【インタビュー】片桐仁&やついいち
ろう(ザ・ぶどうかんズ)、<朝霧J
AM>で初ライブ「皆さんの目をシャキ
ーン!と覚ましたい」

毎週月曜から金曜の午前7時から始まるEテレの番組「シャキーン!」は、小学生を中心とした子どもたちが毎朝楽しみにしている人気番組だ。

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子どもたちを“シャキーン!”と目覚めさせて、楽しい一日のスタートを切ってもらう知的エンターテインメント番組。「いつもとは違うモノの見方」や「柔軟な発想力」が楽しみながら身につき、「体の目覚め」と「心の目覚め」を促します。
(番組公式サイトより抜粋)

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番組には“シャキーン!ミュージック”という月うたコーナーがあり、ハンバートハンバートザ・なつやすみバンドHomecomings、思い出野郎Aチーム、かせきさいだぁ、中村佳穂といったアーティストや作曲家による良質な楽曲がふんだんに散りばめられている。その中でも一際異彩を放っているのが、“ザ・ぶどうかんズ”の存在だ。

“ザ・ぶどうかんズ”はこの番組から生まれた唯一のロック・バンドで、片桐仁(ボーカル)、やついいちろう(ボーカル)、岩見十夢(ギター/作詞作曲)、玉川裕高(ギター/ex.コモンビル、赤い夕陽)、吉井功(ベース/ヨシンバ、カランツバターサブレ)、小寺良太(ex.椿屋四重奏moke(s))、中村佳穂(キーボード)、ファンファン(トランペット/くるり)という豪華メンバーで構成されている。

日本全国の子どもたちのハートをガッチリ掴んでいる彼らがまもなく開催される<朝霧JAM>にて初ライブを披露するというので、今回はフロントマンの片桐仁、やついいちろうの2人に、「シャキーン!」という無二の番組の魅力をはじめ、音楽フェス初出演への意気込みやこのバンドについて訊いた。

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■ 分かりやすくて深い歌詞

── まずは、番組「シャキーン!」とザ・ぶどうかんズの関係性から教えてください。

やついいちろう:「シャキーン!」は音楽のフックアップがものすごく早い番組で、才能溢れる方たちの曲がかなり使われていますよね。番組自体のメッセージ性も強く、クオリティも高い。それに歌を大事にしていると思うんです。曲1曲ごとにメッセージが込められていますからね。そういう番組の中で楽曲を演奏するバンドのひとつが“ザ・ぶどうかんズ”という形ですね。

── 毎朝、全国の子どもたちに音楽を届けることについてどう思いますか?

やつい:歌というのは何年経っても覚えているというのが自分の経験としてあるので、ザ・ぶどうかんズというバンドをやれて嬉しいなあと思います。子どもの思い出に残っているかもしれませんからね。それに大人も「そうだよな」と思うようなことも歌われているし、音楽好きには「この名曲の香りがするな」というのもまた面白いんじゃないのかなと。

片桐仁:子どもにも分かるってことは大人にも分かるってことなので、わりとストレートな歌を歌うのがいいと思いますね。「シャキーン!」の曲は、分からない人はいないと言えるくらい分かりやすい歌詞で深い。でもそれは“こういう考え方もある”ということが歌われているのであって、歌詞に感化される必要もないんだけど、毎日聴いていると何かしら入ってくるものがあるんじゃないかと。それに1つの曲に映像が何パターンかあるというのも他ではあまりないですよね。それは毎朝放送されるEテレ番組だからできることだと思います。もしかすると親にも引っかかっているかもしれないですよね。

── 親としては、子どもの世話をしながらなので腰を落ち着けては見られませんが、毎朝テレビから聞こえてくるので気がつけば歌詞も全部覚えています。大人も元気をもらっていますよ。

片桐:そういうのが面白いですよね。そういうつもりで頑張ってますから。

── ザ・ぶどうかんズについてお聞きします。結成の経緯というのは?

片桐:2016年の5月くらいです。


▲ザ・ぶどうかんズ(結成メンバー)

── やついさんはDJとしても活動されていますが、これまでバンド活動は?

やつい:初めてです。

片桐:僕も初めてです。

── 他のメンバーについて気になりませんでした?

