ミュージカル『ファントム』製作発表
会見 城田優、主演と演出の二刀流に
「楽しみでしかない」

2014年に初演されたミュージカル『ファントム』が2019年11月9日(土)より東京・TBS赤坂ACTシアターにて、12月7日(土)より大阪・梅田芸術劇場メインホールにて再演される。本作は、フランスの小説家ガストン・ルルーによって発表され、1911年にベストセラーになった人気小説「オペラ座の怪人」を原作としたミュージカルだ。
今回の上演にあたり、初演時にファントム役を演じた城田優が、演出にも挑戦するという『ファントム』史上初の試みとなる。そして城田と共にファントム役をWキャストで加藤和樹が務め、ヒロインのクリスティーヌ役には、元・宝塚歌劇団月組トップ娘役で現在『エリザベート』でタイトルロールを務めている愛希れいかと、映画『アラジン』の実写版でジャスミン役の吹替を担当し、そのずば抜けた歌唱力が注目されている木下晴香がWキャストで演じ、ファントムの恋敵となるシャンドン伯爵役には、 実力もあり、なおかつ舞台映えする長身が魅力の廣瀬友祐、そして数多くの舞台でめきめきと頭角を現している木村達成がWキャストで務めることとなった。
公演に先駆けて7月22日(月)、都内にて製作発表会見が行われ、さらに会見の前には城田、加藤、愛希、木下による歌唱披露が行われた。本番では決して同じ舞台には立てない二人のファントムと二人のクリスティーヌは劇中歌「You are music」を柔らかな掛け合いの歌い出しから徐々に感情をほとばしらせながら、四者四様で歌い上げ、集まった多くの報道陣から拍手を浴びていた。

その後、廣瀬と木村も参加しての会見がスタートした。

梅田芸術劇場の代表取締役の木村有裕からの挨拶、そしてミュージカル『ファントム』作詞・作曲を手掛けたモーリー・イェストンからのビデオメッセージが紹介された。
モーリーは城田が演出することに関して「非常にいいアイディアです。城田は知性を兼ね備えており、感情を理解して描写する感受性がとても豊か」とコメントしつつ、本作の成功に向けて「城田さん自身が自由であることが重要です」と素敵なアドバイスを届けていた。
城田優
このコメントを受け、城田は「(本番が)楽しみでしかないです。プレッシャーというか責任感が重要ですが、そこをどうにか、ここに座っている出演者とすでに何度も打ち合わせをしているスタッフの皆様に、引き続きサポートしていただきつつ、この僕自身思い入れのある作品をより素晴らしい舞台にできるようにこれから初日に向けて精一杯、取り組んでまいります」と穏やかな口ぶりで語った。
城田さんの衣裳、アシンメトリーで素敵ですね!
本作で実現したい演出プランについて城田は「ミュージカルを作る上で僕の意見としていちばん大事なのはお芝居と歌だと思っていて、歌を歌い上げるミュージカルを作りたい訳ではなく、心情を訴えかけるミュージカルを作りたいんです。この素晴らしい『ファントム』という作品の楽曲や、涙なくしては見られないシーンがたくさん出てくるんですが、いかにして心を届けられるかが一番大事な事と思っているので、出演者の皆さまには今までにこんなに歌の感情を言われた事がない、というくらい僕から注文があるかもしれないですね」とややSッ気を見せる。一方で「僕は誰も思いつかないような事を思いつくといった素晴らしい才能を持っているとは思っていませんし、自分なりに“一生懸命考えて”また“一生懸命考えずに”浮かび上がったことをどれだけ面白く具現化できるかスタッフの皆さんと一緒に詰めているところです。スタッフ・キャストの皆さんと寄り添いながら、作っていくことが、そこを一番大事にしたいところでもあります」と胸の内を吐露した。
加藤和樹
加藤は「城田優のもとでこの作品に携わるという事は、自分にとって大きな意味を持つ事だと思っています。僕の初舞台を彼とご一緒して、その彼とWキャストでしかも演出。僕を知っている彼だからこそ、一緒に作り上げられる役があると思います。僕だけでなく他の役者さんにも彼独自の見方、見え方で演出していくと思います。これは自分へのプレッシャーにもなってしまうんですが、(城田は)『今まででいちばん加藤和樹がいいと言わせる作品にする』と言いました! 皆でああでもない、こうでもないととことん話し合い、演出・城田優と向かい合って、最後までついていきたいです」と全幅の信頼を言葉に表した。
加藤さんの衣裳も城田さんの衣裳と同じ方のデザインのようですね!
愛希れいか
愛希は「このクリスティーヌという役にはずっと憧れていました。今回、演出の城田優さんを初めとする素敵なキャストさんと一緒に出演できる事を幸せに思っています。Wキャストの木下晴香さんと一緒に精一杯勤めてまいります」と輝く笑顔を見せる。

