『たとえばボクが踊ったら、 #003』
開催直前座談会! ーー韻シスト と加
藤真樹子(FM802 DJ)、イベント主催
者が語る「共感」の力

2016年9月、「関西で魅力的なキモチいいフェスしたい」という想いのもと、大阪・服部緑地野外音楽堂でスタートした『たとえばボクが踊ったら、』。1回目はThe BirthdaySPECIAL OTHERSの伝説のツーマン。それから2年が経った2018年は会場を増設。野外音楽堂と服部緑地公園内にあるスポーツ広場A特設ステージの2会場を行き来する、フェス形式で行われた。緑と空に囲まれた開放的な空間で、マイペースに音楽を楽しむことができる本イベントは、アーティストのライブの持ち時間が長いことが特徴。また、出演アーティスト同士のコラボレーションも多く、このイベントでしか見られない貴重なステージを見ることができる。さらには大阪屈指の名店がフードで出店したり、小学生未満は無料、出入り可能、など、大人も子供も心地良く楽しめるようにと、環境面でも細かな配慮がなされ、2回とも大好評で幕を閉じた。
しかしこのイベント、天気と切っても切れない縁がある。初回はThe Birthdayのライブの時間、ものすごい土砂降りに見舞われ、2回目は開催の数日前に近畿地方を襲った台風21号の影響で、開催そのものが危ぶまれた。なんとか開催はされたものの、台風がもたらした甚大な被害による影響は大きかった。主催者の「想定外の状態でも開催する!」という強い思いと、スタッフ陣による懸命な頑張りが実を結び、人々の記憶に刻まれる伝説的な1日になったことは間違いない。1回目と2回目の様子は、ぜひ過去のレポートを読んでいただきたい。
2016年ライブレポート→https://spice.eplus.jp/articles/72811
2018年ライブレポート→https://spice.eplus.jp/articles/209119
そして9月15日(日)、会場を服部緑地野外音楽堂に戻して『たとえばボクが踊ったら、#003』が行われる。出演者はRHYMESTER、SOIL&“PIMP”SESSIONS、韻シスト、mabanua、BASI、KanSano x 七尾旅人。第3回目の開催を前に、主催者の夢番地 大野氏と、初回からMCを担当している加藤真樹子(FM802 DJ『UPBEAT!』)、昨年も出演した韻シストから、サッコン(MC)、Shyoudog(Ba.)、TAROW-ONE(Drs.)、韻シストマネージャー・タコライス氏との座談会を敢行した。旧知の仲である双方の強い絆が確かめられた夜。乾杯のあと、イベントの成り立ちから話は進んだ。
◆コンテンツとして可能性を広げていけるフェス◆
『たとえばボクが踊ったら、』
加藤:そもそも何でこのイベントをやろうと思ったんですか?
大野:もう10年ぐらい前から考えてたんですけど、その頃からフェスが盛り上がってきて、担当させてもらってるカッコいいアーティストも増えてきて。で、自分が主催の、しかも担当アーティストしか出ないフェスをしたいっていう夢があって。自分の好きなアーティストだけ呼んで、それを好きなお客さんと一緒に共有できたら最高やなと思ったのが始まり。
加藤:ご贔屓フェスだね!
大野:ほんまそやねん。それで3年前にThe BirthdayとSPECIAL OTHERSっていう、あんまりないツーマンで始まって、去年2回目を2会場でやって。服部緑地公園には、広場とか陸上競技場がいっぱいあって、フジロックじゃないけど、公園を全部使ってできたらおもろいなと思ったのが、もともとの夢。しかも誰もフェスやってへん場所が服部緑地やったんですよ。服部緑地の皆様ともずっと話をしながら去年やっと2会場でやれて、そこから始まった感じ。
タコライス:すっげえ興奮して大野さんから電話かかってきたの覚えてますもん。「すげえとこ見つけてん! 服部緑地の!」って。「どんなとこなんですか?」って聞いたら、「もう、すごい!!」って(笑)。
全員:(笑)。
加藤:アクセスもしやすいですしね。
大野:そう、新大阪から電車で15分。
Shyoudog:東京とか九州とか、遠方から来ても最終で帰れる、日帰りできるフェス。
サッコン:18時半に終わるんですもんね。スタートも11時やから、始発乗ったら来れるし。
大野:そうやねん。良い立地。
『たとえばボクが踊ったら、』
タコライス:『たとえばボクが踊ったら、』っていうタイトルはどうやって決めたんですか?
