【インタビュー】saji、新たに飛躍す
る希望に満ち溢れた3人の決意を込め
た新曲「ツバサ」

saji-サジ-というバンド名を聞いて“?”と思う人もいるかもしれない。しかしphatmans after school」が改名したんだよと言えば、「ああそうか」と気づく人もいるだろう。バンドの転機は今年の7月。改名と同時にキングレコード移籍を発表し、満を持してリリースされるのが新曲「ツバサ」だ。TVアニメ『あひるの空』エンディング・テーマとして書き下ろされたこの曲と共に、バンドが新たに飛躍する準備は整った。改名の経緯、楽曲制作、そして新たな目標について、希望に満ち溢れた3人の言葉を聞こう。

■「saji」って造語ではないので引っ掛かりは少ないけれど
■僕らが成長して大きな存在になれたらちゃんと浸透すると思う

──なにはともあれ、改名の話からしましょうか。

ヨシダタクミ/Vo&G(以下、ヨシダ):僕ら、元々はphatmans after schoolというバンド名で、3人が同じ音楽学校だったんですよ。名前の由来は、学校の音楽スタジオで放課後によく練習していたということと、その頃ONE OK ROCKが流行っていて、名前の由来が確か1時によくスタジオに入っていたからということだったので、僕らもそれにかけて「after school」を入れようと。それからその前に付ける言葉をいろいろ考えて、一番語感的に良かったのが「phatmans」だった。「phat」はアメリカのネット・スラングで「かっけー」ということで、普段は普通の学生だけど、自分の輝ける場所にいる時はかっこよくあれるみたいな、そういうふうな説得の仕方をして(笑)。

──あはは。

ヨシダ:誰しも輝ける場所がある、それが僕らにとっては音楽なんです、という意味合いを付けて。それからこの3人、もう一人同級生のドラムと4人でやっていまして(2016年脱退)。その後をすっ飛ばして言うと、phatmans after schoolとして9年ぐらいやってきて、今回『あひるの空』という、僕が昔バスケをやっていた頃にリアルタイムで読んでいた漫画原作のアニメが放映されると。そのエンディングテーマに使用していただけるということで、僕らも心機一転、年代的にも少年から大人になったので、このタイミングでバンド名を改めようと思ったんですね。
▲「ツバサ」【初回限定盤】
▲「ツバサ」【通常盤】

──はい。なるほど。

ヨシダ: phatmans after schoolって、超長いじゃないですか。しかもphatが読めない人もけっこういて、その反動じゃないけど「超短くしよう」と。みんなで言葉を探してる時に、ユタニが「サジって、響きいいよね」と言い出した。サジっていろんな意味があって、人名でもあるしスプーンのさじでもあるし、日本語として面白いなと思って。響きがいいし、そこに僕らのストーリーが重ねられるからこれにしようと。

──ふむふむ。面白い。

ヨシダ:僕らは少年の頃、右も左もわからないままだったけど、やっていくうちに自分たちなりに気づくこともあって。今回、新しいステージでやれることになった時、今度は自分たちの力で生きていきたいなと。さじはものを掬うものだから、自分たちの人生を自分たちで掬うと意味で、自分たちで選択権を持って自分たちの人生の面倒を見ようと。それで「サジ」に決めたんですけど、「サジ」は平仮名でも漢字でもちょっとダサいんで、ローマ字の「saji」にしました。ただ、まだあんまり「sajiです」って名乗ってないんで。
▲ヨシダタクミ(Vo.&Gt.)

ユタニシンヤ/G(以下、コタニ)まだ慣れてない(笑)。

ヨシダ:これからCDを出してライブをやって、自分の名前になっていくかなという感じですね。いちおうバンドの先輩方に「名前変わるんですよ」と言って、僕だけでも10組ぐらいバンドのボーカルに聞いたんですけど、一番腑に落ちると言ってくれたのが「saji」だったんです。造語ではないので引っ掛かりは少ないけれど、僕らが成長して大きな存在になれたらちゃんと浸透してくれるだろうし。phatmans after schoolから見ると、何でも落差はあるので。

ユタニ:前の名前も気に入っていましたけど、一回言っても絶対に覚えてもらえないんですよ。ファントム?とか。

──ちなみに相談した相手って?

ヨシダ:仲のいいヒトリエLEGO BIG MORL空想委員会とか。あとはだいたい先輩に聞いてみました。後輩だと気を使って、「ダサいですね」とは言えないじゃないですか(笑)。

ヤマザキヨシミツ/B 以下、(ヤマザキ):僕は嫌がっていました(笑)。でも変えるタイミングでは、何を付けても変に感じちゃうけど、一番違和感ないのが「saji」だったんで。自分で名乗っても恥ずかしくないというか。

ヨシダ:そこは一番のテーマでしたね。自分で名乗りやすい名前。それと、色が付かなそうなのが良かったんですよね。バンドって、バンド名とアーティスト写真でだいたい何をやるかわかるじゃないですか。でも僕は曲を雑多に書いてしまうタイプなので、イメージの整合性がとれるものがいいのか、無色なものがいいのか、さんざん話して「saji」に決めました。元々「ツバサ」という新曲は決まっていたので、かっちりした名前を付けて「ツバサ」という曲を出して、どういう人なのかな?と思われるのも考えものだなと思ったので。
▲ユタニシンヤ(Gt.)