愛希れいか
木下晴香
そして愛希から振られた木下も「城田優さん演出のもとでたくさんお話させていただいている中で、ここまでこの作品について熱い思いを抱いている演出家と共にこの作品に携わる事に幸せを感じており光栄に思っています。私自身、新しく衝撃的なクリスティーヌ役をお届けできるように精一杯努めたいと思います」と力強く述べた。

木下晴香
廣瀬友祐
廣瀬は「本作に出演出来る事を光栄に、嬉しく思っており、とても楽しみにしていました。この作品がこれまでにない、新しく魅力的な作品になるように頑張っていきたいです」と一言一言にやる気を感じさせていた。

廣瀬友祐
木村達成
そして木村は「この座組の一員に選んでいただいた事を嬉しく思います。僕からしたら自分の役をやるだけで精一杯なのに城田さんはファントム役もやって演出も務めるという……。いろいろな事を吸収してこの作品の一員として素晴らしい作品に出来るように頑張りたい」と決意を述べていた。

木村達成
質疑応答では、本作への思い入れの深さを聴かれた城田。「この戯曲に関しては世界中で上演されていますが、このモーリー・イェストン版の素晴らしさは、やはり家族愛。エリックの人生が描かれている事。ファントム、直訳するとおばけですが、どうして誕生したのか、どうしてエリックがそうならなければならなかったのか、そこのストーリーに心打たれ、家族の物語がすごく重要になっているところが魅力となっていると思います。モーリーの音楽が丁寧でかついろいろな切り口で、曲によって違う世界に連れていってくれるんです。『オペラ座の怪人』にあるような派手なだけではない、哀愁とか、言葉にするには難しいくらい細やかな印象をも描いています。2014年にやった時、正直なところ『まだまだ、いろいろできたなあ。もっとできたなあ』という悔いもありました。再演では自分なりにこの世界を最大限に魅力をお客様に伝えられるのではないかと思いまして」と並々ならぬ思いを口にしていた。
6人それぞれに自身が演じる役について、演じ甲斐がありそうな点は? という質問が飛ぶと、城田は「エリックは人間で、空想の存在と思われているファントムとは違って、複雑な環境で育っている。エリックの狂気性、ただかわいそうな人ではなく、ここで育ったが故の子どもにあるような無知なる残酷さ、そこをより描くことで人間の複雑な心模様を掘り下げたい」とコメント。
加藤は「歌をお客さんに届ける点が重要ですね。そして人との関わり合い、あとは彼が何故そうなったのか、そこは追求していきたい」と話し、愛希は「母性が彼女の魅力だと思います。すごくバランスが難しいのですが、やりがいのある役だなと思っています」、木下は「難しい曲が多いのがチャレンジなんですが、挑戦する事にワクワクしている自分がいます。クリスティーヌのキャラクターに関しては前回の映像を観た時に、彼女は無邪気すぎる印象を受けました。シャンドンに対してもエリックに対してもお顔を見せてください、という想いと見てしまった時の複雑な想いのすべてを成り立たせる必要があるのかな」と述べた。
大きな二人を挟んでクリスティーヌ’sもトーク!
廣瀬は自分の番になると、城田に向かって「どうなんでしょう?」と笑いかける。その言葉に「台本、もらってないもんね」と城田が返す中、「うーーん」と悩んだあげく、「歩き方を気をつけようかと思います(笑)。伯爵役なのですが、僕、ちょっとがに股なので」と笑いを誘いつつ「プレイボーイである彼がいかにクリスティーヌに惹かれるのか、純粋な彼が惹かれていくところが見どころじゃないかな」と語り、最後に木村は「シャンドンはファントムの恋敵の役ですので、お二人の魅力に負けないようにしっかりとした魅力を出していきたい」と口にすると、城田が「しっかりとした魅力とは?」と突っ込み。「お顔立ちも素晴らしいし身長も高いし歌も演技も最高なので、そこらへんを負けないように役者として戦っていければ(笑)」と苦しそうに答え、皆が微笑む一幕となった。
旧友との懐かしい話に思わず笑みが
また全員がWキャストという事で、お互いの魅力を聴かれると城田は「加藤さんとは僕が19の時にご一緒してそこから7、8年の時を経て『ロミオとジュリエット』のティボルト役でWキャストをやらせていただきました。彼の魅力は“ひたすら真っ直ぐで不器用なところ”が魅力。不器用が故にひたすら真っ直ぐに役柄や作品を探求していく。本作のエリックも不器用で、そこが彼の武器ではないかと。僕はどちらかというと器用な方なので、そういう点でも違うエリックができあがるんじゃないかな?」対して、加藤は城田の事を「最大の魅力は“負けず嫌い”だと思います。昔からとてもとても負けず嫌いで、しかもそれを隠さない。出来ない事を何としてでもやってやる、という負けん気で乗り越えようとする、だからこそ彼に出来ない事はないんじゃないかと。そして、人として弱い部分を見せてくれるところ。人が好きなんですよ、愛ある人なので、そんな彼についていこうと思うんです」と照れながら伝えていた。

