大胡田なつきを開花させたカルチャー
たち4(Fashion編)

今年(2019年)10周年を迎えたバンド・パスピエ。大胡田なつき(Vo.)による印象的なアートワークやMVなど、登場時からすでに、バンドの背景には数多くのカルチャーが見え隠れしていた。その豊潤なカルチャー要素の中心を担う大胡田なつきにフォーカスした連載。タイトルにもあるように全4回をもって本連載は最終回。

第1回の「Book編」、第2回の「Art編」、そして第3回の「Music編」に続き、第4回は「Fashion」編。彼女が愛する5つのアイテムについて、それぞれの出会いや魅力などを語ってもらった。

Photography_Yuki Aizawa
Interview & Text_Sotaro Yamada
Edit_Alex Shu Nissen

1. <ARTWARP>のチャイナ服セットアッ

大胡田 : まず、今着ているチャイナのセットアップは私服で、<ARTWARP>(アートワープ)というお店のものです。

――ええっ、衣装ではなく私服ですか!? こんな、いかにも大胡田さんが来てそうな服で外に出たらモロバレじゃないですか。

大胡田 : いや、それが、逆に気付かれないんです。以前「すごい大胡田さんに似てる人が〇〇駅にいるけど、衣装っぽい服だし、本人ではないよな~」とツイートしている方がいて。わたし実際その場にいたんですけど。この服で。

――ああ、逆に、あからさますぎて大胡田さんのコスプレをしているファンだと思われてしまうと。

大胡田 : そうそう。そういうのもあるのか、じゃ大丈夫だ、と思って。

――たしかにこの服を着て駅やコンビニに行っているとは思わないですもんね。

大胡田 : そう。だからあえて全開でいく。すごく気に入っているのでよく着ています。買ったのは5年くらい前です。『らんま1/2』が好きで、小さい頃からチャイナ系が好きだったんです。カンフージャケットやチャイナジャケット系の服はたくさん持っていますね。

――子供の頃からそういう服を着ていたんですか?

大胡田 : そうですね。でも田舎に住んでいたからなかなか手に入らなくて。母親が通っていたセレクトショップにたまに入ってくるいちばん小さい大人サイズのものを買ってもらっていました。<ARTWARP>は太極拳のウェアなどを扱っているお店で、サイズをオーダーできる工場が中国にあるんです。

――じゃあこれはオーダーメイドなんですね。全部で何着くらい持っているんですか?

大胡田 : どれくらいだろう……結構たくさん持っていますね。他のブランドでもこういう服が出た時は買ってしまうんです。<UNDERCOVER>(アンダーカバー)と<PHINGERIN>(フィンガリン)がコラボしたチャイナジャケットも買いました。全部で20着くらいあると思います。3年前くらいからこういうデザインの服は増えた気がしますよね。以前よりだいぶ手に入れやすくなった印象です。
――たしかにトレンドではありますよね。子供の頃からファッションの好みは変わっていないですか?

大胡田 : 変わっていないところもあります。チャイナ系にハマったあとは、プーマとかナイキとか、男の子の服ばかり着る時期がありました。もっと前、幼稚園から小学校2年生くらいまでは白タイツでしたね。運動着を着る時も絶対に下に白タイツを履くという。なんか上品なイメージがあるじゃないですか。

――そういった上品なものに対する好みは、ファッションだけでなくモノや本に対しても一貫していますよね。

大胡田 : 謎のノーブル感が好きだったんですよね。服を好きになったのは、親が洋服好きで子供にいろんな服を着せたがる人だったことが影響していると思います。

――多くの人が思春期前後にファッションに目覚めると思うんですが、その前にすでにいろんな服を着ていたんですね。

大胡田 : そうだと思います。髪型も幼稚園児の頃からすごくこだわりを持っていて、やってほしいスタイルを絵に描いて「ここをこうやって三つ編みにして、ここを結んでほしいの。そしたらここにリボンをつけて」って母や祖母に頼んでいました。その頃は結構、女の子らしい心を持っていたんです(笑)。

