halcaインタビュー「ライブは“正解
”がないのが楽しいけど“正解”がな
いから難しい」

2018年にTVアニメ『ヲタクに恋は難しい』EDテーマ「キミの隣」でデビューし、現在放送中のTVアニメ『僕たちは勉強ができない!』ED主題歌「放課後のリバティ」も好評のhalcaがSPICE初登場!豊かな感受性を育んだアニメの話や、歌うこと、ライブについての思いを聞いた。
ボカロ曲の自主練習と合唱部の経験がつながった歌手の道
――SPICEのインタビューには初登場ということで、まず歌手を目指そうと思ったタイミングからお聞きしたいなと。
本当にすごくシンプルで「歌が好きだから歌手になりたい」と思ったのがきっかけです。幼稚園のころから車の中とかお風呂とかでよく歌っていたんですけど、ご近所迷惑になるってよく怒られていて(笑)。その頃は「お姫様」とか「ケーキ屋さん」とか「お花屋さん」とか、小さい子がよく思い浮かべるような夢がいっぱいあったんですけど、真剣に意識し始めたのは小学校4年生くらいです。
――何かきっかけがあったんですか?
そのときの担任の先生が「将来の夢は早いうちから口に出して言おう」と教えてくださって、そのときから「なんとなく歌うんじゃなくて練習しよう!頑張ろう!」って気合が入りました。おかげで中学生になっても高校生になっても歌手になりたいってずっと言い続けてきました。すごくいい先生で「あいさつもしっかりしようね」、という大事なことを教えてもらって本当に感謝しています。
――中学では合唱部に入っていたそうですが、歌手を目指すためのトレーニングのような意識があったんですか?
はい。歌うときのブレスの仕方とか、高い声がぜんぜん出なかったので音域を広げたいと思っていました。その頃は「翼をください」が歌えないくらい、パサパサな声だったんです。でも、習い事でボイストレーニングとかに通うのはすごく(月謝が)高いイメージで、お母さんにも「ダメよ」と言われていたので、合唱部に入ってそこで学べば一石二鳥だと思って入部しました。
――halcaさんの曲を聴いていると、高い声が出なかったというのはすごく意外ですね。そんな幼少期を経て『ウタカツ!オーディション』の第1回で準グランプリに選ばれてデビューに至ります。アニソンやボカロ曲は小さい頃からお好きだったんですよね。
はい。カラオケでもアニソンとかボカロの曲ばっかり歌っていました。でも、中学生から高校生のときは、私の周りではあまりアニメとかボーカロイドが浸透していなかったんです。それもあって「オタク」って言われていたんですけど、それでも好きだから気にせず歌っていました。最初はポカーンとされていたんですけど(笑)、「聴いてみたらいい曲だね」って言ってくれたり、同じ趣味の子がちょっとずつ増えていったり、曲をオススメしあうようになって、すごくうれしかったです。
――合唱部とボカロ曲って正反対にありそうなものを同時期に歌っていたというのは面白いです。
ボーカロイドの曲は特にテンポの速い曲やキーの高い曲が多いので、歌えないのに無理やり歌って練習しているような感じでした。合唱部+ボーカロイドとかアニソンを自己流で練習していたから、今なんとか高い声が出せるようになったのかなと思っているんですけど、自分でもなかなか面白い練習だなって(笑)。
――当時の経験が今に生きているんですね。
「放課後のリバティ」もそうですし、デビューシングル「キミの隣」もDメロのところとかすごくテンポが速くなるところがあったり、昔ボカロ曲を練習していたことがちょっと効いてるかなと思って懐かしい気持ちになりました。オーディションのあとからはボイストレーニングを受けさせていただいて、そこでいろいろな先生とも出会って基礎トレーニングとかも教えていただいて、できることが少しずつ増えてきました。
――halcaさんにとって特別なアニメ作品や楽曲があったらお聞きしたいです。
いちばん好きな作品は『カードキャプターさくら』です。ひとつの作品の中にいろんなものが詰め込まれているお話が好きです。描かれている愛の形が女の子同士、男の子同士、兄弟とか親子、年の差とかいろいろあったり、人間とカードの気持ちとかもあったりするのがすごく素敵だなと思います。幼いころに観ていたから、きっと感受性みたいなものが養われて、涙もろくなってしまったんですけど(笑)。何回見ても感動する作品です。
――ちなみに、いちばん好きなキャラクターは?
(木之元)さくらちゃんです!でも、みんな好きなんですよね。悪い人が一人も出てこないんですよ。アニメオリジナルのキャラクターのメイリンちゃんとかも、最初はライバルな感じで出てきたけどすごく良い子だし。ああ、もう話が止まらなくなってきちゃいますね(笑)。
「放課後のリバティ」通常盤
挑戦だった難曲「放課後のリバティ」の自己採点は「80点」>
――そんなふうにアニメが好きということで、自分の歌がテレビから流れてくると感慨もあるかと思いますが、今回『僕たちは勉強ができない!』のエンディングで「放課後のリバティ」が流れているのを観ていかがでしたか?
