おすすめ文庫:たった一人の熱狂【増補完全版】見城徹/幻冬舎文庫(幻冬舎)

おすすめ文庫:たった一人の熱狂【増補完全版】見城徹/幻冬舎文庫(幻冬舎)
ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第135回 見城徹がヤバい 最近、幻冬舎社長・見城徹さんのツイートが熱い!
 映画『空母いぶき』に総理大臣役で出演する佐藤浩市さんのインタビューに対して百田さんとの仲良しコンビで、本文を本当に読んだのか疑わしい、読解力に疑問をささやかれるような批判的なツイートをしたのも記憶に新しいも何も数日前のこと。佐藤さんのインタビュー全文を読んでみると、メンタルが弱かった首相が立派な首相に成長するというように演じたというふうに読めるわけで、左翼やリベラルだと自称している変な人が「これは安倍総理を立派な首相に見せようとしている。佐藤浩市は体制に身を売った」と難癖をつける方がまだわかる感じですよね。だいたい、安倍さんは病気であって、佐藤さんの演技プランはメンタルが弱くてお腹を壊しがちな人で、全然違います。安倍さんのことだと思う方が失礼なのでは。
 そもそも、佐藤さんは父権的、強権的な人物像に抵抗があったということだと思われ、反政権とかいう話とは少し違うのではないでしょうか。最初に騒ぎだした産経の方は何がしたかったんでしょうね。あの人が言い出さなければ安倍さんと関係付けられたりとかなかったのに。「反体制とか言ってて気に食わない生意気な役者を難癖つけて懲らしめてやる」とかいう動機であんなことをする人がいるとは信じたくはないですし。ああいう読解力で仕事に差し障りがないのか心配になります。
 百田さんが佐藤さんを三流役者だと、いつものように派手にキメて、「佐藤浩市が三流だったら、誰が一流なの……。」と人々に疑問をいだかせる一方、見城さんはあくまで佐藤さんの俳優としての実力は認めるスタンスで、その気配りに感心しちゃいますね。如才のなさにさすがは社長って感じです。
 まあ、見城さんも百田さんも「事実かどうかはどうでもいいけど、こいつを安倍さんの敵ということで叩いとけば、安倍さんにもっと気に入られるぞ!」みたいなさもしいことを考えてやったということは名士であるお二人においてはよもやないでしょう。かわぐちかいじさんの原作を愛するあまり、原作レイプ許さないと心の狭いオタクみたいに暴れてしまったのかもしれません。だけど、無関係の安倍さんの名前を勝手に引っ張り出してくるのは、安倍さんも迷惑なのでは。なんか安倍さんに謝った方がいいような気がしちゃいますよね。
弱そうな相手には威圧的で、強そうな相手には媚びる この件だけでも充分熱いのですが、さらに熱い出来事が起こります。発端は、幻冬舎から出されている百田さんの『日本国紀』のWikipediaコピペ問題及びそれへの対処に対して批判を繰り返していたことを理由に営業部から圧力がかかり、同社から文庫化が予定されていた『ヒッキーヒッキーシェイク』の刊行が中止になったという作家の津原泰水さんのツイート。このツイートが広がるにつれ、作家の花村萬月さんや小野美由紀さんからも幻冬舎や見城さんに対する批判のツイートが出てきました。
 それに対して見城さんは、特定の名前を出すことなく、嘘ついてたら訴えるという趣旨の恫喝ともとれるツイートをしたわけですが、津原さんにしろ、花村さんにしろ反骨精神には定評のある人であり、火に油を注ぐ感じに。津原さんに対しては、文庫化の話がなくなったのは津原さんからの申し入れであると津原さんが虚偽を申し立てているという内容の発言をした上で、さらには津原さんの幻冬舎から出した本の実売数を公表する暴挙に打ってでたわけです。本題とは関係ないところで売れない作家と侮辱したととれる行為であり、文化事業であるということで再販制度の恩恵にあずかっている出版社の社長が、作家を侮辱するということは根底から自らを否定する行為でもあります。また、気に食わない取引先の仕事上で知り得た外部に漏らしてはいけない情報をばらまいて相手を誹謗するという行為が、いかに商業モラルに反する行為か。案の定、高橋源一郎さんをはじめ様々な作家や出版人から批判が集まり、現在はツイートを削除されています。どちらが言っていることが事実なのか現時点では第三者にはわかりませんが、関係ないことを持ち出して相手を侮辱するようなことをしている方が悪く見えますよね、普通。
 なぜ、実売数を公表するということが出版人として許されない行為なのか。出版業界に関係のない人にはわかりにくいことだと思いますが、それについては色んな方がわかりやすく説明する原稿を発表されるであろうし、私などより上手に説明してくださる人が多々いらっしゃると思うので、これ以上は触れません。他にもっと気になることがあるのもあります。
 私が気になっているのは、津原さんに対しては嘘つきよばわりしたあげくに、関係ない実売数まで持ち出して侮辱するという高圧的な行為に出たのに関わらず、花村さんには、花村さん大好き、花村さんに嫌われてたなんて自分が悪いんです、みたいな内容のツイートをしたところです。見ようによっては花村さんに媚を売っているようにも見えますな。
 花村さんのツイートの内容を整理してみます。
(1)見城さんは過去に小説を最後の部分しか読まないと言っていた。
(2)見城さんは作家に手紙を書いて誉め称えて歓心を得るのを得意としているが、実際は最後しか読んでないので信用しちゃダメ!
