闇を描くなら美しく。期待の新星ロイ
-RöE-が語る、新曲「VIOLATION*」と
表現者の美学

シンガーソングライターのロイ-RöE-が、5月22日にファーストデジタルシングル「VIOLATION*」をリリースした。昨年10月にデジタルEP『ウカ*』でデビューしたばかりの彼女だが、今作は二階堂ふみと亀梨和也がダブル主演のドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニングテーマに抜擢。自身もファンだというドラマの主題歌を手がけた心境や、まだ謎の多いそのアーティスト像に迫った。


Text_Osamu Onuma
Edit_Shu Nissen


オファーがきた時、いつもより3オクタ
ーブ高い声で叫んだ

(ロイ-RöE-『VIOLATION*』MV)

――「VIOLATION*」はトリッキーなメロディの歌い出しや、サビの「VIOLATION」のリフレインなど、耳に残るパートがたくさんある1曲です。

ロイ-RöE- : 「VIOLATION*」の歌い出しはメロディと詞が同時に出てきたんですよ。『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニングテーマに決まってから、2週間で10曲くらい作ったんですけど、もっと世界観に合ったものを作れる、という感覚があって。制作を続けるうちにこのメロディと詞ができてきて、この曲が一番良いと思いました。

――何かがハマった感覚があったんですね。

ロイ-RöE- : 曲を作る時は「これでいける!」って確信がほしいんです。その実感がないと、先に進められないんですよね。これまでの曲でも、たとえば「泡と鎖*」だったら「泡ただしい毎日」という表現が思い浮かんだ時にようやく出したいと思えました。「そそらるる*」も、タイトルの「そそらるる」というフレーズが浮かばなかったら完成しなかったはず。「VIOLATION*」は、その確信が歌い出しになりました。

ロイ-RöE- : 『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニング曲ですが、もともとドラマや原作のファンだったと聞きました。

ロイ-RöE- : はい。だからお話が来た時はめっちゃうれしかったです。あと、園子温監督の『ヒミズ』って映画を見てから、二階堂ふみさんがすごく好きで。あの映画のヒロインを演じた二階堂さんと仕事で関われるなんて思ってなかったので、マネージャーさんから電話で聞かされた時には思わず叫んでいましたね。「キャー!!」って、普段より3オクターブくらい高い声で。自分こんな声でるんだ、と思いました(笑)

――(笑)。でもそれだけ制作にも気合が入ったんじゃないですか?

ロイ-RöE- : 『ストロベリーナイト』は前作のオープニングもすごく格好良いんですよ。それに負けないように、リスペクトを持って作りました。でも、曲自体は作りやすかったですね。『ストロベリーナイト』は血とか殺人のようなグロいテーマを美しく描く作品なんです。私も闇を感じる歌詞や、攻撃的な曲を作る時はただ暗いだけじゃなく美しいものにしたいと思うから、自分にも合っていると思いました。

「VIOLATION*」は悲しいけれど強がって
いる女の歌

――作曲は数々のドラマや映画の劇伴を手がけるFace 2 fAKEとの共作です。彼らとの共同作業はいかがでしたか。

ロイ-RöE- : ドラマのために10曲ほどを作った段階で「自分の出せるものはすべて出したから、人の力も借りてみよう」と思ったんです。今回はあえて自分と真逆の方にお願いしました。Face 2 fAKEは男性だし、年代も違うし、聴いてきた音楽も違う。そういう方達と一緒に制作したら、自分の音楽ってどうなるんやろう? という思いもありました。

結果としては新しくて、すごく楽しかったですね。Face 2 fAKEのお2人はベテランだけどすごく対等に接してくれました。あと、いつも家で一人でやってると気づかないけど、人と一緒に曲を作ってみると、自分に細かいこだわりがこんなにたくさんあったんだってことに気づきましたね。強すぎるくらい主張をしてFace 2 fAKEを困らせたこともあったかもしれないけど、柔軟に対応してくださって、良い曲ができました。

――歌詞はどんなことを考えて作りましたか?