廣瀬さんが不敵な笑みを浮かべながら…

廣瀬は「木村くんの最大の魅力は“眉毛”」とさらっと突っ込むと木村が声を上げて笑い出す。「(木村は)明るくって愛嬌がある、僕はそれが凄くうらやましくて人として魅力があると思ってます。なんか人間力を持った人です」と語ると、木村は「廣瀬は淡々と面白いことが言える。お笑いの師匠だと思っています。いつも楽屋では笑い合う、良き先輩です。舞台上ではリアルな芝居を追求して『俺の気持ちをちゃんと動かしてくれよ』と表現してくれる熱いハートを持った方です」と返すと廣瀬がフフフと笑っていた。
廣瀬さんに眉毛を指摘されて爆笑する木村さんでした!
取材・文・撮影=こむらさき
<あらすじ>
舞台は19世紀後半のパリ、オペラ座。
楽譜売りで歌手志望のクリスティーヌ・ダーエは、その歌声をオペラ座のパトロンであるシャンドン伯爵に見初められ、憧れのオペラ座で歌のレッスンを受けられるよう取り計らってもらう。
一方、オペラ座では支配人のキャリエールが解任され、新支配人のショレが、妻でプリマドンナのカルロッタと共に迎えられた。キャリエールはショレに、オペラ座の地下には幽霊がいて、自らを“オペラ座の怪人”と呼んでいることを伝えるが、ショレは解任された事への仕返しに怖がらせるために言っているに過ぎないと取り合わなかった。
オペラ座を訪ねてきたクリスティーヌを見たカルロッタは、その若さと可愛らしさに嫉妬し、彼女を自分の衣裳係にしてしまう。ある日、クリスティーヌの清らかな歌声を聞いたファントムは、ただ一人彼に深い愛情を寄せた亡き母を思い起こし、秘かに彼女に歌のレッスンを行うようになる。ビストロで開かれたコンテストで歌声を披露したクリスティーヌは、大役に抜擢され、シャンドンはクリスティーヌに求愛する。ファントムは、そんな二人の姿を絶望的な思いで見送る。
初日の楽屋、カルロッタの罠にかかったクリスティーヌは毒酒により喉を潰されてしまう。失意のクリスティーヌを自分の住処であるオペラ座の地下へ連れて行くファントム。しかしそれが、やがて彼を悲劇の結末へと向かわせることになる―

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