みゆな インタビュー シーンを駆け
上がる若き才能は何故歌い、何を表現
するのか

9月18日(水)に2ndアルバム『ユラレル』をリリースした、みゆな。本インタビューでは、曲や歌詞を通して、彼女のクリエイティブの原泉と目指すべき姿について訊いている。1stから2ndで目覚ましい飛躍を遂げつつも、まだまだ未完成の原石とも言うべきみゆなの“今”の思考と志向は、どのように形成されたのか。その極めて多面的かつ絶妙なバランスで成り立った魅力に触れてみてほしい。
──先日行なわれた、2ndミニアルバム『ユラレル』のリリースイベントはいかがでしたか?
ライブが終わった後にみなさんとお話する機会があったのですが、「生きなきゃ」にグっと来た方が多かったみたいですね。「生きなきゃ」は曲に入る前に、その時に自分が思っていることや、お客さんの顔を見て話したくなったことを伝えるようにしているんです。それもあって、みなさんの中で何かグっとくるものがあったのかなと思いますし、あとは、ライブで「進め」という曲を初めて歌ったんです。
──初披露だったんですね。
「進め」は、中学校3年生のときに作ったんですけど、母に“曲を作ったよ”って初めて聴かせた曲だったんです。でも、そこからずっと歌わずに、2年半ぶりぐらいに歌ったんですよね。ずっと大切にしてきた曲を2ndミニアルバムに入れることができて、みなさんの前で歌えたのは嬉しかったです。あと「缶ビール」でコール&レスポンスをするので、そこでちょっとふざけてみたりもしたんですけど、それが“楽しかったです”と言ってくださった方もいて。みなさんも笑ってくれて、楽しいリリイベになったかなと思います。
──「進め」はかなり昔に作られていた曲だったんですね。
初めて作った曲が「ふわふわ」(1stミニアルバム『眼』収録)で、その次に作った曲ですね。「進め」を作った当時は不登校真っ只中で、自分の好きなアーティストを観て、いろんな刺激をもらっていたんですけど……一時期、自分の声が嫌になっていたことがあったんですよ。自分の声が嫌いすぎて泣きながら歌っていたぐらい、なんで私はこんなに変な声なんだと思って。だけど、前に進もうみたいな感じで、本当に単純な歌詞と、すっと入ってくるメロディーを書いたんですよ。今となっては少し恥ずかしいんですけど、こうやって世に出せたのは嬉しいです。
──そんなにご自身の声が嫌いだったんですか。みゆなさんの曲を聴いてまず思ったのが、めちゃくちゃいい声だなということだったので。
ありがとうございます。今となっては、次に生まれてきたときもこの声がいいなと思うんですけど、昔はしゃべり声がもうちょっと可愛くなりたかったんです(笑)。なんかこう、すごく美しい声に憧れていたし、もうちょっとトゲのない声でいたかったなって思っていたんですけど、逆に、今はそのコンプレックスが自慢になっているじゃないですか。音楽も、この声を活かして作っているし、自分の自信のあるところにもなってきました。だから、私みたいに、何かのキッカケでコンプレックスも自信になるんだよっていうことも、みなさんに伝わればなと思っています。
──今回は初登場になるので、みゆなさんが音楽を始めたキッカケもお聞きしたいんですが、自分で曲を作って歌ってみたいと思ったのはいつ頃でしたか?
ギターを触り始めたのが中学3年生だったんですけど、特に作りたいという気持ちもなかったときに曲ができちゃった感じでした。ギターを弾いているときにメロディーが浮かんで来ちゃったから、録音しようと思って携帯で録音して。ままならない手つきでやっているやつを聴きながら歌詞を入れて、できあがったのが「ふわふわ」でした。
──元々音楽は好きだったんですか?
