MONO NO AWARE のルーツを探る、熱烈
偏愛ゲームミュージック

玉置周啓(Vo./Gt.)、加藤成順(Gt.)、竹田綾子(Ba.)、柳澤豊(Dr.)からなる4人組ロック・バンド、MONO NO AWARE(モノノアワレ)。彼らが3rd アルバム『かけがえのないもの』を完成させた。

玉置周啓の小さい頃の原風景をヒントに、大人になるにつれて失われてしまう純粋な気持ちや遊び心の大切さを形にした本作。全編を通してMONO NO AWAREらしい精緻なアレンジに乗って、時にユーモラスに、時に心の奥をそっとなでるように、良質なメロディが浮かび上がってくる。

今回のインタビューでは、作詞作曲を担当する玉置周啓がゲーム機を使って楽曲制作をはじめ、初期のデモをニンテンドーDSで制作していたことにちなみ、「好きだったゲーム作品」を3つずつ挙げてもらいながら、当時の思い出や、新作のテーマを語ってもらった。

彼らの原風景は、どんなものなのだろう――。

Photography_Sakura Nakayama
Interview&Text_Jin Sugiyama
Edit_Miwo Tsuji

「音楽を聴くためだけに、ゲームをプレ
イしていた」(玉置)

玉置周啓’s BEST 1.『クロノトリガー』(1995) 2.『パネルでポン』(1995) 3.『サルゲッチュ2』(2002)

――『クロノトリガー』が発売された頃って、玉置さんは2歳ぐらいですよね?

玉置周啓(以下、玉置) : そうなんです。僕が4~5歳の頃、近所に住んでいた方からまとめてたくさんのゲームをもらったのですが、その中の1つが『クロノトリガー』でした。当時の自分には難しすぎて、最初のボスすらも倒せなかったんですけど……。でも、当時からゲームの中で流れる曲にすごく惹かれていて、“曲が聴きたい”という理由でゲームを続けていました。最初のボスまでの6~7曲ほどしか聴けないまま、気づけば3~4年も『クロノトリガー』をやり続けていたんです(笑)。そうこうしているうちに、僕の弟もプレイしはじめて、今まで僕が倒せなかったボスを倒してしまって。そこで初めて、今まで聴けなかった曲も聴けるようになりました(笑)。

――嬉しいような悔しいような(笑)。当時、音楽としてはどんなところに惹かれていたんだと思いますか?

玉置 : 光田康典さんが手掛けた『クロノトリガー』の音楽は、僕がポップ・ミュージックを聴きはじめる前から触れていた音楽なので、客観視することは難しいんですけど……。もしかしたら、僕が音楽に「いいな」と感じるツボ自体を、この作品の音楽がつくってくれていたのかもしれないですね。今でも、音楽を聴いていて「この曲いいな」と思ったときに、「それって『クロノトリガー』のあの曲に似ているからかも」と思うことがあるんですよね。

――2つ目が『パネルでポン』ですね。

玉置 : 実は最初に遊んだのは『パネルでポン』ではなく、『ヨッシーのパネポン』(1996)だったんですよね。その後20歳近くになってから、秋葉原のゲーム店『スーパーポテト』で『パネルでポン』を見つけて、「これが本家なのかな?」と思って買ってみたんです。MONO NO AWAREの楽曲では、4面で流れる「ティアナのテーマ」(緑の妖精ティアナのBGM)のメロディを、1枚目のアルバム『人生、山おり谷おり』の「駈け落ち」でベースラインとして引用しています。曲で描きたかった気持ちに、ぴったりと合うように感じられたので。
玉置さんが楽曲制作に使用していたニンテンドーDS

――『サルゲッチュ2』はどうでしょう? 2002年というと……。

玉置 : 僕らは小学4年生ぐらいですね。『サルゲッチュ2』はプレイステーション2のタイトルということもあって、楽器の量/音色の量が『クロノトリガー』や『パネルでポン』とは全然違いますよね。この作品は色々なロケーションのステージに合わせて、いろんな国の音楽が使われていました。たとえば「サルテノンしんでん」(ギリシャのパルテノン神殿風ステージ)やカンフーテンブル(中国風のステージ)、あとはトレーニングルームで流れてる音楽も好きだったな。僕の場合、初めての作曲にはゲームを使ったんです。ギターを弾いての曲作りではなく、ゲーム内でピアノロールを編集したりすることからはじまっていて。そういう意味でも、音の構築の仕方は、当時のゲーム音楽から影響を受けているのかな、と思います。

――実際、ギターで作る曲と、音を打ち込んでつくっていく曲とでは、考え方や音の構築の仕方自体が大きく違ってくるかもしれませんね。

玉置 : そうですね。今回、「『かけがえのないもの』購入者限定アウトストアライブ」の特典「A・I・A・O・U」の8ビットVer.を作っていても感じたんですけど、昔のゲームは特に使える音数が少なかったので、キックとタムとベースのどれかひとつが鳴っているときは、別の音は鳴らせないという技術面での制約があったんです。だからこそ、通常のバンドのサウンドよりも音が分かれている、音を可視化しやすい音楽になっていると思うんです。そういう原体験があるからこそ、曲をつくる際にも、僕はより音の重なりを意識するようになった気がします。僕は基本的にそこに一番興味のある人間で、音色などには疎いので、MONO NO AWAREではその部分を(加藤)成順が助けてくれていますね。

