大阪の夏フェス『ジャイガ』ウルフル
ズら人気アーティストの共演に興奮、
充実の2日間を振り返る

大阪の音楽フェス『ジャイガOSAKA GIGANTIC ROCK FES 2019』が8月3日、4日、舞洲スポーツアイランドにて開催された。2017年に『WEST GIGANTIC CITYLAND』のイベントタイトルでスタートし、翌年より現名称になって実施されている『ジャイガ』。過去2回、ビッグネームから新進気鋭までジャンルに偏らずバラエティに富んだ国内アーティストが出演。また、大阪湾が隣接する絶好のロケーションやレジャー設備などから、ライブキッズだけではなく、ちびっ子や上の世代も駆けつける同フェス。3度目の開催となる今回、2日間くまなく『ジャイガ』を体験したうえで、「今後も間違いなく行きたい夏フェス」という実感を得た。なぜ、ジャイガはクセになるのか。2日間のライブレポートをまじえながら紐解いていく。
●邦ロックのニューエイジたちに興奮した1日目●
ライブを振り返ってみると、初日は、邦ロックのニューエイジたちの台頭や進化を意識させられる1日となった。
オープニングアクトを担ったのは、キタニタツヤ。ボカロPとしてネット上で発表してきた楽曲群などが高く評価され、話題を集めている23歳。文学的な歌詞があみこまれた「悪魔の踊り方」など4曲を披露したキタニのタイトなパフォーマンスは、妖艶な色気も同時にまとっており、夏フェスらしい「一発目からガンガンいこうぜ!」という“爆アゲ感”とは良い意味で一線を画す。「音楽を堪能する」という表現がふさわしく、『ジャイガ』のカラーを感じるオープニングだった。
Survive Said The Prophet
気温が35度をこえて「猛暑」がアナウンスされた時間帯に登場したのが、「サバプロ」ことSurvive Said The Prophet。「もう本番か?」と勘違いするほど本人直々の熱いリハーサルでオーディエンスのボルテージをあげ、ビートたけし出演映画『ブラザー』の刺激的な名台詞で始まる1曲目「TRANSlated」では、すでにデキあがった観客が、重低音にあわせてヘドバンを連打。
Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet

つづく「Fool's gold」でYosh(Vo.)は客席突撃。若者と肩をつかみ合って歌い、ステージに戻ると「あっちー」と言わんばかりに黒いシャツをパタつかせた。Yoshは「すごいな、リスペクトだ」と会場の熱量に賛辞を送り、「一緒に共通を作りましょう」と披露された「Network System」を顕著として、徹底的にオーディエンスにコミットしたステージ。圧巻の一体感を生み出した。
今や邦楽ロックの支柱的存在となったUVERworldは、2年連続出演。人気、実力の高さはもはや語るまでもないが、それでも、今フェスでもっともガムシャラさを感じるライブを見せたのが彼らだった。「UVERwolrdが一番印象に残った、と言わせなくてフェスに出る意味なんかない!」というMCに偽りなく、アグレッシブなチャレンジが光った。

UVERworld

特にTAKUYA∞(Vo.)が、演奏ステージ・GIGANTIC STAGEを降壇し、隣のEPOCH STAGEに乱入してパフォーマンスをおこなったくだりには驚かされた。文字通りの離れ業。この日も演奏された人気曲「IMPACT」の歌詞〈いつだって世界の中心は 今立つその場所〉を体現するかのように、彼らが動くその先々こそが、まさに「世界の中心」になっていた。イチかバチかの荒技でもあったが、「自分がやったことに責任を持てるなら、自由にやった方がいい。やり残したくないんだ」というMCが、この日のUVERworldそのものをあらわしていた。
前年は、機材トラブルをものともしないワイルドなパフォーマンスを見せたLAID BACK OCEAN。今回は、その凶暴性を内包させるようなステージのセット。ライトセーバーのような蛍光灯が数本立ち並び、真っ暗な中でブルー系の灯りだけが発色。それでも、ステージはほぼブラック。暗い中でサングラスをずっとかけているYAFUMI(Vo.)の姿はまさしくブラックジョークにあふれ、一方でそのクール&シュールな佇まいはどこかヴェルヴェット・アンダーグラウンドやルー・リードのような趣きがあった。
LAID BACK OCEAN
「TOILET REVOLUTION」では、同曲には欠かすことができないアイテム・便器に座り、SEIJIのドラムから放たれる轟音の中、我関せずといった表情でYAFUMIは本を読む。そして便器でくつろぎながらも、「来いよ、来いよ」とシャウトして煽る。真顔でユーモアと皮肉を食い込ませる、LAID BACK OCEAN特有の世界観。UVERworldの誠果(sax)をゲストに迎えた「STAN DREAMS」では一転して目に見える攻撃性を発揮。「ロックバンドは格好いいんだよ、気が合えばステージで音を合わせて楽しませることができる」と共演に浸った。
最初のキタニタツヤからラストを飾ったBLUE ENCOUNTまで猛烈な勢いで駆け抜けることができた。
●2日目はフェスならではの“挑発数珠つなぎ”●

