LUNA SEA 結成30周年の幕開け、3本
のライブに見た人間味溢れるバンドの
Story

LUNA SEAがバンド結成30周年を記念して、5月29日には東京・ZEPP TokyoにてオフィシャルファンクラブのSLAVE限定無料ライブ『LUNA SEA The 30th Anniversary FREE LIVE -DEAR SLAVES-』を、さらに5月31日、6月1日には東京・日本武道館にて『LUNA SEA 30th anniversary LIVE -Story of the ten thousand days-』という、内容が異なるメモリアルライブを3本立て続けに行なった。
この30年間、紆余曲折ありながらも数々の伝説と、ありえないような神がかったことを次々とやってきたLUNA SEA。それを形成しているのは、神なんかじゃなく、ましてやビジネスなんかでも決してなくて、まぎれもなく、RYUICHI、SUGIZOINORAN、J、真矢というこの5人の生身の人間関係がコアにあったからこそ。そして、そんな彼らはいまから30年前に神奈川県の小さな町で奇跡的に出会って以降、いまもなお誰一人欠けることなくステージに立ち、お互いをリスペクトしながらこのバンドの未来になにがあるのか、その夢をいまも共有し続けている。30周年の幕開けに彼らが行なった3本のメモリアルライブは、まさにそのことを体感させてくれるような、“人間味”溢れるLUNA SEAを様々な“Story”から感じさせてくれるものになっていた気がする。
ここでは、その3本のライブを通して彼らが見せてくれたStoryをそれぞれ解説していく。
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
LUNA SEA結成30周年記念日となった2019年5月29日。この日のライブはSLAVE限定だった。LUNA SEAとSLAVEのStory。そのなかでも特筆すべきは、なんといっても終幕後もファンクラブが存続し、LUNA SEAなき10年間、5人とファンを支え、バンドの復活を待ち続けたことだろう。こんなファンクラブ、他に聞いたことがあるだろうか。
彼らを支え続けたファン=SLAVEを讃えるかのように、この日のGIGは無料。ライブは「SLAVE」での幕開けとなった。曲のイントロからものすごい一体感で盛り上がるフロア。ライブ中にはSUGIZOがMCで「30年前、町田プレイハウスでの初ライブを観た人?」(1人、手を上げた人がいた)、「じゃあ10周年の『CAPACITY∞』(『LUNA SEA 10th Anniversary GIG【NEVER SOLD OUT】CAPACITY∞』)に来た人は?」(半分ぐらいの人が挙手)と昔を懐かしむようにSLAVEたちにフレンドリーに話しかけるシーンもあった。
アンコールには、SLAVE一丸となって歌うバースデーソングと大きな特製バースデーケーキで、SLAVEがLUNA SEAの30周年をお祝いするサプライズを届けると、メンバーは大喜び。RYUICHIはケーキを指差し「SLAVEからだよ」と何度もいい、メンバーの発案でそのケーキと一緒にみんなで記念写真をパチリ。LUNA SEAとSLAVEのStoryのなかでも、心温まる思い出が刻まれた瞬間となった。
だが、それ以上にこの日の最大のトピックは、RYUICHI復活のStory。それに尽きる。彼が肺せんがんという病気に襲われたのはLUNA SEAのStoryのなかでも、かなりの衝撃を与えるものだったはず。今年1月に手術を受け、ソロでのステージには幾度か立っているものの、LUNA SEAとしての復帰ステージはこの日が初。RYUICHIは驚異の復活を見せ、この日のライブの見所となった新曲「宇宙の詩~Higher and Higher~」から「gravity」、新曲「悲壮美」の宇宙&浮遊&刹那を一気に堪能する流れを見事に歌い上げてみせた。
MCでは自ら病気のことにも触れ「みんなに心配かけたけど、まだ神様に呼ばれなかったんでもう少しだけ地上で歌います」と話したRYUICHIの言葉には、胸が締めつけられる思いがした。そんなRYUICHIに対してINORANは「いろいろあったけど、RYUちゃんの隣りでギターを弾けることに感動してます」と感極まったように瞳を潤ませ、SUGIZOは「だから、こうしてLUNA SEAはメンバーが変わることなく30周年を迎えられたのは奇跡なんです」といい、真矢は「これは(僕らだけではなく)ファンみんなの愛の奇跡だと思います」とフロアに語りかけた。そうして、ケーキと一緒に記念撮影をするとき、珍しくRYUICHIの肩に手を回したJ。メンバーのRYUICHIに対する愛情が垣間見れるたびに、熱いものが込み上げ、5人の人間的なつながりを実感した夜だった。
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
