ヒゲダンが描いた映画「HELLO WORLD」の世界とは

ヒゲダンが描いた映画「HELLO WORLD」の世界とは

ヒゲダンが描いた映画「HELLO WORLD
」の世界とは

9月20日に公開された注目のアニメ映画『HELLO WORLD』。その主題歌の一つが、先日Official髭男dismが配信した最新曲『イエスタデイ』である。
AI等の科学技術が発展し、将来的な活躍を夢見る現代だからこそ描けるサイエンス・ファンタジー。しかしその未来は、果たして夢と幸福にだけ溢れた世界なのだろうか。楽曲の歌詞から、映画の世界観を探っていく。
やり直したい過去、取り戻したい人
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
過去に戻り、今は亡き誰かとまた出会えるとしたら、あなたは誰を選ぶだろうか。
主人公・直実の未来の姿として登場するナオミ。彼は、後に失われてしまう恋人・瑠璃を取り戻すために直実の世に現れた。
この世は生と死の連鎖で成り立っている。彼女を救おうとすれば、別の誰かの命は失われる未来に刷り変わるかもしれない。
しかし、ナオミはきっとそんなことは気に留めない。誰を犠牲にしようと、世界が危機に晒されようと、厭わないだろう。
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
本当はすべての人にとって優しく幸せに満ちた世界を望んでいる。しかし、彼女を取り戻すためならば、自分が世界の敵となろうとも構わない。それほどまでに強い意志で、彼は直実の世に現れたのだ。
この歌の歌詞は、そんな瑠璃をめぐる直実とナオミの想いにより紡がれている。
「イエスタデイ」は過去の象徴
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
“また会いたい、話がしたい”と思い描く過去の人物に再び会うことが可能な技術があるとしたら、人はそれを利用せずにいられるだろうか。
その人が失われるという悲しく恐ろしい未来を知るからこそ、何としても救いたいと願うのは至極当然のことだ。
今を生きているからこそ、ずっと意識してしまう「イエスタデイ」。これはつまり、すべての「過去」の象徴ではないか。
その人が生きていたことも、失われてしまったことも、すべてはもう終わったこと。もう覆ることのない事実だ。
だからこそ、人は考えてしまう。“もしあの時こうしていたら”、“あの時そう言えていたら”と。人はきっとその呪縛からは逃れられない。
しかし、その過去を変えられる可能性を持つ技術の存在する『HELLO WORLD』の世界。主人公が選んだ行動は、先述の通りだ。
直実とナオミが最後に選ぶ世界は
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
時計の秒針のような音が刻まれる中語られる歌詞は、妙に寂しげで印象的だ。
我々が生きられる時間には限りがある。大切な誰かと語り合える時間も、決して永遠ではない。
現にこの世界では瑠璃は既に運命が確定した存在。彼女を救い出せるまでの時間は、僅かしかない。
そして、ナオミが未来から過去を覗きこむ間にも、未来での時間は流れている。きっと限りがあるのではないだろうか。そんな各々のタイムリミットを感じさせるキーワードが散りばめられている。
しかし、強さを得られたのだと自信を持って語る歌詞に、そんな焦燥や悲嘆は感じられない。
イエスタデイ 歌詞 「Official髭男dism」
https://utaten.com/lyric/mi19090903
今までのサビの歌詞とは異なり、過去を意識させるキーワードが消えた。最新の技術を持ってしても、まだ見ることの出来ない自身の可能性=新たな「未来」に向けて、一気に進む道が開けたかのような印象だ。
悔やみ、嘆き、ポケットの中で震えていたその手は、ついに大切なその人の手を掴んだ。彼らはもう迷うことなく邁進して行けることだろう。
さて、そうして2人だけの新しい未来へと旅立てるのは、一体誰だろうか。物語の最後に瑠璃の手を握り共に歩むのは、直実か、それともナオミか。
是非、あなたの目で結末を見届けて頂きたい。

TEXT 島田たま子
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