元々歌うのは好きでした。趣味程度に歌っていたけど、小学校ぐらいから歌手になりたいなという夢を持ちつつ、陸上も力を入れてやっていたから、中学校では陸上部に入ったんです。でも、頑張りすぎて腰の骨を疲労骨折してしまって、6ヶ月間リハビリしていたんですね。そのリハビリの最中に、バカな話なんですけど、歌のオーディションで全国大会に出ることになって、東京に行ったんですよ。本当はコルセットをつけていないといけないんですけど、本番のときはそれを外して、ヒール履いて(笑)、歌って。
──めちゃくちゃかっこいいですね。
そのときに見てくださっていた関係者の方が声をかけてくださって、練習生として福岡まで通うようになったんですけど、そのときはマイク一本で歌っているだけの人だったんです。でも、それがなんかちょっと嫌で、もうやめようかなと思っていたんですけど、母がフリマで買ってきた1万円のギターを触り始めて、曲を作るようになって。それで、今のスタッフさんが福岡に来たときに「ふわふわ」を聴かせたら、そこから本格的に物事が一気に進み、アニメのタイアップのお話が決まったんですけど。
──すごいスピードですよね。
“えっ、いきなり!?”って。まだリリースもしていないし、ライブも全然やっていない時点でのアニメのタイアップにビックリしてしまって。だから、最初は自分にやれるのかな……っていう不安のほうが大きかったですね。でも、実際にレコーディングとか、初めての経験を多くさせていただいて、すごく自分に合っているなと思ったし、ずっと続けていきたいなって思いました。
みゆな 撮影=高田梓
──小学校の頃に歌手になりたいと思ったとのことでしたけど、どんな歌手になりたいと思っていたんですか?
私が一番憧れているのがONE OK ROCKさんなんですよ。まだギターを弾く前に、初めて自分から音楽を聴き始めた方々で、私もいつかバンドで走り回りたいな、世に出たいなと思っていました。私はバンドメンバーを集めることはできなかったけど、その夢はまだ終わったわけじゃないから、いつかバンドがしたいなっていう気持ちもあります。
──なるほど。
でも、私はロックだけじゃなくて、他のいろんなジャンルも好きなんですよ。そうやっていろんなところからインスピレーションを受けているので、正直に言うと、自分がどんなものが得意なのか掴もうとしている最中なんですよね。だから、今は自分の好きな音楽をとにかく一度全部やってみて、その中から定めていければなって思っています。だから、私を応援してくださる方からすると“こういうジャンルで続けていってほしかったな”とか、“ショックだな”、“ついていけないな”って思う人がいるかもしれないけど、その音楽を一生ずっと続けていくかは、まだわからないんですよ。
──1stミニアルバムの『眼』はバンドサウンドが印象的でしたけど、『ユラレル』は海外のポップミュージックのトレンドを加味したサウンド感になっていてかなり変化がありましたが、そこはまだ自分の可能性を探っているからであって、ひとつの挑戦でもあると。
そうです。だから、『ユラレル』に入っている「グルグル」や「缶ビール」で好きになる方もいると思うんですけど、次のリリースでも同じことをやっている確率はわからないよ?っていう。もっとみゆならしさを出せる楽曲を作っていきたいし、最終的には自分で編曲までできるようになりたいと思っているので、だからこそいろんなものを探していきたいし、勉強の毎日だなと思っています。
──みゆなさんが曲を作るときって、どういう流れが多いですか? 先に歌詞を書くとか、メロディーが浮かぶとか。
全部バラバラなんですよ。主人公を立てて、その人が辿っていく物語みたいな感じで書いていくんですけど、『ユラレル』の中だと、「グルグル」はサウンドプロデュースをお願いしたTSUGEさんと一緒に曲を作ったんです。どういう音楽がやりたい?っていう話になって、私が好きな曲をあげていく中で、コードを教えてくださって。そのコードを弾きながら、歌詞とメロディーを一緒に作っていきました。
──それで作曲者のクレジットが共作になっているんですね。
はい。あと、編曲の部分も自分の意見をすごく入れてますね。他の曲だと、「進め」は歌詞から書いていて、「生きなきゃ」は歌詞とメロディー同時ですね。「缶ビール」も同時です。
──「缶ビール」のサビで“バニラ”って出てくるじゃないですか。あそこがすごく好きだったんですけど、最初からバニラが出てきたんですか?
そうですね。あれは、そのとき好きだったアイスが、たまたまバニラだったんですよ(笑)。なんかチョコに飽きちゃっていた時期だったので、バニラだなって。最初はこういう感じでもいいのかな?って思ったんですけど、周りには軽い気持ちで作った曲がわりと好評だったりするんです(笑)。
──ああ。自分の中からなんとなく出てきたもののほうが。
そういうものの方がいいのかもしれないですね。無理に意識して作ると、堅苦しくなっちゃうときもあるじゃないですか。だから、作らなきゃと思って作るよりも、舞い降りてきたときに作った音楽が一番いいのかもしれないです。「ふわふわ」もそうだったし。
──歌詞には主人公を立てるとのことでしたけど、ご自身が経験していることから出てくることが多かったりしますか?
