【ライブレポート】<Mt.FUJIMAKI>
藤巻亮太ら、絶景の富士を背に大合唱

藤巻亮太/Photo by RYO HIGUCHI

藤巻亮太主催の野外音楽フェス<Mt.FUJIMAKI>が、9月29日(日)に山梨・山中湖交流プラザ きららにて開催された。当日のレポートが到着したのでお届けしよう。
頭の上に広がっているのは、アニメのワンシーンに出てきそうな嘘のような青。たしか予報はどれも、きっと雨が降りますから、って言ってなかったっけ? でも今日は許す。まるで空が大笑いしているような天候のもと、第2回目となる藤巻亮太が主催する野外音楽フェス<Mt.FUJIMAKI>が行われた。

振り返れば、第1回目となる昨年も天気には恵まれ、富士山がでっかい笑顔を見せていたが、今年の景色の良さは段違い。おまけに夏が戻ってきたような暑さに誰もが、信じられない、という表情を浮かべている。そんななか、安堵のため息を漏らしていたのは藤巻その人で、「日々、天気予報を見て一喜一憂していた」と話していた。

これはきっとどこかの誰かが開催を祝福してくれているに違いない……そんな気持ちになっていたのは出演者たちも同じくだったようで、大塚 愛は嬉しさのあまり「藤巻さん、晴れてますね!」と同じセリフをリピートしていた。でも、ステージのうしろにそびえ立つ富士山が祝福してくれたならばここがどれだけ素晴らしい空間になるのかをいちばんわかっているのは、参加者かもしれない。おいしい空気を思いっきり吸い込みながら激しく手を叩き、踊りまくる彼らを眺めつつ深くそう感じた次第。

海無し県である山梨に生まれたために海へのあこがれが強かった、という藤巻のMCに導かれて奏でられたMt.FUJIMAKIのテーマソング「Summer Swing」がフェスのオープニングを飾る。夏の終わり特有のノスタルジーに浸りたくなる心情をくすぐってやまない甘いムードが太陽の下のアイスクリームのようにトロトロと溶けていく。
曽我部恵一/Photo by RYO HIGUCHI

藤巻からバトンタッチされたのは、トップバッターの曽我部恵一。会場である<山中湖交流プラザ きらら>がこんなにも素敵な場所だと思わなかった、と感動を口にしていた彼。大きな雲が形を変えながらゆっくりと流れていくなか、彼の喜びにあふれた歌声が会場を満たしていく。セットリストは「キラキラ!」や「青春狂走曲」など曽我部恵一バンドサニーデイ・サービスのレパートリーを交えたもので、会場の雰囲気にばっちりフィット。この風景に郷愁を感じたからなのか、MCで「田舎を出ると地元の良さがわかるというけれど、最近ようやく地元の良さもわかるようになった」としみじみ語ったあと、サニーデイの名曲「東京」を披露。心温まるシーンを演出。

お楽しみのひとつである藤巻とのデュエットコーナーで選ばれたのは、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の生・ライヴでもセッションした「サマー・ソルジャー」。どうしようもなく泣けてしまったけれど、たぶんきっと、それは天気のせい。
teto/Photo by RYO HIGUCHI

灼け付くような日差しと共に登場したのが、粗削りでハングリーなサウンドが魅力の4人組、teto。フェスに若い力を取り入れたい、ということで選ばれた彼らは、熱い血潮をたぎらせたパフォーマンスを披露、見事なまでに期待に応えてみせた。MCもヒリヒリするほどの熱量で、「山中湖を光るまちにして帰りましょう!」とかカッコいいセリフもビシビシ決まる。琴線を刺激してやまない彼らのエモーショナルな演奏姿は、あっけにとられ気味だった観客たちに消えない跡を残したに違いない。
ORANGE RANGE/Photo by RYO HIGUCHI

会場をノセる、ということでいえば、藤巻と同期にして現在はレーベル・メイトであるORANGE RANGEの仕事ぶりはまさに圧巻だった。百戦錬磨の盛り上げ術でもってフェスのスペースをあっという間にパーティー会場へと変貌させてしまった彼ら。「上海ハニー」「以心電信」「イケナイ太陽」と次々に繰り出される必殺技の数々に、みんなカチャーシーを踊りながら飛び跳ねまくる。
▲大塚 愛/Photo by RYO HIGUCHI

