大原ゆい子が『はなかっぱ』オープニ
ングテーマ「えがおのまほう」で変わ
ったこと

『リトルウィッチアカデミア』、『宝石の国』、『からかい上手の高木さん』、『はねバド!』とアニメテーマソングを次々と担当しているシンガーソングライター・大原ゆい子。今回は国民的アニメ『はなかっぱ』のオープニングテーマを担当。さらに7月放送の『からかい上手の高木さん2』のオープニングテーマも担当することが発表された。新しい世界を次々と開いていく彼女に、今回の「えがおのまほう」ではどんなことにチャレンジしたのか、そして常に変わっていく中でどのように意識が変わっていっているのかを訊いた。
自分の曲に振りを付けてもらうというのが嬉しかった
――早速ですが、アニメ『はなかっぱ』のオープニングテーマはどういった経緯で決まったんでしょうか。
前の主題歌「ス・マ・イ・ル」がとても人気で4年ぐらいずっとオープニングテーマでやっていて、その中で「次の主題歌やってみますか?」とお話をいただきました。「ス・マ・イ・ル」も大好きだったので恐れ多かったのですが、ぜひ挑戦させてくださいとお返事しました。
――以前、インタビューで『ドラえもん』の歌をやってみたいと言われていましたが、『はなかっぱ』も国民的なアニメですよね。何か思う所はありましたか。
私もデビューする前に観ていて、これまでのオープニングテーマ、エンディングテーマを全部知っていました。そんな『はなかっぱ』の歌を歌える日が来るとは想像していなかったので、お話をいただいて嬉しかったです。あとは元々Eテレが好きだったので、そんなアニメの曲を歌えるんだっていう感動は大きかったですね。
――これまで『はなかっぱ』のオープニングテーマは「ス・マ・イ・ル」も特徴的な曲が多い印象があります。そんなこれまでの楽曲に続くオープニングテーマを担当するということで、どのようなものにしよう、というのは考えられたのでしょうか?
どの曲も明るくて、『はなかっぱ』という作品から、お花をモチーフにしていたり、カラフルなテーマが多かったので、そこはブレないようにしつつ、アニメの王道ですが、キャラクターの名前を入れた曲にしたいっていうのはありました。 「えがおのまほう」では「かっぱ」っていう単語を使って、面白い曲にしたいなと。
―― 「えがおのまほう」のMVが公開されていますが、言われる通り「かっぱ」という単語が入っていて、子供たちも歌えるようなシンプルなメロディで作られていますね。一つ前のシングル「ハイステッパー」のロックなテイストから、今回の 「えがおのまほう」はまったく違うテイストになっていますが、どうやって作曲されていったのでしょうか?
そうですね。前回の「ハイステッパー」はギターとピアノ、両方を使っていましたが、今回の「えがおのまほう」はピアノで作曲しました。何曲か書かせていただいていて、メロディーから選抜していく形だったのですが、全部鍵盤で作曲しています。
――確かに今までの曲はギターがメインだったイメージがありましたが、今回は鍵盤からというのは感じられますよね。鍵盤の方がメロディがシンプルな曲になるのかなっていう気がしていて、そして今回は明るいメジャーど真ん中な曲ですよね。ギターで作る楽曲はメジャーマイナーというか、どこか憂いがあるイメージですが、やはり作る楽器によって違いが出てくるのでしょうか?
自分ではあまり意識していないのですが、ギターで作ると自分の中でメロディやリズムにクセが出ちゃうんです。歌も歌いながらですし。それがピアノで作曲すると、メロディーもピアノで作るので、また違ったクセが出るのですが面白いですね。
――今回は『はなかっぱ』のオープニングテーマという前提があってのことですが、普段、曲はどんな感じで浮かぶのでしょうか?
タイアップの曲以外は、メロディと詞が同時に出ることが多くて、タイアップの時はメロディを先に選抜してから、皆さんと相談して一番良いものを選んでいます。それにタイアップの場合は、歌詞のイメージをこうして欲しいという依頼があるので、先にメロディを作って、歌詞をじっくり考えることが多いです。
――なるほど。そして今回の「えがおのまほう」のMVでは先生役に挑戦されていましたが、撮影はやはり大変だったのでしょうか?
子供と触れ合う機会が私生活では少ないので、最初はすごく緊張していました。初めて会う子供たちといきなりMVを撮るっていうのと、子供たちも戸惑うんじゃないかっていう不安とか、どうやって自分が立ち振る舞えば、楽しく子供たちと接する事ができるかという不安があって、前の晩は寝れなかったです。でも、現場ではみんな本当に純粋で、すぐに受け入れてくれてとても楽しかったです。
――撮影に入る前、事前に子供たちと話をする時間などはなかったのですか?
