快快 新作公演『ルイ・ルイ』ゲネプ
ロレポート~頭でっかちから抜け出し
て、歪んだ現実を踊らせろ! 

快快(ファイファイ)の約2年半ぶりとなる新作公演『ルイ・ルイ』が、KAAT 神奈川芸術劇場で2019年9月9日(月)に初日を迎えた。公演は9月15日(日)まで。
出演に、快快オリジナルキャストの大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司に加え、快快の前身の小指値(こゆびち)時代の作品『霊感少女ヒドミ』以来10年ぶりの共演となる女優・初音映莉子、シンガーソングライターの白波多カミン、ままごと、チェルフィッチュなどで活躍する石倉来輝。このバラエティー豊かな出演陣にぬいぐるみであるニホンオオカミ・ルイが加わるのだが、ルイは作中でかなり重要な役どころを担っている。ルイの声を担当するのは、ラジオパーソナリティーとしてお馴染みの毒蝮三太夫。
9月8日(日)に行われたゲネプロの様子をレポートでお伝えする。
上演が始まると、舞台に初音映莉子演じるある女優の元に、ぬいぐるみ・ルイが上から降りてくる。彼女の大切な友達か、と思って観ていると……、劇場は「ルイルイラジオ」にジャックされてしまった!!
ルイが喋り出すと、声が全くキュートじゃない! 丸っこいぬいぐるみに当てられる毒蝮三太夫の渋い声に、一瞬吹いてしまいそうになるが、だんだんぬいぐるみの顔が毒蝮そっくりに見えてくるから不思議だ。実際、いい声なんである。
「ルイ・ルイ」のナンバーで踊るキャストたち。快快らしい、軽快で弾けたワクワクするシーンだ。カラフルでポップなダンスは観客を魅了する!
頭の中を電波ジャックされた彼女は、“何らかのいのちを模して作られた、ひとじゃない友だち”であるルイを媒介に、今ある社会とは別の社会へ飛んでいき、観客を様々な場所へ連れて行ってくれる。
劇中に何度もかかる「ルイ・ルイ」は、多くのカバーバージョンが存在し、多くのミュージシャンに思い思いに歌われてきたため、元の曲にあった本来の意味合いや形は曖昧なものになっている。そういった曲であることから、今作の「存在の、ないようで、ある」ところに飛ぶための入り口のような役割を果たしている。
想像でつくり上げた世界に自由に行き来する中、大きなカツラを被って野上絹代と山崎皓司が登場。シーンごとに変わるキャストの扮装も我々を楽しませてくれる。本記事で全ては紹介しないので、どんなキャラクターが登場するのか、実際に劇場に足を運び確認してみてほしい。
また、本作で「ルイルイ」というキーワードは、様々な意味を含んでいる。それは変幻自在のキャラクターのみならず、舞台と観客の境界も軽やかに超えて、メディアの境界を横断する快快そのものをも表しているようにも思えた。
全体的に軽やかで、ユーモアもふんだんに盛り込まれた楽しい作品になっている。心が弾むような体験をさせてくれる一方で、観劇後は陽だまりで過ごしたような暖かい気持ちにもなっている。脚本の北川陽子は今作で、「人類のさみしさに寄り添って、思う存分飼いならしてみたい」と示しているように、観客一人一人に優しく寄り添う作品だからだ。
「現実に切り込むために踊り狂うピエロは、現実を踊らせる事を願ってる」と北川は言う。頭でっかちで理屈ばかりをこじらせることから抜け出し、ロックナンバーに合わせて体を揺らしてみたらどうか。そうすれば生きづらい社会を楽しく生きられるだけでなく、歪んだ現実も違ったものにできるのではないか。そういった前向きなメッセージを感じて、心が打たれるのだ。
取材・文・撮影=石水典子

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