「病んでいるなんて、普通」16歳のラッパーさなりが描く10代の姿

「病んでいるなんて、普通」16歳のラッパーさなりが描く10代の姿

「病んでいるなんて、普通」16歳のラ
ッパーさなりが描く10代の姿

小学校時代からユーチューバーとして積極的に動画を投稿、中学生になるとフリースタイルのラップに目覚め、ついにはラッパーのオーディションで優勝を勝ち取り、デビューを果たしたさなり
一方でAbemaTVのバラエティ番組『オオカミくんには騙されない♡』に出演し話題を集めるなど、幅広いアピール性も兼ねそろえたアーティストであります。
デビューシングル『悪戯』はラッパー/シンガーとして人気を博しているSKY-HIがプロデュースを務めたことで話題となり、第二弾配信シングルの『Prince』のMV現在230万再生を達成するなど、スタートから大いに注目を集めているさなり。
■さなり / Prince【Music Video】

今回の新作アルバム『SICKSTEEN』は、その『悪戯』『Prince』を含む11曲を収録。
各楽曲のプロデュースにはSEKAI NO OWARIなどの楽曲プロデュースを行った保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)やBiSHなどのプロデュースで知られる松隈ケンタ
元RomancrewのALI-KICK、WEAVER杉本雄治、Naoki itai、MEGといったバラエティに富んだプロデューサー陣が集結しています。
そんな中、現在16歳というさなりは、このアルバムに『SICKSTEEN』というタイトルに込めた、この年齢だからこそ描ける、生々しいありのままの思いを描いています。
今回はその彼の素顔とともに、そんな自身の抱く10代のイメージ、そして今後への意気込みなどを語ってもらいました。
小さいころから、いろんなことに好奇心旺盛
――さなりという名前の由来は?
さなり:名前を決めようとなったときに、読みやすくて、(キーボードで)打ちやすくて、珍しくて、ひらがなで…そして2~4文字くらいの名前を、みたいな感じで考えたんです。

――なるほど。では「さなり」という言葉自体の意味は特には…
さなり:あまりないですね(笑)

――それは失礼しました(笑)。プロフィールには、小学校くらいからYouTubeで動画を作られていたというエピソードがありますが、どんな動画を作られていたのでしょうか?
さなり:ネタ動画系というか。まあ面白系動画ですかね。当時はそれほどユーチューバーとかはまだいなかったけど、僕は小学校の低学年のころに、確かマホトというユーチューバーを見たりしていました。
そして僕は、なんというか…「ドッキリ映像」とか(笑)、一人劇をやったり、商品紹介とか。今だとHIKAKINさんがやっているようなものを、面白おかしくやっていました。毎日1本ずつくらい動画を上げていたんです、その1日でできるくらいのクオリティのものを。

――毎日!?(笑)それは大変だったんじゃないですか?
さなり:いや、普通だと思います。その当時くらいから1日1本ずつくらいが普通だったので、今でも毎日やっているユーチューバーのほうが多いですね。僕は全部で700本くらい上げたかな。

――では、延べで2年くらいですか。一方で、ギターもやられていたと?
さなり:そうですね。お兄ちゃんがギターをやっていたから、とりあえず俺もやっとこう、みたいな感じで。
どんな楽曲を弾いていたかも、今となっては全然覚えていないという…

――ギターをやられて、その後ラップというのもなかなかユニークな組み合わせではないかと思います。
メロディが主体のギターに対し、ラップというと、どちらかというとリズムやノリ、歌詞、言葉という点で、なかなか接点がないような気もしますし。
さなり:確かに。ただ自分としては、何でもやるのが当たり前という感じだったんで。本当に何でもやっていたので、そういう繋がりなんかも全然意識してなくて。

――ではその意味では、小さいころからいろんなことに好奇心旺盛なところはあったということですね。
さなり:そういう面はあったと思います。

――ちなみに、そのラップに触れたきっかけは、何だったのでしょうか?誰のプレーを最初に聴かれたのでしょう?
さなり:きっかけは、SKY-HIさんでした。小学生のころ、まだ動画をよく投稿していたころだったと思います。

――SKY-HIさんですか。確かにマシンガンのようなラップのプレーは派手で、かなりインパクトも感じられますよね。
では以前リリースされたシングルでプロデュースをしていただいた、という時にはかなり…
さなり:いや、本当に。すごく衝撃的でしたね(笑)

――ではそのSKY-HIさんを聴きながら、趣味も広げていったりと?
さなり:いやでもそのときは、まだ本当に日本語ラップだけというか。洋楽はあまり聴いていなかったんです、本当にラップに限らずですけど。その一方でボーカロイドを聴いたり、いろんなものを聴いていましたね。

――ラップも聴いて、フリースタイルもやり初めてというのは、かなり進んだ中学生という印象も(笑)
さなり:そうですかねぇ…?まあ最初はユーチューバーをやって、パソコンを購入して、インターネットとかを見るようになり、以前よりもっと幅が広くなった感じでした。
そうするとラップを聴いて好きになって、そこから特に進展はなく中学生に上がるんですけど、中学に上がったときに友達とよく遊ぶようになって、それで毎日ずっと遊んでいた中で、遊びとしてフリースタイルラップをやるようになったんです。