やつい:仕事なんで、全然気にならないです。

片桐:「仕事なんで」はやめろ(笑)。

やつい:楽しみでしたけどね(笑)。みんな好きなバンドでしたから。コモンビルやヨシンバはもともと知ってたし、(岩見)十夢くんの歌も好きなんで。くるりのファンファンや、今をときめく中村佳穂ちゃんが後から入ったりして嬉しいなと思いました。そもそもザ・ぶどうかんズという名前も僕がつけましたからね。


▲ザ・ぶどうかんズ(中村佳穂加入後)

── バンド名の由来は?

やつい:学生の頃にやっていたフォーク・デュオ(笑)。僕と後輩の小松沢くんと二人で“ぶどうかんズ”というのをやっていたんですよ。ゆずっぽいデュオで「アイスクリーム」という曲でデビューしました。

片桐:この世に出たっていう意味のデビューね(笑)。

やつい:僕が作詞して小松沢くんが曲を作って。小松沢くんがギター買ったんですけど、カバーするほどうまくないんでオリジナルを最初にやろうってことで、暑かったから「アイスクリーム」っていう曲を作りました。

(一同爆笑)

やつい:そのぶどうかんズが「シャキーン!」で復活するとは思いもよらなかったです。

── 何年ぶりの復活ですか?

やつい:20年ぶりですね。もしかしたら本当に武道館公演をやれるんじゃないかってね。今回は<朝霧JAM>さんに呼んでいただいて嬉しいです。

片桐:だからなんで?(笑)。メインボーカルひとり以外、あとの7人全員変わってるでしょ。

── (笑)。一方で、片桐さんはバンドでボーカルを担うことについてどう思われていましたか?


▲ザ・ぶどうかんズ(中村佳穂加入後)

片桐:「シャキーン!」は毎月のように歌を新しく発表する番組で、2008年から10年以上やっている。それで1曲しか歌っていないということは、そういうことなんですよ。

── そういうこととは?

片桐:だからその、歌には苦手意識があったんです。でも、いい曲ですし、架空のバンドとして出るっていう構造も面白いなあと思ったんです。レコーディングして撮影したときに大変だなあと思いましたけどね。とにかく自分の歌が下手すぎて。やついは音楽畑に片足突っ込んだ人間ですから堂々たるものでしたけど、僕は…。まあ、しょうがないですよね、僕の声だから。「下手すぎるけどあれがいいんだよね」と言ってくる嘘を付けないママ友から、「なんか耳に残るのよね」って言われたりして。「それは曲がいいからじゃないですか?」なんて応えたりもしましたね。

── そんな風にはまったく見えませんが。

片桐:そこは俳優の力で頑張っています。

── なるほど(笑)。

◆インタビュー(2)へ
■ 子どもの歌にはならないですからね、レディオヘッドは

── ツインボーカルというユニークな構成ですが、実際やられてみてどうですか?

片桐:ザ・ぶどうかんズを始める前に、「シャキーン!」の曲を一人で歌ったことがありましたけど、ひとりボーカルは大変ですよ! どこ見て歌えばいいか分かんないし!

やつい:まぁ、ひとりじゃないから、ごまかせますよね。舞台をやっているので声量はありますし、音はパンクなのでそれが功を奏していると思います。これが歌唱力を必要とするものだと分かりませんが、パンクなんでぜんぜんオッケーだと思います。

片桐:パンクはオッケーなんだ?

やつい:はい。下手でいいですから。それに僕はいろんなバンドのオマージュができて嬉しく思っています。プロデューサーから「やりたいことある?」って聞かれたので「モリッシーやりたい」と言ってお花を用意してもらって。MVで花を振り回しているのはザ・スミスの「This Charming Man」的な感じでやっています。ただ、それ以降、やりたいことがなくなった(笑)。

片桐:そういう素養があるからいいですよね。僕にはミュージシャンとしての振る舞いがまるでない。やついはステージでの立ち振る舞いもすっごくうまいけど。

やつい:はい。「WAKE-AI-TAI」は完全にリアム・ギャラガーです。この写真も完全にリアム・ギャラガーを意識して。

片桐:へえ〜。じゃあ、俺にも言ってくれりゃあ良かったのに! 俺、分かんないから腕を組んでるだけだもん。


▲ザ・ぶどうかんズ(ファンファン加入後の現メンバー)

やつい:根本的にはイアン・ブラウンが好きなので、基本としてマイクをマラカスのように持ち、ふてぶてしく立つというのだけを心がけています。

片桐:やっぱそういうのがあるの? 好きなミュージシャンのパロディっていうか。

やつい:イアン・ブラウンは誰でもできるんで。歌も下手だし踊りも下手だから。

片桐:あ、そうなんだ? でも格好いいんでしょ?

