森永悠希

森永悠希

【インタビュー】『小さな恋のうた』
森永悠希「5人で知恵を絞ったおかげ
で、とてもいいバンドになりました」

 5月24日に全国公開された『小さな恋のうた』は、MONGOL800のヒット曲をモチーフに、音楽に情熱を注ぐ沖縄の高校生たちの姿を描いた鮮烈な青春映画だ。本作では、佐野勇斗山田杏奈、眞栄田郷敦、鈴木仁といった若手俳優たちが5か月に及ぶ特訓を経て披露した熱気あふれる演奏シーンや、みずみずしい演技が見どころとなっている。中でも、これまで自主的に磨いてきた見事なドラムの腕前を披露しているのが森永悠希。メンバーの中で最年長という立場で取り組んだバンド練習の舞台裏や、演技に込めた思いを聞いた。
-本格的な演奏場面は大きな見どころですが、練習はどのように?
 正確な演奏はもちろんですが、一番大事にしたのは“バンドっぽさ”です。「お芝居ではなく、本当のバンドになってほしい」と言われていたこともあり、バンドとしての空気作りに重点を置きながら、演奏も上達するように…という方向で進めていきました。
-“バンドっぽさ”という点では、具体的にどんなことを?
 最初に僕から「アイコンタクトを大事にしよう」と提案させてもらいました。「楽器は初めて」というメンバーが多い中で、一応、僕にはドラムの経験もあり、他の4人よりもバンドの音楽を聴いている数も多いと思ったので…。ライブの映像などを見ながら、「こうすれば、いいバンドに見えるのでは?」みたいな話をして、最終的にそれが自然にできるようにすることを目標にしました。
-そういう意味では、森永さんがメンバーを引っ張っていった感じでしょうか。
 年上の僕に、みんなが付いてきてくれた感じです。僕が最年長ということで、スタッフさんとディスカッションをする機会も多かったので、「皆さんの思いも大事にしたい」という気持ちから、やや厳しいことを言ったこともありました。でも、そうやって5人で知恵を絞っていったおかげで、一つのバンドとしてまとまった気がします。先日、イベントで全員そろってお客さんの前で演奏する機会があったのですが、みんなすごくいい表情をしていて…。会場全体も盛り上がったので、本当にいいバンドになったな…と。僕も、普段は一人でドラムをたたいていることが多いので、バンドという形で演奏できたのは、すごく楽しかったです。
-お芝居の面では、森永さんが演じた池原航太郎は、みんなのために一生懸命頑張るキャラクターですが、共感する部分はありましたか。
 自分に似ているな…と(笑)。僕自身も人のために何かをしてあげたくなるタイプで、自分を後回しにしてしまうようなところがあります。もっとうまく立ち回れたら楽なのに…と自分を戒めることもありますが、小さな頃から培われた性分は、なかなか変えられません(苦笑)。そういう意味では、空回りしてしまう航太郎の気持ちも理解できましたし、自分とリンクする部分が多かったので、とても入りやすかったです。
-撮影は沖縄で行われたそうですが、現地の風景にインスピレーションを受けた部分はありますか。
 沖縄の海からは、ものすごくインスピレーションを受けました。実は、大事なシーンで航太郎が海にお祈りする場面は、台本にはなかったんです。でも、航太郎は漁師の息子だし、自然を大切にして、ガジュマルの木を拝むような人。それならば、海も大事にするはず…と思い、アドリブでやらせてもらいました。
-そういうアドリブは、普段からよくするのでしょうか。
 そうですね。お芝居では、その場で感じたことが一番大事だと思っているので、「相手がそうくるなら、こう返すのが普通だよね」というふうに、臨機応変に変えていくようにしています。もし駄目なら、監督が「駄目」と言ってくれるはずですから。
-共演した皆さんとのお芝居で、そういうアドリブ的なことは?
 スタジオで亮多(佐野勇斗)と口論になる場面の後半はアドリブです。かなり勢いよくまくし立てさせてもらいました(笑)。他にも、僕が起点になって「カットが掛かるまで、芝居を続けてください」と言われることも多かったです。
-森永さんは年上の方と共演する機会も多いですが、この作品のように同年代の俳優との共演には、また違った面白さがありますか。
 相手の反応を見るのが面白いです(笑)。僕が最年少の現場では、先輩方から「これをやったら、どんな反応をするかな?」という感じで芝居を投げられることも多いんです。今回は、僕がみんなにそういうことを仕掛けることができました。もちろん、台本があるので本筋は変えませんが、「少しフック気味に芝居を投げてみたら、どういう反応をするのかな?」みたいな感じで。そこで見せる反応が、本当の表情のような気もしますし、結果的にそれがいい表情として映るときもありますから。そういう反応を見るのが面白くて…。「いつも僕を相手に、こういうふうに楽しんでいるんだな」と、先輩方の気持ちが理解できました(笑)。
-そういうところがお芝居の面白さでしょうか。
 そうですね。やっぱり、お芝居はキャッチボールですから。もちろん、「こういう芝居」と固めて現場に来て、とてもいいお芝居をされる方もいらっしゃいます。でも僕は、どちらかというと現場で相手とせりふを交わして、掛け合いの中から生まれたものを大事にするタイプ。だから、芝居は現場でどんどん変えていきます。この作品でも、高校生らしさは、そういうふうにみんなとお芝居を作り上げていく中から生まれた部分も大きいです。
-そういう意味で、森永さんが感じたこの作品の魅力は?
 感情的になれるところが楽しかったです。同年代とやることで、「僕もまだまだこういうふうにエモーショナルになれるんだ」と再確認することができました。大人になればなるほど、感情を表に出す機会は減っていきますよね。でも、この映画では、そういう大人の理屈を無視して、感情をぶつけ合うことができました。そういう熱さは、きっと画面を通して皆さんにも伝わるはずです。だから、見てくださった方にも、「時にはこういうふうに熱くなることも悪くない」と感じてもらえたらいいですね。
(取材・文・写真/井上健一)

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