実はMVの最初にある、教室に呼び込まれるシーンが本当に最初に子供たちとの出会いです。
――そうなんですね!MVのあのシーンはリアルな反応なんですね。
最初、子供たちは「誰?」っていう感じでしたが、女の子たちが結構気を使ってくれて(苦笑)。ここで何か言わないと!みたいな。女の子ってすごいですよね。「可愛い!」って女の子たちが反応して色々と話しかけてくれたので、他のみんなも引っ張られて。みんなすごく優しかったんです。
――その状況の中で、テイクも重ねなきゃいけないところもあると思うんですが、歌ったり踊ったり、一緒に遊んだりっていう本当に幼稚園の先生みたいな感じですよね。実際に子供と遊んだりしたのですか?
はい。ご飯を食べるシーンでは、飼っている犬の話をしたり。絵を描いている子が見せに来てくれたりとか、楽しかったですね。
――子供は好きですか、苦手ですか。
子供は好きなのですが、私の事を知らない子たちとの初対面はドキドキでしたね。
――確かに。始めて会う子供たちとの距離感は難しいですよね。そして、はなかっぱとのダンスも披露されていましたが、結構キレキレでしたよね。
はなかっぱ君とも撮影現場で合わせたのですが、はなかっぱ君のダンスはキレキレでうまかったです。
――大原さんもダンスはかなり練習されたのですか?
いやもう、全然無理って思っていたんですけど、必死になって練習しました。
――かなりダンスパートがありますよね。
そうですね。ソロのところは電車の移動中とかに必死で観て覚えました。
――シンガーソングライター・大原ゆい子のイメージとして、ギターをかき鳴らしながら歌うという印象がありますが、今回は子供たちとのダンスなど、新しい扉が開いた部分があるのかなと。今回、MVで子供たちと歌って踊ろう、という話が来た時にどう思われましたか?
嬉しかったのですが、ダンスをやるって聞いた時は運動神経が悪いので不安でした。ただ、自分の曲に振りを付けてもらうというのが初めてだったので、純粋に嬉しくて頑張ろうと思いました。踊ってみて、意外と楽しいっていうのが分かったので、「アリかも」っていうのはありました。
――苦手意識みたいなものを払拭できて、新境地が見えたというか。
歌いながら踊るってすごく楽しいなって思えて、全然いけるぞって思いましたね。
聴いた人が笑ったり口ずさみたくなるようなライブを楽しんでもらいたい
――新しい楽曲がリリースされるたびに新しい扉を開いている感じがあります。しっとりしたデビュー曲から、「言わないけどね。」でポップス、「ハイステッパー」でロック、そして今回の「えがおのまほう」があり、次はどうなるんだろうというのが楽しみなんですが、挑戦してみたいものとかありますか?
そうですね。踊りもやったし……ギター以外の楽器をやってみるとか。
――なるほど。チャレンジしたい楽器はあるのでしょうか?
ウクレレを借りてやってみていて、ウクレレはいいなって思っています。
――「えがおのまほう」のウクレレアレンジとか聴いてみたいですね。そんな「えがおのまほう」ですが、アレンジをmanzoさんが担当されています。manzoさんと組まれるのは3曲目ですが、やはりやりやすい部分があるのでしょうか?
今回の「えがおのまほう」は、絶対にmanzoさんにやっていただきたいなって思いました。前のオープニングテーマの「ス・マ・イ・ル」の編曲も担当されていますし。それで今回もハッピーが溢れるアレンジにしていただいて。ルイス・バジェさんのトランペットの収録を立ち会わせてもらったのですが、とにかく収録が楽しくて「OK!いいね!」って自分の演奏に対して、テンションを上げるアプローチしていました。私は違う日にレコーディングだったんですが、私もこうやって歌おうって思いました。呼んでくださったmanzoさんに感謝しています。
――manzoさんのハッピーなアレンジは確かに、「ス・マ・イ・ル」と地続きな感じがしますね。そして、6月にはYURiKAさんとのジョイントライブが控えていますが、今回はどのようなライブになるのでしょうか?
2人でやるのは、スペースオッドの「MagicalNightリトルウィッチアカデミア」以来かな。同じ作品を担当することが多かったのですが、お互い違うフィールドを進んでいるので、今、一緒にやった時に自分がどんな成長ができるか楽しみです。
――率直にライブは好きですか?
最近、好きになりました(笑)。
――ということはライブはあまり得意じゃなかった?
