三浦基演出『罪と罰』が露ボリショイ
・ドラマ劇場で上演決定! 新作『シ
ベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!
』もまもなく開幕へ
京都を拠点に活動をしている劇団「地点」は、モスクワのメイエルホリド・センターで『ワーニャ伯父さん/桜の園』の上演(2011)をきっかけに、これまで毎年のようにロシア公演を上演。2015年からは、国際交流基金の招聘により来日した、ボリショイ・ドラマ劇場(BDT)のアンドレイ・マグーチー芸術監督との交流が始まり、2018年4月には三浦基が演出家養成のためのマスタークラス講師としてBDTに招聘され、チェーホフの『かもめ』を題材にワークショップを開くなど、濃密な関係が続いていた。
マグーチー監督はいいものはいい、悪いものは悪いとはっきりした人。面白いものは面白い、面白くないものは面白くないと。とにかく「基は出来るのか?」といきなりなんですね。「努力します」と直接返事をしました。
『罪と罰』は先方からの提案です。初めて聞いた時は驚きました。やられた、と思って。彼は就任してから観客を3年間で2倍以上に増やすという大成功を収めている監督なんですね。つまり、三浦基という日本人に『罪と罰』をやらせておけば何とかなるだろうと思ったのでしょう。何か劇場としての戦略を感じましたね(笑)
しかも、サンクトペテルブルグが舞台の小説で、お客さんからしてみれば、子どもの頃から読み聞かされているもので、『罪と罰』なんてもう嫌だ、あるいはもう食傷気味になっているような作品で。もう1回息を吹き返してほしいという期待も込められているのかなと思いましたので、二つ返事でやりますと答えました。
僕はチェーホフの演出はほとんどやってしまったのですが、チェーホフとドストエフスキーという関係において、ドストエフスキーを眺めること/読むことをライフワークとしてきました。ロシア正教はあまり日本人には馴染みがないと思われがちですが、文学の切り口を持って考えると、非常に普遍的で現代的な問題テーマになりうると思います。神やキリスト教のことはこれまでの作品でも度々取り上げてきたので、『罪と罰』はそのど真ん中になると思います。そういうことをじっくり考えていけることを今回の仕事で楽しみにしてます。
「地点」をご覧になっている方は分かると思いますが、私は立ち上げる時は自分で構成台本を作ることはしません。劇団で、俳優とともに一緒に作るというスタイルなので、いきなり手ぶらでサンクトべテロブルクに行っても太刀打ちできないことが分かっています。
自分の現場である「地点」が最も自分の力を発揮できる場だと思っていますので、まずは地点の俳優と一緒に準備をしたいなと考えまして、2月3月に横浜と京都で『罪と罰』を上演する運びになっています。この上演がそのままボリショイに移植できるとは思っていないのですが、その原型となるようなテキストと世界観をまずは作ろうと思っています。演劇作品は、僕の場合は特に、声と体を通じてからでないと自分の実感で分からない。テキストを黙読しただけではほとんど何も分からないものなので。2020年6月の初演に向けて、作っていきたいと考えています。
チェーホフの『三人姉妹』に出てくる「モスクワへ!モスクワへ!モスクワへ!」というセリフのパロディからとったタイトルで、チェーホフが1890年にシベリア横断をしてサハリン島まで行く旅の過程で書いた手紙や、それに纏わる短編小説『シベリアの旅』などをコラージュして作った作品だという。
もともとチェーホフの戯曲はもうほぼやってしまったので、もうあがりかなと思っていたのですが、未練がましくやはりチェーホフは面白いなと思っていて。2015年ぐらいだったと思います。『三人姉妹』をKAATでやった後、僕のもう一つのライフワークであるイェリネクという作家がいます。『光のない。』や『スポーツ劇』を演出したのですが、そのイェリネクに『三人姉妹』かチェーホフをモチーフにした新作を書いてくれないかとオファーしたんですね。その返事で「チェーホフは自分にとってあまりにも偉大で、敬愛している作家なので書けない」とはっきり言われたことがあります。それで、チェーホフの本を読んでいて、先鋭的な文章とかちょっとした家族への手紙の冗談みたいなものも、すごくウィットに富んでて、イェリネク的だなぁと思ったことをふと思い出しまして。これは自分でやるしかなかったんだなと、ふと思い出しました。
やはり、チェーホフはいいという実感があります。これをどういう風に舞台化していくかということはかなり面白い実験になっているなと思っています。チェーホフは流刑地のサハリンまで長旅をしたことは有名ですが、それは『サハリン島』という旅行文学・記録文学としてあります。でもそれは拍子抜けするぐらい真面目で、現地調査の、どちらかというとルポルタージュで、真面目な書物なんですね。その手前の『シベリアの旅』や大量に書かれた手紙などを中心に構成していますが、僕のようなな素人ではなくて、ロシア文学の専門家に数名入ってもらって、ドラマトゥルクという形で色々協力してもらっています。改めて実感するのは、チェーホフはこの旅を終えてから、四大戯曲を書き出すんです。非常に貴重な旅の経験だったのだなと感じています。
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