BIGMAMAの唯一性と革新性を象徴する
〝Roclassick”、その最新型を観た

Roclassick tour 2019 2019.10.17 渋谷CLUB QUATTRO
東名阪クアトロをまわったBIGMAMAの『Roclassick tour 2019』。そのツアーファイナル公演が10月17日、渋谷CLUB QUATTROで開催された。
改めて説明すると、〝Roclassick”とは、BIGMAMAによるロックとクラシックの融合をテーマとしたシリーズのこと。“バイオリニストのいるロックバンド”である彼らならではの視点でクラシックの名曲が再構築されており、例えば、同シリーズの起源にあたる曲=「Cinderella~計算高いシンデレラ」(2008年リリースのシングル「Weekly Fairy Tale」収録)は、パッヘルベル「カノン」がモチーフとなっている。
BIGMAMA 撮影=高田梓
2010年の『Roclassick』、2014年の『Roclassick2』とBIGMAMAは同シリーズのアルバムを過去に2作発表している。振り返れば、2010年は彼らが「メロディックパンク界隈だけに留まってはいたくない」「とはいえ自分たちはオリジナリティを確立できているのだろうか」と葛藤していた時期であり、4thアルバムに向けてバンドの風通しをよくするために『Roclassick』が制作されたような感があった。実際、『Roclassick』の次にリリースされたのは後の代表曲「秘密」を含むシングルで、確かにここでバンドの軸が定まった印象。そんな経緯から、ファンにとっても“BIGMAMAといえばRoclassick”という認識があるため、また、クアトロはBIGMAMAのワンマンにしては比較的キャパの小さいハコであるため、特に今回のツアーは、開催が発表された時点から話題になっていた。
BIGMAMA 撮影=高田梓
いつもとは違い、スーツ姿で現れた金井政人(Vo/Gt)、柿沼広也(Gt/Vo)、リアド偉武(Fr)、安井英人(Ba)、東出真緒(Vn/Key/Cho)。5人がステージ上でそれぞれ音出しを始める様子が、オーケストラで言うところの、指揮者登場前のチューニングのように見える。ここ最近はSEで第9が使用されることが多かったが、この日のSEはドヴォルザーク「新世界」。そこにギターのカッティング、バイオリンによるあのフレーズが重なり、「荒狂曲“シンセカイ”」が始まった。
同曲を終えたあとのセッションでは既に次の曲のコードが鳴っており、金井の唄い出しにより、それが「虹を食べたアイリス」だと確信したオーディエンスが喜びの声を上げる。ベートーヴェン「運命」をモチーフとした同曲のシリアスさに対し、3曲目「走れエロス」は爆速2ビートでクラウドサーフも続出。バイオリン、ギター、ベースがヴィヴァルディ「春」の一節を奏でるアウトロにもテンションが上がる。
BIGMAMA 撮影=高田梓
「ダイヤモンドリング」までを演奏し終えると、金井が一言挨拶。ギターに合わせてエルガー「威風堂々」のメロディをシンガロングした「bambino bambina」の軽やかさから、そのまま「Zoo at 2 a.m.」へ突入する流れだ。ツアータイトルに掲げられているように、セットリストの中核を担うのは『Roclassick』および『Roclassick2』収録曲。ステージとフロアの距離が近い会場ということもあり、メインのメロディだけでなく、いわゆるオブリガート(セカンドメロディ)もダイレクトに聴こえてくる。そのため、観ている側からすると「目も耳もワンセットじゃ足りない」的な、嬉しい悲鳴を上げたくなる瞬間多数である。
数百年単位で親しまれてきたあまりにも有名なフレーズに対し、それとは別の存在感あるメロディを生み出してはぶち当てることのできる、コンポーザー・金井政人の作家性。緻密さを求められるアンサンブルを破綻させず成立させることのできる、メンバーの演奏力・表現力の高さ。猿になって知性を失うことも、理性の言いなりになってバンドとしてのロマンを失うことも避けたいと願う――ゆえにその真ん中を突き詰めるに至った、真面目で天邪鬼なバンドの性格。それらBIGMAMAの愛すべき特性が、次々と演奏される曲たちによってどんどん浮き彫りになっていく。始まりのコードで次にやる曲が分かった瞬間や、各メンバーが鋭いプレイを見せた瞬間に、フロアから都度上がる歓声。場内はオーディエンスの熱気で蒸し暑くなり、壇上のメンバーは順々にスーツの上着を脱ぎ始める。
