韻シスト主催の野外フェス『OSAKA G
OOD VIBES』ーー共に時代を築いてき
た盟友たちと、その意志を継ぐ新鋭た
ちが同じステージに

関西からヒップホップシーンを牽引し続け、昨年結成20周年を迎えた韻シスト。彼らが満を持して贈る野外パーティー『OSAKA GOOD VIBES』の記念すべき第1回が、4月29日(月・祝)、大阪城野外音楽堂にて開催された。
OSAKA GOOD VIBES
あいにくの曇天であったが、開場するや否や、そんな空をもろともしない陽気なパーティーピープルたちがフロアを埋め尽くした。DJ STYLISH a.k.a. 鎮座DOPENESSがステージ下手のDJブースから粋なサウンドを送り出し、これから始まる宴に誰もが胸を躍らせた。
ライブアクトのトップバッターを務めたのは、踊Foot Worksだ。サポートドラマーにSANABAGUN.から澤村一平を迎えた5人でステージに登場すると、5日前に発表したばかりのニューアルバム『GOKOH』から「JELLY FISH」でライブスタート。オートチューンを全面に活かしたPecori(Rap)のメロディアスなフロウが、オーディエンスたちの耳を惹きつける。「NDW」ではサビの《やまない雨に打たれてる》というリリックを心地よく響かせ、今にも雨が降り出しそうな曇り空を演出に変えて見せた。夏の潮風を感じさせる爽やかな「Bebop Kagefumi」のあと、SunBalkan(Ba.)による躍動的なベースラインが効いたダンスナンバー「VIRTUAL DANCER」へ。Pecoriが「座ってるやつももっと前に来いよ!」と呼びかけ、座席で体を揺らしていた観客たちはステージ前へつめかけた。さらにダンサブルな「PRIVATE FUTURE」では、途中Tondenhey(Gt.)のエモーショナルなギターソロを挟み、個々の表現力の豊かさを見せつける。「このあとも最高の先輩たちが出てきます。楽しんでいってください」 そんな言葉を添えて最後に届けたのは、メロウな「milk」。歪ませたギターの音色をあえてステージに残したまま、5人は颯爽と姿を消し、新世代のヒップホップクルーを目撃した観客たちはどよめきに近い歓声をあげた。
DJ STYLISH a.k.a 鎮座DOPENESS
再びDJブースに登壇したDJ STYLISH a.k.a. 鎮座DOPENESSは、「携帯で撮ってる場合じゃない、踊りどきだよ!」と煽る。The Internet 「Dontcha」からPrincce 「Kiss」まで新旧のソウル / R&Bナンバーを織り交ぜ、時には自らプレイした楽曲に乗せて即興のフリースタイルラップも披露し、会場を大いに盛り上げた。
SANABAGUN.
ライブアクト2組目は、総勢8人のジャズ・ヒップホップバンドSANABAGUN.。バンドメンバーは黒、フロントマン2人は白のズートスーツに身を包んで登場し、ステージからは輝かしいオーラが溢れた。髙橋紘一(Tp.)と谷本大河(Sax)が放つトランペットとサックスの歯切れ良い音色とともに、鉄板の盛り上がりを誇る彼らの定番曲 「板ガムーブメント」が始まった。岩間俊樹(MC)と高岩遼(Vo.)がステージ前方をどっしりと練り歩き、ラップを聞かせながら客席に板ガムを投げこむ。その後、ロックで重厚なバンドサウンドに岩間がラップを乗せる「三種の神器」や、高岩の高速ラップが冴える「Black Diamond」など、怒涛の5曲で8人の多様性を遺憾なく発揮した。束の間のMCで主催の韻シストへの感謝を口にした後、岩間が切り出す。「夏に向けて、今日この曲を解禁したいんですよ」と、 昨年のアルバム『OCTAVE』から軽やかなボサノバナンバー「P・A・N・T・I・E」が披露された。ついに降り出した雨がフロアのボルテージを上昇させ、サビでは会場全体が《P! A! N! T! I! E!》と大合唱。さらに「雨が降り出したけど、太陽をさんさんと輝かせるためにお届けするよ」と演奏したキラーチューン「FLASH」では、高岩の迫力ある歌声が空を覆う雲を突き抜ける。「ゴールデンウィーク楽しんでいけよ」 彼らが最後に選んだのは、まさしくゴールデンウィークにふさわしいアップナンバー「人間」。「休みは働く為のものじゃない!」「さぁ!布団へ帰ろうぜ!」 連休の序盤に集まった3,000人の叫びが、大阪城野外音楽堂に清々しく響いた。
SANABAGUN.の熱気を引き継ぎ、DJブースにはKenKenが降臨。「すでにGood Vibesだ!この日を覚えておきましょうね」と、Michael Jackson「Remember the Time」をかけるなど粋な選曲が光る。踊るオーディエンスに「ファンクミュージックは好きですか?」と問いかけたあと、クラシカルなファンクミュージックへシフトさせた。リハーサルのためステージに入ってきたNulbarichのバンドメンバーたちも、KenKenの盤石のプレイに笑顔を見せていた。
Nulbarich
