ジェニファー・ウォーンズの
圧倒的な歌唱力と
緻密なプロデュースワークから
生み出された名作
『ジェニファー・ウォーンズ』
レナード・コーエンとの親交
アリスタとの契約で一気にブレイク
彼はジェニファーの潜在能力をいち早く察知し、ストーンズやジョージ・ハリソンらのアレンジャーとして知られるジム・プライスに彼女の新作のプロデュースを依頼、多忙なプライスは少しずつ彼女のレコーディングを進めるが、クライブにデモを聴かせる期限になっても録音が終わらず、業を煮やしたクライブはもうひとりのプロデューサーとして、イーグルスの『ならず者(原題:Desperado)』や『呪われた夜(原題:One Of These Nights)』でストリングスアレンジを担当したジム・エド・ノーマンに声をかける。彼はプロデューサーとしての仕事は初めてであったものの、それだけに渾身の力を込めて手がけることになった。彼がプロデュースを手がけたのは2曲のみであるが、その2曲がジェニファーのアリスタ移籍第1作を大成功に導くのである。
本作『ジェニファー・ウォーンズ』
について
他にもアルバムを1枚リリースしてはいるが、まったく知られていないSSWのスティーブ・ファーガソンの曲を2曲(「ママ」「あなたは私のもの(原題:You’re The One)」)取り上げていたり、グラム・パーソンズの名演で知られる「ラヴ・ハーツ」やストーンズの「シャイン・ア・ライト」など玄人好みの渋い曲も、彼女の歌唱力のおかげで、新しい命を吹き込まれている。彼女が書いた「行かないでダディ(原題:Daddy Don’t Go)」も良いし、ジャクソン・ブラウンのバックを務めていたダグ・ヘイウッドが書いたカントリーナンバー「ドント・リード・ミー・オン」も素晴らしい曲だ。
また、本作のバックを務めるアーティストも実に豪華で、ギターにジェイ・グレイドン、ダニー・クーチ、キーボードにニッキー・ホプキンス、ダグ・リビングストン、ホーンにジム・ホーン、ジム・プライス、ドラムにはラス・カンケル、他にもケニー・エドワーズやハーブ・ペダーソンなど、西海岸を代表するプレーヤーが参加している。
最後にエピソードをひとつ。本作のジャケット裏とレコード盤(LP当時)には1976年と明記されているものの、レコーディングに時間がかかってしまい、実際のリリースは1977年の1月にずれ込んでいる。76年の夏にはジャケットも含め発売準備は済んでいたのだが、クライブ・デイヴィスが営業的な観点から77年の1月までリリースを待つように指示している。
本作のように完成度の高いアルバムにはそう簡単には出会えないものだが、アリスタからの第2弾『ハートで一撃(原題:Shot Through The Heart)』(‘79)も本作同様素晴らしい出来である。もし彼女の作品を聴いたことがないなら、この機会にぜひ聴いてみてください。新しい発見がきっとあると思うよ♪
TEXT:河崎直人