【インタビュー】清春、カバーアルバ
ムを語る「時代とか関係ない。何年経
っても古くも新しくもなく」

清春が初のカバーアルバム『Covers』を9月4日にリリースする。これに伴い、『Covers』収録11曲より8曲分のミュージックビデオを収めたDVD『Covers Music Clips』が9月18日にリリースされることも発表となっている。
1970年代から2000年代にかけての名曲群に新たな命を吹き込んだ本作には、清春が長年培ってきた美学が散りばめられており、シンガーとしての力量や稀有なセンスを存分に堪能できる仕上がりだ。『Covers』完成直後の8月上旬のある日、デビュー25周年イヤーも孤高の道を行く清春の胸の内をじっくりと探ってみた。

   ◆   ◆   ◆

■空気感重視です
■音数も増やさない方向になった

──これだけ個性的な楽曲の数々をカバーアルバムとしてまとめていくのは大変だったのではとお察します。今、こうして『Covers』が完成した感触はいかがでしょう?

清春:そうだなぁ。サウンド全体の手ざわりは思った通りになってる。ほとんど入れてないギターソロを入れてても、そこにはバッキングのギターを出来るだけ乗せない。ライヴだとギターが2人いるんだけどね。今回のレコーディングは、DURAN(G)、Katsuma(coldrain / Dr)、沖山(優司 / B)さんの3人で全部やってる。基本的には極力ダビングしない形で、隙間がたくさんあるようにしたいのよね。空気感重視です。

──近年、清春さんが理想とされている音像ですね。できるだけシンプルに清春さんの声を響かせたかった?

清春:基本的にはそうね。僕のは時代とか関係ないんですよ。何年経っても古くもなく新しくもなく聴けるっていうふうにはしたいかな。最初はアレンジャーの三代堅さんも結構いろんなことをやってきたんですよ。原曲をより現代的に解釈したようなアレンジだったり、よりハーモニーを多めにしてジワっとくるアレンジでより切なくしたり。そういうのは途中で全部やめてもらって、あんまり包まれるような感じではなく、音数も増やさない方向になった。
──パッケージというよりはアーカイヴを重視するようになっていくんですね。

清春:最近、RADIOHEADのデモ音源がハッカーにハッキングされて流出してしまった事件があったじゃない? その結果、先にその時期の曲をリリースしてしまおうっていうことになった。あの事件を見て、“今後はこういうふうになっていくんだろうな”って思った。METALLICAやU2のアルバム完全再現ツアーは、もちろんアルバムという形式が良かった時代のことだよね。でも、今後はそれがなくなっていくんじゃないかな、と。キャリアがあるとニューアルバムのリリースツアーと言いながらも、どうせアルバムの曲を全部やるわけじゃないんだし。キャリアが増えれば増えるほど、そういうものかなと思いますね。たとえば演歌の人って、昔の曲や人の曲も自分の歌みたいに頻繁に歌うじゃない? 僕らのジャンルは特にオリジナルにこだわりすぎ、という部分もあるのは確か。

──そこは柔軟にというところでしょうか?

清春:もちろんアルバムというコンセプトがあって、それに伴う事件性があってもいいんだけど、なかなかさ。昔の海外のアーティストだったら、ジャケットで思い出せる名作もあるけど、日本って、そういう土壌ができないまま終わるんじゃないですか。世界から見た日本のアーティストの作品って、まるでアルバム単位で括られてはいないからな。

──なるほど。

清春:でも認知されたとして、そのなかで向こうの人が聴いて気持ちいい曲をライヴでやった時に盛り上がるのはあるかも。アニメとかの影響で、アジア、南米、ヨーロッパでは“おお!”ってなるのかもしれないけど、もっとシンプルに勝負した場合、やっぱりプレイして気持ちいい曲が盛り上がるのが理想。で、ライヴが終わった後、YouTubeで海外の人が探した場合に、「サビでこう歌ってたんだな」っていうふうになるんじゃない? もちろん、昔からみんな洋楽に憧れてやってるわけなんで、アルバムで括りたい気持ちはわかるんですけど。衝撃的なアルバムって、いっぱいあったかもしれないけど、アルバムタイトルまではなかなか覚えられないよね。なんとなく、誰々の1stとか2ndっていうのはわかるけど、タイトルで戦えるまではいかないというか。

──たしかに、そういうアルバムは減少傾向にあります。

清春:“これがこの若いバンドのインディーズ盤でどうたらこうたら”とか、僕にはもうよくわからない。『Covers』は、デビュー25周年の企画の一環としてのカバーアルバムなんで、僕が今まで出してきた音源のなかではわかりやすいと思うんですけど、どうなんでしょう? 原曲を好きだった人とか、原曲を歌ってるアーティストを好きだった人がちょっと聴いてみて、“ああ、こういう感じになるんだね”っていう意見もあるだろうし、“清春、まだやってるんだ。久しぶりに聴いてみようかな”って人もいるかもしれない。今、ライヴに来てる人たちにとっては“清春さんはこれが似合う/似合わない”とか。いろんな感想が出てくる。まぁそれくらいでしょうかねー。

