藤井フミヤのデビュー作
『エンジェル』に
ソロシンガーとしての
ビギニングを見出す
さすがに手練れた世界観の構築
《暖かな液体の中 真っ暗な小さな世界/目を覚ますと 僕は ここにいた》《何かが起こり始めている 何かが終わり始めている/カプセルが揺れてる カプセルが開いてゆくよ/もしかして僕は生まれる もしかしたら僕は生まれる》《あれは遠い遠い遠い記憶/あれは誰か誰か誰かの涙/きっとその人に逢うために/きっとその人に巡り逢うために》《どんな時代を選んだのさ/どんな場所を選んだのさ/もう一度僕は生まれる/さよなら すべての SAVE MEMORY》(M1「BIRTH」)。
《覚えてるかい この物語/一人ぼっちの 天使の話さ》《ここにいておくれ この腕の中/はてしないSTORY思い出すよこれから》《こぼれ落ちた 涙の上にそっと船を浮かべ/眠るように 寄り添うのさ ふたりは》《YOU 夜明けが近い YOU すべてが始まるYOU 走り出すのさ FREE 光の上を》《YOU 翼が見える YOU 無くした翼が/YOU はばたくのさ今 FREE 光の中へ》(M10「エンジェル」)
本作はM1「BIRTH」で始まってM10「エンジェル」で締め括られる。M10の後半では再び《暖かな液体の中 真っ暗な小さな世界/目を覚ますと 僕は ここにいた》というフレーズが出て来るので、M1で幕を開けた物語がさまざまな場面を経て、再び最初に戻るという所謂“円環構造”を持っている。さらには──穿った見方かもしれないが、「BIRTH」「エンジェル」ともにチェッカーズ「Blue Moon Stone」を彷彿させるような内容でもあって、“お見事!”と思わずうなってしまった。まぁ、この辺りは彼もそれほど意識していなかったのかもしれないけれど、意識しなかったとするならば、それは藤井フミヤらしい作風と言うこともでき、これまたデビューアルバムに相応しい要素なのである。
TEXT:帆苅智之