chelmicoのワンマンがあまりにも楽し
かった件
ひたすら文化的でインディペンデントな
2時間を見た。
chelmicoのライブを見るのはこれが初めてではありません。表参道のWALL&WALL、渋谷のVISIONやASIA、その他片手では収まらないぐらいステージ上の彼女たちを見ております。けれども、それらはいずれも複数のアーティストが出演するフェス型のイベントでありました。つまり、筆者にとってchelmicoのワンマンライブはこれが初。多くのアーティストに言えることでしょうが、“完全ホーム”の状態で繰り広げられるパフォーマンスはフェスのそれとは濃度が全然違います(もちろんフェスはフェスで楽しいですが)。
何せ、待ちのBGMから自分たちで決定できるわけですからね。開場の瞬間からchelmicoの世界観を堪能できる。しかも彼女たちはその点を確実に意識しています。バックDJを務めるTOSHIKI HAYASHI (%C)によって選曲されたトラックは、徹頭徹尾計画されていました。ロード・フィネスの「Soul Plan (Cookin Soul remix)」やBASIの「キムチ」などに加えて、chelmicoの片割れであるMamikoの「Contact TOSHIKI HAYASHI (%C) remix」がかかっていました。待ちのBGMならばフェスでも設定できますが、今回のワンマンの場合はDJのミックスに近かったように思います。曲数も多く、コンセプチュアル。ただ音が鳴っているだけでなく、そこにはしっかり情熱がありました。
この日もそう。「EXIT」で軽やかに幕を開け、「爽健美茶のラップ」のアッパーな4つ打ちでフロアの心を掴み、そのままMCへ突入します。
喋りの内容も縦横無尽です。「木村拓哉さんが新しいアルバム出したらしいよね。でもウチら何も聞いてないよね。秘密だったね。ということで次の曲は、『ひみつ』」。ちなみに前日の公演では、TOKIO城島茂の結婚に触れてました。今の中学・高校のような集合体の中で、アベレージな話題ってどれだけあるのでしょう? これだけ細分化が極まっている昨今、そのような最大公約数を見つけるのはなかなか難しい。chelmicoはそこを見出しつつ、ニッチな方面へも舵を切るのです。ふとした時に『地獄のミサワ』のようなワードが飛び交う。
そしてもちろん、それは音楽にも反映されています。たとえば先の「ひみつ」や「Balloon」などは、次代のトラックメイカーShin Sakiuraによって共同アレンジされました。それも彼女たちはMCで明らかにするわけですよ。今回のライブでは彼の名前をはっきり出していました。それを聞いたオーディエンスがウチに帰って彼のワークスを調べ、「Cruisin’ (feat. SIRUP)」にたどり着いてハウスミュージックに開眼する可能性だってあるわけです。素晴らしいじゃないですか。
終盤は畳みかけるようなキラーチューンのラッシュです。ここまで『Fishing』の楽曲を中心としながら自由にライブを進めてきましたけども、ここへ来て「ラビリンス’97」、「Highlight」、「Player」を連続でかましてきました。「最高潮」をぐいぐい更新してゆく熱量の高まり。一体どこまで行ってしまうのか。RIP SLYME直系の軽快なリズムで賑やかにラップします。
締めくくりには、『Fishing』から「Bye」を。改めて反芻しながら書いてゆくと、よくできたセットリストですね。
「謝辞。わたしたちがここまで来られたのは、オーディエンスとスタッフとトラックメイカー、みなさんのおかげです。本当に感謝してます。それしか言えない」。あえて上で書かなかったのですが、「Love is Over」のプロデューサーは人気音楽ユニットの三毛猫ホームレスです。彼女たちが言うように、結成以来chelmicoには他者の存在が重要でありました。ヒップホップには元来サンプリングカルチャーがありますから、その意味では正統派です。そして彼女たちの場合は、先述の通り文化を「再定義」あるいは「再解釈」してゆく側面もあると思います。バラバラになってしまったカルチャーの世界を再び作り直すことができる、今最も可能性のあるユニット。それがchelmico。
Photography_Masato Yokoi
Text_Yuki Kawasaki
■ chelmico Fishing Tour Final 2019.9.29@BLITZ AKASAKA
<セットリスト>
M1. EXIT
M2. 爽健美茶のラップ
M3. switch
M4. BEER BEAR
M5. ママレードボーイ
M6. ひみつ
M7. 12:37
M8. Navy Love
M9. Timeless
M10. 仲直り村
M11. 午後
M12. Balloon
M13. OK, Cheers!
M14. Summer day
M15. ラビリンス’97
M16. Highlight
M17. Player
M18. Bye
〈ENCORE〉
EN1. Oh! Baby
EN2. ずるいね
EN3. Love is Over
chelmicoのワンマンがあまりにも楽しかった件はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。