【ライブレポート】<BLOODAXE FEST
IVAL>に狂熱的な磁場「ハードコアが
一番かっこいいと思ってやってる」

日本で唯一にして最大級のハードコア・イベント<BLOODAXE FESTIVAL 2019>が今年も開催された。国内外の16バンドが集結し、ワン・ステージ制で行われるため、すべてのライヴを堪能できるのが同フェスの魅力である。会場のクラブチッタ川崎はハードコアを心から愛するファンが詰めかけ、終始「超」が付くほど狂熱的な磁場を作り上げていた。

午前11時15分からSUPER STRUCTURE(O.A)を皮切りに、UNIVERSE LAST A WARD、NUMBERNINE、HORSEHEAD NEBULAと続いた後、お昼過ぎに大阪発のPALMが登場。Takahashi(Vo)はいきなりマイクコードをブンブン振り回し、ソリッドかつグルーヴィーなカオティック・ハードコアをブッ放つ。すると、1曲目から観客によるステージ・ダイブやマイク・ジャックが勃発し、早くもステージは無法地帯と化した。「みんなのいろんな考えを知って、いいシーンを作ろう」と語りかけた後、Takahashiはおでこにマイクを3回叩き付け、「(ステージに)上がって来い!」とアジテートし、会場を根底から焚き付けてくれた。
次は米フィラデルフィア発のVARIALS。17年に1stアルバム『PAIN AGAIN』でデビューを飾った彼らは重量級のハードコアで攻めまくる。とにかく一音一音が硬くて重い。タフガイなヴォーカルも相まり、肉厚のサウンドで観る者をねじ伏せるパワーを魅せつけた。そして、柏発のBLINDSIDEが登場すると、TKC(Vo)は初っ端からステージダイブを決め、観客に担がれてサーフでグルッと一周して本編スタート。音楽的にはストロング・スタイルのハードコアを掲げ、シンガロング必至のコーラスも効果的。観客はステージ上のマイク・スタンドを奪い合うなど、緊張感漲るムードを作り上げていた。
キャリア24年を誇る東京発のNUMBは、縦横に揺さぶりをかける緩急激しいサウンドを解き放つ。気付けば、今日の出演バンドであるJESUS PIECEのAaron Heard(Vo)は何度もステージ・ダイブし、観客と一緒になって楽しむ微笑ましい光景も見られた。またステージ上では女性客もマイクで叫び、さらに勝手にブレイクダンスを披露する男性客もいて、これには思わず笑ってしまった。こうしたフリーダムな空気も本イベントならではだ。その後は結成21年目に入る東京発のAT ONE STROKEが続き、男気に満ちた漆黒のハードコアを撒き散らす。
そして、VARIALS同様、フィラデルフィア発のJESUS PIECEがお目見えだ。昨年12月の初来日時にもライヴを観たが、早くも再来日が決まったこともあり、このチャンスを逃したくないという人も多かったことだろう。彼らはCODE ORANGE、VEINと続き、次世代USブルータル・ハードコアの有望株である。動静を巧みに使い分けた曲調、ミドルテンポを主軸に不穏なパートを仕込んだ激越ぶりは文句なしのかっこ良さ。特にAaron(Vo)の存在感は際立っており、ライオンのごとくステージを右往左往に動き回る野生児ぶり。しかもステージに上がってきたマッチョな外国人にドロップキックをかましたりと、恐るべき身体能力の高さでも観客を沸かせた。
大阪発のSANDは不敵な音色で観客を威嚇し続ける凄味のあるライヴを展開する。特に「POSER」においては、最大級のモッシュピットを作り上げる剛腕ぶりを魅せつける。また、Makoto(Vo)の怒気を帯びたヴォーカルは極悪感にまみれ、全身に震えを覚えるエモーションを叩き付けてくれた。その後は本イベントにリスペクトを表し、1stアルバム『Dimention』、2ndアルバム『Into The Great Beyond』の初期楽曲縛りで挑んだのはCrystal Lakeである。State Craftなどのニュースクール・ハードコア勢から影響を受けた時期の楽曲を矢継ぎ早に放ち、観客は暴動に近い盛り上がりを記録。また、この時代にフロントマンを務めていたKentaro Nishimura(Vo)にも触れ、「今日呼んだけど、来れなかった。今も気持ちは一緒だから」とYD(G)は告げ、彼に向けてラスト曲「Twisted Fate」をプレイ。最後に途轍もないカオスを作り上げて、自身のショウをビシッと締め括った。
