INORAN

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【INORAN インタビュー】
自分らしいものを
作っていくというのが、
ミュージシャンとしての存在意義

2019年は夢がある年で、節目となる年
始まりの年だという期待に懸けたい

そのようにさまざまな経験を積み重ねてこられて、今50歳が目前に迫っているという意識がINORANさんに与えるものって何でしょうか?

実感も何もないです(笑)。逆に“えっ、何かしなきゃいけないの?”というぐらい、変わらない1年、変わらない毎日を過ごしていくんだろうなと。ありがたいことにミュージシャンとしてこうしてやらせてもらうことがいっぱいあって、今年の大晦日に何してるかも想像がつかないし…想像通りになったことがないぐらいなので。だから、漠然とは夢を描くかもしれないけど、50だからどうとかいうのはないです。それに縛られるよりは、今日をハッピーに過ごして、“いい一日だったなぁ”と眠れることに力を使ったほうがいいかな。

例えば…これは失礼な質問かもしれませんが、“生涯で、あと何枚アルバムを作れるんだろうか”とか考えがよぎることはありませんか?

ミュージシャンだけじゃなくて画家とかも含めて、先人の偉大な芸術家はそうやって考えて作っていたんでしょうかね? “あと何個しか作れない”とか。意識しながら作ったからって最後の最後にすごいものができるなんてことはないんじゃないかな。そういうことを考えていると、自分で制約を作っちゃうような気がする。例えば葛飾北斎の富嶽三十六景だって、確か70代ぐらい、晩年の作品ですよね。北斎は生涯ずっと描き続けてたんだって。ダヴィンチにしても誰にしても、そうなんじゃないかな。今生で終わると考えるか考えないかは別として、一生作り続ける…それだけじゃないですかね。まだ見ぬものを掴もうとするわけですから、“ここで見えたらいいな~”という計画だと、つまらないものになると思いますよね。そういうタイプの芸術家の方もいると思うんだけど、僕はそういうふうに“終活”をしてないアーティストや偉人のほうに惹かれるかな。だって、せっかく生かされてるんだから、亡くなった方に失礼だよね? “やらされてるんじゃなくて、やらせてもらってるんだよ、幸せなんだよ。だから、行けるとこまで行けよ!”って思うかなぁ。

与えられているんだからと…。確かにそうですね。ところで、タイトルの“2019”なのですが、どんな想いで付けられたのでしょうか?

なかなかワードが浮かばなくて、“何だろうな、このアルバムのタイトルは?”とずっと思っていたんですけど、いろいろ混ざり合ってるこの時期に生まれた作品だし、記憶、記録しておきたいなって。で、“2019”っていいなと思って付けました。パーソナルな面でも、世の中的にも、大きな節目になる年なんだろうなぁと。もちろん元号が令和に変わったこともそうなんですけど、いろんなことを含めてね。何かが起きると思うけど、起きないように願ってる…とかも。もう足元だけを見ている時代は終わったし、でも未来だけを見てる時代でもない、何かが切り替わった年なので。それを肌感覚ですごく感じるから。

どういう時、どんな部分にそれを感じられますか?

シリアスな時代は終わった感じがしますね。社会情勢的には、良い意味でも悪い意味でも今までにないことが起こりすぎている。でも、そのことが実は世界を変えていたりして、意味のあることもたくさん起こっているというか。スーパーポジティブに考えると、夢のある年だし、節目になる、始まりの年なんじゃないかという期待があって。そこに懸けたいよねって。

激動をチャンスだと思いたいですよね。でも、いろんなことが変わると、やはり不安だったりもすると思うんですけど…

ものすごく不安ですよ。“戦争が起きたら…”とかさ。だからこそ、本当に大切なことにまで想いが至る、考える時代になったってことじゃないかな。目先とか小手先のものじゃなくて、“だからこそ、愛する人を抱きしめなきゃいけない。側にいてあげなきゃいけない”と思える。そう思わせてくれる時代なんだよね、ある人にとっては。だから、身の丈に合ったそれなりの希望とか楽しいこと、大切なことはどこにでも転がってるということが分かる時代になったというか。そこはすごくポジティブに考えてますね。2019年ってそれがすごく強くあると思っていて…去年にはなかった感じだし、来年もっとあるかもしれないし。まぁ、“そうでありたい”って自分に言い聞かせてる部分もありますからね。ずっとポジティブというのもキツいだろうから。

社会情勢の変化を肌身で感じながらも、直接的な社会派ソングを歌うのではなく、INORANさんの音楽はあくまで、そこに生きる人たちのパワーを増大させてくれるものだと感じます。

そうですね。自分がミュージシャンとしてできること…それは活動の範囲とかではなくて、音楽に何を込めて、どういうものを共有して膨らませていくかということですよね。例えば100人じゃなくて1万人、10万人、100万人に届くことがいいというのは、もちろんそうですけど、100人の幸せの心の窓みたいなものを大きくできたら、ミュージシャンとしてこんなに嬉しいことはない。それがペイ・フォワードのように広がっていったら、いいことじゃないですか。それが自分にできる、ミュージシャンとしての僕にできる、例えばのことですよね。

それこそがすべきことであり、使命?

