【速レポ】<MUSISION FEST>音速ラ
イン、現代を生きるアーティストとし
てのメッセージ

フェスの場合、限られた出演時間の中でアーティストがどんなセットリストで臨むのか、と想像するのは音楽ファンの楽しみのひとつ。
藤井敬之(Vo&G)、大久保剛(B)がステージに姿を現してサウンドチェックでギター、ベースを鳴らすとそれだけでグッと空気が引き締まる。時刻は夕暮れどきで、日差しは強いものの時折吹く風が心地よい、リラックスして音楽を聴くには最高のシチュエーションだ。

大久保の「どうも、音速ラインです!今日はよろしくおねがいします」との第一声から藤井の豪快なコードストロークが始まり、大久保がベースの音を重ねて、藤井が歌い出したもののいきなりストップ。「ちょっとね、テンポ間違えちゃった俺。ごめん」と苦笑いして、客席はドッと和んだ。
そんな予想外のオープニングで歌われた曲は「Two Shot」だった。2012年に東日本大震災をきっかけに結成されたキヨサク、Mummy-D、箭内道彦、亀田誠治によるスペシャル・ユニットTHE HUMAN BEATSの楽曲だ。ゆったりとしながらも熱のこもったヴォーカルを聴かせる藤井と、その歌声にベースを寄り添わせながら、時折客席を見渡す大久保。

アップテンポなストロークによる「4438」から、さらにテンポアップしてキレの良いギターカッティングを繰り出して「KOZONO3sts」へ。大久保が「みなさん、手拍子お願いします!」と促す。2つの楽器が作り出したグルーヴに会場全体が乗せられていくのがわかる。続いて、真夏のような気温ながら冬の景色が浮かぶように叙情的な「冬の空」が歌われる等、緊張と緩和を繰り返してライヴは進む。これらの曲を演奏することがすべてその場で決められているというのだから、そのよどみのない歌と演奏力に驚かされる。
「ユニットって勘違いされがちですが、僕らはバンドです!」(大久保)「バンドでやるとすごくアグレッシブ。アコースティックのときとバンドのときは違うので、今日気になった人はバンドの方もチェックしていただければ、俺らのことが全部わかると思います」(藤井)

とMCでバンドについて紹介していると、最前列のお客さんからのリクエスト(?)で藤井がチェッカーズの「素直にI'm Sorry」を一節歌うという大サービス。普段とはちょっと違う、最高にリラックスしたムードで本人たちも楽しんでいるようだ。そんな楽しさが爆発したのが、次の曲。

「ビールが好きすぎて作ってしまった曲」という「Beer can」で、“ビール!ビール!”と歌う藤井に合わせて大久保が“ファイッ!(Fight)”とレスポンスを促して、急激にアグレッシブなロックバンドの素性を明らかにしていく2人。ワンコードでループしていると、なんとステージ上にお客さんからビールの差し入れが。「せっかくだから、いただきます!」と2人で乾杯。「クゥ~~!」っと、心から美味しそうに喉を潤す大久保の姿が微笑ましくも羨ましい。
今年16周年を迎えた音速ラインは、常に新曲を作っているそうで、ミドルテンポのバラード曲「アンカー」、どことなくトロピカルなコード進行に乗せた藤井の甘い歌声が、まったりとしてた会場の空気に馴染んでいった「Sugar&Spice」の2曲が新曲として披露された。

そして、最後の曲を紹介する藤井。「生きて行くことは大変なことが多くて、日々くじけそうになったりすると思うんですけど、この歌の歌詞のメッセージを自分の中に沁みさせて日々暮らしていくと、なかなか良い感じになるんじゃないかなという曲を、最後にやります」。そんな言葉から歌われたのは、箭内道彦が歌詞を書いた「生きてくことは」。思えば1曲目も同じく「風とロック」の箭内が作詞した曲だった。リラックスした中にも、ステージ上にはどんな場所でも自分たちの音楽を表現できるというミュージシャンシップと、現代を生きるアーティストとしてのメッセージが込められていた。

   ◆   ◆   ◆

【終演直後の楽屋裏ミニインタビュー】

──今日は聞いたところによると、ステージに上がってからセットリストを決めたとか。

藤井敬之:だいたい決めないんですよ、俺ら。

大久保剛:2人でアコースティックでやるときは特に。PAさんは困っちゃうと思うんですけど(笑)。なんなら僕もびっくりしちゃうくらいで。

──コードストロークが鳴ってから、「あ、あの曲か」みたいな感じ?

