『jupiter』で教えられた実直さーー
個人的BUMP OF CHICKEN回想録
曲を最も良く聴かせるバンドサウンド
しかしながら、ヘッドフォン着用の上でしっかりと音源を聴くと、4人でのアンサンブルにこだわったと思われるサウンドの良さが分かってくる。厳密に分かったかどうかはともかく、そんな気はした。はっきり言えば、『jupiter』のサウンドはやや粗いと思う。レコーディングの頃はたぶん21~22歳であったであろうからそれも止む無しであっただろう。具体的に言えば、生真面目気味な升のビートに対して直井のベースが実に奔放なフレーズを弾いているところなどが随所に見受けられるのだが、そこがいいのである。そのやや粗い感じが、藤原の描く歌詞と相性がいいように思えるのだ。
BUMPの歌詞は時間が不可逆であることを意識させるものが多いと前述した。そこで綴られている中身は、上に記した歌詞からだけでも想像してもらえるかもしれないが、ポジティビティ──楽観的視線こそ薄いが、“前向きな感情を引き起こす肯定的な意味付け”といったものがほとんどである。バンド名である“臆病者の一撃”からの流れであろうか、“悔恨からの復活、再生”といったテーマも見受けられる。派手さはないものの、誤解を恐れずに言えば、愚直な印象すら受けると思う。そういう内容であるからこそ、少なくとも浮世離れしたサウンドで彩ることはないし、多少不器用な感じであっても手作り感のあるバンドアンサンブルが合うのである。
そして、それらが一体となった楽曲たちは、BUMPにまったく興味を示さない人へは届かなかったろうが、彼らに少なからず興味を持ったり、彼らに近い思考、指向を持った人にはその深いところへ刺さるものだったのだと思う。2002年頃、何かそんなことを思ったことを思い出した。
TEXT:帆苅智之