【ライブレポート】BIGMAMA、すさま
じい熱気でファンと燃え上がった母の
日ライブ

BIGMAMAがファンに贈る年に一度の感謝の日。8年連続でZepp Tokyo開催となった恒例の母の日ライブ、その名は「mummy’s day」。英語のmummyには二つの意味があって一つはMOTHERの幼児語、もう一つはミイラ。ミイラを漢字で木乃伊と書くのは元々オランダ語発音のモミイの当て字だからという、これは特に必要のない豆知識。“母の日に見せかけて木乃伊の日かもしれないよ”という、実に金井政人(Vo&G)らしい謎かけの意図を確かめに、ということでもなくただ楽しみに、フロアも2階もぎゅうぎゅうの満員だ。

オープニングは「YESMAN」。頭上にシャンデリア、背後に姿見のような鏡をずらりと並べ、ステージ後ろ客席に見えるシンプルだけど素晴らしいアイディア。盛り上がる自分たちを見てさらに盛り上がるオーディエンス、それを見てさらに煽りにかかるバンドの一体感。初期の代表曲「the cookie crumble」から「POPCORN STAR」、『Roclassick』シリーズからの「走れエロス」へ、ベスト選曲のファスト・チューンを連ねて全力疾走。東出真緒(Vl)と柿沼広也(G)によるヴィヴァルディ「春」の速弾き合戦に沸き上がり、「たった3秒あれば僕達は、未来を変えて行ける」と大合唱する、オーディエンスの熱気が凄まじい。
「BIGMAMAです。よろしくお願いします。最後まで良いお付き合いを」

金井の挨拶はほんの一言、続けて『Roclassick』シリーズから「虹を食べたアイリス」「テレーゼのため息」と、楽聖ベートーヴェンの二連発。ロックとクラシックの融合と一口に言えど、めまぐるしく変わる構成と精密な演奏スキルはほとんどプログレだ。リアド偉武(Dr)の人力ドラムンベース的な超絶ビートが炸裂するクレイジーなラウド・チューン「Step-out Shepherd」から爽快メロディックな「秘密」、「カノン」のメロディを使ったポップな「計算高いシンデレラ」へ、感情を急変させながら曲間なしでどんどん行く。一度乗り込んだら止まれないスリルとスピード、実に計算高い、いや行き届いたセットリストだ。

東出真緒がキーボードで弾く「ジムノペディ」のスピリチュアルなメロディと、精密な変拍子が心地よい酩酊を誘う「Royalize」、「あなたの心が晴れますように」と、金井が一言を添えて歌った「CRYSTAL CREAR」、赤い糸にちなんだ真っ赤な照明がどぎついほどに美しい「A KITE」。飛ばしに飛ばした序盤からややアクセルをゆるめ、金井のアコースティック・ギターを中心に透明感溢れる曲たちでほっと一息。金井と柿沼が歌を分け合う「春は風のように」は、カントリー調の軽快なビートが風薫る五月の夜によく似合う。ここまで15曲でちょうど1時間、時は風のように過ぎてゆく。
祝祭のチャントめいた金井の独唱から始まる「ファビュラ・フィビュラ」のヘヴィ・メタリックなサウンドは、ここから後半へ向かって突き進むぞという力強い合図。「アリギリス」も「Perfect Gray」も強烈にラウドでダンスで、東出から柿沼へのソロ回しも強烈だ。みんな大好き「Swan Song」でも、ここが最大の見せ場と張り切るヴァイオリン・ソロが凄い。そのままノンストップで「Strawberry Feels」「mummy mummy」と、ドラマ『賭ケグルイ』にちなむ直近のシングル二連発に至る流れは怒涛の如く。「Strawberry Feels」の間奏のクレイジーな楽器バトルはライブではさらに激しくエモく、「mummy mummy」も音源と比べてラウドとヘヴィの迫力5割増し。近年はポップなイメージも強いが、メロコア上がりのアイデンティティここに有り。ちなみにここまで一言も触れていない安井英人(B)は目立たないのではなく、ワイルドに飛びまくるリアドに代わって極太重低音で屋台骨を支える、存在感がでかすぎて何も言えないということだ。
「Zepp Tokyo、母の日に、歓びの歌を!」

