【連載】山岸賢介(ウラニーノ)[vo
l.15]連載ドキュメント~フリーラン
スへの道~第2話「再起」

BARKS読者の皆さん、お久しぶりです!結成18年、ロックバンド「ウラニーノ」のボーカル山岸です。ちょうど1年前に事務所から独立し、かっこよく言えばフリーランス、かっこ悪く言えばフリーター(どうして語尾だけでこんなに印象違うんだ…)になったアラフォーバンドマンの現実を綴るドキュメントです。どこにも書いていないリアル。

連載ドキュメント~フリーランスへの道~第2話「再起」

さて、事務所とバイトの2足のわらじを脱ぎ捨て文字通り裸一貫になった私に(
)、途方に暮れている時間などなかった。覚悟と自覚を持ってバンドと己の体制を立て直さなければ。まずリアルな話、食いぶちを探さなくてはいけない。事務所からもらっていた給料とバイトで稼いでいた給料と半々くらいで生計を立てていた私が同時にどっちも失ったのだ。笑えない。

よし、フリーランス。自主でバンドで食っていくぞ。そう思いながらまず私が起こした行動は、情けないことに過去に働いていたバイト先に電話をすることだった。その職場のマネージャーはもう15年近いつき合いであり、渋谷公会堂でワンマンライブをした時に終演後の物販で満身創痍の私に「お疲れさま」の一言もなくシフトの相談をしてきた鉄の女である。久しぶりに聞くその声に懐かしさを覚えつつ、職場に戻れないだろうかと相談したところ、「ちょうど一人鬱病でやめちゃったんです~♪ぜひ帰ってきてください!」と内容のヘヴィーさとかけ離れた明るい声で歓迎してくれた。こうして私は実にあっさりと過去の職場に舞い戻り、ひとまずの「食いぶち」を確保した。

さて、ここからが問題である。事務所所属から野に放たれたウラニーノというバンドを、自分たちの意志と力で動かしていかなくてはならない。途方もないが、妙な解放感がある。我々は自由なのだ。正直、冷静に考えもせず、まずは勢いだけで動いた。ツアーをやろう。これまでフットワーク軽く全国行脚してきたツアーバンドの我々が、近年はリリースがないこともあって地方を回らせてもらえなくなっていた。まずは、独立のご報告に各地へ行こう。お世話になっていた地方のイベンターさん、ライブハウス店長に連絡をする。久しぶりにも関わらず、皆さんが口を揃えて「これからも変わらず応援するよ」と言ってくれる。この頃の私はこの言葉にしょっちゅう泣いていた。人のやさしさが身にしみる。今思えば実はけっこうメンタルやられていたのかもしれない。痛いおっさんである。

こうして独立後すぐにワンマンツアーを発表。大きすぎず、身の丈にあったキャパのハコでとりあえず新たな一歩を踏み出そう。そんな思いであった。

しかし、ツアーにはお金がかかる。経費を出してくれる事務所はもういない。いつか訪れるであろうこんな将来のために2人で少しずつ積み立ててきたバンド貯金。そんなもの、あるはずもない。CDも作っていないので、リリースツアーにもならない。さぁ、どうする。ここで我々の活路を照らしてくれた光こそ、「農家Tシャツ」である。
農家の長男小倉範彦デザイン「農家Tシャツ」。これは実は数年前から構想はあった。最初の試作品はすでに3年前ほど前に完成しており、記念すべき1着目は小倉本人が着用していたが、ムロフェス出演時に強風にあおられ東京湾に流れていってしまったという(状況が謎すぎる)。この農家Tシャツのグッズ化を我々は事務所に打診していた。しかし、「意味がわからない」と事務所はこれを却下。グッズ化は実現されなかった。しかし、今思えばあれは社長のやさしさだったのかもしれない。事務所でグッズ化すれば売り上げは全額事務所の収益となる。もしかしたら我々の独立を見越して、来るべき時が来たら自分たちで出してそれを独立資金にしなさい、そんなやさしさだったのかもしれない。というのは私個人の予想で、実際に「意味がわからなかった」可能性も大いにある。
いずれにしてもこの農家Tシャツに我々は独立後最初の勝負をかけた。「いや、音楽で勝負しなさいよ」と言われそうだが、経営面だけを考えればグッズはバンドにとって音楽と同等、いやそれ以上に重要なのである。プロモーションはいたってシンプル。とにかく自分で着まくる。そして知り合いに無理やり着させる。それらの写真をひたすらSNSにアップする。「なんだあのTシャツ?」。それでいい。やがて「なんかかわいい」「オシャレかも」「欲しいかも」に変わればいい。

そして大きな山が動く。FM高知「農家Tシャツプロジェクト」が発動し、この農家Tシャツは我々の想像を超える広がりを見せ、後ろ盾を失った我々の大きな支柱となっていくのである。

フリーランス1年生のバンドマンの切実でリアルな格言。

「グッズはバンドの生命線」

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は第3回「音源」をお送りします。
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