──まっさらで、どんな色が付いてもいい。

ヨシダ:そうです。たとえばバンド名が「四面楚歌」で、「ツバサ」という曲を歌っていたら、情緒不安定でしかないじゃないですか(笑)。

ユタニ:セカンド・シングルに何が来るか怖い(笑)。

──気になるファンの反応は?

ヨシダ:基本的には好意的な人が多いですね。もちろん「違和感がある」という人も多いですけど、あとは一緒に進んでいくしかない。曲に関しては昔の曲も大事に歌っていくつもりなので、大丈夫かなと思います。

──音楽性、作り方は変わらない。

ヨシダ:そうですね、主題は変わらず。ただ、おのおのの個性をもっと出して、曲はもっとメロディが映えるような曲を出して行こうかなと思ってます。ドラムがいた頃は、セッションで作った曲が多かったんですけど、そこは変わりましたね。
■「棗」のようにサビでドキドキできる曲で
■あの頃の自分が「この曲いいな」と思ってくれる曲を書きます

──新曲の話をしましょう。『あひるの空』のエンディング・テーマソングの依頼が来たのはいつ頃だったのか。

ヨシダ:アニメの話自体は2年前なんです。phatmans after schoolとしてワンマンツアーを回っていて、東京ファイナル直前に当時のマネージャーに連絡をいただいた。その前まで、ヨシダタクミとして水樹奈々さんとかに曲を書かせていただいて、キングレコードさんにはお世話になっていたので、そっちのお話かなと思ったら、「バンドにお願いがありまして」と。「『あひるの空』という作品がありまして」「めっちゃ知ってます」「それをついにアニメ化するんですけどエンディングをバンドでお願いしたい」と。僕にとってはありえないお話で、「僕らで良ければぜひ」と。原作者の日向武史先生も僕たちの曲を聴いてくださっていて、「棗」という曲がすごく好きだと言ってくださって、じゃあ「棗」のようにサビでドキドキできる曲で、『あひるの空』を読んでいたあの頃の自分がアニメを見た時に「この曲いいな」と思ってくれる曲を書きますという話をして、提出したら一発OKだった。

──おお。素晴らしい。

ヨシダ:最初は「ツバサ(仮)」だったんですけど、歌を録り終わったぐらいに「ツバサ」がいいねと。漫画の中でも、主人公が「僕の翼です」とよく言うので、わりとすんなり決まりました。レコーディングも1年以上前ですね。アニメの放映時期に合わせる形でリリースが今になって、ちょうどバンドの変遷期と重なった感じです。
▲「ツバサ」【初回限定盤】
▲「ツバサ」【通常盤】

──結果的に、バンドの新たな旅立ちにふさわしい曲になった。

ヨシダ:そうですね。僕らの門出を背負ってはばたいてくれる曲だと思います。

──どんな曲ですか。ユタニさん。

ユタニ:アニメの世界観に沿って、スポーツ漫画なので爽やかにしようと思って、僕が一番大変だったのはイントロですね。タクミが送ってくれたデモの中に仮のイントロがあって、それを超えるのが大変でした。いろんなパターンを作って録って、「どれがいい?」という作業を繰り返して。

ヨシダ:情景が浮かぶようにしたかったんですよ。部活動は学校の放課後が多いから「夕焼けとか空が見える感じにしてほしい」と言われて、ああいう曲調にしたんです。

ヤマザキ:メロディや歌詞をなるべく聴かせたいと思いました。この手の曲はだいたいシンプルになるんですけど、シンプルになりすぎると自分でアレンジした感じがしないから、無理やりフレーズを付けることもあって。でもこの曲はすんなり決まりました。それはメロディやギターのイントロがいいからだと思います。

──カップリングは2曲ですね。

ヨシダ:「猫と花火」はもともと「ショートカット」というタイトルで女の子が出てくる曲なんです。物語としては日常のカップルの歌なんですけど、今まで僕は日常に落とし込んだ曲は少ないので、自分の中ではけっこう冒険しました。冒険といえば、今回のジャケットがショートヘアーの女の子の画なんですけど、こういうのも初めてなんですよ。この曲に女性ボーカルを入れることは決まっていたので、ジャケットに合わせてフェミニンな要素も含ませたいと思って曲名を考えて「猫と花火」になりました。「まだ何者でもない君へ」は、僕ら世代よりもっと上の世代と共感したいなと思って書いた曲です。夢を追いかけることの大切さを歌った曲ですけど、僕自身がまだ夢を叶えられていないので。夢を持つことって、若い頃は言えますけど、大人になるとしんどくなってくるじゃないですか。今の生活がある中で、自分の心と折り合いをつけるのが難しくなってくるけど、こういう仕事を選んだからには、もうちょっとわがままに行きたい。ギャンブルと同じで、ずっと張り続けられるかだと思うんですよ。ずっと自分の人生に張り続けられたら、いつかは勝つと思うので。自分自身、将来折れそうになった時に聴きたい曲です。
▲ヤマザキヨシミツ(Ba.)