苦手というか、昔は溜めていたものを吐き出しに行くっていう感じで、ちょっと違っていたのかなって。今は、すごく楽しめるようになっています。
――メジャーデビューして約4年が経ちますがライブに関して意識改革があったと?
そうですね。バンドでライブをやったりとか、いろんな場所で鍛えられてきたのもあって、ちょっとやそっとじゃ動じなくなってきました。どこで歌っても誰に対しても、楽しめるようになってきたなっていうのはあります。
――そういった意識改革は曲作りに反映されている部分もあるのでしょうか。例えば、今回の「えがおのまほう」のような曲を作って欲しいという依頼があった時に、前ならこう作っていたなどありますか?
以前は、自分が言いたい事や、伝えたい事を書けばいいっていうスタンスでやっていたのですが、今は、ライブで盛り上がってもらいたいとか、聴いてくれる方が笑ったり、口ずさみたくなるような、ライブで楽しんでもらいたいという思いが出てきて、曲にも変化が出てきています。
――曲作りの段階から、聴いてもらえる人が見えるようになったと。
以前は応援してくださるみなさんに対して、求める事がなかったんだと思うんです。聞いてもらえれば嬉しいっていうだけで。今はそこに楽しんでもらいたいっていう気持ちが出て来ています。
――ただ単に好きで音楽を作って発表するだけじゃなくて、聞いてもらった時に相手に感じて欲しい事があるっていうのは明確な境界線があると思います。正直、「ハイステッパー」の次に「えがおのまほう」ってかなりハードルありますよね。まったく聴く層が違う。深夜アニメのタイアップで20代がメインで聞くような曲から、今度は本当に小さな子が聞くような曲になっている。しかも、大原さんのファンにも納得してもらえるものを作るっていう、チャレンジもされていますよね。すごい覚悟が必要な1曲だと思いますが、実際のファンの方の反応はいかがでしたか?
最初は受け入れてもらえないかな?っていう心配もあったんです。やっぱりカッコいい曲を支持してくれている方たちにはどうかなって思っていたんですが、皆さんすごく楽しんで聞いてくれていて。私も「えがおのまほう」を子供たちだけに向けて作っている訳ではなかったので、ちゃんと届いたなって嬉しくなりました。
――それは嬉しいですね。では今後やってみたいことはありますか?
やっぱりライブが楽しい、楽しくなってきたので、もっと曲をたくさん書きたいっていうのはあります。そして、書いた曲がどんな人たちに聞いてもらえるかっていうのは、自分が動かないといけない。フェスとか、アニソンだけじゃなくて違う人たちともライブをしてみたいです。シンガーソングライターとして活動していることをしっかり発信しながら、たくさん曲を聴いて貰えたらなって思います。
――最後はお約束ですが、ファンのみなさまに向けてコメントをいただけないでしょうか。
新曲の「えがおのまほう」は、みんなに笑顔になってもらえるような楽しい曲になっているので、ぜひ聴いて欲しいです。また、他の曲は全然違う顔をしているので、それも含めて、たくさん大原ゆい子の曲を聴いていただけたらと思います。6月のジョイントライブは「ライブ・ザ・ムービー」というコンセプトで、私は「月より綺麗だった」というタイトルで恋愛映画と組み合わせたライブになっています。他では絶対に観れない内容になっていると思います。一緒に出演するYURiKAちゃんも別の映画になっているんです。
――ライブ用の映画を作っているのですか?
そうなんです。ライブのバックで流す映画を1本作っちゃったんですよ。しかも主演は、事務所の先輩でもある上白石萌歌さんに演じて頂きました。
上白石萌歌が出演する『LIVE THE MOVIE』からのカット
上白石萌歌は『LIVE THE MOVIE』ではギターも披露
――今回のライブは曲が先で映像作品を作られたのですか?
セットリストを考えながら、映画のプロットを考えて……。
――ライブ制作と映画製作を同時進行しているんですね。そして会場は花やしきの花劇場という。
出来たばっかりの会場なんです。1日目はYURiKAさんがホストで、私がゲスト。2日目は私がホストで、YURiKAさんがゲストという形式になっています。2日間でそれぞれ流す映画も違うので、ぜひ両方とも来てほしいです。
――今回のライブはかなりコンセプチュアルですが、今後もこういった様々な仕掛けがあるライブをやっていきたいというのはあるのでしょうか?
私はコンセプトがあるライブが好きなんです。ライブだけじゃなくて、何かとコラボしたり、会場に来たら何か面白い事があるっていうようなものを追求していきたいと思っています。
取材・加東岳史 構成:林信行 撮影:池上夢貢

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