ササノマリイ ナイーブに生きる人の
「SHOUDOU」について

ササノマリイ(Sasanomaly)が4月24日にデジタルシングル『SHOUDOU』をリリースした 。 昨年11月にリリースされた『MUIMI』、2019年1月の『LOVE』から引き続き、アートワークはロンドン出身のアーティストJoe Cruzとコラボ。その鮮やかなアートワークは配信サイトやサブスクリプションの膨大なライブラリの中でも存在感を放ち、ここからはじめてササノマリイの楽曲を聴いたという人もいるのではないだろうか。『SHOUDOU』のリリースに合わせて、ササノマリイのこれまでを振り返るとともに、Joe Cruzとのコラボや『SHOUDOU』について深掘りしてみよう。

ネットカルチャーをバックボーンに、新
人アーティストのプロデュースも手掛け

まず、ササノマリイというミュージシャンについておさらいしておこう。「ササノマリイ」というミュージシャンが誕生したのは2014年8月のこと。

2009年からねこぼーろという名義でトラックメイクを開始し、2011年に発表した作品「戯言スピーカー」が、動画サイトにて再生回数100万回を突破。DAOKOぼくのりりっくのぼうよみといったネットから誕生したアーティストも多数カバーし、後にはササノマリイもセルフカバーしている彼の代表曲だ。
戯言スピーカー/ ササノマリイ (sasanomaly)

その後もねこぼーろ名義で「自傷無色」「共感覚おばけ」といった人気曲を発表し続け、2014年、本人歌唱によるササノマリイ名義での音楽活動をスタート。ねこぼーろ時代のセルフカバーも交えながら、『シノニムとヒポクリト』『おばけとおもちゃ箱』『M(OTHER)』とコンスタントにアルバムをリリースし続けていく。

同時に、アーティストへの楽曲提供も盛んにこなすササノマリイ。映画『三月のライオン』の主題歌となったぼくのりりっくのぼうよみ『Be Noble』の作曲を手掛けたほか、近年はeddaの『ねごとの森のキマイラ』のリード曲となった「夢のレイニー」の作・編曲、湯木慧「キオク」「産声」のアレンジなど、新進気鋭のアーティストの作品にも関わっている。
ぼくのりりっくのぼうよみ – 「Be Noble」

そんなササノマリイだが、2017年6月のEP『game of life』リリース以降、しばらく本人名義でのリリースがなかった。2018年も終盤に差し掛かり、今年はリリースがないのかとファンが肩を落としていた頃、届けられたのがデジタルシングル『MUIMI』のリリースだった。
Sasanomaly 『MUIMI』Music Video

『MUIMI』のリリースは様々な音楽メディアでもピックアップされることになった。その理由は、久しぶりの作品発表だったことだけではない。ロンドン出身のコラージュアーティスト・Joe Cruzとのコラボレーションだったこと、その音楽性が過去のササノマリイの作品から変化を遂げていたこと。この2つが、メディアに注目され、多くの人に作品を語らせるポイントになったのだろう。

イギリス出身アーティストJoe Cruzとサ
サノマリイの共通点

ササノマリイがコラボした人物・Joe Cruzは、イギリス出身のコラージュアーティスト。今回のコラボが実現したのは、ササノマリイ自身がJoe Cruzのファンで、リリースにあたって声をかけたことがきっかけだという。Joe CruzはこれまでにadidasやSTUSSY、G-SHOCKなども手掛けており、モノクロ写真にオイルパステルを用いたグラフィティを重ねた作風が代表的。ローテクな質感とビビッドな色彩、それでいて洗練された雰囲気を持つ、世界観に引き込まれる美しい作品を数多く発表している。

ササノマリイはもともと音楽だけでなくデザインやアートにも造詣が深く、そのMVは音楽ファン以外からも好評価を得ている。紙人形というアナログな技法を用いながら、作り込まれた世界観に釘付けになる「共感覚おばけ」のMVは、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でも入賞した。
共感覚おばけ / ササノマリイ(sasanomaly)