BIGMAMA 撮影=高田梓
セットリストの後半に差し掛かると、『Roclassick2』以降に発表された曲も多く登場。11曲目の「mummy mummy」は今年4月にリリースされた比較的新しい曲で、バンドの成熟から来るハードロックサウンドが持ち味。同曲の前に配置された「Animanimus」には今の彼らが鳴らすからこその“重さ”があり、曲順の妙によって、バンドの進化が改めて語られたような手応えがあった。「Royalize」~「Moonlight」のロマンティックな流れにも心奪われたが、「Moonlight」の最後に東出が鳴らす音と、直後に始まるSEの最初の音が同じ音程で、非常に滑らかに「ファビュラ・フィビュラ」へ移行する演出も心憎い。「Strawberry Feels」からビートを絶やさず「Flameout」に繋げる流れに関しては、フィジカル面でもテクニック面でも高い水準のものがバンドに求められる感じがあるし、そうして自分たちに課したハードルをきちんと越えられているのが驚異的。<最前線の衝突で咲き誇った火花のように/気高く美しくあれ>のフレーズがステージ上の彼らのことを端的に言い当てていた。
BIGMAMA 撮影=高田梓
バンドの豊かな音楽性を縦断するようなライブを観て改めて思う。往年の名曲に斬新なアプローチを仕掛けられたのは、彼らがいちジャンルに囚われず変化に挑むことのできるバンドだったから。また、BIGMAMAのフォロワーと呼べるバンドがなかなか現れないのは、彼らのやってきたことが容易く真似できるようなことではなかったからだろう。「まだライブハウスでしか聴けない新曲があるんですけど、どうですか?」(金井)と紹介された未音源化曲「St. Light」は、それまで演奏された13曲中唯一高速4つ打ちが取り入れられた曲で、そのこともかなり象徴的だったように思う。要するにBIGMAMAは、フェスの隆盛とともに勝ち上がろうと目論むバンドが多いシーンの中でその波に乗らなかったというか、そういう勝ち方を選ばなかったバンドだった、ということ。そうして独自進化していった結果、気づいたら誰もいないところに踏み入れていました、みたいなすごさが今のBIGMAMAにはある。
リアドのビートや観客の手拍子で曲間を繋げるなか、「No.9」、「Sweet Dreams」、「MUTOPIA」を会場全体で唄い鳴らし、ライブはいよいよクライマックスへ。「計算高いシンデレラ」を終えたあと、金井が「『Roclassick tour 2019』、渋谷クアトロ、BIGMAMAでした。ありがとうございました!」と挨拶してライブが終了。――と思いきや、5人が締めの一音を鳴らす背後ではうっすらとSEが流れており、「ラストにあと1曲だけ、新しい『Roclassick』からいいですか?」(金井)と、ヴェルディ「怒りの日」をモチーフにした新曲「誰が為のレクイエム」が演奏された。
BIGMAMA 撮影=高田梓
「誰が為のレクイエム」は12月にリリースされるコンセプトアルバム第3弾『Roclassick ~the Last~』に収録される予定で、同アルバムを以って、Roclassickシリーズは完結を迎えるという。Roclassickが終わってしまうのは正直寂しいが、「誰が為のレクイエム」は先に書いたような“BIGMAMAのすごさ”を凝縮したような曲で、どことなく集大成感も漂っていたため、個人的には納得できる部分も多い。
「12月25日、空けといてください。2020年もRoclassickツアーでお会いしましょう」と去り際に金井が言っていたように、今年のクリスマスワンマンは『Roclassichristmas』と名付けられているほか、年明けからは新たな全国ツアー『Roclassick Tour 2020』が始まる。Roclassickの完結は、バンドにとっていったい何を意味するのか。その真相をぜひ現場で目撃してほしい。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=高田梓

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