大野:5年ぐらい前から考えて、ピンときたのがこれやってん。インパクトと、ちょっと楽しそうな雰囲気出るタイトルが良いなと思って。「たとえばぼくが死んだら」という結構昔の曲があるんですけど、それがすごい残ってて。
サッコン:その曲知ってる人は、ピンとくる感じのタイトルなんですか?
大野:いや、全然こないです。
加藤:うん。曲のイメージとは全然違う。
大野:ゆくゆく、このイベントが売れてきたら、横にも広げられるんですよ。今回は「踊ってる」からライブやけど、たとえば映画のイベントやったら「観たら」にしたらええし、どんどん変えていけるから、コンテンツとして色々やれるかなと。
TAROW-ONE:なるほど!
加藤:一大プロジェクトじゃないですか!!
大野:そうよ! 相当考えてる。今まだ小出し状態やから。
Shyoudog:僕らの考え方と似てるな。僕らがやってる『OSAKA GOOD VIBES』も『FUKUOKA GOOD VIBES』とかできるなっていうので始めたし。シンパシー感じるのはそういうとこなんかなって、今話しながら思った。
◆台風に負けずに開催した#002◆
『たとえばボクが踊ったら、』
加藤:先日番組で、イベントの雰囲気、表もめちゃめちゃ良かったけど、楽屋裏が良かったとおっしゃってましたね。
TAROW-ONE:もてなしの姿勢というか。
タコライス:大野さんって百戦錬磨のイベンターで、イベントのこと全部わかってて、その人が自分でパーティーを始めるわけじゃないですか。イメージ的には魚屋さんが自ら寿司屋始めた、みたいな感じですよね。
TAROW-ONE:「たとえばボクが握ったら」もできる(笑)。
全員:はははは!(笑)。
タコライス:それほんまの寿司屋なってまう(笑)
大野:でもそれ、めちゃめちゃアリやな。ちょっとメモらせていただきます。
全員:(笑)
加藤:1年目は大変でしたね。
大野:大変やった。
加藤:私、最初からMCをやらせてもらってるんですけど、マジで嵐を呼ぶ男なんですよ。
『たとえばボクが踊ったら、』
大野:去年も直前に台風がきてね。
加藤:ほんと去年はできて良かったね〜。
大野:良かった。地獄見たけどね。
TAROW-ONE:電気が通ったのが開催2日前だったんですよね?
大野:そう。で、スポーツ広場Aって誰でも来れるスペースやから、一般の人から見えへんようにせなあかんねんけど、木と木を布で結びつけて目隠しにしようと考えてたら、その木が台風で全部倒れてもうてん。
全員:あ〜〜〜〜。
大野:台風過ぎて会場行ったら、スッカスカになってて。丸見えやし、木は倒れてるし。結局4本足のテントの片方に布を張って、テント100台くらい使って埋めたんです。
加藤:それを直前にやったってことでしょ。
大野:一般の人にも見えたら、チケット買ってくれてるお客さんに申し訳ないし。当日蓋あけてみたら他の問題もいっぱい出てきて、結構勉強になりながらやったかな。
タコライス:去年ステージ大きかったですもんね。でも最後のスペアザはやっぱり感動的でしたね。
Shyoudog:「大野さんの見てた画はこれか」ってほんまに思った。
加藤:去年、お客さんの感じはどうでした?
