前島麻由

前島麻由

【前島麻由 インタビュー】
悲しい気持ちを
一番いい鮮度のまま歌に残したい

多くのアニソンを手掛けるコンテンポラリー・クリエイティブ・ユニット、MYTH&ROIDのMayuが前島麻由としてソロデビュー。配信シングルに続いて、“私そのものと言える作品になった”というアルバム『From Dream And You』を完成させた。サウンドもアティテュードも断然ロックなデビューアルバムについて話を訊いた。

歌いながら涙が出てこない曲は
いい曲とは言えない

2015年から参加していたMYTH & ROIDを脱退してソロ活動を始めたのは、なぜだったのですか?

ご縁があってMYTH & ROIDとしてアニメの主題歌を歌わせていただいていたのですが、小さい頃からずっとソロアーティストとしてやっていきたいとは考えていたんです。

じゃぁ、時機が来たらソロ活動を始めようと考えていたわけですね。

はい。たまたまMYTH & ROIDの活動にひと区切り付いたタイミングになりましたけど、遅かれ早かれ、ソロ活動をやるつもりでいました。

では、どんな歌を歌いたいのか、どんなサウンドで自分の歌を表現していきたいのか、ソロ活動を始める時には、もうはっきりしていたと。

自分が作った歌を、自分が好きだと思う曲調で歌いたいと思っていました。中高6年間と、学校を卒業してからMYTH & ROIDとしてデビューする1年ぐらい前までずっとバンドをやっていて、そこでは自分が作った曲を歌っていたので、やっぱり自分が作った曲たちが日の目を見るのが一番だと思っていました。

実際、今回のアルバムにも5~6年前に作った「when you went away」「Hello」や、10代の頃から歌ってきた「From Dream And You」が収録されていますしね。

中学生の頃は大好きだったAvril Lavigneの曲をひたすらコピーしていたんですけど、高校に入ってからオリジナルを作り始めて、その頃にいろいろいい曲が生まれたんです(笑)。それから20~21歳ぐらいまでが一番曲が…作るというよりは生まれる時期で、どれも自分としては、とてもいいと思えるものばかりだったんです。その頃に作った楽曲を、それこそMYTH & ROIDの経験を踏まえた今、かたちにできたことが嬉しかったです。バンド時代にライヴではやっていましたけど、ちゃんとプロフェッショナルとして、いろいろな人に聴いてもらうことを前提に作品を作ることになった時、そういう曲を入れられたのは、すごく感慨深いものがありますね。

ところで、曲を作り始めたきっかけは?

歌うことが小さい頃から好きで、小学生の頃は曲を適当に作って、友達とそれに振りを付けて、歌ったり踊ったりしていたんです(笑)。そういうお遊びを経て、軽音楽部に入ってAvril Lavigneに出会ったり、ジャンルがロックになったりしたんですけど、そこからただメロディーを作るだけじゃなくて、“ギターはこうして〜”みたいに、より具体的に楽曲を作るようになっていきました。そういう自然な流れだったので、何かきっかけがあったというわけではないんです。

今回のアルバムは90年代以降の洋楽ロックがバックボーンにあると思える作品になっていますが、どんな作品にしたいと考えていたのですか?

正直言って、最初は自分が昔作った曲を入れられるとも、作家さんと共作できるとも思ってなくて、作家さんから提供していただいた曲を歌うと思っていたんです。だから、嬉しい予想外だったんですけど、共作した曲が“いいじゃん。アルバムに入れよう”となって。自分も曲作りに携われることになってからは、純粋に好きな曲調、サウンドにできたらいいなと思っていました。

結果、作家さんが作った配信シングルの2曲以外は共作を含め、ご自身が作った曲ばかりになりましたね。

逆に言えば、商業的な志向が入っていないので、そういう不安はちょっとだけあります(笑)。本当に自分の好きな曲調で、自分の引き出しの中にあるものだけで作っているから。もちろん共作した曲は作家さんの引き出しもあるんですけど、それも私のカラーや私の中から出てきたメロディーを踏まえたものなので。そういう意味では、“THE 私”という作品になっているし、“日本人が聴くんだからこうしたほうがいい”みたいなこともやっていないから、ちょっとハラハラしながら、みんなが気に入ってくれたらいいなと思っています。

もっと自信満々なんだと思っていました(笑)。今回のアルバムを聴きながら、前島さんは反骨精神の持ち主なのだろうと想像していて。全曲英語で歌っていることに加え、悲しみや怒りという一般的にはネガティブとされる感情をもとに歌を作っているのは、今現在の音楽シーンに安易に与せず、それこそ一石を投じようという想いもあるんじゃないかと。

いえ、それは全然なくて。英語で歌っているのは、自分が好きになった音楽がたまたま洋楽だったからということと、英語に乗ることに向いているメロディーラインが好きだったからなんです。悲しい気持ちを歌っているのも、歌詞を書く時に自分から生まれるのは消化し切れなかったものばかりだからで。その場で消化できたレベルの悲しみや怒り、逆に歓びを含めた陽の感情は全然出てこなくて、自分の中で消化できずに残っているものだからこそ出てくるっていう感覚があったんです。高校生になって本格的にいっぱい曲を作り始めた時期に、私は歌にネガティブな感情を乗せるタイプの人間なんだと悟りました。明るい曲を作ってみようとも思ったんですけど、歌詞が全然出てこなかったので(笑)。それからは自分が消化できなかったものを消化するためでもなく、忘れるためでもなく、逆に自分がいつまでも覚えていられるように歌に残していくという感覚でずっとやっているんです。私の場合、自分が携わった歌を歌っていて涙が出てこない曲は、いい曲とは言えないんですよ。自分の中から出てきたメロディーを聴いて、“このメロディーにはあの時の、この悲しみを乗せよう”と考えて歌詞を書くんですけど、その感情を一番いい鮮度のまま歌に残したいんです。だからこそ、消化できないものばかり歌っていると思うんですけど、歌いながらその時の悲しみが蘇ってきて、涙が出てきたら“あぁ、いい曲になった、良かった”って思うんです。5年前の悲しみを今歌っても、30年後に歌っても、同じように涙を流せることが重要で。だから、“最近の曲はこういうのばかりだ。じゃぁ、私はこういう歌で”みたいなことではなくて、ただただ自分が悲しくて、この先もその悲しみを憶えていたいから残しているだけなんです。
前島麻由
アルバム『From Dream And You』

OKMusic編集部

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