(3)見城さんはパワハラが好き。
 大雑把に言うとこんな感じです。津原さんは幻冬舎という会社に対して発言したわけですが、花村さんは見城さん個人について言及しています。内容的には津原さんの発言より、よっぽど手厳しいものがあると思います。出版人としての見城さんを全否定しているような内容だからです。
 にもかかわらず、見城さんは花村さんに怒った様子も見せなければ、それが事実かどうか争うこともしない、逆に機嫌をとろうとするようなツイートをしています。津原さんに対する態度とは大違いです。見城さんの中では、津原さんは売れてない作家なので下に見ていい、花村さんは売れてる作家で味方も多く本人も強面なので下手に出るというような考えがあるように、はたからは見えてしまいます。弱そうな相手には威圧的に、強そうな相手には媚びてみせるような感じに思われても仕方ないですよね。
 たとえ見城さんが本当に小説は最後しか読まないとしても、「自分はそれで作品の良し悪しがわかる、その証拠に幻冬舎でヒット作が沢山出ている、何が悪い!」という主張をすればいいだけですよね。それが悪いことだと本気で思ってないなら。作家に手紙を書いて作品を誉め称え相手の懐に入るということをやってきた以上、それを認めることができないのかもしれませんね。作品の最後しか読まないで誉めるなんて失礼な行為ですからね。相手に知られたら怒りをかって当たり前です。それがわかってるから言えないのかもしれません。そういうことをしていた相手には大作家と言われるような人もいるでしょうから。
 もし、そんなことやってないならやってないと言えばいいのに、そういう主張もしない。やってないなら花村さんに抗議するのが普通ですよね。なのに、なぜか花村さんに対しては媚びてるような感じの発言をするのです。
 そんなこんなを見ていると、自分より弱い立場の人間には高圧的に振舞い、強い立場の人には媚びへつらうことを普段からしている人なのかなと想像してしまいますよね。百田さんの『殉愛』に関することで水道橋博士が見城さんに苦言をていした時も、本題に触れることなく、ひたすら高圧的な態度で博士を侮辱していましたっけ。博士が『殉愛』と直接関係ない箕輪さんに無理矢理絡んでいった様子は良策であったとは思えず、そういう部分であげ足をとられても仕方ないとは思いますが、それにしたって見城さんの態度はいくらなんでもひどかったし、不誠実だったと思います。
『殉愛』に書かれていることに事実でないことが多く含まれ、裁判で負け続けているというのに公式に見解を示すことなく、知らん顔で売り続けてたり、『日本国紀』のWikipediaコピペ問題が指摘されても公式に謝罪することなく黙って改訂して版を重ねていたり、見城さんという人は本当にマズイことには本題に触れることなくダンマリで通そうとする人だという印象があります。そこを指摘する人が自分より弱い立場の人だと判断すると高圧的に振る舞って黙らそうとするわけですが。そう考えると、花村さんのツイートの内容に触れないのは、それが本当にマズイ事実なのかもしれない気がしてきちゃいますね。
 見城さんって元々は別に保守でも右寄りでもなんでもない人だったんですよね。最近になってそういうスタンスの発言が多いのは、安倍さんや安倍さんを支持しているような人たちにおもねっているからのように思えてなりません。それが、安倍さんのことが本当に大好きで尊敬してるからということでもないような気がします。作品をちゃんと読まないのに作家に媚びているのが事実だとするなら、それは自分が得するためにやっているんですよね。別に好きでないけど、売れる作家の本を出したら儲かるから、そのために気に入られようとしているわけでしょう。そういう人だとするなら、得になるから安倍さんにすり寄っているだけだと考えるのが自然ですから。だから、不自然な持ち上げ方をしてしまったり、不自然に安倍さんの敵認定して叩いたりするのかなとも思います。本当に好きだったら、変なとこで名前ださないですもの。花村さんも言ってましたが、百田さんに対してもそんな感じがします。
 幻冬舎という会社は文芸の復興みたいなことを言ってたような記憶があるのですが、今回のことで「違うんだなあ」という印象が強くなってしまいました。津原さんに対する態度や、花村さんの証言からは、文芸に対する愛情や敬意みたいなものが丸っきり伝わってきませんからね。いい本も出してる会社なんですがトップの態度があれだとね……。ちなみに私が人生の中で繰り返し読み続けている二冊の本があるのですが、その『真剣師・小池重明』も『破滅』も幻冬舎アウトロー文庫から出ているわけで、なんだかなって感じです。
(隔週金曜連載)
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