ステージには雨除けのテントが設置され、Nulbarichのライブが始まった。バンドメンバーたちの綿密なセッションに魅せられていると、徐々に馴染みの「It’ s Who We Are」のイントロが現れる。《A boring sunday is thesituation……》JQ(Vo.)が歌い出すと観客たちはたまらず声を上げ、それに応じるかのようにJQも「行き先は未定でもtha’ ts fine」と両手の親指を立てて見せた。メロウな「On and On」では2番のサビの後に「(会場の)音量制限ギリでいきます」と一言。バンドメンバーによるライブならではの情熱的なセッションが展開され、フロアの人の波は大きく縦に揺れた。「Ring Ring Ring」へと続き、今度は観客たちが広く左右にスウィングする。「JUICE」のサビでは観客たちが拳を上げ、1曲終えるごとにJQ(Vo.)は「Thank you guys!」と投げかけた。 貫禄のドラムソロから軽快な「Super Sonic」へ突入し、黄色と青のライトが交錯する中でギターの歯切れ良いカッティングに誰もが自然と身を揺らす。JQが「今日はヒップホップ好きが多いと思って、特別なセットリストにしました」と話し、最後は「Sweet & Sour」で締めくくられた。レインコートのフードを外し雨を浴びながら歌う観客たちの顔は、なんとも晴れやかだった。
SPIN MASTER A-1
韻シストのショーを目前に控え、DJブースではSPIN MASTER A-1がテクニカルなスクラッチを交えながら、盤石のプレイで人々を大いに沸かせた。イラストレーターのBOXER JUNTAROが客席の後方で製作したライブペインティングがステージに運び込まれ、いよいよ舞台が整ったようだ。韻シストの面々がサウンドチェックのために演奏を始めると鎮座DOPENESSが現れ、「次は韻シストのLIVE〜♪」と即興で歌を乗せ場を沸かせた。
韻シスト
ショッキングピンクのライトに照らされながら、ラストアクト・韻シストのライブがスタート。 雨脚は強まるばかりだが、「Daily A Life」のチルなイントロに乗せてサッコン(MC)が「(雨)やんだね〜!」と和ませ、観客たちは思い思いのドリンクを高く掲げた。会場全体をグルーヴィーに包むTaku(Gt.)、Shyoudog(Ba.)、TAROW-ONE(Dr.)と、ステージ前方を縦横無尽に躍動するBASI(MC)とサッコン。待ちわびた光景にフロアの熱気は加速した。 「STILL NO.1 CHAMPION」では、「今宵の主役は?」「パーティーピーポー!」とステージとフロアがコミュニケーションを交わす。リリース以来約3年間のライブ定番曲「PARTY SIX」が贈られ、アルバム最新作『IN-FINITY』から「とまらない」が続いた。
MCでは「あのフジロックフェスティバルも初回は台風が直撃していたし、フェスの第1回というのは伝説になるものなんですね。」と切り出し、悪天候にも関わらず大トリの韻シストを見届けるオーディエンスの愛に感謝を述べた。「ここまでは熱くお届けしましたけど、ちょっとクールにいきましょうか。」 始まったのは「COOL&SWAG」のリミックス。音数をそぎ落としたアレンジに、2MCの紡ぐラップがいっそう映える。「平成何年?聞いてる時代はあんまり関係ないねん」 サッコンの一節が、改元を2日後に控えた日本の今とリンクした。
韻シスト
「OLD SCHOOL LOVIN’ 」ではBASIとサッコンが細かく鮮やかなマイクパスで魅せ、「gimelou」で再び熱を帯びたあと、「Dear」ではShyoudogの柔らかなハスキーボイスに酔いしれる観客たち。ステージに戻ったBASIとサッコンが「みんながあったまるような曲を」と鎮座DOPENESSとチプルソを呼び込み、「HOT COFFEE feat. 鎮座DOPENESS & チプルソ」へ。チプルソが手にした緑のガラス瓶や、雨除けのテント、観客たちのレインコートに照明が当たり、色とりどりの光を放つ。日が落ち、雨も手伝って気温は下がっていたが、4人のMCとともに「ほっとするHOT COFFEE」とフックを口ずさむ人々の心からは、温かな湯気が上がっていたに違いない。
バンドの長いの軌跡を辿る新旧を織り交ぜたセットリストは、早くも本編ラストナンバーを迎えた。「Don’ t Leave Me」では会場全体でハンドグラップが起き、楽曲の終盤ではフロアの前方から後方までが一斉に飛び跳ねた。「Good Vibesすぎるで!パーリーピーポー!」 メンバー紹介の最後に今日集まった観客一人一人を称え、5人はステージを後にした。
韻シスト
すぐさま発生したアンコールに応じた韻シスト。BASIの「アンコール、楽屋では1曲の予定やったけど、2曲やっていいってさ」という言葉にオーディエンスは歓喜した。「On & On」に差し掛かると舞台袖には今日の出演者たちが集まり、韻シストの音楽をともに楽しんでいる。「去年20周年を迎えて、21年目にフェスができるなんて幸せなことです。すべての仲間たちがこの最高な瞬間を作ってくれました」サッコンが感慨深げに語る。「あと数日で平成が終わって令和になりますけど、その新しい時代を迎える今年の8月に、韻シストは新しいEPを出します」とEP「SHINE」がリリースされることが告知されると、最後にはこの日訪れたすべての人がバンドの一員となり、「雨は誰のせいでもない」と、一夜限りの特別な「Don’ t worry」をシンガロング。初の『OSAKA GOOD VIBES』は終始ピースな雰囲気を纏ったままフィナーレを迎えた。
20年を超えるキャリアと揺るぎなき実力がありながら、フレッシュな感覚を持ち続け、常にオープンマインドな韻シスト。このフェスを主催したのが他ならぬ彼らだからこそ、共に時代を築いてきた盟友たちと、その意志を継ぐ新鋭たちが同じステージを踏んだのだろう。メモリアルな1日を経て、さらなるGood Vibesが大阪から巻き起こるに違いない。
取材・文=Natsumi.k

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