――もう失ってしまったみたいな言い方ですね(笑)。

大胡田 : 他にも、上履きはつま先の部分の色がみんなと違うものを履いていたし、リコーダーも違う色のものが欲しいから楽器屋に連れて行ってもらったりしました。「みんなはこれを使っているけど、どわたしは違う」とか思っていましたね。

――とにかく人と同じが嫌だったんですね。リコーダーの色にまでこだわるとは。

大胡田 : 持ち物へのこだわりがすごく強くて、そろばんですら、謎のボタンが付いているちょっと良いものを買ってもらっていました。

――体操服はどうですか? あれはさすがに全員同じものだと思いますが。

大胡田 : 体操着は嫌でしたね……。みんなと同じが嫌というより、あれは単純にダサかったから嫌だった。しかも最初はブルマでしたし。基本的に肌を出すのが嫌なので、どれだけ暑くても上にジャージを履いていました。紅白帽も嫌でしたね。髪型が崩れるから。

――でも肌を出したくないという割には、結構出しているような……? 前回の服もそうでしたし、取材でもライブでも、袖がない服をよく着ているイメージがあります。

大胡田 : たしかにそうですね。肌を出したくないというよりも、素肌が何かに触れるのが嫌、と言った方が正確かも。あとは、東京に来てからなぜか紫外線アレルギーになってしまったので、たとえばフェスの時も、ステージに出る時以外は、暑いのに長袖を着ています。

<ARTWARP>
Web http://www.artwarp.net
Instagram https://www.instagram.com/artwarp_insta/

2. <SINA SUIEN>のブルゾン

――これもまたキラキラしたアイテムですね。

大胡田 : チャイナっぽさが絡んでくるとキラキラしたものが多くなりますね。<SINA SUIEN>(シナ・スイエン)はすごく好きなブランドです。有本ゆみこさんという刺繍作家さんが手がけていて、私服では3~4着持っています。

――どういうところが好きなんですか?

大胡田 : わたしの「好き」がそのまま形になっているところですね。どこの国なのかわからない謎のオリエンタル感がすごく好きなんです。このブルゾンは、3年前くらいに手に入れたもの。すべて手作りで、量産はしていないブランドなので、商品数が少ないしそれほど頻繁に新作が出るわけでもなくてなかなか買えないんです。最近すごく人気で、いろんなアーティストさんの衣装も担当しているみたいです。きゃりーぱみゅぱみゅさんやDAOKOさん、やくしまるえつこさんとか。

――このブランド、もしかして以前『装苑』で着てました?

大胡田 : あ、そうそう『装苑』で着ました。いつかわたしも<SINA SUIEN>さんに衣装をお願いしたいなと思っているんです。私服では3~4着持っていて。

――どういうきっかけで着始めたんでしょう?

大胡田 : いつも自分で描いた絵をもとに衣装をつくってもらうんですけど、日本武道館公演『GOKURAKU』の時の衣装が<SINA SUIEN>のコレクションにすごく似ていたんです。しかもその時はまだブランドのことを知らなくて、Twitterでフォロワーさんに「なっちゃん<SINA SUIEN>着てましたね!」って言われて初めて知ったんです。調べたら、原宿に取り扱っているお店があることを知って。それが『Lamp harajuku』というお店でした。
大胡田 : それでお店に行って、最初はスカートを買いました。その後、うちのメイクさんとお店の方が知り合いだということがわかって、以来、<SINA SUIEN>が入荷される度に連絡をいただいています。いつも朝一番にお店に駆けつけて、こっそり購入しているんです。

――ふと思ったんですが、大胡田さんってあんまりウインドーショッピングしなさそうですよね。

大胡田 : しないんですよね。ネットで買うことがほとんどです。でも今年はいろんなお店に行こうと思っているんです。今年もう半分以上過ぎちゃってるけど……。

<SINA SUIEN>
Web http://sina1986.com
Instagram https://www.instagram.com/arimoto_yumiko/

『Lamp harajuku』
Web https://www.hpfrance.com/shop/lampharajuku
Instagram https://www.instagram.com/lampharajuku.records/

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大胡田なつきを開花させたカルチャーたち4(Fashion編)はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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