徐々に上昇していく会場の温度をゆっくりとクールダウンさせたのが、大塚 愛の歌声だった。Mt.FUJIMAKI初の女性アーティストとなる彼女は、バラード「プラネタリウム」などでしっとりした空気を振りまき、華を添えるという表現が似つかわしい華麗なパフォーマンスを披露していく。もちろんアップ系で会場を沸かす場面もいろいろ登場。なかでも歌詞の<地球っ子>を<藤巻っ子>と変換して歌った「ロケットスニーカー」のときの元気っ子らしい溌剌ぶりに会場から大きな拍手が飛んだ。
岸田繁/Photo by RYO HIGUCHI

続いて登場したのは、地元京都にて主催するフェス<京都音博>を終えたばかりとなるくるりの岸田繁。「キャメル」「男の子と女の子」「宿はなし」「Baby I Love You」とじっくり弾き語りを披露したが、ハートフルな歌声が高い空に溶けていく様子がとても心地よく、そっと秋の気配を連れてきてくれた。
トータス松本/Photo by RYO HIGUCHI

そしてゲストの大詰めに登場したのが、ウルフルズのトータス松本。上下白のスーツで颯爽と登場し、一発目から「ガッツだぜ」をぶちかますと会場の空気が一変。さっきまでまったりとまどろんでいた観客も一斉にステージ前へと押し寄せる。とにかく快調そのもの、といった様子で、爆裂ソウル・レヴューを展開してみせたトータス。口もまた滑らかで、藤巻バンドを<コナユキファイヴ>と勝手に命名して笑いもかっさらってみせるなど終始ノリノリ(「髪切ったね」とタモリさながらのトークで藤巻をいじるシーンも)。とにかく男前なパフォーマンスの連続で、弾き語りで歌われた名曲「笑えれば」、2018年に開催された<楽演祭>でも披露された藤巻とのデュエットによる「バカヤロー」もズバリ名演と言えるものだった。

そしてオーラスは、もちろん主役である藤巻亮太のステージである。若き日のエピソードトークに続いて「粉雪」からスタートしたが、曲が進むにつれて、何かタガが外れたかのように疾走感が溢れた演奏が増えていく。とにかく藤巻の歌声は高揚感に満ち溢れていて、激しく感情を炸裂させるような歌唱が聴かれたのだが、そこには無事に晴れてくれたという喜び、それぞれの参加アーティストが感動的なステージを繰り広げてくれたという喜び、そしてこうして2回目が迎えられたという喜びなどが入り混じっていたように思う。そしてバンマスを務めた皆川真人をはじめとする<Mt.FUJIMAKIバンド>との一体感もまた素晴らしいものがあり、「南風」「スタンドバイミー」「雨上がり」と、暮れなずむ会場をまばゆい光で満たしていく。

彼がクロージング・ナンバーに選んだのは、母校・笛吹高校の後輩たちとコラボした「オウエン歌」。歌詞に並んだ言葉のひとつひとつにはみんなへの感謝の言葉とエールが込められていたが、それらを噛みしめるように聴き入っていた観客たちの顔が印象的だった。

最後の最後は、ステージに出演者たちが一堂に介して「3月9日」を大合唱。その感動的な光景を眺めつつ、来年もまたこの場所に戻ってくることを固く誓った。

■セットリスト<Mt. FUJIMAKI 2019>

2019年9月29日(日)山梨・山中湖交流プラザ きらら
■藤巻亮太
Summer Swing

■曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
・恋におちたら
・東京
・サマー・ソルジャー
・キラキラ!
・青春狂走曲

■teto
・高層ビルと人工衛星
・9月になること
・光るまち

■ORANGE RANGE
・上海ハニー
・Ryukyu Wind
・以心電信
・Enjoy!
・イケナイ太陽

■大塚 愛
・プラネタリウム
・Chime
・ロケットスニーカー
・クムリウタ

■岸田 繁(くるり)
・キャメル
・男の子と女の子
・宿はなし
・Baby I Love You

■トータス松本(ウルフルズ)
・ガッツだぜ!!
・バカヤロー
・笑えれば
・バンザイ〜好きでよかった〜

■藤巻亮太
粉雪
もっと遠くへ
南風
スタンドバイミー
雨上がり
オウエン歌

【アンコール】
3月9日
▲フリースペースステージ出演陣
▲(左から:KOIBUCHI MASAHIRO、室井雅也、KEISUKE、keiji)

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