the GazettE ホール、ライブハウス
、世界ツアーを経て向かう横浜アリー
ナ、『NINTH』ツアーで明示したバン
ドの本質

昨年(2018年)6月にリリースされた9枚目のアルバム『NINTH』を引っ提げて、精力的に国内ツアーを敢行してきたthe GazettE。その第1弾『the GazettE Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-』は各地のホール会場を、第2弾『the GazettE Live Tour18 THE NINTH / PHASE #02-ENHANCEMENT-』はスタンディング形式の大型ライブハウスをそれぞれ転戦するものだった。そのうえで行われた今回の『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』(以下、『PHASE#03 激情は獰猛』)は、活動初期のバンドがある種の目標に掲げるような場所をあえてセレクト。たとえば東京なら、高田馬場AREAや目黒鹿鳴館も含まれていた。
そんな大胆な試みが発表された際には、ファンならずとも驚かされたはずだが、キャパシティを次第に大きくするのではなく、小さくしながら、観客との物理的距離も縮めていくという、言わば逆転の発想が興味深く映った。
その意味では、『PHASE#03 激情は獰猛』の最終公演の場となった東京・渋谷TSUTAYA O-EAST公演は、計43本に及んだライブを総括するものでもあったと言っていいだろう。では、実際にはどうだったのか。それまでに三郷市文化会館、CLUB CITTA’ 川崎、新木場STUDIO COAST、恵比寿LIQUIDROOM、目黒鹿鳴館でのパフォーマンスを目撃してきた立場から言えば、この日の成果はポジティヴな意味で予想できるものだった。
the GazettE/RUKI(Vo)
順を追って説明しよう。まずは『NINTH』の持つ性質である。音源を初めて耳にしたとき、ライブでの即効性の高さを予感させられた。そこに関してはメンバーは必ずしも自覚的ではなかったが、これまでのthe GazettEの音楽を現在のモードで集約させた全体像が醸し出していたのは、時流と並立した実験性ではなく、彼らが長きに渡って培ってきたバンドサウンドの強みだった。
the GazettE/麗(Gt)
無論、それがステージにおいてさらなる力を発揮するのは当然ながら、通常は必然的に試行錯誤が繰り広げられるツアー初日の時点で、すでに仕上がりの早さを感じさせていたのは、今になってみれば、最終的な結実を決定づけるものだった。実演を重ねれば重ねるほど、強靭さが増すグルーヴ。前作『DOGMA』のような振り切ったコンセプトを持たない『NINTH』は、真なる完成形へと次第に構築されていくことになった。
事実、会場がホールからライブハウスに移行した段階で、どんな場所でも変わらない、つまり、演奏のための機材、演出のための照明等を含めて、環境に左右されないthe GazettEの在り方が明確に提示されていた。
the GazettE/葵(Gt)
言わずもがな、ライブは1本1本が異なる表情を見せる。おそらくある時期からは、客観的に見れば、かなりの余裕を持って、オーディエンスとの駆け引きも十分に楽しみながらパフォーマンスが行われていたはずである。しかし、一定のレベルをクリアしても、さらなる細かな課題を見出していくのもthe GazettEだ。その精緻な微調整を幾度も繰り返しながら、ツアーは進んでいったに違いない。
だからこそ、TSUTAYA O-EASTで5人が響かせた音、目にした光景は予想どおりだったのだ。その言い方が仮に誤解を招くのであれば、期待どおりと言い換えてもいいが、原点回帰といったキーワードを掲げるまでもなく、the GazettEは期せずして自身の本質を体現したということである。加えて、個々の表現力についても、これまで以上に目が向けられている印象だ。
the GazettE/REITA(Ba)
また、今回の3本のツアーがなぜ行われたのかという視点も必要かもしれない。バンドの運営においては、ある程度の長期的な計画が必須であることを考えれば、『NINTH』がどのような作品になるのかが判明する以前に、ブッキングが進められていたのは容易に想像できる。かつてのように小規模のライブハウスを廻ることはメンバーからの希望で実現したとも聞くが、彼らが何らかの新鮮な風を求めていたとすれば、『NINTH』を生み出すまでの間に、バンド内では同時並行的にアルバムの成立のさせ方を模索していた流れにも符合する。
あくまでも推論でしかないものの、あるメンバーは地方の小さな会場で行ったライブを振り返り、the GazettEのサウンドとの根源的な近似性を指摘していた。わかりやすく言うなら、“ライブハウスに似合う音”ということである。自らが描き出す楽曲のスケール感は大きくとも、そのルーツが確実に黎明期の自分たちを磨き上げた“ハコ”にあることを改めて実感したわけだ。
the GazettE/戒(Dr)
この4月から6月にかけては、『WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999-』と題された新たなツアーが始まっている。これは北米、南米、欧州、東アジアをサーキットするものだが、『NINTH』に伴うこれまでのライブで研ぎ澄まされたパフォーマンスが後ろ盾となる強靭さが、各国で長らく待ちわびていたオーディエンスの前で、継続的に披露されていくことになる。
そして何よりも注目すべきは、来る9月23日に横浜アリーナを舞台に開催されることがアナウンスされた『the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL 「第九」』である。インターネット上でも公開されたトレイラーに流れるのは、この重要なライブに冠された言葉に導かれたものであろう、ベートーヴェンの「交響曲第9番(第4楽章・歓喜の歌)」の一節だ。無事に『NINTH』を昇華させる喜びか、次の時代を切り開く革命の象徴か。そんな解釈の仕方も今から楽しめる。今回の一連のツアーにおいて最大規模のヴェニューで、どう魅せるのか。RUKIが「またカッコよくなって帰ってくるから、待ってろよ!」とメッセージを贈ったように、5人の頭の中には、すでに究極たる理想像が描かれているはずである。
取材・文=土屋京輔 撮影=Keiko Tanabe、山内洋枝

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