいる“イタい奴”を掛けています。
「ささくれ」って滲みるような痛さですよね。
KEITA
ささくれができているのを忘れてポケットに手を突っ込んで、ビッてなった時がすごく痛いよね。
NANAE
私、どんなに血が出て痛くても自分で剥いちゃうんです。自分で剥いたくせに、その痛さを人のせいにするじゃないけど、“私はささくれていない”と思ってしまうところがイタい…。
今回、NANAEさんは全体的にフワッとしたウィスパーっぽい歌声で歌っていて、いつもより大人っぽい印象でした。
KEITA
今回はキー設定を全体に下げているんです。
NANAE
前はパーンと弾けるような、声を張らないと出ない感じの曲が多ったので、今回は気負わずに歌えるキー設定で歌ったら、ちょっと違うものが出せるんじゃないかと。新しい魅力が出せたんじゃないかと思います。
「くしゃくしゃのヒーロー」の作詞作曲はseven oops名義ですが。
MAIKO
高校生の時にseven oopsを結成して、初めてオリジナル曲を作った時はKEITAと元メンバーのMICHIRUが作曲し、NANAEとMAIKOが作詞をした、全員の共作だったんです。でも、それ以降はやっていなかったから、久しぶりにやりたいと思っていて。それで私がサビのメロディーと歌詞を作って、AメロはKEITA、BメロはNANAEちゃんってことで“よろしくね!”って投げたんです。
NANAE
こういうのは久しぶりだったからすごくいいと思ったんですけど、できればもっと余裕のある時が良かったかな(笑)。
KEITA
レコーディングも終盤で歌入れとかいろんな作業が詰まっていた時だったのに、MAIKOは投げっぱなし…結局仕上げの作業はNANAEとふたりでやったから大変でした。
前作の『songs for...』でも制作中に逃げた話がありましたね。
MAIKO
「恋する惑星」の時、あまりにできなくて(笑)。
NANAE
私も「夏のロマンティカ」で逃げました。でも、今回は逃げる暇がないくらいスケジュールがびっしりだったんです。
また、前作に収録されている「この島で」のニューバージョン「この島で- islander style -」には、BEGINの島袋 優さんが編曲とギターで参加されているという。
MAIKO
この曲、みんなで“せーの”で録ったそうです。MAIKOも優さんと一緒にやりたかったな〜。
どうしてMAIKOさん抜きで?
MAIKO
私、ラジオの仕事が増えちゃって(笑)
NANAE
優さんのカウントでクリックも聴かず呼吸を合わせる感じでやりました。録り直しができないから、すごい緊張感がありましたね。
KEITA
僕と優さんは隣合わせで、NANAEはブースの中だけどガラス窓があって顔が見えるようになっていて。お互い顔を見合わせながら、歌に合わせたりベースに合わせたり。
BEGINのメンバーとは交流が?
MAIKO
ご挨拶程度でしか接点がなかったんですけど、家の近所で優さんを見掛けたんで、思い切って話し掛けたらたまたま家が近所だったんです。その後、ホームパーティーに呼んでいただきました。
KEITA
違うマンションに行っちゃったんでしょ?(笑)
MAIKO
そうなの。呼び鈴を押して“キラキラドラマーのMAIKOです!”って挨拶をしたら“誰?”って言われた(笑)。間違えて隣のマンションに行ってしまったらしくて、すごく恥ずかしかったです。でも、それがきっかけで今ではKEITAが優さんと“でーじ”仲良くなりました。
NANAE
優さんとKEITA、ほとんど毎日一緒にいたよね。
お話を聞いていると友達とか呑み仲間とか、地元のプライベートでのつながりが作品に発展していて、沖縄の人っぽいなと思いました。沖縄の人の“日常”がこういうことなのかなと。
NANAE
まさにそういうことで“日常”というタイトルにしました。
KEITA
日常的に呑んでいる先輩方とコラボレーションができたし、元メンバーのMICHIRUが作ってくれた曲もあるし。あと、聴いてくれた人の日常にも寄り添える曲がたくさんあるし、肩肘張らずに作った作品なので。
1曲目の「morning」はインストで、鳥の声や「おはよう」という声も入っていたり、これも日常の風景のひとつですね。
KEITA
親友の家族にお願いして、日常の朝の声を録ってもらいました。メンバーの声よりも日常のリアル感が出ると思って。
アコースティックツアーでも新曲をいくつかやっていましたけど、全部アコースティックでも聴いてみたい曲ばかりですね。
KEITA
全部アコースティックでできると思います。音数も少なくてシンプルだから、日常でたくさん聴いていただけたら嬉しいです。
取材:榑林史章