サッコン:良かったですよね。服部緑地のデカさを活かしてるから、あんまり人目気にせんと、好きな時に好きなとこで聴けるし、踊りたい人は踊る感じやったから。
Shyoudog:たとえばお店入って、「めっちゃ美味しい料理を提供したい!」って、お店の愛と気合いが伝わる時があるじゃないですか。その雰囲気がすごく出てる。アーティストにもお客さんにも、「今日絶対楽しんでな!」って。
加藤:反応がすごく良いんですよね。
タコライス:大野さんが見てはるアーティストとお客さんががっちりリンクしてるから、あんだけの反響が起きると思うんですよね。
加藤:お客さんの嗅ぎつける力がすごいなと思います。
大野:もっと嗅ぎつけてほしいけどね。
Shyoudog:今はSNSで全員が発信できる時代で、裏方の人とアーティストがどれだけ仲良いのか、アーティスト同士がつながってるか、温度でわかったりする。大野さんはアーティストとも手を取り合ってガツッとやるじゃないですか。単に「イベントやるから出て」じゃなくて、「こんなんおもろいんちゃう?」ってイベント打って、そこに共感したアーティストが集まるから、「おもろいなあ」という雰囲気が、会場以外のとこで伝わると思います。
◆独自のイベントオファー◆
『たとえばボクが踊ったら、』
加藤:ライブもゆったり楽しめるのは、このイベントの良いとこですよね。
大野:ライブの尺を長くするのはマストで考えてる。
サッコン:毎回アーティストのコラボがあるじゃないですか。韻シストも去年、PUSHIMさんと一緒にさせてもらいましたけど、PUSHIMさん、フェスであそこまでオープンになること、なかなかないんですよ。緊張感持ってちゃんとステージを成功させようっていう場合が多いんです。
タコライス:去年、無茶振りされたもんね。
大野:「サッコンが踊ったら」みたいなやつね。
サッコン:他のアーティストとコラボしてステージに立つ楽しさって、緊張感も含めて、そこで生まれる瞬間のエネルギーがあって。それはさっき言うてたみたいに、お客さんも感じ取れるものやから、僕らだけじゃなく、きっとお客さんも「来年もこのおもしろさを見せてくれるんやろうな、体験したいな」と思ってるんやろうなって。今回めっちゃ楽しみですもん。
大野:今回はKan Sanoくんと七尾旅人くんのコラボ。フジロックで七尾くんバンドのサポートキーボードがKanくんやってん。それがめちゃくちゃ良くて、終わってからすぐに楽屋行って、「9月お願いします」みたいな。七尾くんにはやってほしい曲を3曲相談してて、それをKan Sanoバンドでやってもらう感じ。
TAROW-ONE:まばちゃん(mabanua)はどうなるんですか?
大野:普通にmabanuaとしてバンドでやってもらって、他フューチャリングできないか相談中。
加藤:オファーする時は、そこまでの話をするんですね?
大野:できれば「これをやって欲しい」と相談はします。どうなるかはわかりませんが……(笑)。
加藤:やっぱりこのラインナップ見ると、それぞれがつながってるから、「どこがどうなるの?」みたいな期待はありますよね。
大野:当日事件起きへんかな(笑)。
『たとえばボクが踊ったら、』
サッコン:今回、BASIをソロで呼んだ理由を聞いてみたい。
大野:6月の『NeighborFood』(韻シスト主催の定期イベント)でソロのBASIくん見て、超楽しくて。ちょうどリリースもあったし、フラットな状態でオファーした。持ち時間1アーティスト40分が最低ラインやから、韻シストと2つやったら単純計算で80分になるけど、相談したら快諾してくれて。こっちは基本的にセッションしたいイベントなんで、枝分かれしてどんどん出てほしいなと思って。
加藤:なるほど。
大野:あと『夏びらき MUSIC FESTIVAL』っていう高橋マシくんが服部緑地でやってるイベントがあって、今年はBASIくん出てなかったんやけど、DJの人がBASIくんの曲流しはってん。そしたら会場中が合唱したんよ。
全員:おおーーー!
大野:その景色見て、「これはすごいことやし、生でやれたら嬉しい、じゃあ出てもらわなアカン」と結論が出て、すぐ相談した。
TAROW-ONE:すげえ。
大野:BASIくんは韻シストのメンバーだけど、ソロはある意味別な感じがする。同じイベントで2回ステージに出るのはおもしろいなと思って。他では実現しにくいかもわからへんから。
加藤:メンバーから見たら、BASIさんは全然違うスイッチが入ってる感じなんですか?