2日目、EPOCH STAGEでオープニングアクトをつとめたI.Mのあと、GIGANTIC STAGEのトップバッターで登場したのは東京スカパラダイスオーケストラ。暑い中でももちろんスーツをビシッと着こなし、「O・S・A・K・A Are You Ready OSAKA?」の掛け声を合図に、「Are You Ready To Ska?」「Glorious」などで踊らせる。
東京スカパラダイスオーケストラ
茂木(Dr.)は「(大トリの)ウルフルズまで体力を温存しつつ、心の中は全開で」と言いつつ、ヒットナンバー「銀河の迷路」で観客の体力を根こそぎ削っていく。午前中にも関わらずパンパンになった会場全体が「Down Beat Stomp」でモンキーダンスをする光景は壮観だった。
ソウルフルでファンキーなナンバーを次々と繰り出して沸かせたのはBRADIO。遠目でも目立つアフロヘアの持ち主・真行寺貴秋(Vo.)は、暑苦しさ(褒め言葉!)を前面に押し出し、体感温度を上昇させる。一方、大山聡一(Gt.)のキレのよいカッティングが響く「O・TE・A・GE・DA!」など各曲、テクニック面でも見どころ十分。
BRADIO
「スパイシーマドンナ」では貴重な持ち時間の多くを使ってダンスのフリコピ講座を開き、「サタデーナイトフィーバー」ばりにみんなで踊るなど、エンタテインメント性もトップ級。最後、真行寺は地声で「音楽ってすばらしい」と絶叫。オーディエンスのハートを憎らしいほど見事に鷲掴みにした。
2日間でもっとも観覧エリアを埋めたのは、マキシマム ザ ホルモン。不思議だったのは、開演前は水を打ったように静まり返っていた点だ。スタッフがおこなうリハーサル時も異様なほど静か。この静寂が喧騒に変わるとは、到底想像できないほどだった。
マキシマム ザ ホルモン
しかしメンバーが登場すると、やはり状況が一変。一発目から「恋のメガラバ」を放出し、何とヘドバンの風圧で砂埃があがった。スクリーンによる映像演出も見事で、たとえば「プレイガール」という歌詞の部分では某雑誌風のロゴ、「浴衣風鈴ダーリン」のくだりでは浴衣美女のうなじのVTR、また『「F」』では某少年漫画雑誌を思わせるアニメーション映像を駆使するなど、誰もがスクリーンに釘付け。