本イベントも後半戦に入り、残すところ4組だ。ここでロングアイランド発のBACKTRACKが登場。彼らは解散を表明しており、最後の勇姿を見届けたくて駆けつけた人も多かったのではないか。NYハードコアを継承するストロング・スタイルの彼らは、瞬発力のあるキレとリズミックなグルーヴで観客をノラせる。最後にはJames Vitalo(Vo)もフロアに入り、観客ともみくちゃになって熱い歌を響かせていた。これほど現役バリバリのパフォーマンスを目の当たりにしてしまうと、本当に解散が惜しまれてしまう。またいつか復活して欲しいものだ。
それから主催バンドであり、東京ハードコアの重鎮・LOYAL TO THE GRAVEが遂に姿を見せた。「お客さん1000人、ありがとう!国籍とか関係なく、ハードコアが一番かっこいいと思ってやってる」とKobayashi(Vo)が感謝の言葉を述べつつ、メタリックにしてグルーヴィーな演奏を叩き付ける。気迫十分のヴォーカルを武器に強烈無比のサウンドで観客を血祭りに上げ、会場を激しく掻き回した。ショウ後半、ここでもまたJESUS PIECEのAaron(Vo)がステージダイブを決める姿が見かけられた。
次のアクトはMERAUDERが出演する予定だったが、メンバーの体調不良で急遽順番が変更、トリを飾る予定だったKNOCKED LOOSEが先にステージに立つ。ケンタッキー発の彼らは次世代ハードコアを担う逸材であり、今年8月に2ndアルバム『A Different Shade of Blue』を発表したばかりだ。HATEBREED、PANTERA、OBITUARYなどメタル勢から色濃く影響を受けており、エッジ際立つリフはもちろん、うねりを上げるグルーヴィーなサウンドが特徴的。Bryan Garris(Vo)のヴォーカルはCONVERGEのJacob Bannon(Vo)に通じるしゃがれ声も放ち、異様なテンションで捲し立てるヴォーカルの迫力たるや凄まじいものがあった。ラスト曲では観客が数十人とステージに上がり、メンバーの姿が全く見えなくなるほどのカオスな景色を作り上げた。
そして、トリはニューヨークのリヴィング・レジェンドであるMERAUDER。スラッシュ/デス・メタルとハードコアを逸早く融合させた彼ら。音源同様、いや、それ以上にライヴの迫力は半端ではない。ザクザクと刻むメタリックなリフ、重戦車が突き進むような極太ビートといい、一音一音に貫禄が漲ったサウンドで観客に容赦なく襲いかかっている。引き締まった体躯のJorge Rosado(Vo)の歌声も強力な演奏陣に一歩も引かない存在感を魅せつけ、フロアは異常な活気を帯びていた。それこそ今日出演しているSANDを含めて、後続バンドにも多大なる影響を与えているバンドの力量は生で観るのが一番かもしれない。その芯の通った頑健なサウンドを浴びていると、こちらまでエネルギーが体内から溢れ出てくるような興奮状態に陥る。それもこれもMERAUDERの生き様=キャリアから滲み出た説得力の高さなのだろう。長丁場のイベントにも関わらず、観客は最後までダイブにモッシュにと暴れ回る光景を見て、彼らの真のかっこ良さを骨身に沁みて味わうことができた。
ハードコア好きにはたまらない本イベントは無事に終了。とにかく、これほど自由で熱気に溢れ返ったライヴはちょっと他では体感できない。うるさい音楽が大好物という人ならば、絶対に見逃してはいけない内容だと自信を持って言える。

取材・文=荒金良介
撮影=KEIJU

■<BLOODAXE FESTIVAL 2019>
2019年9月21日(土)@川崎CLUB CITTA’
オフィシャルサイト:http://bloodaxefest.jp

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