もう、すごい、かわいいです…!キャラクターがミニサイズになっていて、「ヤ・メ・テ」っていう歌詞のところの動きがすごくてびっくりしました。色のトーンが変わるところもちょっとホラーみたいな感じがあって、もうすぐハロウィンだからピッタリだなと思いました。あと、最後のほうでみんなが飛び跳ねたりうどんの上に乗ったりしているのがかわいいなと思いました。
――とにかく「かわいい」と。歌詞のなかで5人いるヒロインそれぞれにちなんだ単語が入っていたり、「キミ」と呼びかけていたりしますが、歌う時はどういうイメージをされているのでしょう。
歌っているのは私一人なんですけど、曲を聴くだけでも、アニメに出てくる女の子たち全員が思い浮かんじゃうと思います。一曲の中で流れや歌い方が変わったりするので、歌うときに置いていかれないようにがんばりました。
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――かなり難しい曲だった。
もしこの曲がデビューシングルだったらできなかったような部分がいっぱいあって、デビューから1年経ったこのタイミングで出会う曲でよかったなと思いました。この1年がんばってきたこと、イベントやライブで経験したことも全部詰め詰め込んた曲になった気がします。
――これまでのシングルやミニアルバムに収録されている楽曲にはなかったタイプですよね。テンポが速いのに加えて、ホーンも入ってより明るく。自己採点としては何点くらいですか?
何点だろう…普通が50点だったら、それよりは上にいけていると思います。そうだな70+成長で5点、ビックリさせるで+5点で80点くらいですかね(笑)。
――加点になった「ビックリさせる」というのは?
前回のシングル「センチメンタルクライシス」(TVアニメ『かぐや様は告らせたい』EDテーマ)がしっとりしたドラマティックな曲だったので、私も今回どんな曲なのかなって楽しみにしていました。ツイッターで聴いてくれた方の反応を調べてみると「こんな曲も歌えるんだ」とか「意外でビックリした」っていうコメントがけっこうあったのを見つけてうれしかったんです。よっしゃあ!と思いました(笑)。
「放課後のリバティ」期間生産限定盤
――この取材は10月16日ですが、まだライブやイベントでは披露されていないんですよね。ラジオで「エクササイズみたいな盛り上がりを」とおっしゃっていましたけど、こういうふうに楽しんでほしいというイメージはありますか?
歌いだしのところとか、本当に「ちょっと待って、おっとっと」みたいな感じがわちゃわちゃしていたらすごく楽しいなと思っています。いちばんのポイントは「ヤ・メ・テ」と「カ・エ・テ」っていう歌詞のところで、ここで何かできないかなと思って考え中なんです!私だけで歌うのがいいのか、皆さんと一緒にのほうがいいのか。それともみんなで一緒のポーズをするとか考え中で…みんなで育てていけたらいいなと思います。
――お客さんも、じっくり聴きたい人もいれば一緒に声を出したいっていう方もいますからね。
難しいんですよね。私は個人的にはしっとり聴きたいタイプなので、盛り上がる曲でもすごく静かに聴いてしまうんです。でも、かと思えばすごくいつも「ワー」って言ってる時もあって。結局、その日の気分によるみたいです(笑)。歌っているときも気分がコロコロ変わるので。「今日はちょっと聴いてほしいな」っていう日もあれば「今日はちょっとみんなでワイワイ盛り上がりたいな」っていう日もあって。ファンの皆さんにはライブを自由に楽しんで貰えれば嬉しいです!
良きライバルであり親友「CHiCOちゃんみたいなカッコいいアーティストになりたい」
――ファンの方の前で歌う機会は秋~冬にかけてたくさん発表されていますね。11月23日に横浜アリーナで『ANIMAX MUSIX』。そして11月30日には渋谷のクラブクアトロでワンマンライブ。12月8日に『京(みやこ) Premium Live 2019』、年末には『Music Rainbow 06』で中野サンプラザ。来年は『リスアニ!LIVE 2020』で幕張メッセと、大きな会場でのライブイベントもたくさん控えています。
めちゃめちゃ緊張しますが、すごく楽しみです。
――プレッシャーより楽しい気持ちのほうが大きいんですね。
はい。最初の頃は「大丈夫かな?不安だな…」ってライブの本番前まで泣きそうなくらいプレッシャーがすごくて、足も震えてました。泣いてたこともあったんですけど(笑)。今年ワンマンライブをさせてもらってから、気楽にどっしり、楽しんじゃえばいいんだな!って思えるようになってからはすごく変わりました。
――3月に1回目、4月に2回目のワンマンライブと続きました。どちらも青山RizMというお客さんとの距離の近いライブハウスですよね。そこで得た自信を大きな会場にそのまま持っていけるものなんですね。
一人ひとりの顔が見えるくらい近くて、MCで話している時もお客さんの反応が直接聴こえてくるので、聴いてくれる人が本当にそこにいるんだ!っていうのが実感できました。リリースイベントよりたくさん、200名くらいの方が私を観に来てくれているんだと思って、それってすごいことだなあと感動しました。
――halcaさんの「ワンマン」ですからね。
多分ライブに来てくださっているみなさんはみんなバラバラだと思うんですよね。学生さんだったり、会社員だったり、もしかしたら今日いいことあったかもしれないし、もしかしたら嫌なことがあったかもしれないし…でも会場に来てくれるということだけで、一体感というか、チームと言うか、みんなのエネルギーが「ギューッ!」と詰まっているようように感じて、すごく感動します。今後、大きな会場でライブをさせていただくことになっても、きっとみなさんは来てくれると信じていますし、私のグッズとかを付けてくださってくれているのをステージから見つけると、すごく勇気になっています。脚は震えているかもしれないですけど(笑)、そこで私の歌を好きになってくれる人が一人でも増えたらいいなという気持ちで歌っています。
――感受性が強いからなんでしょうね。『カードキャプターさくら』の影響というか(笑)。
妄想しているだけなんですけど(笑)、やっぱり、さくらちゃんにすごくたくさんのことを学びました。
――フェスだと共演の方から刺激を得ることもあると思いますが、印象に残っている方を一人あげるなら誰ですか?