マキシマム ザ ホルモン

ホルモンの前に登場したcoldrainから「曲数が多かった方がcoldrain。お喋りが多くて曲数が少ないのが(このあと出てくる)マキシマム ザ ホルモン」と煽られたことも引き合いに出して、ナオ(Dr.)が、大阪を代表するお喋りの女王・上沼恵美子さんにそっくりだということを映像で検証。coldrainの発言もあながち間違いではないほど、喋り倒した。
マキシマム ザ ホルモン
ナオは、「まさかツーステージやるとは思っていなかった。さっき、ほな・いこかとしてやっていたんですけど。私の方がかわいいから」と、出演バンドのゲスの極み乙女の美人ドラマーにライバル心を燃やす始末。BRADIOのフリコピ講座のことにも触れて「my girl」では“膣ダンス”をレクチャーした。
ホルモンが終わった後は、ドリンク販売の屋台は長蛇の列。Tシャツが泥々になっている若者の姿も目立った。
ウルフルズ
『ジャイガ』の大トリを飾ったのはウルフルズ。ステージのセットは、これまで出演したどのバンドよりもシンプル。トータス松本(Vo.)もまったく力むことなく、「これで今年(のジャイガ)も終わりやね。楽しんでいこう」とリラックスした口調で話しかけた。そして始まったのが、国民的大ヒットナンバーの「バンザイ」。この会場にいるすべての人が知っている、といっても過言ではなく、サビでは子どもも「バンザイ」をして一緒に歌っていた。
ウルフルズ
トータスは、これまでの出演者のステージも「あらかた見た」らしく、「マキシマム ザ ホルモンとかおもろすぎやん。画面に色々(映像を)仕込むとかアリなん? フェスとか、バンドのアップの顔を見たいから画面ばっかり見てしまうけど、でもせっかくやから生で見なあかんってなる。でも、あんなん画面に釘付けにさせる気しかないやん!」とホルモンの映像演出にツッコミ。舞台袖でウルフルズのライブを見ていたメンバーの顔が大映しになり、観客も爆笑した。
ウルフルズ
「笑えれば」「サムライソウル」といった人気曲を存分に聴かせてくれたウルフルズだったが、筆者としては、ギターなどの楽器を交換している合間であったり、水を飲んだりしているときの何とも言えない静けさが印象的だった。3人も特に音を鳴らすことなく、観客を激しく煽るわけでもない。エモーショナルなMCもない。無理にその場をつながず、ナチュラルにそこに佇んでいる。だけど、それが心地いいし画にもなる。これが、それまで登場したバンドとウルフルズの大きな違いだ。
ウルフルズ
ラストは「ええねん」。ウルフルズから発せられた多幸感はすさまじく、「この時間がもっと続けばいいのに」と、曲を聴きながら、現実が刻一刻と近づいてくることへの漠然とした不安が一瞬よぎるが、しかし最後には「いや、明日からも頑張ろう」と活力に変わった。これが、ウルフルズの曲のチカラ。3人の演奏に元気付けられた。
2日目の特徴は、各アーティスのいじりあいの連鎖。多くの演者が揃うフェスならではの光景を楽しむことができた。
●涼しさを感じさせるための気配りが嬉しい!●
会場風景
2日とも、昼間は35度をこえる猛暑となった『ジャイガ』。しかし、体感的にも視聴覚的にも涼しくさせる気づかいが行き届いていた。ライブの転換時間に、BGMがわりに風鈴の素朴で懐かしい音を鳴らしたり、スタッフがこまめに水撒きをしたり。総合司会者が「アルコールは水分にはなりません。きっちりお水などを摂ってください」と注意をうながすところもポイントが高かった。
設置されたプール
プールが設置されている点も良く、特に2日目は水着持参で遊ぶ小さい子どもがたくさんいた。大人も、しんどくなったら足だけプールにつかる人も多く、かなり効果的だったと言える。目立った事故がなかったのは、ジャイガの細かい心遣いがあったからではないだろうか。
●食事も充実、真夏のフェスはとにかく食え!●
音楽フェスの屋台メシはどれも比較的ちょっぴりお高め。その点は『ジャイガ』も同様だ。しかし暑い中での長丁場、きっちり食べておかないと乗り切れない!
フードエリア
『ジャイガ』はとにかくメシがうまい。筆者はこの2日間、しゃりしゃり食感のかき氷入り唐揚げうどん、ローストビーフ丼、温玉入り鶏天丼、サーロインステーキ丼、いちごのかき氷、プティングのアイスクレープをがっついた(もちろん自腹!)
クラブラウンジエリア
高台のバームガーデン舞洲は特に屋台が充実しており、さらにジャイガ クラブラウンジ(1日¥6000ワンドリンク付)を利用すれば、食事を持ち込み、ゆっくりと食べながらライブを見ることができる。クラブラウンジを利用すると、体力的にもかなり楽。せっかくなので、次回からはちょっと奮発してでも使うことをオススメしたい。
●ジャイガ 2020 を心待ちに!
『ジャイガ』
出演アーティストが充実している上に、暑さ対策、食事面もできる限り観客の立場に立ってくれている『ジャイガ』。インフォメーションには日用品も揃っており、何かあったときも困らない。ぜひ『ジャイガ』の次回開催を心待ちにしたい!
取材・文=田辺ユウキ 撮影=日吉“JP”純平、森 好弘、松本いづみ、キシノユイ、浜野カズシ

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