毎日朝までゲームばかりしていた学生時
代(加藤)

加藤成順’s BEST 1.『ゼルダ』シリーズ 2.『がんばれゴエモン』シリーズ 3.『スターオーシャン』(1996)

――そんな加藤さんは『ゼルダ』シリーズと『がんばれゴエモン』シリーズ、『スターオーシャン』を挙げてくれました。

加藤成順(以下、加藤) : 『ゼルダ』シリーズは、Wiiまでの作品は全部プレイしています。その中でも、一番やりこんだのはNINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。『ゼルダ』シリーズも、曲がすごく好きなんです。場所ごとに好きな曲があって、曲を聴くためにエポナ(主人公の愛馬)を走らせたりしていました。例えば、カカリコ村のBGMは、夕方に聴くとめちゃくちゃ気持ちいいので、夕方になるとわざわざカカリコ村に行って音楽を聴いていました。カカリコ村の他に、「ゲルドの谷」(スパニッシュなBGM)で、エポナを走らせるのも好きです。全部クリアした後も、音楽を聴くためにゲームを立ち上げて、エポナを走らせていました(笑)。

――『ゼルダ』には、ケルト音楽からアジアの音楽まで、様々な要素が詰まっていますよね。

加藤 : 一方で『がんばれゴエモン』シリーズは、スーパーファミコンの『がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス』(1993)をよくやった記憶があります。当時、8歳ぐらい離れたいとこに鍛えられていたのですが、まだ僕は小学生だったのに、上手くできないと怒られたりもして(笑)。3つ目の『スターオーシャン』も、そのいとこに教えてもらいました。このゲームはストーリーも音楽も含めて、1番思い入れのある作品ですね。僕はそこからゲームにハマってしまって、高校3年頃まで、毎日朝までゲームをする生活になってしまい(笑)。

日常とは違う世界に連れて行ってくれるような雰囲気に惹かれていたのかな、と思います。当時はあまりにゲームをやりすぎていたので、今になれば「あそこまでやんなきゃよかった」とも思いますけど(笑)。

――(笑)。

「今でも聴くと泣きそうになる、ゲーム
ミュージックがある」(竹田)

竹田綾子’s BEST 1.『ファンタシースターオンライン』(2000) 2.『ファイナルファンタジーX』(2001) 3.『ポケットモンスター クリスタル』(2000)

――竹田さんの好きなゲームについても聞かせてください。

竹田綾子(以下、竹田) : 小学校の頃から仲のいい友達がいるんですけど、その子の家族がみんなゲーム好きだったんです。それで「このゲーム、絶対やった方がいいよ!」と教えてくれたのが『ファンタシースターオンライン』でした。舞台が宇宙なのもあり、音楽も壮大で、その雰囲気がすごく好きで。

一方で、『ファイナルファンタジーX』は私が初めてまともにやったゲーム。親の職場の方の家に花火を見るために集まった時、大人はお酒を飲んでいるので、「ゲームやっててもいいよ」と遊ばせてくれたのが最初でした。もともと、天野喜孝さんが手掛けたジャケットを見て、すごく気になっていたんです。それで実際にやってみたら、画がすごく綺麗で、登場人物ごとに物語があって、本当にびっくりして。OPが物語の終盤からはじまることにも衝撃を受けましたし、権力の腐敗とか、とても深いことを描いている作品で。(「ザナルカンドにて」を聴きながら)ああ……今でもこの曲を聴くだけで泣きそうです! 画面を30分くらいそのままにして、OPの曲をずっと聴いたりもしていました(笑)

――『ポケットモンスター クリスタル』はどうですか?

竹田 : 『クリスタル』は金銀の別バージョンですけど、この作品からゲームボーイカラーになったので「カラーになるの!? やってみたい!」と思って。それで、ゲームボーイカラーを買ってもらったら、イヤフォンジャックがあることに気づいたんです。それで、初めてイヤフォンをつけてプレイしてみました。その時、ベースラインが細かく聴こえてくるのを初めて感じて、本当に感動しました。私にとっては、音と音が重なる心地よさを初めて意識したのが、“その時”だったんだと思います。中でも(作中のジョウト地方の都市で、京都市をモチーフにした)エンジュシティの曲(「エンジュシティのテーマ」)が好きでした。
――お話を聞いていると、みなさんはゲームでも音楽に強く惹かれる経験をしてきた人たちだったんですね。

玉置 : 僕らだけじゃなくて、音楽に惹かれてゲームをやる人ってすごく多いはずです。僕が『クロノトリガー』をやっていた当時、僕と成順の地元・八丈島ではサウンドトラックが手に入らなかったので、自分の好きな音楽を聴くには実際にゲームをやるしかなかったんです。『ハーメルンのバイオリン弾き』(1995)もセーブができないので、ゲーム終盤の曲を聴くために3~4時間かけてプレイしたりもしていました(笑)。

MONO NO AWARE のルーツを探る、熱烈偏愛ゲームミュージックはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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