やつい:格好いい。顔が格好いい。こっちが完全に支配している顔で見てればいい。

片桐:支配している顔で見るって?

やつい:あとは行進してればいいですから。

── (笑)。オマージュするアーティストの基準は何ですか?

やつい:やはりマンチェスター、イギリスをモチーフに、(ストーン)ローゼズ、オアシスときて。でもレディオヘッドは入ってないです。子どもの歌にはならないですからね、レディオヘッドは。

片桐:そういうのが分かんないもん。これも分かる人には分かるんですね?

── そうですね。UKロックが軸にあるというのはよく分かりました。

片桐:俺がガンダムのことをガンダムエース(ガンダムの漫画だけが載った雑誌)の人に話すのと同じか。こんなに話が通じるのかって。でも、ライブの時の形がわかんないんだよなあ。

── でも、お引き受けされた?

片桐:仕事ですから。

(一同爆笑)

片桐:舞台だったら稽古があるから「こういう目線で」とかリハで目線を決められるけど、そういうライブの“ノリ”とか音楽的な“あるある”が僕にはないし、お客さんの前で歌うってことが途轍もなく恥ずかしいから、一般の人の前に晒されるのがマジ怖いんですよね。でも、ぶどうかんズは演奏はいいし、やついがいるからMCも大丈夫なんで、今回の<朝霧JAM>では「気持ちよかった、楽しかった」って言えたらいいんですけどね。

── 片桐さんのご活躍の幅広さから見ると、音楽もその中のひとつの得意分野なのだろうと思っていたので意外です。

片桐:いや、いや。でも、歌いますよ。歌詞がちゃんと聞こえるように、メッセージが伝わるように歌わなきゃなって思ってます。

◆インタビュー(3)へ
■ お子さんもお父さんお母さんも、全員が楽しめるロック

── 今回、ザ・ぶどうかんズが<朝霧JAM>に出演することについてどう思いましたか?

やつい:すごい奇跡だと思います。僕がやっているフェスでは実現しなかったので。

片桐:どうして出ることになったんですか?

── フェスの主催者側からの熱烈なオファーが結実したと聞いています。

やつい:実は好きな人が多いみたいですね、ザ・ぶどうかんズって。「シャキーン!」の歌のコーナーでもこんなに長く歌っているバンドは他にないですから。

── お二人は<朝霧JAM>に行かれたことは?

片桐:僕は初めてです。

やつい:ないです。<フジロック>は一人で何回か行ってますけどね。

── <朝霧JAM>のイメージはありますか?

やつい:キャンプする人たちのフェス。

片桐:子どもたちが結構多いって聞きますね。『ピタゴラスイッチ』の栗コーダーカルテットとかも出てましたよね? 

── はい。昨年は『ムジカ・ピッコリーノ』が出演して子どもも大人も盛り上がっていました。

片桐:彼らはプロの集まりですからね。

やつい:ザ・ぶどうかんズはいいバンドだなって思っていますし、曲もいい曲ばっかりですし、(中村)佳穂ちゃんもいるので音楽ファンは絶対見に来ると思います。
── 今回の<朝霧JAM>出演を機に、他のフェスなどにも出演するお気持ちは?

やつい:そうですね。MC1時間、歌、MC1時間、歌。こんな感じですかね、構成的には。

片桐:5曲しかないですから!

── カバーを入れるとか?

やつい:オリジナリティを育てる番組なんで、オリジナルにこだわります。

片桐:「シャキーン!」自体がね!

── では、日本武道館公演はいつ頃を目標に?