ロイ-RöE- : 二階堂さんが演じるヒロイン・姫川の気持ちで書きました。「VIOLATION*」は「違反」って意味なんですけど、姫川は過去のつらい経験から人前で悲しむことを恥だと思っていて、我慢をしてしまう性格。そういう自分のルールを破って悲しい気持ちを見せてしまうという意味でタイトルを決めました。私自身も、かわいそうって思われるところを見せるのを恥だと思っているところがある。そんな自分と姫川を重ねて、悲しいけど強がっている女の歌を作りました。

「わたしは凍えている/なんとなく凍えているんだ」って歌詞がありますけど、”なんとなく”は完全に強がりですね。あと、曲を作っている時に手塚治虫の『火の鳥』を読んでいたんですよ。『火の鳥』って、目がくりくりしていて可愛いのにやたら重いこと言うじゃないですか。そういうギャップをこの曲にも取り入れたくて、重い気持ちを歌いながら「なっちゃうよね」と砕けた言い回しを入れたりもしています。

制約された世界の中で、自由を突き詰め
たい

――続いて、ロイ-RöE-さん自身についても聞かせてください。まず、ロイ-RöE-というアーティスト名にはどんな意味があるのでしょう?

ロイ-RöE- : ブランドのロゴみたいに、文字だけで見た時に格好良い名前にしたかったというのが一番の理由です。音というより形と意味にこだわりました。メールの返信の「RE:」ってあるじゃないですか? これはラテン語で「〜について」という意味なんだそうです。で、真ん中の「ö」は歌ってる顔。シンガーソングライターとして自分について歌ってる、という意味を込めました。

――コンセプチュアルですね。曲の最後に必ず「*(アスタリスク)」をつけているのは何故でしょう?

ロイ-RöE- : これは脚注のイメージですね。あとは人と区別がつくかな、って考えもありますね。

――オーディションのために送った曲のタイトルが「地獄」だったと聞きましたが……かなり尖ってますね。

ロイ-RöE- : 戦略的な意図もありましたよ。「あなたが大好き」みたいな曲名だったら聴いてもらえないと思ったし。

――もちろん曲の良さがあってのことだと思いますけどね(笑)。そもそも、どうして歌手を目指そうと思ったんでしょう。

ロイ-RöE- : 10代の頃、自分もバイトをするんですけど、まったく続かなくて。自分が尊敬できる仕事って何かなあと考えたら、人前に立つ仕事だと思いました。目立つのが好きで、テレビに出ている人は憧れだなと思ったんです。

歌は得意だったし、自分で何かを作りたい気持ちがあったから、じゃあ歌手になるしかないなって。それで、1万円の初心者ギターセットとよくわからない打ち込みソフトを買って、曲を作り始めたんです。
――その頃はどんな音楽を聴いていたんでしょうか?

ロイ-RöE- : よく聴いていたのは、ヒップホップダンスをしていたからヒップホップ。あとはランキング上位のいわゆるJ-POPでした。幅広く聴くようになったのは、曲を本格的に作るようになってから。CharaさんやJUDY AND MARY椎名林檎さん、宇多田ヒカルさんのように90年代に登場した女性アーティストが、自分にはすごくフィットします。

映画やドラマのサウンドトラックを聴くのも好きですね。サントラって、その作品の世界に入り込んだような気分になれるじゃないですか。久石譲さんの『ハウルの動く城』のサントラをバスの中で聴いていたら、ジブリの登場人物になったような気がする。そういうところが好きですね。

他に好きなのは菅野よう子さん。菅野さんはサントラの他に30秒くらいのCMソングもたくさん作っているんですが、短い時間で、しかもCMっていういろんな制約がかかった中で自分の個性を出しているのが、ケンカ売ってる感じがしてきゅんとくるんですよ。制約された世界観の中で自分をしっかり見せられる人が好きですね。規則がないと自由もないし、刃向かうことに自由があると思っています。

重い表現はその人のバックボーンが伝わ
ってくる

――音楽以外だと、どんな作品に影響を受けましたか?