──清春さんにカバーしてほしい曲をファンの皆さんがリクエストしたくなるかも。

清春:Twitterとかであるようです、「これを歌ってほしい」とか。たとえば、「UAさんだったら『悲しみジョニー』じゃなくて、この曲を歌ってほしい」とか。「ひとまず黙ってこれ聴いてくださいよ」とは思いますかね(笑)。
▲<東京・大阪ホール公演「Covers」>2019年8月13日(火)@メルパルクホール東京


──皆さん、言いたい放題なんですね(笑)。この『Covers』を掲げたホール公演は8月13日のメルパルクホール東京で完結したわけですが、今後の具体的な展開は?

清春:今回リリースが遅れた理由もいろいろあって、『Covers』を録りながら違う曲を録ってたりしたんです。またオリジナルアルバムを作ります。すでに半分ぐらい曲はできてるんで、オリジナルアルバムのプリプロを始めて、足りない曲を作ります。「忘却の空」もまた歌い直してね。「忘却の空」は、キーがもう低くて。

──年齢を重ねてから、以前の楽曲の原曲キーを低く感じるというのは、珍しいケースなのでは?

清春:普通は逆なんでしょうね。黒夢とか初期のSADSの曲は、僕が最近普通に歌ってるキーよりも平均的に1音ぐらい低い。だからいまいち歌っても気持ちよくないんですよ。このあいだ、原曲キーを半音上げてもらって歌ってみたら、すごい歌いやすくて。ギターもベースもドラムも録り直して、新しい「忘却の空」をボーナストラック的に入れるつもりですかね。やってみなきゃわからないから、入らないかもしれないけど(笑)、とりあえずは、オリジナルアルバムを作ります。で、年末のライヴがあって、25周年イヤーが来年の2月9日で終わります。その付近までにはオリジナルアルバムを出したいですね。レコーディングが多くて嫌ですけど、ジリジリ地道にやっていきます。

取材・文◎志村つくね

■初のカバーアルバム『Covers』

2019年9月4日(水)発売
【初回限定盤 (CD+DVD)】PCCA-04818 / ¥4,630+TAX(税込 ¥5,000)
【通常盤 (CD)】PCCA-04819 / ¥2,778+TAX(税込 ¥3,000)
▼CD収録曲 ※初回限定盤・通常盤共通
01. 傘がない 作詞・作曲:井上陽水 / 1972年
02. 悲しみジョニー 作詞:UA / 作曲:朝本浩文 / 1997年
03. SAKURA 作詞・作曲:水野良樹 / 2006年
04. 想い出まくら 作詞・作曲:小坂恭子 / 1975年
05. アザミ嬢のララバイ 作詞・作曲:中島みゆき / 1975年
06. 月 作詞・作曲:桑田佳祐 / 1991年
07. MOON 作詞:NOKKO / 作曲:土橋安騎夫 / 1988年
08. やさしいキスをして 作詩:吉田美和 / 作曲:中村正人 / 2001年
09. 接吻 作詞・作曲:田島貴男 / 1993年
10. 恋 作詞・作曲:松山千春 / 1980年
11. 木蘭の涙 作詞:山田ひろし / 作曲:柿沼清史 / 1993年
▼初回限定盤DVD収録曲
01. 傘がない (Short Ver.)
02. 悲しみジョニー (Short Ver.)
03. SAKURA (Short Ver.)
04. MOON (Short Ver.)
05. やさしいキスをして (Short Ver.)
06. 接吻 (Short Ver.)
07. 木蘭の涙 (Short Ver.)
08. 忘却の空 (Full Ver.)


▲『Covers』初回限定盤


▲『Covers』通常盤


■『Covers Music Clips』

2019年9月18日(水)発売
PCBP-53933 / ¥5,800+TAX(税込 ¥6,264)
01. 傘がない
02. 悲しみジョニー 
03. SAKURA
04. MOON
05. やさしいキスをして
06. 接吻
07. 木蘭の涙
08. 忘却の空

▲ミュージックビデオ集『Covers Music Clips』
■<elegy>

2019年9月13日(金) Mt.RAINIERHALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
・一部 open 17:30 / start 18:00
・二部 open 20:30 / start 21:00
2019年9月19日(木) Mt.RAINIERHALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
・一部 open 17:30 / start 18:00
・二部 open 20:30 / start 21:00
(問)HOTSTUFF PROMOTION:03-5720-9999


■<The Birthday

2019年10月30日(水) 東京・マイナビBLITZ赤坂
https://kiyoharu.tokyo/inos/reg/


■<’19 FINAL>

12月24日(火) 横浜Bayhall
12月25日(水) 名古屋BOTTOMLINE
12月27日(金) 梅田CLUB QUATTRO
12月28日(土) 梅田CLUB QUATTRO
12月31日(火) 渋谷ストリームホール *カウントダウン公演

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