――そんな遊んでやっていたことが、オーディションでグランプリを獲得することになり、ビックリしませんでしたか?(笑)。またこれはどんな経緯でここまで?
さなり:中一からやっていて、中二の後半、2学期くらいに県外へ引っ越しをすることになったんです。県を超えたから、友達と遊ぶことがなくなって、何もすることがなくなって(笑)

――俺に残されたのは、ラップだけだったと?(笑)
さなり:そうですね(笑)。で、そこから一人で引きこもって、ずっとラップもして曲も作るようになって。
でも本気でやったら面白いんじゃない?と思ったんです。その頃は学校も行ってなかったし、だからとりあえずオーディションを受けてみよう、と思って受けて…

――でも選ばれたというのは、結構自信にはなったんじゃないですか?名だたる人もそういうオーディションって、来るわけですよね?
さなり:でも、自分ではそんな風に誰かと比べてもいなかったんです。だからむしろ…逆に気持ちに余裕があったんです。気負いすることがなかったというか。
“病んでいる"を深く意識しないけど、それが当たり前となっている
――『SICKTEEN』というタイトルは、どのように出てきたものなのでしょうか?
さなり:みんなで相談して、どういうのにするか、という話がありまして(笑)。「これがいいんじゃないか?」って感じで。
僕が16歳だし、その綴りを、“X"の部分を“CK"みたいに変えたら、カッコよくない?みたいに。

――では、自分自身が病んでいるとか、病気といったところは、それほど意識しているものでもない?
さなり:それほど深くは意識していないですね。でも意識の奥というか、そこにはそういうのもあったから、タイトルをそうしたほうがいいんじゃないかという話にもなりましたし。
曲としてそんなに意識してないわけじゃないけど、そもそも意識というか、その“病んでいる"という感じは、常にあるものなので。

――今回のアルバムには“すぐに病んでいると思われがちな、この社会に…"というキャッチフレーズがあります。
実際、さなりさんご自身としてはいかがでしょう?ご自身の年代は、病んでいると言われがちだと思います?
さなり:確かに、言われがちなんじゃないかと思います。

――そう思われていることを、さなりさんご自身はどのように思われているのでしょう?現在、16歳という年齢ですが。
さなり:でも、結構当たり前になってきているというか、別にそれが当たり前というか。病んでいると見えるのが当たり前みたいな。

――さなりさんとしては、今16歳という立場で、大人からどんな風に見られているんだろう?ということを、意識したりすることは、ありませんか?
さなり:そんなことは…多分考えたことはないです。
――例えばこのアルバムを聴かせていただいて感じたところとしては、これは何だかさなりさんご自身が感じたところでもあるのかと思うのですが、例えば頭の「Prince」「タカラモノ」って、言葉の端々に“love"という単語があります。
誰かのことを好きになっちゃうみたいなところがあるのかな、と。その一方で「嘘」「Mayday」といった曲には、生きづらさみたいなメッセージを訴えているような雰囲気があるのかと思いました。
でも実際は、あまりそこまで考えずに出たのでしょうか?
さなり:まさしく、そこまで全然考えずに出ちゃったというか(笑)
――全体を総じて客観的に見ると、表現としてはどちらかというとネガティブな印象に落ち着いているような感じでもあります。
なにかを表現をしようと思ったときに、前向きなものが出るのか、それとも後ろ向きなものに行きがちなのか…
さなり:まあ、完全に後ろ向きなほうですかね(笑)。基本的に全部後ろ向きなんです。自分としてはそれほど後ろ向きというか、ネガティブだと思っていなくて、それが普通だと。
だからその闇にも通ずるんですけど、“病んでいて当たり前"って。

――なんか世のメディア的に見ると"後ろ向き"と言われちゃうけど、自分的には全然普通的な話なんですよ、という感じで?
さなり:そうですね。物語とかでも、例えばバッドエンド、ハッピーエンドよりのバッドエンドが好きというか。どちらかというとバッドエンドが好きですね。ネガティブな、暗い終わり方のほうが好きなんです。

――詞の中に出てくる表現というのは、どんなところから湧いて出てきたのでしょうか?
さなり:アニメだったり、映画だったり…

――アニメも結構好きですか?イチオシ作品は何でしょう?
さなり:『コード・ギアス』シリーズですね。

――筋金入りですね(笑)。そういうところからの影響は、結構多いですか。
例えばそれは、アニメに出てくるキャラクターの心理的な部分を突いて、という感じで?何か、自分に共感するところもあるのでしょうか?
さなり:そうですね。それはあると思います。影響もあると思います、アニメとか映画とか。
まあ普通にリアルでも、いろんな面白いことも多くて。リアルの恋愛とかでも、同じ関係とか、いろんな人間関係とかでも、やっぱりそこから影響されて、みたいな。

