ヘアメイク:TAKE▲for▲DADACuBic@3rd/スタイリスト:袴田能生(juice)

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【インタビュー】「トップリーグ」玉
山鉄二 新時代の俳優に必要なものは
「企画力」

 総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだ「トップリーグ」と呼ばれる記者を主人公に、メディアと権力の裏側を描いた衝撃的政治サスペンス「連続ドラマW トップリーグ」。主演の玉山鉄二が、本作を通して改めて考えさせられたという“情報”との向き合い方や、エッジの効いた作品を制作するWOWOW同様、これからの時代、役者にも必要とされる“企画力”について語ってくれた。
 原作は、食肉偽装問題を扱った「震える牛」、巨大企業の不適切会計問題を描いた「不発弾」など、社会の闇をえぐりだす作風で注目される相場英雄の同名小説。首相官邸を舞台に、大和新聞のトップリーグ・松岡直樹(玉山)と週刊誌のエース記者・酒井祐治(池内博之)が、日本史上最大の疑獄事件の謎に迫るとともに、官邸のタブーに鋭くメスを入れるさまが描かれる。
 「政治家と記者の癒着が描かれていて、一人の記者が一人の議員によって政治の世界に飲み込まれて自分を見失う物語」と捉えた玉山は、「新聞記者と議員という関係はニュース性やドラマ性が高くて大きな出来事に感じられますが、小さな癒着はどこの世界にでもあるから、作品としてのハードルは意外と低くて見やすいんじゃないかな」とアピール。
 普段から、政治家や政治部の記者と交流し、「気さくに政治や国会での話、理想論などを話してくれて有意義な時間を過ごしています」と語るが、その玉山でも「トップリーグ」の存在を知らなかったそうで、「政治ジャーナリストや記者が、ニュース番組などで『トップリーグと呼ばれる記者が、議員から直接情報をもらうことがある』という話をしているのを聞いたことがないですよね。なぜだろう?それってパンドラの箱なのかな」と首をかしげると、「僕たちが知っている政治の“情報”ができあがるまでに、いろんなプロセスがあるのかもしれないですよね」と勘繰った。
 また、「日本は特にテレビの影響力は大きいですよね。世界中探しても、テレビ局と新聞社が同じ母体というのは日本だけ。そう考えるとちょっとゾッとしませんか?」と現メディア体制に危惧を覚えていることも打ち明けた。
 だからこそ、「政治ニュースに限らず、情報に対して疑ったり、斜めに見たりして、自分の中でイマジネーションを広げることが、これからの時代には必要なのかも」と考えをめぐらすと、「今までは不適格で不鮮明な情報でも『出しちゃえ!』となっていたかもしれないけど、SNSが普及した今は、その情報が間違っていたり、うそだったりしたときに炎上したり、取り返しのつかない事態になるから、情報を出す方も受ける方も変わっていかなければいけないですね」と慎重な姿勢も見せる。父親でもある玉山は、子どもにも「メディアやSNSから、たまたま情報を得るのではなく、自分からつかみにいくことの大事さ」を教えているのだとか。
 このように見る者の心と思考を刺激する作品を生み出すWOWOW。玉山は「ストーリーは重厚で社会的メッセージ性が強くて、こういうことが本当にあるんじゃないか? と思わせるリアリティーさに引き込まれます」と舌を巻くと、「コンテンツで一番大事な“企画力”が素晴らしい点がWOWOWの一番の魅力だと思います」と称賛する。
 多様性が求められる昨今、既存のコンテンツでは実現できなかったことが、オンデマンドなどでは可能になるなど、エンタメ業界も大きく変化しているが、玉山は「『できない』ではなく、『やらない』ですよね。だから、『やれる』環境を作っていく必要があると思います」と、まずは意識改革が重要であることを指摘。
 さらに、「役者仲間とも、オンデマンドで作った奇抜な作品の評判がいいと、それを地上波でもやれるといいよね…とよく話しています。日本のエンタメ業界を活性化させるためにも、奇抜なことが高く評価されたり、今まで『駄目』と言われていたことに共感性が生まれたりすることで、今の風潮が変わるといいですね」と変化を望んだ。
 その多様な表現の一環といえるだろう。過激なストーリーで話題になったNetflix配信ドラマ「全裸監督」で共演した山田孝之は、映画のプロデュースや監督、会社CIOなどの顔も持ち、その動向は常に注目の的だ。菅田将暉の才能は他の役者がうらやむほどで、アーティストとしても音楽業界を席捲(せっけん)している。ほかにもさまざまなジャンルで多才ぶりを発揮する役者は多く、玉山は「面白い発想や感覚を持っている人はいっぱいいますよね」と豊富な人材を喜んだ。
 では、自身の振り幅はいかがなものか? すると、「自分のやりたいことが見つけ切れていないとか、ものや人に対してあまり興味を持つタイプではないこともあって、役者以外の仕事は考えたことがないです」と役者道を貫くスタイルが自分らしいようだ。
 しかし、「自分が奮い立つような人や何かに出会いたいといつも思っている」そうで、「これからは絶対に企画力が大事で、役者も演じるだけではなく、プロデューサーと手を組むなどして、企画を生む機会は増えていくと思います。そのために、役者としても人としても感覚を研ぎ澄ませておかなければいけないと思います」と言葉に力を込める。
 ちなみに、飲みの席では自分たちがやりたいことを自由に話し合っているようで、「それは酔っ払い同士の話だけど、企画ってそういうところから生まれたりしますからね」とニヤリ。果たしてどんなエンターテイメントが飛び出すのか? これからの玉山の企画力に期待したい。
(取材・文・写真/錦怜那)
 「連続ドラマW トップリーグ」(毎週土曜午後10時~)はWOWOWで10月5日(土)スタート※第1話無料放送(全6話)

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