──良い曲が揃いましたね。そしてライブが12月18日に代官山UNITで。

ヨシダ:sajiになって初のワンマンライブです。2019年のうちにやりたかったんですよ。ワンマンをやったことはないですけど、イベントで2回ぐらい出たことがあるので、ここがいいんじゃないかと。馴染みのないハコでやるよりは。

ヤマザキ:インストアとか、テレビの撮影とかはありましたけど、ハコでライブするのが久々なので。単純に楽しみです。

ユタニ:早くみんなの前でライブしたいです。

──「新人バンド」としての、あらためての目標は?

ヨシダ:ユタニはずっと、武道館に立ちたいと言っていますね。

ユタニ:バンドを始めた時からの夢なので、あそこに立ちたい気持ちは今でも変わらないです。

ヨシダ:ちなみに、誰を見てそう思ったんですか。

ユタニ:何だろう? イメージかもね。

ヨシダ:僕はストレイテナーの武道館(2009年)のビデオを学生の時にめっちゃ見てました。照明のレーザーの使い方がめちゃめちゃきれいで、バンドがよりかっこよく見えたんですよ。「ここかっこいいな」と思って見ていた記憶があります。

ヤマザキ:僕、具体的な目標が特にないんですよ。

ヨシダ:現代っ子ですね(笑)。

ヤマザキ:バンドをずっと続けていきたいし、やめる気もさらさらないんですけど、長くやれればいいなという感じで、武道館とか、横浜アリーナに立ちたいとか、特にないんですよ。

ヨシダ:僕らより下の世代のミュージシャンにはけっこう多いですよ。「長くやれればいい」って。でもそれが一番難しいから、逆にすごいと思う。ユタニに関しては、昔ながらのステレオタイプのミュージシャンになってほしいと僕は思っています。デカいライブをやって、いい車を買うとか。
──ああー(笑)。古典的なロックスター。

ヨシダ:今はユーチューバーを目指す子が多いじゃないですか。僕ら世代でも、バンドやってクリエイターやって、気が付いたらユーチューバーになって稼いでる子とかけっこういるんですけど、あれはわかりやすく夢を見せてあげてるからだと思うんですよ。昔のロックスターはお金を持っていて、豪邸建てて、いい車に乗って、スタジオを建ててみたいな、あれをわかりやすく体現してる若いバンドは少ないと思うので。ユタニがフェラーリに乗ってきたら、夢があると思うんですよ。音楽ってそんなに稼げるんだと思うだろうから。言い方悪く言うと、あんな奴でもフェラーリに乗れるみたいな。

ユタニ:俺、ポルシェがいいな。

──そういう問題か(笑)。

ヨシダ:でもそれがすごく大事だと思います。「こんな僕でもなれるんじゃないか?」というのが。僕がバンドを始めたきっかけですから。もっととっつきにくい音楽を聴いてたら最初からあきらめたと思う。

──なるほど。このバンドはそういうところから始まってるのか。

ヨシダ:そう。導入が「僕でもできるかもしれない」と思わせてくれたバンドが多い世代なので。それで始めた人が多いと思いますよ。それがわかりやすくできるバンドになるのは、僕の夢でもありますね。

──新たな旅立ちを祝して。高く飛べますように。

ヨシダ:はい。頑張ります。

取材・文●宮本英夫
リリース情報

New Single「ツバサ」
2019.10.23 Release
<初回限定盤>CD+DVD
KICM-91985 \1,500+tax
<通常盤>CD ONLY
KICM-1986 \1,200+tax
CD収録内容
M1:ツバサ(TVアニメ「あひるの空」エンディングテーマ)
M2:猫と花火
M3:まだ何者でもない君へ
※M3については通常盤のみの収録となります。
初回限定盤DVD
◆「ツバサ」MUSIC VIDEO
◆「ツバサ」MUSIC VIDEO -another edit ver.-
◆“saji” Recording Document

ライブ・イベント情報

<saji 1st Live 2019 ~尾羽打チ枯レズ飛翔ケリ~>
2019年12月18日(水)代官山UNIT
問い合わせ先:
HOT STUFF PROMOTION:03-5720-9999(平日12:00~18:00)

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

新着