5月31日、日本武道館で迎えた『LUNA SEA 30th anniversary LIVE -Story of the ten thousand days-』初日。LUNA SEAの武道館ライブではいまやおなじみの360度解放ステージ。暗転するとオーケストラアレンジの「LOVELESS」が流れ出し、月の満ち欠けに合わせてインディーズ時代から現在に至るまでのライブ、MVを交えた過去の映像が流れだすと、客席からはどよめきが上がる。そうして『IMAGE』の「CALL FOR LOVE」をSEにして、下手からメンバーが現れると、真っ白いスモークで覆われたアリーナ上空にレーザービームが走り、ピラミッドのような立体が浮かび上がる。これから武道館と宇宙がコンタクトしはじめる、そんなことを思わせる壮大かつスペクタクルなオープニングから、ライブは「Déjàvu」で幕開け。冒頭からRYUICHIは、Zeppよりもさらに迫力、安定感ともに増した歌声で絶好調ぶりをアピール。そうして「ここまで走り続けてこられたのもみんなが支えてくれたおかげ。感謝したい、というか……一緒に壊れてしまいたい!」といって客席の熱狂を誘った。
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
そんな武道館公演の初日。この日の彼らは、オープニングの演出からも分かるように、LUNA SEAと宇宙が紡ぐStoryで観客を魅了していった。象徴的な場面となったのは5曲目の「SHINE」から始まった中盤パート。
「SHINE」ではアリーナ中央に置かれた巨大なミラーボールを太陽の光源に見立て、<燃え上がる太陽は 誰のもとにも昇るから><今以上すべてが輝けばいいね>という歌詞を、その光で見事に具現化。それに伴ってステージ上では下手にいたSUGIZOを見つけたINORANが彼にぴたっとくっついた後、離れたところにいたJを手招きして、3人並んでお互いを指差しながらキラキラの笑顔をこぼしたり、ドラム台の前でぴょんぴょん飛び跳ねるRYUICHIを見て真矢が微笑んだりする場面が繰り返し登場。
「たぶん、世界で一番幸せな5人だね」とRYUICHIがメンバーに語りかけたあとは、「いま一番俺たちが自信がある世界をみんなに少しずつ届けていきます」と話し、最新曲「宇宙の詩~Higher and Higher~」をアクト。ここではSUGIZOのギターが宇宙まで弧を描くように広がっていき、ステージの床全面に敷かれたLEDと上空のミラーボールが星のように輝いて、武道館をまるごと宇宙へと連れ出す。その空間をINORANの透明感たっぷりのギターで浮遊していった「gravity」、SUGIZOのバイオリンとINORANのアコースティックギター、RYUICHIの歌という3人編成のアコースティックバージョンで奏でた「Providence」で、その宇宙に神秘的な祈りを捧げた。
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
そして「GENESIS OF MIND~夢の彼方へ~」が始まると場内は驚愕。ここで視点は地上から宇宙へ一気に反転。地上と空、それを結ぶRYUICHIの絶叫に至るまでの張り詰めたボーカルは鳥肌もので、この日最大の見せ場となっていったように感じる。こうして宇宙規模まで広がっていくLUNA SEAならではのパフォーマンスで貫禄を感じさせながらも、人間的な一面を見せる場面もあった。
それがもっとも感じられたのが、この日のもう一つのトピックである“ドーナツ事件”のStoryだ。アンコール、まずJが「30年間、いまだに悶々としていることがある」といって、30年前にRYUICHIがバンド加入前、楽屋に差し入れてくれたドーナツが2個しかなかったことに触れると、INORANが「ドーナツ」と叫び、続いて観客が「2個!」と返すコール&レスポンスまで発生し、場内は大変なことに。「おかしいな。俺、絶対に4個持っていったはずだけど」と一人ブツブツつぶやくRYUICHIを見かねた真矢が「たしかに僕が受け取ったときは4個で、30年経ったからいうんですけど、僕が隠れて2個食べました!」と告白。これにはメンバーも観客もびっくり&大爆笑。
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
これまで数々の伝説を生み出してきたLUNA SEAの30年間、その裏にはこんな風にドーナツの数で悶々とし続けていたメンバーたちがいたという人間味溢れるエピソードに、場内はほっこり。こうして、ドーナツの真相がわかり、30年目にしてドーナツ事件のStoryがやっと終幕を迎えた武道館初日公演であった。
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
6月1日、前日同様、立ち見エリアまでパンパンに埋まったオーディエンスが押し寄せた武道館2日目。初日と同じオープニング映像が流れるなか、2日目はSEの「LOVELESS」をそのまま引き継ぐ形でSUGIZOがトリプルネックギター、INORANがアコースティックギターを構え、これまで大事なライブで幾度となくオープニングを飾ってきた「LOVELESS」で幕開け。
SLAVEたちの大合唱を引き起こした「TONIGHT」、SUGIZOの色気あるギターリフに合わせて照明まで真っ赤に染まった「Rouge」、下手でINORANとJが向かい合って仲良く間奏をプレイした「END OF SORROW」、<モノクロームになる>という歌詞のところで床のLED画面までモノクロに変わった「TRUE BLUE」と前半から歴代のシングルヒット曲の連打で、客席を熱狂させていった2日目。このあと彼らは、LUNA SEAと未来をつなぐStoryをライブを通して観客に観せていった。