Shyoudog:『NeighborFood』のソロの時は緊張してたけど、去年の『たとえばボクが踊ったら、』ではベロベロやった。
加藤:リラックスしまくりで。
サッコン:多分、自分の中でアーティスティックな部分を使い分けてるんだと思います。20年以上続けてきたバンドでの立ち位置と、ソロでやってきたアートの部分の違いがきっと、彼の中で見え出してるんやと思う。
大野:それはすごいあるやろうね。僕は別モンとして考えてる。フライヤーに「BASI(韻シスト)」って書いてないでしょ。完全にわけたんですよ。
サッコン:mabanuaをmabanuaとして呼んでるのもそういうことですよね。
大野:まばちゃんのアルバムが良すぎたから、「あれやってほしいな〜。気持ちええやろうな〜」という希望をお願いしてる感じ。
加藤:ほんとに気持ち良いイベントなんでね。
大野:今回は韻シストはトリ前で。
タコライス:ありがとうございます。絶対踊らしますよ。
◆キーワードは「気持ち」◆
『たとえばボクが踊ったら、』
加藤:今回3回目ですけど、今後の展望は?
大野:今年はスケールダウンして1会場ですけど、これは敢えてです。来年は9月にまた2会場でやりたいな。今年いかに良いものを作って、来年に向けて何ができるか考えてる。あと、自分の担当アーティストしか出ないっていうコンセプトを、来年は覆そうとしてます。担当以外のアーティストたちも出ていただいて、いろんなふうにできればなって。
加藤:それでも大野さんの目から見て、この人に出てほしいという人を呼ぶんですよね。
大野:もちろん!
加藤:出てほしいと思うアーティストの共通項はあるんですか?
大野:僕、キャンプめちゃめちゃ好きなんですよ。現地に行くまでの車の中とか、BBQで何かを焼きながら聴いてるアーティストを呼びたい。
加藤:めっちゃ個人的(笑)
TAROW-ONE:貴族の遊びみたいになってる(笑)
大野:「でも皆わかるやろ!?」と言いたいんです。今回これだけのアーティスト出てますけど、知らないアーティストがいたとしても、「全部ええやん」ってなるように作られてるというか、誰も損しないイベントやと勝手に思ってるんですけど。
加藤:そうだと思います。出会えるイベント。
大野:そこはブレずに、ちょっと広げるために、担当以外も入れようかなって。
加藤:申し訳なさそうにしてますけど、とても素晴らしいことだと思いますよ。
大野:ありがたいことに、アーティストとか事務所、同業者の方々に、「大野さんほんまええブッキングやってますよね〜」みたいなことをよく言ってくれるので、ブレずにちゃんと1本筋が通るようにしたい。軸は僕のキャンプですけどね(笑)。でもキーワードは「気持ち」なので。
TAROW-ONE:ライブって特にイメージを共有するのが大事ですよね。主催者がどういうイメージをしてるか共感できたら、全てに広がっていく。
タコライス:僕らもいろいろイベント出てるけど、やっぱり主催者の人と一緒にグッとなるのが1番楽しいですね。考え方とかもわかるから。
『たとえばボクが踊ったら、』
TAROW-ONE:共有できる事項が増えるほど、想いは増していくし、「自分らにできることは何かな?」って、各々出演するアーティストが考えるし。出店する人も、スタッフも然り。お客さんにも伝わってる。めっちゃええフェスやと思ってます。デジタル社会やけど、このアナログなやり取りがやっぱり1番人を動かすんじゃないんかな。
大野:それ! 思ってること全部言ってくれた。最高!
加藤:では、最後に意気込みをお願いします。
大野:もう、天気だけなんとか。でもまあ、実は雨の方が思い出に残る気はするんですけど。
Shyoudog:雨でも楽しんでもらいたい。もし降ったら韻シストでカッパとか無料で出そうか。
タコライス:「たとえばボクがアンブレラなら」みたいなので、お願いします。
加藤:雨の話するのやめよー! 天気良くなりますように!
大野:フェス慣れしてない人も楽しんでもらえるので、ぜひ遊びに来てください!!
ロングバージョン
文=ERI KUBOTA 撮影=ハヤシマコ

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