片桐:そんなわけないじゃないですか(笑)。

やつい:20年夢見てますけどね。こんなに帳尻が合ってくるとは思わなかったんで。ビートルズの前座みたいなものでもいいんですけどね。すごい人の前座。

片桐:いや。すごい人の前座のほうが、荷が重いはず。

やつい:ドリフターズみたいにさ。2曲で帰ったそうじゃないですか。だとしたら5曲あれば十分できますよ。

片桐:あはは(笑)。


▲ザ・ぶどうかんズ

── 最後に、<朝霧JAM>に参加する人たちへメッセージをお願いします。

片桐:2日目のトップバッターなので、皆さんの目をシャキーン!と覚ましたいと思います!

やつい:お子さんもお父さんお母さんも、全員が楽しめるロックになっていますんで、オープニングをうまく飾りたいと思っています。ぜひ朝から集まっていただければと思います。

取材・文◎早乙女‘dorami’ゆうこ
ザ・ぶどうかんズ画像提供◎NHK
<朝霧Jam>風景撮影◎宇宙大使☆スター

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■「シャキーン!」

Eテレ 毎週月曜~金曜 午前7時

子どもたちを “シャキーン!” と目覚めさせて、楽しい一日のスタートを切ってもらう知的エンターテインメント番組。
「いつもとは違うモノの見方」や「柔軟な発想力」が楽しみながら身につき、「体の目覚め」と「心の目覚め」を促します。

■<ASAGIRI JAM ‘19>

2019年10月12日(土)13日(日)に富士山麓 朝霧アリーナ ふもとっぱら
開場・キャンプ開始:10月12日(土)10:00〜
開演:10月12日(土)14:00〜
終演:10月13日(日)20:00 予定
キャンプ終了:10月14日(月)11:00 ※指定キャンプサイトに限る

【<ASAGIRI JAM ‘19>タイムテーブル】
■RAINBOW STAGE
10月12日(土):
14:00-14:50 T字路s
15:30-16:20 HOTHOUSE FLOWERS
17:00-18:10 ハナレグミ
18:50-19:50 CORNELIUS
20:30-21:45 HOT CHIP

10月13日(日):
9:30- 9:45 ラジオ体操
9:45-10:30 ザ・ぶどうかんズ from シャキーン!
11:00-11:40 折坂悠太(合奏)
12:10-13:00 PENGUIN CAFE
13:30-14:20 JAMILA WOODS
14:50-15:40 cero
16:20-17:20 BADBADNOTGOOD
18:00-19:15 くるり

■MOONSHINE STAGE
10月12日(土):
14:00-14:45 THE ALEXX
15:15-16:00 MONO NO AWARE
16:30-17:15 MEN I TRUST
17:45-18:30 BIM&VaVa
19:00-20:00 HARVEY SUTHERLAND(SOLO LIVE SET)
20:30-21:45 KIEFER

10月13日(日):
11:00-11:45 SAFEPLANET
12:15-13:00 BOHEMIAN BETYARS
13:30-14:15 幾何学模様
14:45-15:30 TAMIKREST
16:00-17:00 OGRE YOU ASSHOLE
17:15-19:15 GILLES PETERSON

■CARNIVAL STAR
10月12日(土):
12:00-13:30 Cumbia Kid
13:30-14:00 “Sicilian Connection - Carlo, Junji, Sakana & Keita”
14:00-15:00 Orion
15:00-16:00 CHANT DOWN BABYLON (from Nagoya)
16:00-16:30 Asakusa Jinta
16:30-17:00 DJ TXAKO (Japonicus)
17:00-17:30 藤井悟 (Caribbean Dandy)
17:30-18:00 TETZ MATSUOKA (Club Ska)
18:00-18:30 “Sicilian Connection - Carlo, Junji, Sakana & Keita”
18:30-20:00 Drew

10月13日(日):
11:00-12:00 DJ HADI
12:00-12:30 “Sicilian Connection - Carlo, Junji, Sakana & Keita”
12:30-13:15 Fujirockers DJ Battle - Hanasan vs Nozomu
13:15-14:00 桑田研究会バンド(サザンオールスターズトリビュート)
14:00-15:00 NAOKI IENAGA (DUBSTORE RECORDS)
15:00-15:45 YOSUKE (BAOBAB)
15:45-16:00 Saku Yanagawa
16:00-16:30 The Worthless(ザ・ワースレス)
16:30-18:00 Drew

【お問合せ】
朝霧 JAM オフィシャルサイト https://asagirijam.jp
SMASH 03-3444-6751
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

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