『LOVE GOES ON…』の
歌声を聴けば誰もが納得、
DREAMS COME TRUEが
愛され続けている理由
J-POPを代表する「未来予想図II」
それ以降、80年代風歌謡曲といった面持ちのM5「LAT.43°N〜forty-three degrees north latitude〜」。オフビートでダンサブルなM6「自分勝手な夜」。基本はポップチューンだが、ゴスペル調というか、ドゥーワップ調のイントロや、ややサイケデリックなサウンドも聴けるなど遊び心が感じられるM7「星空が映る海」。サンバのリズムのクリスマスソングM8「サンタと天使が笑う夜」。打ち込みによるずしりとしたリズムが効いたアルバムのタイトルチューンM9「LOVE GOES ON…」。そんなバラエティーに富んだ楽曲が連なる本作の果てには、7分を超える超大作M10「未来予想図II」が待っている。これまで数多くのアーティストにカバーされて、今やドリカムを代表する楽曲のみならず、平成を代表…いや、J-POPを代表する楽曲と言っても過言ではないナンバー。その旋律の優秀さは、もはや言うまでもなかろう。語りかけているような、または思い出をなぞる独り言かのようなメロディーラインは、世代を超えて多くの人たちに支持されてきた。
《私を降ろした後 角を曲がるまで見送ると/いつもブレーキランプ5回点滅/ア・イ・シ・テ・ルのサイン》《2人でバイクのメット 5回ぶつけたあの合図/サイン変わった今も 同じ気持ちで素直に愛してる》(M10「未来予想図II」)。
上記のフレーズもあまりにも有名だ。実生活でブレーキランプを5回点滅させている人はまずいないだろうが(「未来予想図II」が流行った時期にはわりといたような気もするが…)、しかもふたりだけが知る恋愛における幸福感の表現としては秀逸ではあろう。これがBメロというのもいい。ここで高まった感情がサビでさらに解放に向かうわけで、その構成にも吉田美和の優れた手法が垣間見れる。
《きっと何年たっても こうして変わらぬ気持ちで/過ごしてゆけるのね あなたとだから/ずっと心に描く未来予想図は/ほら思った通りにかなえられてく》(M10「未来予想図II」)。
《きっと》と《ずっと》をフレーズの頭に置く辺りも巧みである(楽譜的に見れば小節のお尻からシンコペーションで次小節へつながっているようである)。また、エレキギターは結構ノイジーだが、かと言って楽曲の雰囲気を損ねない程度にさりげなく入っているところとか、吉田の自ハモではなく、中村(だよね?)のハーモニーがアクセントになっているところとか、小技もピリリと効いている。問答無用の名曲であり、フィナーレを飾るに相応しい楽曲でもある。
聴けば聴くほどに、吉田美和の才能がさく裂していることがよく分かる『LOVE GOES ON…』。30年前の作品であるにもかかわらず、ここに収録されているM10「未来予想図II」もM1「うれしい!たのしい!大好き!」が今もなおファンに愛され続けていることがよく分かる、まさに名盤中の名盤である。
TEXT:帆苅智之