――では、ちょっと話を変えて、今回のアルバム作りというか。先にリリースされた『ただのスパイス』『Prince』『悪戯』『キングダム』といったものも含め、曲作りという部分ではなんらかのコンセプトがあったのでしょうか?
さなり:いや、というよりは“好きなこと、やってみたいことをやろう"というのが。本当にいろんなジャンルに挑戦というか。全然“ヒップホップ"というポイントに限らず、いろんなジャンルがあって、ロックだったり。

――曲調で特徴というと、9曲目の『キングダム』や10曲目の『Never End』あたりは、わりとメタルやグランジっぽい感じもありますよね。
さなり:そう。だから、今挑戦してみたいジャンル、今の感情にあったような曲調とか、本当に今やってみたいことを詰め込んだものだったり、ごちゃまぜな感じなんです。

――最後にポジティブな『BRAND-NEW』みたいな楽曲ができたいのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?曲調としてはMEGさんがトラックを作られていますが。
さなり:いや、それは曲調に合わせて書いたところもあるんですけどね。歌詞は最後に書くし。

――でもいかがでしょう?ご自身で書いて、自分の知らない自分を見つけた、みたいな…
さなり:まあでも完全にフィクションで書いているものも、これまでにはありますしね。「BRAND-NEW」でも、「結局、一人歩いていくんだ」と書いているから、そこにちょっと孤独感というか。ちょっと暗くて。明るさの中に、そういう暗い感じが残っている、みたいな。
だから、自分で書いている、解釈、自分で書いている身としては、そんなに変わった印象はないんですけどね。
さなりが選ぶピックアップフレーズ
■さなり / Mayday【Music Video】

――ではここで一つ、UtaTen恒例のピックアップフレーズを挙げてもらいたいと思います。まず曲としては、どの曲が印象的でしょう?
さなり:最後の『BRAND-NEW』と、『Mayday』ですね。2曲になっちゃうんですけど。で、やっぱりサビとかですかね。『BRAND-NEW』では「僕は君が選んだ答えだ。夢を見せてあげる」って。“ちょっと、何を言っているんだ!?"って感じでもありますが(笑)。
でもここはお気に入りだなと自分の中で。曲には合っていて、はまっているような感じというか。インパクトもある感じで。「夢を見せてあげる」なんて、自分で言ったことはこれまでもないし…
――カッコいい!ですよね。
さなり:そういう言葉を言ったことがないので、自分でも新鮮というか。

――意外とそんな風に、歌詞は感覚的にパッと出てくる感じでしょうか?あまり理詰めに作るのではなく?
さなり:まあそうですね。今回は"別にどう見られてもいいよ"みたいな。僕は何でもいいよ、どう見られてもいいよ、みたいな。

――では、『Mayday』のほうはいかがでしょう?
さなり:こちらもサビですけど「Mayday,Mayday,Mayday」から「誰か僕を殺してくれ」まで。
――全体的に、ですか。この詞が出てきたときも、一つなぎで出てきた感じでしょうか?
さなり:そうですね。“ちっぽけな心ひとつ手離せない僕を、誰か殺してくれて"って。

――なんか切なくなりますよね。自分を殺してくれ、なんて…そう思わせるような状況もあったのでしょうかね。あるときには…
さなり:まあそうですね。"もう嫌だ~!"みたいな感じで。

――その意味では、かなりリアリティのある言葉でもありますね。一方で今作では、多くのアーティストさんとのコラボで、作曲やトラック作りで関わっていただいたところも大きいかと思いますが、その影響っていかがでしょう?
さなり:いや、本当にまさに勉強になりました。ここをこうやったら、こうなるんだな、って。自分でもやってみたい、やってみなかったことが、当たり前のように入っているんで、本当に勉強になりましたね。

――歌詞自体も、その影響はありましたか?
さなり:確かに。特にSKY-HIさんとの『悪戯』は、やっぱり勉強になりましたね。ノリ方とか。
基本的に自由にはやらせてもらった感じで、書いていただいたところもあったり、"ここはこうしたほうがいいよ"みたいな感じでアドバイスをしていただいたり。本当に勉強になりました。
■さなり / 悪戯(prod.SKY-HI) Music Video
――自分の書きたいものが、ちょっと変わってきたという印象はありませんでしたか?思ったより違うものができた、みたいな…それとも、そこはブレていない?
さなり:でもトラックごとに、いろんな人にお願いしたので、最終的にどういうものになるかの想像はできてなかったし。

――想像以上のものができてきた、と?
さなり:そうですね。もともとの完成イメージはなかったですし。

――そういう意味では、好奇心旺盛なさなりさんの気持ちを、さらにかき立てるものがあったということですね。
好奇心という意味では、今回こういうアルバムを作ったということもありますし、また新たな道が開けたというところもあるかと思いますが、今後は、自分はどんな風になっていきたいと思いますか?
さなり:まあ、音楽もそうなんですが、音楽に限らずいろんなことをやっていきたいな、と。
――ダンスとか?SKY-HIさんも踊りますが。
さなり:そういったことも。音楽に関係のないことも。

――そこで自分が出せるものは出していきたいと?そういう意味では前向きなほうだと?(笑)
さなり:そうですね(笑)。まあ前向きというか、僕自身はアクティブなほうではあると思っているんですけどね。

TEXT 桂伸也
PHOTO 岸豊
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