大久保剛:と思ったら、違った曲だった、みたいな(笑)。

──それで、1曲目の最初で止まっちゃったんですか?

藤井敬之:いやあれはテンション上がっちゃって、めっちゃ速くなっちゃって。こんなさ、夕方の時間で野外でライブやれるって、なかなかないからテンション上がっちゃうよね。

──こういうステージで2人でアコースティックライヴをやるのは久しぶりでしたか?

藤井敬之:いや、結構やってますよ。ただ僕たちはずっと遠距離でやってるんで、地元で小学生からずっとやってます、みたいな人たちとは違いますね。

──遠距離、ということでいうと、1曲目と最後の曲が箭内道彦の作詞の曲で、福島を想うような感じでしたが、結果的にセットリストに意図が出たような気がするのですが。

藤井敬之:いや、意図はないですよ。

大久保剛:ただ、東日本大震災の影響はすごく受けていて。8年ちょっと経ちますけど、一時期曲が書けない時期があったんですよ。やっと最近素直に曲が書けるようになって。藤井は福島に住んでるんで、住んでる人の話も聞くんですよ。

藤井敬之:住んでる人が切ないのに、切ない曲書いていいのかな、って時期がずっとね。最近それが徐々にとれてきて。

大久保剛:だから今、東京でこういう曲をやる意味が逆にあるのかなって。福島県内でやっていることが多かったので、それをそうじゃないところでやるっていう意味をすごく感じながらでしたね。

──確かに日常でこういうみんなまったりしている中でやったからこそ、感じるものがありました。

藤井敬之:思ってても言わないし、感じたもん勝ちだからね。「なんかやれ」っていうんではなく、そのきっかけにちょっとでもなれればなっていうだけだよね。

大久保剛:それでちょっとでも気持ちが向いてくれたら嬉しいし。まあ僕は東京出身なんですけどね。

藤井敬之:大久保にはめっちゃ相談してます。「福島は今こういう状況なんだけど」って言うし。

大久保剛:そういうことを考えているから、セットリストを決めていない演奏の中でもその2曲が出てきたのかもしれません。

藤井敬之:決めつけは良くない。決め込むのが苦手なんですよ。常にこうやってフリーでいたい。「これはこうです」って言われても、「それはあなたの意見じゃないですか」って話だから、自分の音楽をちゃんとやって、決めるところは決めて、責任持ってやるのが人生だから、そこは自分の音楽を素直にやりましょうっていうのが伝えられたらなって。

大久保剛:今日はそれがひとつ心に残りました。来てくれてる人の顔も見えましたし。

藤井敬之:だって、差し入れしてくれるとかあります!? 

──ステージ上からあんなにお客さんと話しているアーティストを初めて見ましたよ。お客さんにチェッカーズって言われて「素直にI'm Sorry」歌ってましたもんね(笑)。やってくれるのかなって思っちゃいました。

藤井敬之:あのとき大久保が今日一番「やばい」って顔してた(笑)。

──そういうのも含めて、面白くて心に残るライブでした。

大久保剛:ちょっとでも伝わるものがあればいいなと思います。

取材・文◎岡本貴之
写真◎釘野孝宏

セットリスト
1. Two Shot
2. 4438
3. KOZONO3sts
4. 冬の空
5.Beer can
6.新曲「アンカー」
7.新曲「Sugar&Spice」
8. 生きてくことは
<MUSISION FEST 2019>
2019年5月25日(土)
@上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)
自由席 4,000円(税込)・当日4,500円(税別)
開場/開演:12:00/13:00
出演(順不同):The Cheserasera、音速ライン、浅草ジンタ、浜端ヨウヘイ、関取花、kitri、フラチナリズム、MAISON“SEEK”

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