基本的には「主人公の経験」ということにしています。もちろん自分のことも少しは入っていますけど、全部が全部自分の経験していることだったら、「ふわふわ」とか「缶ビール」はアウトですよ(笑)。
──そうでしたね(笑)。歌詞に自分が入ってしまうのは、気づいたら入ってしまっているのか、それともちょっとだけ潜ませているのか、どんな感じなんですか。
重ね合わせているところもあるのかもしれないですね。だから、ここは本当に伝えたい部分だ!っていうところとか、この場面では言ってもいい気がすると思ったときに入れたりとか。でも、いつもそこまで意識して書いていないので、読み直してみたら自分のことだなって思うことがほとんどですね。
みゆな 撮影=高田梓
──「進め」や「生きなきゃ」は、特に生々しさがあるなと思ったんですが。
「進め」に関しては、ほぼ自分のことですけど、“僕”って書いている時点で、その当時からもう主人公を立てていたのかもしれないですね。私、基本的に“僕”としか歌詞を書いていなかったんですよ。女性を意識しているときは“私”にしますけど、今考えると、昔は本当に“僕”しかなかったですね。母にも“なんで僕なの?”って言われることも多かったので。
──確かに一人称が“僕”になっている曲が多いですね。
私、男の子になりたかったんですよ。それもあるし、“私”にすることで自分のことだと思われたくなかったから、たぶん“僕”にしてたんだと思います。あと“わたし”は3文字だけど、“ぼく”は2文字だから歌詞に入れやすいんですよね(笑)。そういうところもあったのかもしれないです。
──ちなみに「生きなきゃ」の一人称は“自分”になっています。
書いていたときにそこまで深く考えてはいなかったんですけど、今見ると、男性でも女性でも主人公になれる曲かなって。どちらかにすると限られてしまうけど、“自分”だったらどちらでもないじゃないですか。そういう視点でも、みなさんが主人公になりやすい曲かもしれないですね。
──歌詞にはいろんな人たちが出てきますけど、全員泣いていますよね。
そうですね。実は「グルグル」も泣いている曲なんですよ。「缶ビール」は自分に呆れて笑ってる感じです。
──泣き疲れてしまって?
いや、もう泣きすらしてないです。なんか、怪我したときに痛すぎて笑っちゃうような感覚ですね。ヤバすぎることが起きるとちょっと笑っちゃう感じ。“ははは、やべえな”っていう(笑)。だから、幸せではないですね。前回のアルバムも、今回のアルバムも。
──なぜまた幸せではない形になるんでしょうか。
バッドエンドにしたがるのかもしれないです。昔、精神的に一番疲れていたときに、敢えて苦しい曲を聴いて、自分の代わりに叫んでもらっている感覚になっていたんですよね。相談できないような悩みを抱えていたときに、すごく叫んでいる曲を聴いて、そこから勇気をもらって頑張れていたから、敢えて苦しい曲にしたほうが自分的にも好きなんだと思います。あと、幸せな感じは恥ずかしいかもしれないです(笑)。
──照れちゃいます?
なんか歌いにくいです。たぶん、苦しい時期に曲が生まれることが多いからなのか、幸せじゃないまま終わっているのかもしれないですね。だから、苦しいことがあって幸せになりました、っていうときだったら、その感じの曲を作ると思うんですよ。
──現段階で曲を作ったとして、幸せになる曲は出てきそうですか?
う~ん……なんか、幸せではないけど、“支える”というか、また違う感じのものが出てはきているんですけど、特に縛りがないとバッドエンドになるかもしれないです。私、観る側としてはハッピーエンドがいい気持ちはあるんですよ。映画もそっちのほうが“見終わった感”があるじゃないですか。本もですけど。
──そうですね。読後感がいいというか。
だけど、バッドエンドにさせたいんです。悪い女ですよねぇ(笑)。
──いや、悪くはないです(笑)。でも、なぜそうしたくなるんでしょうかね。
なんか、居心地悪くさせたいのかな。これはちょっと聴き心地がよくないかもしれないって言われるときもあるんですけど、敢えてそうすることで印象に残るんじゃないかなって。もう一回聴きたいとは思われないかもしれないけど、それでも頭の中には残るじゃないですか。そういうことはしてますね。頭に引っかかるような感じを好むのかもしれないです。
みゆな 撮影=高田梓
──なるほど。そして、初のワンマンツアーが11月からスタートします。
前回は2カ所だったので、ツアーという感じではなかったんですけど、今回は5カ所回らせていただくので、ドキドキしてます。前回は緊張で“ヤバい、お腹痛い……!”っていうのが、ライブ中に正直何回かあったんですよ。だから今回はそんなことがないように、ちゃんとお薬を飲んで頑張ります!