「ガンダム観てますか? SUGIちゃんが音楽監督に就任しまして。そこにLUNA SEAを注いでくれるなんて。なんて素敵なSUGIちゃんなんでしょう」と茶目っ気たっぷりにRYUICHIがいって、始まった最新曲「宇宙の詩~Higher and Higher~」では、武道館の天井をどこまでも突き抜けていくようなスケール感、音像でLUNA SEAの新世界の扉をオープン。
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
その直後、会場がざわめく。ステージ上を見ると、INORANがギターを置いて真矢の横に移動してスタンバイしている。そうして、目の前にあるスケルトンのパーカッションを物凄い形相で叩きだしたと思ったら、これまで観たことのないようなパーカッシブな「FACE TO FACE」のアクトが始まった。場内は驚きの歓声に包まれる。バンバン炎が上がるなか、Jのグルーヴィなベースに先導されながら、RYUICHIが仮面をつける仕草からローボイスで歌いはじめると、観客たちを一気に宇宙から地底へと引き摺り込む。次はSUGIZOがバイオリンを構えて弾きだす。「SUGIZO!」というコールが場内から湧き起こるなか、INORANがアコースティックギターで加わる。そうしてRYUICHIが途中まで歌ったところで、これが「RAIN」なんだと気づき、客席からは戸惑いのようなどよめきが起こる。それほど3人編成のアコースティックバージョンの「RAIN」は、原曲とイメージがかけ離れた繊細で大人っぽいアレンジが施されていたのだ。
LUNA SEA 2019.5.31 日本武道館
さらに、その後に始まった恒例のドラムソロでも、1日目同様、新しい驚きのパフォーマンスで観客に衝撃を与えていく。真矢の後方には、裃(かみしも)姿の4人の和楽器奏者が登場。床に座って、和笛、鼓、和太鼓を構え、演奏をスタートさせると、彼らが奏でるお囃子のような音と真矢のドラムがセッションし始める。互いの間合いを探り、感じ取りながら静と動、うねるように緩急を繰り返し、クライマックスに向かって力強さを増していった演奏が奏でる風景は“和”。能楽師の家系に育った真矢だからこそ成り立つ厳かなドラムソロで観客を釘付けにしたあとは、Jのオンステージ。5月から新しくタッグを組んだフェンダーベースを持った姿は実にスマートで、目にも新鮮。EDMのトラックに合わせて、フェンダーベースをドライブ感たっぷりに乗りこなし、新境地を自ら開拓していく姿を見せつけていった。
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
そうして本編が終わり、アンコールでは、もう一つの新曲「悲壮美」も披露。SUGIZOが奏でるギターに合わせ、ハンドマイクを握りしめ体を揺らして歌い出したRYUICHIは<そっと瞳を隠してた>というところで右手で目を覆い、LUNA SEAの新しいバラード誕生の瞬間をオーディエンスに刻みつけた。
このあとRYUICHIは、U2やザ・ローリング・ストーンズのプロデュースを手がけ、グラミー受賞者でもあるスティーヴ・リリーホワイトをLUNA SEA初の共同プロデューサーとして迎えて、12月に10枚目のオリジナルアルバムを発売することを伝え、「アルバムのめくるめく世界、すごい音が待ってるから楽しみにしてて。僕たちの新しい世界を届けたいと思います」と話した。そして、さらに「もう一つ。今夜発表します」といって12月21日、22日にさいまたスーパーアリーナで『LUNATIC X’ MAS』を開催することを発表。
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
「12月にアルバムをリリースするっていっちゃったから眠れない夜が続くかもしれませんが、みんなで頑張って作りたいと思います。30年間紆余曲折あって、終幕もしたけど、またこうして5人がさらに上を目指してる。その想いをエンジンにして、みんなを新しい世界に連れて行こうと思います」
その言葉に続けて、本公演のラストに届けた曲、それが「FOREVER & EVER」だったのだ。ステージ床のLED画面にLUNA SEA 30周年のロゴが浮かび上がるなか、5人は凄まじいテンションでこの大曲を熱演。30年経っても、5人が<限りなく続く この道の先に 求めるその何か あると信じたい>と、LUNA SEAに対して、強い未来を描いている姿をみんなに送る未来の希望として届けていったのだ。
30周年を迎えたいま現在も、5人の、LUNA SEAのStoryはまだまだ進行形で続いている。LUNA SEAが、行きたい未来、描きたい新しい世界があるかぎり――。

取材・文=東條祥恵 撮影=田辺佳子、橋本塁
LUNA SEA 2019.6.1 日本武道館
>>【インタビュー】LUNA SEA/RYUICHI 結成からの30年間バンドに宿り、5人にこのバンドを続けさせた精神とは何か?

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