ロイ-RöE- : 中原中也と三島由紀夫ですね。二人ともエゴイズムが激しいんだけど、普通に描くと汚いものを美しく見せるのがうまいなと思って、尊敬しています。二人の小説を読んで勉強したから、ちょっと教科書みたいな存在ですね。

――二人の中で、特に好きな作品はありますか。

ロイ-RöE- : ちょっと待ってくださいね。いつでも読めるように、スマホにメモしてるんですよ……これだ。

「なんだか、深い、溜息が、/なんだかはるかな、幻想が、/湧くけど、それは、掴めない。/誰にも、それは、語れない。」

っていう、中原中也の「春宵感懐」っていう詩の一節です。

――詩を読み上げてくれる声が綺麗で、思わず聞き入ってしまいました。

ロイ-RöE- : この詩は、物書きの中也でさえ語れないものがあるっていうのがすごく重いなと思って。重い表現って、その人のバックボーンが伝わるし、その人にしか書けないじゃないですか。だからすごく好きなんです。

――現代の小説だとどんな作品を読みますか?

ロイ-RöE- : 嶽本野ばら先生の作品が好きです。嶽本先生の作品にはロリータファッションのブランド名がたくさん出てくるんですけど、影響されていますね。「ロッキンホースバレリーナ」って厚底の靴があって、よく履いてます。歩きにくいけど、「おしゃれは我慢」というか。衣装でもコルセットをきつく締めて、リハ中に呼吸ができなくなって倒れそうになったりするんですよ(笑)。マリーアントワネットとかも、コルセットで誰よりも腰を細く見せるんだけどそのせいで一歩も動けないみたいなエピソードがあるんですね。そういうの、馬鹿っぽいけど美学があるなと感じます。

やりたいことが次々に変わるけれど、「
女」として歌うことはブレずにいたい

――アーティストとしての今後の目標はありますか?

ロイ-RöE- : 菅野よう子さんみたいにCMソングを作りたいです。一つの化粧品を紹介する、そのためだけに曲を作ってみたいですね。今回の「VIOLATION*」みたいに、制約の中で自分の個性を出した曲を作ることにやりがいを感じるんです。

あとは、もっと自分をちゃんと知ること。自分の好みが一ヶ月単位ですぐ変わっちゃうんですよ。やりたい音楽もすぐに変わるから、共同制作するクリエイターと足並みを揃えるためにも自分の好みをもっと深く知って、変化を敏感にキャッチできるようにならないといけないと思っています。

――でも、ころころ変わるからこそジャンルにとらわれず、様々なタイプの曲が生まれているともいえますよね。では逆に、アーティストとしてここだけはブレないようにしようと意識していることはありますか?

ロイ-RöE- : 「女」としての言葉で歌うことですね。女っていうのは、少女も大人の女性も、その過程の危うい時期もすべてひっくるめての女。「VIOLATION*」も姫川という女の目線で作った曲だし、女だからこういう風に世界を見ているというのを歌っていきたいです。

――なるほど。ロイ-RöE-さんが先ほどフェイバリットに挙げていた90年代の女性アーティストも、女性であることが表現の軸にある人が多いですよね。

ロイ-RöE- : みんな暗い表現もあるけど強さも感じて、独創性がありますよね。タイマン張ったら力では負けるかもしれないけど、圧では勝ちそうな「男に負けん女」って感じ(笑)。尊敬します。

ただ、実は自分が一番憧れる女性像は『ドラゴンボール』の人造人間18号なんです。

――……えっ?

ロイ-RöE- : 筋肉ムキムキだらけのドラゴンボールで、人造人間18号ってあんな華奢なのに超強いんですよ。18号がベジータをボコボコにする回があって、そこで完全に心を奪われました。「ベジータあんなに強い存在やったのに、おしゃれもちゃんとした18号にボコボコにされとる!」って(笑)。

――まさか最後に人造人間18号への愛を語られるとは思っていませんでした(笑)。

ロイ-RöE- : あはは! 少年マンガすっごい読むんですよ。金髪にしているのも実は18号になりたいという気持ちから。ああいう女性を目指しつつ、今後も頑張ります!

作品情報

ロイ-RöE- 1st Digital Single
「VIOLATION*」
5.22 Release

https://itunes.apple.com/jp/album/violation/1458937500?app=itunes&at=10l6Y8


〈ロイ-RöE-〉
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闇を描くなら美しく。期待の新星ロイ-RöE-が語る、新曲「VIOLATION*」と表現者の美学はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。