──はははは。緊張しいなんですね。
はい。本番前とかずっと動いてます。“どうしよう、ヤバいヤバいヤバい……”みたいな。この前『ユラレル』のリリース記念で生配信をさせていただいたんですけど、最初に「ユラレル」のMVを流した後にライブっていう流れだったんですね。みんなが「ユラレル」のMVを観ている最中、私ひとりだけずっと走ってました。“無理だー!”って(笑)。緊張せずに歌ったことってないんですよ。たぶん、緊張しなかったのって、中学生のときに受けたオーディションの全国大会のときぐらいです。
──そんなすごい場所なのに?
そのときも走りはしましたよ? すごく狭い場所だったんですけど「ちょっと走っていいですか……?」って。なんていうか、その当時ってかなりの自信家だったんでしょうね。自分が一番だと思ってたんですよ。もう自信しかなくて、歌いながら(客席にいる)お母さんに向かって手を振ってましたもん。その自信はいつから消えたの……!?って感じなんですけど。
──もう消えちゃったんですか?
消えちゃいました。歌っているときはあまり記憶がないんですけど、一回失敗すると連続で失敗したりしちゃうんですよ。でも、この前のリリース記念で生配信をしたときは、ちょっと失敗しても持ち直すことが出来たので、ちょっと成長してるかもしれないですね。緊張していることに変わりはないんですけど。
──緊張はするけれども、ライブ自体は好きですか?
どうなんですかねえ……。いまだに自信というものが持てていないんですよ。毎回いつも満足して終わってはいますけど、楽しいというよりは怖いですね。もしかしたら、このライブで最後になる方もいるかもしれないじゃないですか。何回も来てくださっている方だったら、調子が良かったり悪かったりしたときにわかってくれるかもしれないけど、もし初めて観に来てくださった人だったら、ただのヘタクソだと思われてしまうかもしれない。そう考えると怖いです。人前で歌うこと自体は嫌ではないんですけどね。
──今はまだ楽しさというよりも、怖さとか不安のほうが勝っている。
いまはそうですね。なんか、綺麗事を言うより本音をしゃべったほうが、たぶんきっとわかってくれるから言いますけど、実際はそうです。本当はね、楽しいって言ったほうが世間的にはいいかもしれないですけど。だから、楽しいと思えるように、今はいろいろ頑張ってます。
──ジレンマがありますね。歌は歌いたいけど、人前は緊張するというのは。
ね? こんなにおしゃべりするくせに(笑)。しかも結構うるさいぐらいなのに、そこめっちゃ控えめやん!みたいな。
──このインタビューも、とめどなくお話しされていましたからね(笑)。ちなみに、『ユラレル』の楽曲は、アルバムに収録されているアレンジとはまた違った形で披露されるんですか?
楽曲のアレンジも含めて、ツアーに向けていろいろと楽しいことを考えているので、まだ秘密ですけど楽しみにしていてほしいです。なんか、前回は(ライブ)タイトルが『君が生きる理由=?』だったし、セトリ的にもわりと重めだったかもしれないなって。だから、今回は楽曲も楽曲だし楽しんでほしいな、自分も、あなたも、みたいなテイストでいきたいなと思っていますけど、それがどうなるのかはお楽しみっていう感じです。
──それも楽曲と一緒というか、ライブでもいろんな表現にチャレンジしてみたいですか?
そうですね。ライブも本当はもうちょっとごちゃごちゃしたい人なんですよ。たとえば、絵とか写真をめっちゃ貼り付けたいし、照明も例えば真っ暗な中でやってみたいと思うときもあるし。私は好奇心の塊みたいなところもあるので。あとはまあ、ほら、一応若いから(笑)。
──ははははは!
“まあ、みゆなだからね”ってなると思うので。でも、その“みゆなだから許される”っていうのが悪い方向に行っちゃダメだなと思ってます。自由奔放にやりたいことをやって、それを届けて、みなさんがしっかり満足した意味で“みゆなだからね”って言ってもらえるようになりたいです。

取材・文=山口哲生 撮影=高田梓
みゆな 撮影=高田梓

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