今年の夏にCHiCO with HoneyWorksさんのホールツアーに一緒に回らせていただいたんですけど、そのときのCHiCOちゃんですね。最初に真っ暗闇の中からステージに出てきて、パッと明かりがついてシルエットだけが見えるところで感動しちゃって。リハーサルのときはいちばんいいド真ん中の席で「うわあ、カッコいいな」って思いながら見ていました。本番ではステージの横から見ていたんですけど、すごく感動しました。CHiCOちゃんみたいに歌も動きも、シルエットの立ち方だけでもカッコいいアーティストになりたいなと思いました。
――CHiCOさんとは、オーディションの同期ですよね。そこから今までの付き合いがあったうえでも、改めて刺激を受ける存在なんですね。
はい。お互いに励まし合ったりとかもしています。出会った頃からお互いに変わらないところもあるけど変わったところもあって、そういうのも面白いです。
――halcaさんの変わらないところと変わったところはどういったところですか?
ついこの間、マネージャーさんに昔の…制服を着ている時の写真を見せてもらったんですけど、あまり変わってないんですよ。髪の色も染めてないし前髪も同じでピアスも開けていませんし。でも最近はヘアメイクさんとかスタイリストさんにいろいろなことを教えてもらってます。前は服は黒とか白、グレー、ベージュ、茶色とかの外さない色を選びがちでした。それでも「おうちからパジャマで出てきました!」みたいな感じがして。今でもたぶん地味な色を着るとちょっとどよーんとしちゃうので避けています。
――意識してそれまで着ていなかった色の服を着るようになったんですか?
はい。衣装のフィッティングのときに、自分では絶対に選ばないような色とか柄のものとかを着させていただいてだんだんと変わってきました。以前、浴衣のフィッティングをしたときに、ひとつだけアヒル柄の浴衣があったんです。最初は「アヒルはないよね、お花だよね」って話していたんですけど、ちょっと時間が余ったから試しに着てみたら、それがいちばんしっくりきて。着てみなきゃわからないんだなって。それからはいちばん「あれっ?」と思ったものも絶対に着るようにしていますし、そういう服がしっくりくることが多くて面白いなと思いました。
――そうやって変わっていくhalcaさんの全部を打ち出せるのは、やっぱりワンマンライブだと思いますが、まずこの『halca 4th LIVE Help Me!!!! ~CRAB QUATTRO~』というタイトルから説明してほしいなと。
皆さん最初は誤字かなってなると思うんですけど(笑)。クアトロって5だと思っていたら4っていう意味だと教えてもらって、4回目のライブで「クラブ…。カニだ!」って。カニってちょうどハサミが両手が2と2で4になるじゃないですか。それで4だらけだと思って(笑)。
――カニで4は盲点でした。ラジオのほうで、イベントでの選曲にも意外性を出していきたいと話していて、エンターテイナー精神が強いなと思ったんですが、どういったライブにしたいというイメージはありますか?
盛り上がる「放課後のリバティ」も加わるので、にぎやかで楽しい、明るいライブにできたらいいなって思います。前回までは持ち歌の数が変わらなくて、カバー曲でセットリストに変化をつけていたり、これまでは同じ持ち歌でも曲順を変えたらこんなに雰囲気が変わるんですよっていう表現に挑戦していました。ですが、次はミニアルバム『white disc +++』から3曲と、「放課後のリバティ」のシングルから3曲で合計6曲増えたので、どうなるのか私も本当に楽しみです。まだ決まっていないんですけど、カバー曲もまたやりたいなと思っています。
――曲数が増えると、表現の幅も広がりますよね。
『white disc +++』に収録されている「Distortionary」や「放課後のリバティ」のカップリングに「A・WA・WA・WA」っていう激しい曲があるんです。3rdワンマンまではそういう激しい曲は「曖昧グラデーション」だけだったんですけど、手札が増えてきましたね。優しい曲、カッコいい曲、ノリノリの曲も1曲ずつじゃなくなったので、いろんな曲を歌ってます!とアピールできたらいいなと思っています。

取材・文:藤村秀二

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