アナログだが、現実のものとは思えないオーラを放つ作り込まれたビジュアル。「共感覚おばけ」をはじめとするササノマリイのMVやアートワークと、Joe Cruzの作品にはそんな共通点がある。一方で、日本のネットカルチャーとイギリスのストリートアートという異なる ユースカルチャーが根底にあるなど、 違いもたくさんある。その重なりとズレが、これまでのササノマリイの作品と地続きでありながら新しさを感じさせるものを生み出した。

これまでと違う曲作りの末にたどり着い
た『MUIMI』

コラボ第一弾としてリリースされた『MUIMI』は、聴いてみるとこれまでのササノマリイの作品とは一線 を画していることがわかる。EDMのような華やかな音色を使いながら、より内省的になっているのだ。その変化については、昨年11月の『MUIMI』リリース時にミーティアが行ったインタビューでも語られている。

ササノ:これまで自分がやっていた曲づくりのプロセスを、一度壊してみようと思ったんです。そしてそれをやるのは今しかないと思った。

これまでの作品を並べて聴いてみると、以前のものはビートや音色の一つをとってもよりはっきりしていて、ダイレクトに感情に訴えてくるものが多かった。だが、『MUIMI』にはそれがなく、心地よく抑制されている。そこに感じる「空虚さ」と、エレクトロニカに接近したトラックの「華やかさ」の対比。それは、モノクロ写真と鮮やかな色彩のコントラストで構成されたJoe Cruzの作風とも共鳴していると言えるのではないだろうか。
Sasanomaly 『LOVE』Lyric Video

『SHOUDOU』単純な感情で生きられない
人の応援歌

そうして『MUIMI』、『LOVE』とこのコラボによるデジタルシングルを続けてリリースし、4月24日にリリースされたのが『SHOUDOU』だ。
Sasanomaly 『SHOUDOU』 Lyric Video

『SHOUDOU』はコーラスワークが美しいミディアムテンポのナンバー。まず歌詞に注目すると、浮かない気分で退屈な日々をやりすごすことが、本当に心を動かされるものへの憧れに揺り動かされていくのだが、その描き方がとてもナイーブだ。

「ほっといた夢 壊れて消えた」と歌詞にもある通り、この歌詞の主人公には現時点で心を動かされるものがきちんと存在していないのかもしれない。ただ、そうして夢が失われた後でも「衝動」は残り続けている。具体的に描ける希望がなくても、世界に希望を抱くことはできるのだと思わせてくれる。

単純な感情で生きたら。ここから見えない何か見てみたい

だが一方で、この曲は単純には生きられない人の歌でもあると思う。激しい楽曲を予感させる「衝動」というタイトルながら穏やかな曲調なのも、自分自身を俯瞰し、衝動を制御している状況とリンクする。その心情はとても入り組んでいるのだ。入り組んだ心境のナイーブな人が、自分なりの「衝動」との向き合い方を知ること。『SHOUDOU』は、そんな複雑にしか生きられない人のための応援歌に思える。

また、ジャスティン・ビーバーやThe ChainSmokersらの近年のEDMヒットを思い出させるイントロから始まり、J-POPのマナーを踏襲しているようにも感じられるキャッチーな展開とビートが抑えられたトラック。こうした作風は『MUIMI』以降の3作に共通するもので、続けて聞くとササノマリイの現在が浮かび上がってくるようだ。

昨年からコンスタントにデジタルシングルをリリースし、lo-fi ヒップホップなどをベースに、SP404を使ったビートライブも行なっているササノマリイ 。

SHOUDOU&MUIMI BeatMixの動画はこちらから https://www.instagram.com/tv/Bwo7SwIHtBK/

アルバムやEPなど、まとまったかたちでそのネクストステップを堪能できる日が楽しみだ。

ササノマリイ

新譜情報

3rd Digital Single「SHOUDOU」
Digital Release!!
Download
https://smar.lnk.to/O5icnAY

ササノマリイ ナイーブに生きる人の「SHOUDOU」についてはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。