使命っていうか、自分のポジション? 音楽人の中での…ですね。

8年前の震災の話も出ましたが、当時も音楽家の方々はそれぞれに“自分は何ができるか”を模索されて、さまざまなスタンスで活動されていたと思います。当時とはまた違った意味でも、心が荒むような事件などが起きる今のこの世の中で、ミュージシャンとして何をするかを問う時、やはりINORANさんとしては、人の心の窓を大きくするという部分を担いたいですか?

そう思ってるよ。難しいけど、何をしなきゃいけないとか、何をするとかが大事なんじゃなくて、気持ちだよね。それは表立ったことじゃなくても全然いいと思うし。震災の時はみんなすごく混乱してたけど、捨てたもんじゃないミュージシャンってすごくいっぱいいる。それは東北の時だけじゃなく、広島や熊本の時も。

本当に次々と災害が起きていますからね…。

そうなんだよね。悲しいけど、悲しみを持っている人の悲しいところに寄り添うだけじゃなくて、笑顔を届けるっていうのもあるわけで。Candle JUNEと被災地に行っている時って、僕ら、仮設住宅で冗談を言ってるんですよ。“大変ですね”とかじゃないの。“おばあちゃん、元気出して”とかですらなくて、くだらないことを話してるんです。でも、それがいいと思うんだよね。だから、僕はそうやって笑いに変えられるような間柄でいろんな人とつながりたい。それはミュージシャンとしての活動以外のことなんですけど、そういうものを含んだ“場所”を作れるようでありたいなぁと。これは全然シリアスな話じゃなくて、当たり前のことだからさ。

本作はINORANさんの今を映し込んだ本当に素敵なアルバムで、それを引っ提げてのツアーも控えていますが、これまでと変えたいところ、新たに試みたいと思っていらっしゃることはありますか?

今回はどうしたらいいと思いますか? 俺が答えると“いいツアーにしたいですね”とかの月並みになっちゃうから、逆に質問します(笑)。どんなツアーにしたらいいと思います?

今回はアッパーな面もありながら、ミディアムバラード系の曲が染みたので、必ずライヴで聴きたいですし、これまでのINORANさんヒストリーの中のしっとり系もセットリストに組み込んでいただけたら嬉しいです。

えっ、しっとり縛りですか? こんなアルバムなのに!?  まぁ、参考にさせてもらいます(笑)。

私の個人的な要望だけをお伝えしてますが、大丈夫ですか?(笑)

全然大丈夫ですよ、そのほうが面白いので。みんな違うことを言うから(笑)。

なんか、今日は生身の人間としてのINORANさんの、混じり気のないお言葉の数々をうかがえました。

俺にできることなんかそれぐらいしかないですもん。

先輩の人生哲学として、学びとしたいです!

いやいや、自分に言い聞かせてるだけですけどね。ただはぐらかしてるだけです。曲の説明したくないから(笑)。

取材:大前多恵

アルバム『2019』2019年8月7日発売 KING RECORDS
    • 【完全生産限定盤-PERFECT BOX-(DVD+LP付)】
    • NKCD-6868 ¥10,000(税抜)
    • 【通常盤】
    • KICS-3829 ¥3,000(税抜)

【ライヴ情報】

『INORAN TOUR 2019「COWBOY PUNI-SHIT」』
8/21(水) 東京・新宿BLAZE <FC限定>
8/24(土) 兵庫・神戸VARIT. <FC限定>
8/25(日) 静岡・LIVE ROXY静岡
8/31(土) 石川・金沢AZ
9/01(日) 長野・CLUB JUNK BOX
9/13(金) 広島・SECOND CRUTCH
9/14(土) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
9/16(月) 福岡・DRUM Be-1
9/20(金) 宮城・仙台darwin
9/22(日) 愛知・名古屋ElectricLadyLand
9/23(月) 大阪・OSAKA MUSE

『B-DAY LIVE CODE929/2019』
9/29(日) 東京・TSUTAYA O-EAST

INORAN プロフィール

イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP

アルバム『2019』スポット映像

OKMusic編集部

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