クラシックで言えばここから第4楽章、フィナーレに向けての疾走に「No.9」ほどふさわしい曲はない。「歓喜の歌」の高貴なメロディが鳴り響き、白く輝くライトが回る中でフロアの全員が手を振り上げる絶景かな。金井がアコースティック・ギターを外してマイクを握り、跪き、手を突き上げながらの「Sweet Dreams」の劇唱に、フロアの全員がワイパーで応える絶景かな。「MUTOPIA」ではミラーボールが回り、ダンスホールの熱狂が会場を一つにする。このまま一気に…行く前に金井が一言、「最初に謝っときます」。え、何を?
「今夜の締めくくりに、誰も知らない曲をやります。すごく大切な曲になりそうです」

金井らしいトリッキーな曲紹介のあとに歌われた新曲「St.Light」。溌剌としたスピード感、明るい開放感、デジタル感覚でチューン・アップされたロックンロール、それはバンドの原点と最新のスキルを合体させたBIGMAMAの未来地図。と受け取ったが、果たして? リリースが楽しみだ。
「母の日、BIGMAMAでした、ありがとう。続きは10月に会いましょう」

最後の最後、「荒狂曲“シンセカイ”」はいつものように無礼講で大騒ぎ。柿沼が速弾きを決め、東出が中央に飛び出して満面の笑みでセンターを確保。金井はここまで歌い続けてパワーも音程も揺ぎ無し。普段あんなに静かにジェントルに喋る男がどうやってステージ上であんな声を出し続けられるのか、全くもってわからない。明るい狂騒の中、ハウリング・ノイズを残して手を振るメンバーに贈られる拍手と大歓声。アンコールは無し、派手な演出も無し、メンバー紹介もトークも無し、BIGMAMAを愛する人と共に潔く駆け抜けた1時間50分。明るくなった場内に「母に贈る歌」が流れてる。帰り支度をしながらみんなが歌ってる、何気ないけれど嬉しい光景。
終演後、金井が言った通り10月に<Roclassick tour 2019>の開催が発表された。この日初披露された新曲も含め、バンドは次のステップへともう踏み出してる。夏フェスも続々決まってる。嬉しいニュースを振りまきながら、BIGMAMAはデビュー14年目の季節を駆けてゆく。

取材・文●宮本英夫

ライブ・イベント情報

<Roclassick tour 2019>
10月9日(水) 梅田CLUB QUATTRO
10月10日(木) 名古屋CLUB QUATTRO
10月17日(木) 渋谷CLUB QUATTRO
TOTAL INFO. Livemasters Inc. 03-6379-4744

リリース情報

New Single「mummy mummy」
2019.04.17 Release
初回限定盤(CD+DVD)UPCH-7484 1,800円+税
通常盤(CD)UPCH-5959 1,200円+税
CD
1.mummy mummy
 MBS/TBSドラマイズム「賭ケグルイ season2」主題歌
2.吸血鬼はAB型がお好き
3.Wolfgang in the moon
DVD
「mummy mummy」Music Video

期間限定盤『-11℃ (Complete Version)』
2019.04.17 Release
4,800円+税 / UPCH-7483
CD収録曲:
01.YESMAN(extra cold)
02.Ghost Leg
03.Strawberry Feels
04.Insomniark
05.Jelly Miens
06.POPCORN STAR
07.Funbalance
08.Miffy’s Mouth
09.Step-out Shepherd
10.Happiemesis
11.CRYSTAL CLEAR
12.High Heels, High Life
13.Foxtail
DVD:
映画『つきとたいよう』完全版(全13話、58分)
「Step-out Shepherd」Music Video & Making-of Video

ライブ・イベント情報

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